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	<title>連載 - LOOP</title>
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		<title>蒼空の街①</title>

		<description>なんだか懐かしいのに
不安が募る……

…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ なんだか懐かしいのに
不安が募る……


<div style="text-align:center" align="center"><font color="#00ffff">ツ</font><font color="#00ead4">キ</font><font color="#00d5a9">ノ</font><font color="#00c07e">セ</font><font color="#00ab53">カ</font><font color="#008000">イ</font></div>


水の街を後にしたかぐや達は、闇爾の案内である街に到着した。

｢ここは……｣
｢かぐや、知ってるの？｣
｢え？………あ、ううん。(気のせいだよね)｣
｢？｣

そこは幅の広い道路があり、周りは工業地帯のようで、大きなタイヤや木材、鉄材などが積み重ねられている。人の気配はなく、ふと空を見上げれば、雲一つない快晴だ。
一見、どこにでもありそうな光景だが、かぐやは何故か不安を感じていた。

幼い頃、ここと全く同じ場所で、恐ろしい思いをした記憶がうっすらとあるのだ。
詳しい事は忘れてしまっているが、とにかく恐ろしかったのだ。

(何があったっけ………？怖いって事は覚えてるのに……)

かぐやがぼんやり考えていると、黒呼が心配そうに顔を覗き込んだ。

｢かぐや？大丈夫？｣
｢…あ！！うん！大丈夫！！｣
｢……そう？先、進む？｣
｢うん、ここに居ても仕方ないし、いこう｣
｢うん……｣

今、考えた所で答えは出ない。とにかく今は前に進むしかないのだ。
きっとその先に、このもやもやの正体があるはずだ。かぐやは黒呼の手をとり、闇爾の後を追い歩き始めた。


<div style="text-align:center" align="center"><font color="#00ffff">蒼</font><font color="#00dfbf">空</font><font color="#00bf7f">の</font><font color="#008000">街</font>
《前編》


<font color="#80c0ff">この先に待ち受ける
不安の元凶とは……？


</font></div>

つづく… ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2015-06-08T13:31:18+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
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		<title>悪意</title>

		<description>それは、悪意のうごめきだす音……



…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ それは、悪意のうごめきだす音……




<div align="center"><font color="#2222FF">逃</font><font color="#116FFF">走</font><font color="#00BBFF">ゲ</font><font color="#116FFF">ー</font><font color="#2222FF">ム</font>
《悪意》</div>


翌朝…。

ホテルの周囲は今までと違っていた。
逃走側であるキノ達を待ち構えるため、追跡者達が張り込んでいたのだ。
本来なら失格となるこの行為。新たな『策士』の独断で行われていた。

｢逃走側は朝6時に動き出す。ならばホテルの周辺を固め、散り散りになる前に一網打尽にすれば……簡単だろう｣
｢………それは失格行為だ。主催者に見つかればただでは済まない｣
｢ふん……所詮クロの金魚のフンか。スズ……バレなきゃいんだよバレなきゃ｣
｢………勝手にしろ。俺はお前には従わない｣

そんな会話を交わした後、スズは公園の方へ向かった。
そんなスズの態度に舌打ちをする紅い長髪の男…………サイは、下僕の男達に作戦を遂行するように言い、自らはノートパソコンの前に座る。

｢逃走側の経路は把握済みだ。ホテルを出たらまず、路地に入る……そして逃走区域である地下街に逃げ込むんだ。………くくく…………俺のデータは完璧だ。クロよ。お前が居なくても俺が勝利に導く｣

不敵に笑うサイ。
この鬼ごっこで勝利すれば、クロを下僕に出来る。それは積年の妬みからくるものであった。


……………―
………―


元々、サイはクロと同じ大学の戦術研究のサークル仲間だった。お互い、仲間という認識は薄く、あまり意識していなかった。
それがガラリと変わったのは、初めて祭に参加した時だった。
自ら追跡側の『策士』に志願し、自分の能力を発揮し、名を上げる………つもりだった。しかし、そのポジションにはすでにクロがいた。
しかも、クロは確実に成果を上げ、追跡側にはなくてはならない存在となっていた。しかも、クロの傍らには気難しい事で有名なスズが『技巧師』として活躍していた。

……自分の出る幕はない……

自尊心の塊のようなサイには受け入れがたい状況だった。何故クロなのか、何故自分は重用されないのか…………いくら考えてみた所で、サイの納得のいく答えは出ない。
しかも、最愛の女まで奪われた。(とは言っても、女が一方的に好きなだけで、クロはなんとも思ってはいない)
悔しい…妬ましい……そんな気持ちで数年間追跡側で参加し続けた。

……いつか引きずり落としてやる………

真っ黒い憎悪となり、爆発しそうになった時、クロは追跡側を離脱した。
このチャンスを利用しない手はない。

クロがいなくても、自分が成果を上げれば追跡側も自分を重用するはず。
彼女―アヤだって戻ってきてくれるはず。
そのためなら手段は選ばない。

……サイを突き動かすのは嫉妬と悪意だった………



…………………―
……………―
……―


朝6時。
祭の開始時間になった。
今か今かと待ち構える追跡者達だったが、一向に建物から出てこない。次第に張り込んでいた者達が、騒ぎはじめた。

｢おい！！サイ！どうなってんだ！誰も出て来ねぇぞ！｣

サイの無線から追跡者達の怒号。
…もしや……嫌な予感が過ぎるサイ。しかし、極めて平静を装い指示を出す。

｢落ち着け！！まだ、建物にいる可能性が高い。開始時間は過ぎている。乗り込め！！｣


<font size="3" color="#FF0000">『おおお！！』</font>


空気が震える程の掛け声と共に、追跡者達がホテル内になだれ込む。
しかし、



ロビーにも個室にも、キノ達の姿は無かった。



………………―
……………―
…………―


｢ふう…どうやら撒いたみたいだな…｣

キノ達は公民館にいた。

実は、監査であるタケが明け方、追跡側の人間を何人か見かけたのだ。もしかして…と思い、クロとキノを起こし説明し、相談の結果少し早めに裏口からホテルを脱出し、タクシーを拾い今に至る……という訳だった。

｢さすが監査ね｣
｢凄いじゃん！タケ！！｣

キノとハナに褒められ、タケは照れ笑いする。

―やはり、監査は必要だ―

今回の件で改めて思い知らされた。もし、タケがいなかったら…皆捕まっていた。

｢それにしても、随分と姑息な策だな。……あいつを思い出す｣

苦虫を噛み潰したような顔で呟くクロに、キノは不思議そうな視線を向ける。

｢あいつ？｣
｢…ああ。大学で同じサークルに入ってる奴で、……サイって奴がいるんだが、そいつの策の傾向と似てるんだ｣
｢……あらそうなの…｣

あまり差し障りなく返事をするユカの様子を、キノは見逃さなかった。
一瞬、ぴくりと体を揺らし、眉を潜めたその仕種…………明らかに動揺している。

(ユカ……何を知っているの……？)

この場で問いただす事は可能だが、場の空気も悪くなるのは必至。…やめておいた。
もし聞いたとしても、まともな返答は期待出来ない。…………そんな気がするのだ。

(私と勝負……とか言っていたけど………まさかね)


そのまさかの展開をユカが考じていようとは、キノはおろか他のメンバーも知らない。

…………………―
………………―

｢さて、これからどうする｣

手早く食事を済ませ、一休みしてから作戦を練る。

｢…取りあえず、駅前は避けた方が無難かもね。あと、一人で行動するのもやめたほうがいいわ｣

前回は追跡側も偵察程度なのか、あまり徘徊していなかったが、今日は分からない。もし仮に二人、三人一緒に行動した結果、捕まってしまった時を想定したら、一人で行動する方がリスクは小さい。が、一人で周りに神経を張り巡らせるのは、精神的にも体力的にもキツイ。しかも自分は大将だ。大将が捕まればその場で敗北となる。それだけは避けたい。

｢そうね………私もキノの意見に賛成よ。今回は二人一組でペアを組んで行動しましょう｣
｢ん、俺もそれがいいと思う。お前たちは？｣

クロがハナ達を見ると、ハナとモモ、タケは笑顔で頷いた。

｢……じゃあ、早速ペアを決めましょうか｣

キノがそう言うと、ハナが提案する。

｢ここは公平にアミダクジにしようよ！！｣
｢うん！僕も賛成！｣
｢じゃあ……少し待ってて｣

その提案に皆が賛成したのを確認すると、キノは棚の引きだしを漁って、紙とペンを出しクジを作りはじめた。


…………………―
………………―
………―


クジの結果……

｢私はハナとね｣
｢うん！よろしくね！ユカ｣

ユカとハナチーム。

｢俺はモモか。よろしくな！｣
｢は、はい……よろしくお願いします……クロさん｣

クロとモモチーム

｢僕はキノ姉ちゃんとだ！よろしく！｣
｢うん…よろしく。タケ｣

キノとタケチームに別れた。

その後、落ち合う場所を確認し解散した。

…………………―
………………―
……………―

｢くそっ！一体どうなってる！！逃走側は素人の筈だ！！｣

自分の読みが外れ苛立つサイ。ホテルはもぬけの殻。猫の子一匹いない…と知らせを受け、サイは逃走側のデータを調べはじめた。

｢………皆、普通の女子高生だ。鈍臭さそうなのは居るが、頭がキレそうな奴はいない……何故だ……っ｣

サイは自らの策に絶対的な自信を持っていた。サークルで培ってきた戦術スキル……必ず成功する筈だったのに……。

｢俺の策を看破出来る奴は、クロくらいしか……………まさか……！｣
｢そのまさかかもね｣

背後から聞こえた声に、ビクリと肩を震わせ、振り返ると、ライトブラウンのロングヘアーの女性が、扉にもたれるように立っていた。

｢アヤ……！！｣
｢久しぶりね。サイ｣

女性……アヤは美しく整った笑顔を見せる。

｢……何しに来た。お前は……｣
｢あら、今年は出入り自由でしょ？何の問題もないはずよ…｣
｢……？｣

不信をあらわにするサイに、アヤは小さく鼻で笑う。

｢クロが追跡側を外れてどうしたか………知りたい？｣
｢！！知ってるのか？｣
｢ええ………教えてあげてもいいわ。条件付きだけど｣
｢………条件？｣

ますます訝しがるサイに、思わず見惚れるような笑みで意味深に笑う。

｢えぇ……心配しなくてもとても簡単な事よ…ふふふ……｣


………………………―
……………………―
…………………―


―逃走側、ユカ＆ハナ―


｢ふう……一時はどうなることかと思ったけど…｣
｢なんとか撒けたね｣

ふーとお互い息を付き、物影に身を隠す。遥か遠くで追跡者の声が聞こえていたが、やがて聞こえなくなった。

｢ゴメンなさいね。私が大通りを行こうなんて言ったから…｣
｢え？ううん、ユカのせいじゃないよ！気にしないで｣

実はユカの提案で、大通りから路地に入ろうとしたのだが、運悪く追跡者と鉢合わせし、命からがら逃げて来たのだった。
しかし、かなりスリリングで体力消耗の激しい鬼ごっこだ、とハナは心の中で呟いた。

｢キノ達は大丈夫かしら。かなり追跡者が増えた気がする……｣
｢大丈夫だよ。モモは策士のクロさんと一緒だし、キノだって監査のタケと一緒だもん！｣
｢………そうね。とにかく、今一番の問題はどうやって残り時間を過ごすか…よね｣

今ユカ達のいる場所……高架下の空きテナントだが、地下街や公民館のように制限されていない。何とか撒けたものの、だからと言って絶対安全とは言いきれない。居続けるのは危険だ。

｢ん～…もう少し様子を見てから考えよ｣
｢ええ……さすがに今回はくたびれたわ……｣

ユカがんーと伸びをする。ハナもつられて欠伸をした。そんなハナを見、ユカは心配そうに声を掛ける。

｢大丈夫？私が見張りするから少し寝る？｣
｢え？ああ、大丈夫大丈夫！！安心しちゃって気が緩んだのかな｣
｢辛かったら我慢しないで？｣
｢平気だよ。ユカこそ少し寝たら？顔色悪いし…｣

実はユカは今朝から少し熱っぽかった。慣れない環境で気を張っていたからだろう。しかし、皆に迷惑は掛けられないと黙っていたのだ。

｢……バレちゃったわね。じゃあお言葉に甘えて少しだけ…｣
｢うん。おやすみ、ユカ｣

ユカはハナにもたれかかり、間もなく寝息を立てはじめた。



―逃走側…クロ＆モモ―


一方、クロとモモは地下街にいた。しーんとした通路を二人が歩く音だけが響く。

｢しかし、表に随分張り込んでるみたいだな…当分大人しくしておくか。モモ、大丈夫か？｣
｢はい。大丈夫…です…はあはあ………｣
｢……辛そうだぜ？どこか座るか｣
｢……すみません……｣

地下街に来たのはいいが、周りに大勢追跡者がおり、なかなか入れず歩き回ったのだ。
普段から運動音痴なモモはすっかりくたびれていたが、クロの足を引っ張るまいと無理矢理付いて来ていた。口では大丈夫とは言っているが、その疲れは顔に出ていた。
クロはモモの手を引き、テナントの近くのベンチにモモを座らせる。

｢ちょっと待ってな｣
｢？｣

クロはモモにそう言うと、一つだけシャッターが開いている店に入って行った。

しばらくして、缶ジュースとチョコ菓子を手に、モモの元に戻ってきた。

｢ほら、りんごで良かったか？｣
｢え？は、はい。あの……これ……｣

お店の人は居たのだろうか？シーンと静まり返ったこの空間、やりとりの話し声くらいは聞こえてもいいはずだが、聞こえなかった。モモが戸惑っていると感じたクロは、安心させるように笑いながら説明する。

｢大丈夫だよ。鬼ごっこの期間中に使用する施設とか、品物とかは主催者がすべて買い占めてるんだよ｣
｢え………そうなんですか？私てっきり……｣
｢盗んだと思ったか？｣
｢え…………と…………はい｣
｢ははは！そんな顔するなって。初めて参加したんだ、知らなくて当然だよ｣
｢……すみません…；｣

謝らなくていいと笑いながらモモの頭を撫でるクロに、モモはほっとしたように笑う。

｢やっと笑ってくれたな｣
｢え…？｣
｢いや……なんかさっきまで泣きそうな顔してたからさ。俺じゃなくてキノと組んだ方が良かったか………とか考えてて｣

少し淋しそうに話すクロを見たモモは、そんなに心配させた事を申し訳なく感じた。

｢ち、違います！あの………私、今まで男の人と二人きりになるなんて事無くて。いつも、ハナ達と一緒で……その……｣

一生懸命言葉を繋ぐモモをクロは優しく見つめる。

｢だから……そのクロさんが嫌いとか怖いとか……そう言う訳じゃないです｣
｢そっか……｣
｢……むしろ、安心してます。クロさんが居れば大丈夫って………｣
｢！……ありがとな。それだけ聞けりゃ十分だ。頑張って逃げ切ろう｣
｢は、はい！！｣

笑い合う二人。
クロは内心驚いていた。なぜなら、モモはハナと居るとき以外、まったくと言っていいほど言葉を発さない。正直、受け入れられていないと思っていたが、今のモモの言葉でそれは杞憂だったと知る。

(こりゃあ、なんとしてでも勝たないとな…)

ニコニコしながらジュースに口をつけるモモを見、クロは改めて決意を固めた。

…その裏でどす黒い悪意が渦巻き、自分を巻き込もうとしているとは、この時のクロは気づけなかった。



一方、キノとタケはと言うと……


｢ちっ…しつこい｣
｢キノ姉ちゃん、もう少し頑張れば撒けるよ！｣

追われていた。
別にどちらかのミス…という訳ではなく、単純に運が無かった…らしい。
駅前を避け、裏道から安全な場所を探そうとしたのだが、何故か今日に限って追跡者が多い。
昨日の今日……。
自分の不運さにほとほと嫌気が挿した。

｢はあはあ……｣
｢キノ姉ちゃん！しっかり！！…あ、こっち！！｣

タケはキノの腕を引っ張り、地下通路に入り込んだ。地下通路には複数の小部屋があり、その一番奥の部屋に飛び込み、静かに扉を閉めた。ドアに張り付き、聞き耳を立てていると、暫くして地下通路の入口辺りで話し声がしていたが、その内静かになった。その瞬間、二人は気が抜けたように座り込んだ。

｢はあ………なんとか、なったみたい…｣
｢うん……さすがにヤバかったね……でも、ここに何時までも居られないよ。連中はきっと嗅ぎ付けてくる筈だから…少し休んでから別の所に移ろう？｣
｢……そうね｣

この地下通路も制限されていない場所。しかも、今隠れている場所は、地下で廊下の突き当たり。追跡者が来てしまえば逃げ場はない。まさに四面楚歌。タケの言う通り、居続けるのは危険だ。
暫く、座り込んでいた二人だが、何かを見つけたのかタケが立ち上がった。向かった先は……冷蔵庫。

｢あ、いいもの見っけ！すっげー冷えてる！｣
｢？タケ？何してるの？｣

ゴソゴソ漁っていたタケが、キノの元に戻り、手にしていた物を差し出した。

｢はい！｣
｢え……缶ジュース？｣

よく冷えたスポーツドリンク。廃墟かと思ったが、電気が通っている所を見ると、何かの事務所のようだ。しかし、

(……これって、犯罪にならないの……？)

なぜなら勝手に黙って、戴いているのだ。泥棒と言われても何も言い訳できない。スポーツドリンクを凝視しながら固まるキノに、タケは笑いながら言う。

｢大丈夫だよ。キノ姉ちゃん。クロ兄ちゃんから聞いてない？この『鬼ごっこ』の最中に、逃走側が利用する施設とか食べ物、日用品とかは統べて主催者が買い占めてるんだよ｣

確か、初めて出会い、集合場所のホテルに行ったとき、クロからちらりと聞いた事を思い出した。

｢あ…そういえばそんな事、言ってたわ…｣
｢だから、黙って飲んでも大丈夫！！｣

そう言うと、タケはプルタブを開け飲みはじめた。暫く考えていたキノも、タケに習い飲みはじめた。



…………………―
……………―
…………―


｢やれやれ…やってられないな……｣

こちらは追跡側の陣地である広場。
テントから出てきた青年、スズは不機嫌オーラを漂わせながら、街に向かい歩きだした。今回の策士は無茶苦茶過ぎる。しかも、他の奴らも今までの鬱憤を晴らすかのように、その非道な策に手を貸し、自分以外誰ひとり咎める者はいない。せめて、クロが居てくれれば……こんなどうしようもなくつまらないこんなゲームの為に、あんな奴らの為にサーチを使いたくない。

スズは決心した。

追跡側を外れる。クロと合流するまでは中立でいて、合流出来たらクロと同じ、逃走側の協力者となればいい。

｢ふう…思い残す事はない。さあ、行くか……｣

スズは振り返る事無く、追跡側の陣地を後にした。


…―その頃のキノ達は…


｢キノ姉ちゃん、クロ兄ちゃんの事どう思ってる？｣
｢ふぐっ！？ゲホッゲホッ！！｣
｢わわっ！！大丈夫！？｣

突然のタケの質問に、咀嚼し飲み込もうとしたあんパンを喉詰まらせたキノは、慌てて背中をさする彼を、軽く睨む。

｢……ちょっと。危うく死ぬ所だったじゃない。変な質問しないで｣
｢ゴメンゴメン！だってキノ姉ちゃん、クロ兄ちゃんといる時は凄く穏やかな顔してるから｣
｢////！？…き、気のせいじゃない？｣
｢そうかなあ…ハナとモモもそう言ってたけど｣
｢！！？………あいつら……っ｣

常にキノの側にいる二人は、些細な変化を感じ取っていたようで…。おそらくタケにあの時の話をしたのだろう。しかも、余計なオプションも付いている模様。
しかしキノは、否定はするものの顔に集まる熱はごまかし切れず、顔を隠すように俯く。
正直、クロは嫌いではない。寧ろ好きな部類だ。だがそれが恋愛感情なのか？と聞かれると、胸を張ってそうだとは言えない。
なぜなら、出会って間もなくお互いを知らない。クロがどんな人生を送り、どんな学生生活を送っているのか。どんな事が好きか嫌いか。付き合った事のある人はいるのか…だとしたら、相手はどんな女性なのか…………考えれば考える程、自分は彼の事を何一つ知らない事を思い知らされてしまう。

｢………クロとは出会ったばかりよ。私はクロを知らないし、きっとクロだって私の事なんてしらない｣

だからそんな事は有り得ないと言うキノに、タケはふーんと呟いた。

｢人を好きになるって大変だよね。……でも、相手の事を全て知らないと安心出来ないの？｣
｢え…？｣

思いがけず大人びたタケの言葉に、キノは思わず顔を上げた。

｢俺さ、思うんだ。人を好きになるのって勢いなんじゃないかなあって｣
｢い……勢い……｣
｢うん。だって一目惚れってあるじゃない？それって一目見た勢いで好きになる事だよね｣
｢………な、何が言いたいの？｣

語り始めたタケをジト目で見て話しを促すキノに、タケはん～と唸り、キノに向き直る。

｢俺も難しい事は分からないけどさ、クロ兄ちゃんはキノ姉ちゃんに一目惚れしたんじゃないかな｣
｢…………はあ？なんで！？｣
｢クロ兄ちゃんを見てれば分かるよ。俺、小さい頃からずっと遊んでもらってたから、よく知ってるんだ。クロ兄ちゃん、今まで『女友達』は一杯いたけど、『彼女』はいなかったんだ。いや、つくらなかった。なんでだと思う？｣
｢？さあ…｣
｢本気で好きになれる人がいなかったから｣
｢…………それと私になんの関係が……｣
｢もう……ここまで言ったら察しようよ！！つまり、クロ兄ちゃんはキノ姉ちゃんに本気なんだよ！！｣
｢え………えぇ/////！？｣

得意げなタケを前に、キノは湯気が立つほど赤面しあんぐりと口を開ける。
まさか、クロが自分を……？
出会った時の事を思いだす。
抱きすくめられた時の温かさやがっしりした体、程よく低く心地好い声。健康的に焼けた肌に整った容姿に、優しげな眼差し……そして、自分の手を包み込む、大きな手。
思い出し、想いを巡らせながら穏やかな微笑みを浮かべるキノは、正に恋する乙女だった。そんな彼女をタケはニコニコしながら見ていた。

とその時、タケがぴくりと反応した。

｢………キノ姉ちゃん、隠れよう｣
｢え？｣
｢……来た｣
｢！！｣

思わず息を止め、耳を澄ませると、コツコツと足音が聞こえ、しかもこちらに向かっている。

｢どうしよう……！！｣
｢キノ姉ちゃん、そこの冷蔵庫の隣の色の違う板、押してみて｣
｢う、うん｣

キノはタケの言う通り、冷蔵庫の横の色が濃い大きな一枚板を押した。


…………ギギギィ…………

｢！こ、これ？｣
｢うん！思った通りだ！これはダクトだよ｣
｢ダ、ダクト？｣
｢要は外に繋がる通路…かな？さ、行こう！｣
｢え、えぇ｣

二人は素早くダクトの中に入って行った。
その直後、間一髪で扉が開き一人の青年が入ってきた。

｢……ここにもいない………か。どこにいるんだか…。合流までに時間がかかりそうだな｣

青年…スズは眼鏡を持ち上げ、逃走側との擦れ違いにため息を吐きつつ部屋から出て行った。

(だが、たった今まで居た形跡はあるな。と、言うことは………まだ近くにいるかもな)

そう考えたスズは、一旦建物から出るため、出口に向かい足早に去って行った。

………キィ………

｢行ったかしら？｣
｢いや、まだその辺にいるかもしれない。もう少しここで時間を潰そう。多分ここには戻って来ないよ｣
｢そ、そう……｣
｢でも、いつまでもいられないかもね。別のグループがここに来る可能性もある。
｢そうね……じゃあ、30分したら脱出しましょう｣


30分後………

二人は部屋を後にした。


……キノとタケが足音の主がスズだったと気付くのは、もう少し後だったりする。


｢……ね？簡単でしょ？｣
｢…………ふん…そんな要求が呑めるか！｣
｢あら、クロに勝ちたいんじゃないの？｣
｢それは………｣
｢あなたはクロに勝ちたい。私はクロを手に入れたい…。目的の人物は一緒でしょう？｣
｢だが、それじゃ……｣
｢ふん。貴方は変わらないわね。意固地で頑固で屁理屈ばかりの全く面白みのない男｣
｢っ！…なんだと？お前こそ悪意の固まりの尻軽女だろう！！｣
｢ふふ……なんとでも。さ、言う通りにしなさいよ？貴方には拒否権はないからね｣
｢てめぇ……｣
｢度重なる失敗に皆貴方を見限ろうとしているのよ？これ以上、惨めになりたいの？｣
｢…………｣
｢まあ、私はクロが手に入れば祭なんかどうでもいいわ。……貴方の事もね｣
｢……そうか。それを聞いて安心した｣
｢？｣
｢俺もクロに勝てば、お前なんかどうなろうが関係ないからな。……たとえ、どんな目に遭おうが俺の知ったこっちゃない｣
｢！？は？何様？あんたいい加減にっ……！！｣
｢………要求は呑んでやる。用件はすんだろ？さっさと消えろ。目障りだ｣
｢……っ！そんな態度取って……どうなったって知らないわよ！？｣
｢消えろ！！｣
｢っっ！！ふ、ふん！！せいぜい足掻く事ね！あんたなんてどんなに頑張ったってクロには敵わないわ！！｣
｢………お前が出て行かないなら俺が出ていく。もう二度と俺の前に姿を見せるな…｣


サイがいなくなり、しんとした室内に取り残されたアヤは、普段は絶対に見せない表情をしていた。

サイが自分を未だに惚れていると思っていたアヤは、自分の言うことならなんでも聞くだろうとタカを括っていた。しかし、当のサイは自分を見限ったのだ。しかも自分を侮辱した。

自らに絶対的な自信を持つ、アヤにとってそれはとてつもない屈辱だった。

｢…覚えていなさい。貴方が誰を敵に回したか、教えてあげるわ…｣


……それは、悪意に満ちた悪鬼の顔。



その悪鬼が動き出すまで

もう少し………



《悪意》END

 ]]>
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		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2015-05-31T22:59:47+09:00</dc:date>
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		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
	<item rdf:about="https://meguru.web.wox.cc/novel13/entry98.html">
		<link>https://meguru.web.wox.cc/novel13/entry98.html</link>
		
				
		<title>始動</title>

		<description>動きだした私達は、どこに行くのだろう………</description>
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			<![CDATA[ 動きだした私達は、どこに行くのだろう……



<div align="center"><font color="#2222FF">逃</font><font color="#116FFF">走</font><font color="#00BBFF">ゲ</font><font color="#116FFF">ー</font><font color="#2222FF">ム</font>
《始動》</div>


…次の日の朝………。

まだ辺りが薄暗い中、キノたちはホテル一階のロビーに集まっていた。
朝の5時を回ろうとしている。鬼ごっこが始まるのは6時だ。あと１時間しかない。


｢取り敢えず、今日の作戦を立てないとな…。キノ、みんなになにか伝えて置きたい事はないか？｣


クロは、隣にいるキノに話し掛ける。キノはと言うと、まだ完全に覚醒しておらず、思考も反応も鈍くクロの問い掛けに｢ん～…｣や｢あ～…｣しか答えられない。

｢おいおい…大丈夫か？｣

クロはキノの頭をわしゃわしゃと撫でる。それを見た一同は驚きを隠せない。あのキノがおとなしく撫でられてるなんて……いつもなら不機嫌丸出しな顔で、手を払いのけるのに。
それを良い変化として捉えるものと、悪い変化として捉えるものに分かれた。

キノとクロのやり取りを、微笑ましく見守っているのはハナとモモ。
対して、不満げな表情を隠そうとせず、憮然しているのはユカだった。

結局、あのあとユカの意見は通らず、クロは逃走側に付くことになった。ハナはなんとかユカを説き伏せようと頑張ってみたのだが、ユカは頑として譲らず、クロを警戒している。
クロが元追跡側……という事も要因の一つだが、何より自分より出会って間もないクロを信用した事がショックだったのだ。お気に入りの玩具を取られたなんて可愛らしい感情ではなく、最愛の恋人を横取りされた…の方がしっくりくるだろう。
そんなユカの心情を察したのか、クロは彼女を刺激しないように自分なりに気を使っているつもりだが……いかんせん、気になる女の子には構ってしまう。それがますますユカの嫉妬を煽る結果になってしまっている事に、クロは心の中で深い溜め息を吐いた。

｢と、とにかくさ！落ち合うところを決めようよ！携帯で連絡取れるかもだけど、あらかじめ決めておいた方が安心でしょ？｣

ユカから発せられるなんとも言えない雰囲気に、耐え切れなくなったハナがキノに提案する。

｢……あ、うん…｣

キノはコクリと頷き、クロを見る。ごく自然な仕草だ。しかし、

｢キノ、あなたリーダーなのよ？いつ裏切るかも分からない人に頼らないで、自分で決めたらどう？｣

ユカはキツイ一言を見舞う。元来プライドが高く、性格も少しキツいユカ。しかもクロに対する不信感とキノを奪われた(と思っている)という感情がプラスされ、不機嫌に拍車がかかっている。
ユカはクロを鋭く睨みつけ、彼がふと視線を合わせると、ふいっと逸らした。

｢ユカ……やめて｣

ようやく覚醒したのか、キノは眉間に僅かにシワを寄せて制止する。ハナとモモもハラハラと見守る。一方のクロは｢やれやれ｣と肩を竦め、携帯を取り出す。

｢ユカ、俺は君に信じてほしいとは思ってない。せめて、普通に接して貰えないか？やりにくいんだよ｣

｢はあ？なんであんたに？冗談じゃないわ！！いつか化けの皮を剥いでやるから！！｣

｢………なあ、君さ。キノをどうしたいんだ？｣

クロは、息巻くユカを真っすぐ見つめ、疑問をぶつけた。それを聞いたユカは一瞬たじろいだようにビクリとしたが、すぐに目つきを鋭くし、クロに言い放つ。

｢あなたに関係ないわ。私とキノの間の事なの、首突っ込むのやめてくれない？迷惑なのよ！！｣

｢ユカ！！！｣

突然のキノの怒声。普段から低いが、さらに低くなり地の底から響いてくるような怒鳴り声だった。
……本気で頭にきているようだ。ユカは息をのみ、ハナとモモ、そしてクロは唖然としていた。そんな空気の中、キノは静かに話し出した。

｢ユカ、いい加減にして。それ以上、クロを邪険にすることは赦さない。あんたが何を企んで、私とクロを引き離そうとしてるのか、全く分からないけど、彼は協力者。仲間なの。それとも、彼に居られると都合の悪い事でもあるの？あんたの独断と偏見、予測で彼を否定しないで｣

キノはそれだけ言うと、｢行きましょ｣と、クロ、ハナとモモに視線を移し、ホテルの出口へ向かった。暫し呆然としていた三人だが、数歩歩いたキノが振り返ると、ハッと我に返りユカをチラリと見てから、キノを追い掛けていった。

残されたユカは、悔しそうな悲しそうな表情を浮かべた。
確かにこんな早くに協力者を迎えられるのは、ある意味奇跡なのかもしれない。しかも相手は追跡側だった人間。向こうの手口もわかりやすい。それにユカだって、クロが悪い人だとは思っていない。しかし、自分が計画している事にかなり狂いが生じてしまう。でもまさかキノがあそこまでクロを信用しているのは、計算外だった。

―キノとの真剣勝負―

これだけは譲れない。クロに、たとえハナやモモにも邪魔はさせない。

｢キノ……あなたを負かすのは私よ……｣


ユカはそうつぶやくと、出口へ向かった。



………―
……―


｢……ちょっと言いすぎた…｣

ホテルから出て、ユカ達とは別行動ということで、キノはトボトボと裏路地を歩いていた。
ユカはなぜあんな攻撃的なのだろうか…。それよりも自分は一体どうしてしまったのか……。クロを攻撃され思わずカチンと来てしまい、とっさに出たあの言葉。言ってしまった言葉は取り消せない。

｢ユカ……悲しそうな顔してたな……｣

いつもニコニコしていて人当たりもよく、友達も多いユカ。そんなユカがクロに敵意を剥き出しにする理由が解らない。協力してくれる人を連れてきた筈なのに……なんだかこちらまでやり切れなくなる。

｢まあ、色々考えても仕方ないわ。とにかく今日も逃げ延びないと……｣

昨日のような目に遭うのはもう御免だ。キノは思考を切替え、細心の注意を払い路地を進んでいった。




………………―
………―

｢…ん？あれは……｣

一方のクロは商店街を進み、情報収集をしていた。辺りを伺いながら歩いていると、見知った顔を見かけた。

｢タケ！｣
｢あ、クロ兄ちゃん！！｣

パタパタと笑顔で駆け寄ってくる黒髪の愛嬌のある少年、タケ。
彼はクロの近所に住んでいる中学生で、小柄な体と身軽さでまるで忍者のようだ。本人は無自覚だが、一応『監査』というポジションを持っている。

｢クロ兄ちゃん、今年も追跡側？｣
｢いや…逃走側の協力者……かな。あっちの若干一名にえらく嫌われてるけど…｣
｢ふーん。クロ兄ちゃんに落ちない女なんているんだ｣
｢俺だって人の子だぜ？万能って訳じゃないよ｣

タケの言葉に苦笑いを返すクロは、ふと辺りを見回し、タケを連れ路地に連れていった。


……………―
………―



｢タケ、追跡側の様子は？｣
｢ん～…相変わらず……かな。スズ兄ちゃんが凄い不機嫌だった｣
｢……やっぱりな……｣

クロはやれやれとため息をつく。彼等は何も変わっていない。自分が居なくなったことで、少しは改善されるかと思ったが……一人残してきたスズに申し訳ない。

｢でも、スズ兄ちゃんも離反を企んでるみたいだし、スズ兄ちゃんまで居なくなったら、あいつらも少しは焦るんじゃない？｣
｢…………だといいけどな…。いや、今はあいつらよりスズが心配だ｣

スズは普段は優しく、あまり感情をあらわにすることがない。だが、一旦キレると今までとは想像出来ないくらい好戦的になる。そうなってしまうと、いくら親友のクロにも抑える事は困難だ。

｢……早めにスズと合流した方がいいかもな…｣

善は急げ。
早めにスズと連絡をとり、合流しなければならない。しかし、

(ユカがなんて言うかだよな……)

自分の時のあの態度からして、あまり自分達元追跡側を良くは思っていないのは分かる。
問題なくスズを迎え入れるには、ユカに信用して貰うしかない。

(とはいえ…信じなくてもいいなんて言っちまったしなあ…)

今朝、ユカの言葉にカチンときて言ってしまった言葉。

(俺も大人げ無かったしな。ここは素直に謝って……)
｢クロ兄ちゃん｣
(この際、土下座でもするか…)
｢クロ兄ちゃん！！｣
｢！！あ、なに？｣
｢も～…クロ兄ちゃん、これからどうするの？｣
｢これから？ああ、少し情報収集しないとだし、商店街うろつく｣
｢ふーん｣

今は何より情報が欲しい。でなければ動こうにも動けない。幸い今は、自分が逃走側に回った事を知っている者はスズとタケだけだ。…だがいずれバレる。自由に行動出来る今がチャンスだ。と、何かを閃いたクロ。

｢おい、タケ｣
｢ん？何？クロ兄ちゃん｣
｢俺と一緒に来るか？｣
｢え？いいの？｣
｢ああ｣

タケは『監査』だ。もうすぐ自分は堂々と動けなくなる。でも、監査を味方に着ければ情報収集に困る事はない。
それにタケは新参者。追跡側で認識している者は少ない。さらに言えば、昨日逃走側と一度関わっている。ユカは難しくても、ハナやモモの信頼を得やすい。

｢やった！！クロ兄ちゃんと祭だ！！これからよろしくなクロ兄ちゃん！！｣
｢ああ、よろしく頼むぜ！さてと、情報収集に行きますかね｣
｢おー！｣

元気にハイテンションなタケを連れ、クロ再び商店街に向かった。


―一方のハナ達はというと…


地下街にいた。しかし、そこにはハナとモモしかおらず、ユカとは別行動だった。

｢本当にここに居れば安全なの？｣
｢うん。だってクロさんが、ここには追跡側は入れないって言ってたし…｣

今朝、ホテルで別れるとき、追跡側の出没パターンや潜伏場所、立ち入れない場所などを教えて貰っていた。その中の地下街は、よく買い物に行った場所だったため、取りあえずここで身を隠す事にしたのだ。

｢……ユカ、なんでクロさんにあんなに冷たいのかな…｣

モモは今朝の出来事を思い返していた。
モモ自身、実を言えばユカが苦手だ。嫌いではなく苦手。社交的で、グイグイ入ってくるユカとは全く真逆のキノと、幼い頃から一緒だったせいもある。(ハナもユカと同じタイプだが、産まれた時から一緒だったため気にならない)
全般的に人見知りの激しいモモにとって自分の領域(テリトリー)に赤の他人が入る事は恐怖なのだ。しかし、クロは平気だったのだ。自分でも解らない。

｢クロさん、悪い人じゃないのに…ね｣
｢うん。モモがそんな事言うなんて珍しいよね（笑）｣
｢う……；だって…キノが信じた人だし｣

キノがクロを連れてきた時はかなり驚いたが、あの無関心なキノが興味を持ち、信頼しているのであればと二人は受け入れたのだ。
話をしてみると、クロは気さくで暖かい。何よりも安心感があった。でもユカは拒絶した。一体何が気に食わなかったのか。それを二人が知るよしもない。

｢…最近ユカ、おかしかったもんね。なんかキノにやたら突っ掛かるし。昨日だってすごくギスギスしてたし｣
｢お祭り、何事もなく終わるといいけど｣
｢うん……そうあって欲しいよ……｣

祭直前から豹変したユカ。慣れない事を押し付けられたキノ。合流して早々ユカに敵意を剥き出しにされたクロ。
問題がありすぎて、幸先悪い事は必須だろう。

｢なんとかならないかなあ……｣

ハナは薄暗い地下街の天井を仰ぎ呟いた。


………………―
………―


｢………早かったわね｣
｢悪いな。で？いつ頃にする？｣
｢………いつでもいい…と言いたいところだけど、もう少し時間が欲しいわ。あの子、まだその気になってないし…｣
｢やれやれ……随分と手の掛かる親友だな｣
｢……今は好敵手(ライバル)よ……｣
｢くく……そうだったな……そんなに勝ちたいか？｣
｢もちろんよ！あの時の屈辱、晴らさないと気が済まないわ！！｣
｢そうムキになるなよ。安心しな。舞台はちゃんと整えてやるよ｣
｢頼むわ｣
｢じゃ…その時が来たら連絡しな｣
｢ええ……また……｣
｢待ってるぜ………｣




<div style="text-align:center" align="center"><font size="3" color="#FF0000">ユカ</font></div>



………―
……―


｢…よし、大丈夫そう…｣

キノは商店街に居た。
しばらく裏路地をさ迷っていたが、何人か追跡者がおり、回避している内に商店街に行くしかなくなっていた。裏路地なら比較的安全かと思ったが………ユカが言っていたようにそう簡単には行かない。

｢………もう走るのはコリゴリだわ。なるべく人のいない方に………あれ、ユカ？｣

キノが用心しながら辺りを見回した時、大通りを挟んだ反対側の路地からユカが出てきた。ユカはそのまま駅前の方向に歩いて行った。と、その時、ユカが出て行った路地から、真っ赤な長髪でゴツいサングラスを掛けた背の高い男が出てきた。

(…………誰？…)

普通に考えれば、たまたま同じ路地から出てきただけと思うのだが、この時キノは何か悪寒がした。


―あいつに見つかったらヤバい…―


あの男の雰囲気が、キノの頭に警鐘を鳴らす。
なんだかよく説明出来ないが、決して善人ではない。獲物が掛かるのをジッと待つ肉食動物のようだ。

｢…ユカ、大丈夫だったのかしら……｣

合流してから聞いてみるかと踵を返す。
ふと空を見れば、夕闇が迫っている。終了時間はまだ先だ。

キノは人目を避けつつ、もう一つの逃走区域、公民館に急いだ。





………………―
……………―
…………―



深夜。
すっかり寝静まった。
キノ達はまた同じホテル集合し、情報交換をしていた。

｢と、言う訳で監査を連れて来たんだ｣

クロは隣にいる少年、タケを紹介する。

｢僕はタケ。よろしく！｣
｢君もこっちに来たんだね｣
｢うん！クロ兄ちゃんに誘われたんだ｣
｢よろしくね…｣
｢うん。よろしく！｣

タケはハナとモモとはすでに意気投合したのか、楽しそうに話している。
クロはその様子を見て安堵した。と、ふと回りを見回す。

｢あれ？ユカは？｣
｢いない。まだ帰ってないのかしら…｣

不機嫌オーラを振り撒き、憮然としているユカが見当たらない。
キノはふと、夕方に見た光景を思い出した。
突然路地から現れたユカを追うように現れた、あの男。
まさか、ユカは捕まってしまったのでは……？
祭二日目で一人捕まるなんて………。キノがそんな事を考えていると、


―バタン…―


部屋の扉が開き、ユカが入ってきた。

｢ユカ！お帰り！！｣
｢ただいま。あら？その子誰？｣

ハナに笑顔で返事をし、ふとタケに目が行ったユカは、誰とも無しに聞いた。

｢あ、ああ……俺が連れてきた…わ、悪いなまた勝手な事して｣

決まり悪そうに頭を掻きながらいうクロ。
そこにいる全員(タケは除く)が、修羅場を覚悟した。が、

｢そう……協力者を連れてきてくれたのね。ありがとう｣

ユカは微笑み、クロにお礼を言ったのだ。

｢は？………ああ、どういたしまして……｣

クロは呆気に取られ暫し固まったが、なんとかそれだけ言うと、キノを見た。
キノも少し目を見開き驚いていた。
昨日のあれは何だったのか………。
女心は秋の空………とはこのことだ。

｢私はユカよ。君、名前は？｣
｢タケっていうんだ。よろしく！ユカ姉ちゃん｣
｢ふふ……よろしくね｣

ユカは笑顔でタケと会話をしている。本来なら嬉しいはずだが、何故か不安になってくる。

｢なあ、どうなってんだ？｣
｢さあ……私にもよく分からないわ｣
｢二人とも！ブツブツ言ってないでこっちに来て。情報交換、するんでしょ？｣
｢え……うん｣
｢お、おう｣

小声で話すクロとキノを見、集まるようにと呼ぶ。
二人は慌てて頷き、皆の方へ向かう。


………………―
…………―

｢………という感じよ。追跡側はそろそろ本気を出してくるかもしれないわ｣

ユカは駅前の様子を報告した。聞くところによると、かなりの人数が居たらしい。キノがあの時見かけたユカは、駅前の偵察にいっただけだったようだ。少しホッとしたキノ。

｢私達は地下街に行ってきたの。安全だって事は間違いないみたい。誰も来なかったよ｣

ハナも昼間の報告をした。あのあと、地下街から公園に行ってみたら、やはり追跡者がわんさかいたらしい。

｢公民館は無人だった。後、浅川旅館も安全だわ。でも、そろそろこのホテルの周辺は危ないかもね。入るとき何人か見たわ｣

このホテルは逃走者の拠点とされているが、規制されていないので、いつ追跡者に乗り込まれるか分からない。早めに移動しなければ危険だろう。

｢じゃあ、明日は別の宿泊施設に集合しよう。たしか…浅川旅館はまだ安全だよな。一先ずそこにするか｣
｢そうね｣
｢うん、そうしよう｣

皆がクロの意見に同意し、明日の出発時間を確認してから解散となった。

｢……ユカ、ちょっと…｣
｢？なに？キノ｣
｢いいから…｣

キノはユカを呼び止め、自分の部屋に連れていった。部屋の前まで来ると回りを見回し、誰もいない事を確認すると、ユカの手を引き部屋に入る。

｢なに？本当に……｣
｢ユカ、あの男誰？｣
｢え…？｣
｢赤髪の長髪で、サングラスを掛けたヒョロリとした…｣

ぴくりとユカが反応する。しかし、

｢…さあ、知らないわ｣
｢本当？｣
｢私を疑ってるの？知らないわ、本当に｣

ふぅ…と息を吐き、笑顔で否定するユカに、キノはそれ以上は聞けなかった。

｢そう、ならいいわ……悪かったわね｣
｢いいわよ別に。じゃ、明日ね｣

ユカは手を振ると部屋を出ていく。


―知らないわ―


キノは完全にその言葉を信じた訳ではなかった。
ユカは何かを隠している………そんな気がする。



そのキノの予感が的中するのは、ずっと先の話だ。


<div style="text-align:center" align="center">二日目
《始動》
END</div>

 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2015-05-31T22:58:01+09:00</dc:date>
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		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
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	<item rdf:about="https://meguru.web.wox.cc/novel13/entry97.html">
		<link>https://meguru.web.wox.cc/novel13/entry97.html</link>
		
				
		<title>開幕</title>

		<description>いよいよ祭が始まった。

さあ……


…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ いよいよ祭が始まった。

<div align="center">さあ……


<font size="3">開幕だ！</font></div>

<div align="center"><font color="#2222FF">逃</font><font color="#116FFF">走</font><font color="#00BBFF">ゲ</font><font color="#116FFF">ー</font><font color="#2222FF">ム</font>
《開幕》</div>



―8/1…祭当日。キノは、最低限の荷物を鞄に詰め、家を後にした。
まだ夜明け前なので外は薄暗い。祭の開始時間はAM6：00。それまでに集合場所に行かなければならないのだ。
原則として祭中、我が家には入れない。(警備が着くらしい)忘れ物がないか入念にチェックし、キノは鞄を肩に掛ける。家族は昨日の内に、祖母の家に行った。
誰もいないシーンと静まり返った我が家を一瞥し、キノは集合場所に向かい歩いて行った。


………―


｢あ、キノ！！キノ！！こっちこっち！！｣


集合場所である、市民公園に着くと、キノを見つけたハナが、ブンブン両手を振りながら飛び跳ねていた。ハナの近くにはモモとユカもいる。二人もキノがちゃんと来た事に安堵しているようだった。


｢おはようキノ｣

｢……おはよ…｣

｢良かった……逃げられたらどうしようかと思ったわ｣

｢………｣

｢ねぇ……キノ、自信の程は？｣

｢……ノーコメント…｣

｢そう……ま、頑張りましょ。お互い……｣

｢……………｣


キノは、ユカと言葉を交わしながら、彼女の雰囲気に違和感を覚える。うまく言えないが、なんだかいつもより攻撃的というか、挑発的というか……。
そんな事を考えていると、ハナとモモが二人に近寄ってきた。


｢二人とも……どうかした？｣


キノとユカの異様な雰囲気に、ハナが心配そうに声を掛ける。モモも考えていることは同じようで、ハナの後ろに隠れるようにして、様子を伺っている。


｢ふふ…なんでもないわよ。あ、私、受付済ませてくるわね｣ 


ユカはハナとモモにニコリと笑いかけると、キノをチラリと見てから受付けに向かって歩いていった。


｢…キノ、喧嘩でもした？｣

佇み、ユカの後ろ姿を見つめていたキノに、ハナが声を掛ける。


｢……別に。いつもあんな感じでしょ……｣

｢で、でもさ……｣

｢ほら、私たちもいくよ｣

｢………うん｣


ハナはなんとも言えない顔で、キノの後ろ姿を見つめる。
……じつは、ハナはだいぶ前から、ユカのキノに対する態度が変わったのに気付いていた。最初は喧嘩でもしてるのかと、軽く考えていたが、祭が近づくにつれ、その違和感は大きくなっていった。……そして見てしまったのだ。昨日、打ち合わせの時に、キノを凍るような目で見つめていたユカを………。見てしまったものの、いくらハナと言えど空気は読める。その場では何も言えなかった。


｢大丈夫なのかな…祭…｣


ポソリと呟くハナ。その後ろでモモが呟いた。


｢ユカ……なんだか怖い……｣


モモの呟きにハナは何も言えず黙り込み、モモの手を握りキノの後を小走りに追った。


この時感じた違和感が形となって現れるのは、ずっと後の事だった………。




―一方、追跡側が集まる中央広場―


逃走側が4人に対し、かなりの人数がひしめきあっている。ざっと100人は居るだろうか。つまりキノ達は、この100人から一ヶ月逃げ延びなければならないのだ。毎年、勝利を納めてきたのは追跡側。今年もそうなるだろうと、ここにいる誰もが予想していた…のだが、


｢はあ？クロがこっちに来ない？どういうことだよ！！｣

｢さあ、俺にも詳しくは……。でも、あいつの事だから何か考えがあっての事だろう…｣


突然、大声を上げた男に対して、長い髪を緩く纏めた、穏やかな雰囲気を醸し出す青年が、事もなげに答える。彼はスズ。祭の常連で、毎年追跡側に参加している。


｢ちっ！！『策士』がいなけりゃ負けちまうかもしれねぇじゃねぇか！！なんで無理にでも引っ張って来ねぇんだよ！！｣

先ほどの男が、イライラしたように、スズをなじる。しかし、スズは涼しい顔で交わす。


｢少しは自分でなんとかしようとしてみたらどうだ？いつまでも、クロにおんぶに抱っこじゃ、あいつだって嫌になるさ……｣


クロ……スズの親友で、同じく祭の常連。高い身長、かなりガッシリした体つき、甘いマスク……おまけに人当たりがよく人気者。しかし、彼の目下の興味は異性ではなく『祭』。毎年、逃走側の心理の裏の裏をかき、確実に追い詰める作戦を考じることから『策士』と言われている。最初こそ彼は『祭』に参加することを楽しんでいた。追跡側になっていたのは、自分の今まで培ってきた知識を試したいが故。しかし、ふと周りを見回してみれば、勝利に固執し、逃走側をいたぶる事を楽しんでいる者ばかり。しかもクロにすべてを押し付け、自分達はすき放題にしていた。逃走側が毎年、大怪我をしているのは、捕縛したあとに仲間の居場所を吐かせるため、拷問と称したリンチをしていたからなのだ。純粋に『祭』を楽しんでいた彼が、それを知り、呆れ果てやる気をなくすのは、当然だった。

｢あんたたちが、考えを改めない限り、戻ってこないさ……あいつは｣

｢はあ？なに訳分かんねぇ事言ってやがる！！敗者が勝者に服従するのは当然だろう？｣

スズの胸倉を掴み、凄みを効かせる男。しかし、スズはしばらく冷たく見つめた後、ふと視線を反らした。

｢………ムリそうだな……。諦めろ…｣


それだけ言うと、男の手を振りほどき、背を向ける。そして、なにやら後ろで喚いている男を無視し、受け付けに向かい歩いていく。


『スズ、俺、今年は追跡側外れるよ』

『クロ？……そうか。お前が決めたのなら何も言えない。てことは、逃走側に行くのか？』

『いや、逃走側はもう決まってるらしいから、中立としてゲームに参加するよ。逃走側にも興味あるしね。……スズ、お前はどうする？』

『俺は例年通り、追跡側に付くよ。今年は離反が可能みたいだから、様子をみながら楽しむさ』

『そ、か……じゃ、お互い楽しもうぜ！』

『ああ…』


スズは、昨日のクロとの会話を思い出す。噂によると、逃走側は女子高生4人。もしかしたら、クロはそのことを知って中立になったのかもしれない。あいつらの事、もし捕縛されでもしたら、何をされるか分からない。だからと言って手を抜くような事は、クロの性格上ムリ。自分が外れれば、短期間で勝つことは困難になり、あいつらもイライラしてくる。短気な奴らが何か行動を起こせば、失脚させる事が可能だ。


｢さすが『策士』といったところだな…』


スズはふっと笑い、受け付けへ向かう足を早めた。



……‐―


キノ達は受付けを済ませ、簡単な検診を受けてから、係員から細かい説明を受けた。大体が、ユカから聞いた通りだったが、一つだけ初耳な事があった。


｢リーダーを決めろ？以前はなかったですよね？｣


ユカが不思議そうに係員に尋ねる。係員は頷き、続けた。


｢リーダーシップを取れる人はやはり必要かと思いまして。ちなみにリーダーはチームすべての運命を背負っている事になりますから、慎重に決めてくださいね。祭が始まってからは、変更は出来ませんので、悪しからず。では、開始10分前までに決めてください｣


係員はそれだけ言うと、受付のテントに戻って行った。一方キノ達は、予想外の事に呆然としていた。ハナとモモはそっとキノとユカの様子を伺う。
キノは、何を考えているのか、いないのか係員が消えたテントを眺めていた。そしてユカは…顎に手を添えて思い耽っていたようだが、しばらくしてチラリとキノを見る。そして、真っ直ぐキノを見据え言った。


｢キノ、あなたがリーダーをやって｣

｢はあ？なんで私が…｣

｢たまには積極的に参加しなさいよ。あなたが考えているほど、簡単じゃないの。無気力無関心でどうにかなるような甘いゲームじゃないんだから｣

｢………｣


ユカに耳が痛くなる台詞を言われ、キノは顔をしかめ黙り込む。キノ自身、出来るなら参加したくなかった訳なのだから、責任重大なリーダーなど絶対にやりたくないのだ。しかも団体行動は苦手、ましてや先頭に立って皆を引っ張るなんて……どう考えても無理だ。その事はユカも理解しているはずだ。なのに何故…。重い空気に耐え切れなくなったハナがユカに話し掛ける。


｢ユ、ユカ。キノには無理なんじゃない？ユカだってキノがどんな性格か分かってるはずじゃない。ユカがやったほうが……｣

｢ダメよ。私は出来ない。キノじゃなければ意味がないの……。もう、今までみたいに逃がさないわよ。いい加減、その性格直したら？まるで拗ねた子供みたいね、キノ｣


いつもに増してキツイユカに、キノは珍しく動揺する。


｢……ユカ……？｣

｢それともまた逃げる気？あの時みたいに……｣

｢！！！………分かった。やればいいんでしょ……｣


キノはユカにそう言うと、受付のテントに歩いて行く。…ハナとモモは二人のやり取りに疑問を持った。まず、なぜキノじゃなければダメなのか……。そしてユカが言った『あの時』とはなんなのか。確かに険悪になった状況は結構あった。(正に今がそうであるが…)そして、それを聞いたキノの反応。…一体、二人の間に何があったのだろう。


…この時のハナとモモには知る善しもなかった…。


……‐―

受付に向かうキノの後ろ姿を見送り、ふと『言い過ぎたかな…』と思い、溜め息を吐く。でも、後悔も反省もしていない。こうでもしなければ、あの腰の重いキノを動かせない。


(いいのよね……これで)


ふと後ろから視線を感じ、チラリと見ると、何とも言えない複雑な顔をしたハナと少し怯えた顔をしたモモ。ユカは苦笑いする。元々、この二人はキノが居るから自分のそばにいたようなものだ。特にハナはキノをとても慕っている。彼女を突き放すユカを良くは思わないだろう。


(嫌われちゃったかな…)


祭の最中に仲間割れは致命的だ。でも自分で決めた事、今更変える気はない。キノに勝つまでは……。





…ユカがキノにここまで対抗意識を持つのには理由があった。



―そう、あれは小学校3年生の時……―




<font color="#DDA0DD">二人が初めて出会ったのは、小学校3年生の時だ。当時、この町に引っ越して来たばかりのユカは、内気な性格故にまだ友達も出来ず一人でいる事が多かった。遊びに誘われることも、ましてや誘う勇気もなく、教室で一人机につき、本を読んでいる毎日が続いた。

そんなある日の事だった。

ユカは一人の生徒が気になり始める。いつも寝てばかりで、目が開いているところなんて、数えるくらいしか見たことがない。親しい友達もいるのかいないのか……。無気力で若干世捨て人っぽい雰囲気を醸し出す少女……キノである。彼女を慕う者も少なくなく、まず、彼女が嫌いだという話は聞いた事がない。
最初はただ観察しているだけだったが、新学期の席替えで席が近くなったのをきっかけに、話し掛けてみた。


｢ねぇ、キノちゃん…でいいのよね？私はユカ。これから宜しくね｣


突っ伏しているキノに近づき声を掛けてみると、キノの体がピクリと揺れ、ムクリと起き上がる。まるでアリクイかナマケモノの動きに似ている……とユカは思った。俯き加減だった顔をユカに向けながら、目を開くキノに、ユカは何故かドキリとした。……綺麗な目だ。もっと死んだ魚の目みたいだろうという先入観が働いていたため、予想外の展開に言葉に詰まった。


｢……ふぅん……よろしく……｣


10歳にも満たない少女にしてはハスキーな声。ユカは少し分かった気がした。周りに人が集まるのは、おそらくこの人畜無害的な雰囲気と不思議な魅力。(この表現が正しいかどうかは謎だが)あまり人の細部までは知りたがらない、程々に距離をとるような付き合い方。キノはこの年齢で、すでにそんな人間関係を確立させていたのである。


｢なに？……他に何か用？｣


そんな事を考えているユカにキノは頬杖をつきながら欠伸混じりに言う。それを聞いたユカは慌てて返事をする。


｢あ、えっと。友達になって欲しいなって……｣


言ってしまった後で、しまった！と思った。とっさに言ってしまったとはいえ、今日初めて言葉を交わした仲で、いきなり『友達になって』は重たいだろう。ふと様子を伺うと、キノは真っ直ぐユカを見たまま、何も言おうとしない…。
目を合わせたまま、重い沈黙が流れる……。正直、この間は堪える。


(……お願い！何か言ってよ！！)


ユカは目を逸らせないまま、心の中でキノに訴える。……すると、


｢いいよ。別に………｣


と言い………少し笑った。
てっきり断られると覚悟していたユカは、一匹狼なキノの意外な台詞(笑顔のオプション付き)に暫し固まった。しかしすぐに笑顔になる。


｢よろしくね。キノ！！｣





これが二人の出会いだった。</font>



<font color="#DDA0DD">それからその関係は、中学校に上がっても続いていた。ユカはキノを親友だと思っていた。相変わらず、無愛想で無関心で無気力。それは、ユカに対してもクラスメート達に対しても変わらなかった。でも一つだけ、幼なじみの双子さえ、見たことがない、ユカにしか見せないものがあった。

―笑顔―

口角を少し上げるだけの笑顔だが、その顔を見られるのは自分だけ。それが嬉しかった。


ずっとこの穏やかな関係は続いていくのだと、ユカは思っていた。


ところが、ある些細な事で、その関係が形を変えた。


中学校に入って初めての中間試験。ユカは張り切っていた。授業は真面目に受けていたし、試験勉強だってコツコツやってきた。


(トップを狙えるかもしれない！)


ユカは自信満々で試験に臨んだ。


……結果、学年2位だった。


学年トップは………なんとキノだった。



ユカは自信があっただけに納得がいかなかった。なぜなら、キノは授業中は常に居眠り。授業が終わってから一旦目を覚まし、ユカのノートを写す。そしてまた寝る……を繰り返していた。ハナに聞いてみたのだが、どうやら試験勉強は全くしていないらしい。


なんで？どうして？私はこんなに努力してるのに。


勉強だけじゃない。運動も人間関係も教師からの信頼も、すべてキノがさらっていった。

この瞬間から、ユカはキノに対して強い劣等感を感じ始めた。


―勝ちたい、どんな事でもいいから、キノを追い越したい！！―


そして、期末試験になった。ユカは、またしっかり準備し臨んだ。

……しかし試験当日、キノは欠席した。風邪らしいが、ユカは信じられなかった。少なくとも昨日までは元気そうだった。


(……まさか、ボイコット？)


あまり疑いたくはないが、もしそうならば、何故だろうか。寝過ごした？……いや、いつもギリギリではあるが登校しているのに。
疑いはじめたらキリがない。どんどん深みにはまっていく……。


…ユカがキノが欠席した理由を聞いたのは、試験休みが終わった後だった。



その日、キノは補習のため居残り。ユカはハナとモモと一緒に帰路に着いていた。……ハナなら何か知ってるかもしれない……。
そう考えたユカは思いきってハナに聞いてみた。


｢ねぇ、ハナ。キノ、試験当日になんで休んだの？｣

｢え？……あ、ああ。風邪だよ｣

｢嘘………本当は違うんでしょ？｣

｢…………ユカ｣

｢教えてよ！なんで休んだのよ！｣

｢お、落ち着いてユカ！！分かったよ……実はね…｣


すべてを聞いたユカは愕然とした。やはりキノは試験をボイコットしたのだ。
そして理由は………ユカだった。
勘のいいキノは、ユカが自分に対抗意識を持っている事に気づいていた。面倒事が大嫌いなキノは、ユカを学年トップにする事で、回避しようとしたらしい。……ユカは沸々と怒りが湧いてきた。


(……私馬鹿にされたの？キノ、あなたは私を見下してるの？)


プライドが人一倍高いユカは、怒りに体を震わせながら、来た道を走った。後ろから、ハナが何か言っているが、今のユカの耳には入らなかった。



そんな事態になっているなど露知らず、キノは補習を終え帰宅準備をしていた。…と突然、

<font size="3">ガラガラッ</font>

キノは開いた扉の方を見て、軽く目を見開く。……そこには帰ったはずのユカが居たからだ。ユカはツカツカとキノに近づき、


<font size="3">バチーン…</font>


キノに平手を見舞った。キノは少しよろけたが、体制を立て直し、打たれた頬を抑えもせず、ユカを見つめる。どうしたなんてマヌケな言葉を言うつもりはない。ユカの怒りに満ちた表情を見て、キノはすべてを悟った。そしてこう言った。

｢ユカ…私は弁解する気はない。私に勝ちたいんでしょ？………勝てて良かったじゃない｣

｢馬鹿にしないでよ！！私が喜ぶと思った？なんで逃げるのよ！意気地無し！｣

｢！！……逃げる？意気地無し？どういう……｣

｢私に勝つ自信がないんでしょ？だから逃げたんでしょ？キノ！！｣

｢…っ！！ユカ…｣

｢最低……卑怯者！！｣

｢…………｣

｢でも、絶対に離れないから。あなたは私の唯一のライバルであり親友なんだから……｣

｢！……そ。勝手にしたら？私は別にどうでもいい……｣

｢分かった。じゃあ勝手にする……｣



――‐…</font>




キノは親友……それは今も変わらない。しかし同時に倒したい好敵手にもなった。だから、この祭で決着を付けたい。まず下準備として、キノにやる気になって貰わなくてはならなかった。だから挑発し、リーダーにしたのだ。


｢勝負よ、キノ。絶対に逃がさない…『あの時』みたいに……｣




―しかし、ユカはこの行動を後に後悔することになる。それは、ずっと後の話……―



《クロSide》

｢今日もいい天気になりそうだ｣


街外れの小高い丘にある公園にあるベンチで、愛用のヘッドフォンでお気に入りの曲を聴きながら、空を見上げる青年……クロ。
夏の明け方の風を体に受け、髪を掻き上げると腕時計を見た。


｢そろそろか…。スズの奴、上手いこと言ってくれたかな……｣


毎年、楽しみにしていた祭。正直、今年だっていつも通り参加したかった。しかし、知ってしまったのだ。……逃走側の事を。

今年の逃走側は女子高生と聞いた。しかも祭は初心者。あまりにいろいろと危険だ。追跡側は大半があまり善人とは言い難い奴らが多い。もし、捕縛されてしまったら……とても口では言えない展開になる事は明白だった。ましてや自分がその手伝いをするなんて御免被りたい。

良かったのだ、これで。追跡側や逃走側でなくても祭に参加は出来る。なんとか早い段階で、逃走側と接触した方がいいだろう。もし協力を断られても、警告やアドバイスぐらいは出来る。


……祭の開始を知らせるサイレンが鳴り響く。クロは一度思い切り伸びをし、ヘッドフォンを外し首に掛けた。


｢さて……、お姫様達に会いに行くとしようか｣


まだ見ぬ少女達を案じながら、街の方に歩きだした。


《逃走側Side》

｢いよいよね。キノ｣


サイレンを聞きながら、ユカは隣に居るキノを見る。キノは前を見据えたまま、何も言わず歩き出す。慌てたように、ハナとモモも後を追う。ユカは三人の後ろ姿を見つめ、自分もゆっくりと歩き出した。
先程の件でかなり空気が悪く、キノはおろかハナとモモとも気まずい雰囲気になってしまい、ユカは小さくため息をついた。でも、後悔はしていない。あの計画を実行するその時までの辛抱だ。こんどこそ実力でキノに勝ちたい。ユカを突き動かしているのはその思いだけだった。


｢キノ……さっきの言葉、取り消す気はないわ。あなたにだけは負けたくないの……絶対に！！｣


まるで自分に言い聞かせるように呟くと、ユカは決意を固めた目でキノ達の方を見た。


日が昇り、広がる澄み渡る青空に響き渡るサイレンを背に、逃走チームは動き始めた。これから一ヶ月間の逃走劇で、何がどう変わりどういう結末になるのかは、神様しか知らない。



《追跡側Side》


｢…始まったな。さて、俺も出るとしようか｣


サイレンと同時に、ワラワラと動き出した連中を横目に、スズ立ち上がる。
今年も追跡側として参加はするが、ずっと居続ける気はない。状況を見て離反する気だ。まずはクロを探し合流する。きっとクロの事、まずは逃走側の少女達に接触しようとするはずだ。長年の付き合いだ、彼の思考は大体把握している。クロが傍に居れば、きっと、いや絶対に安心だ。なぜなら、クロは今まで追跡側で参加していたのだ。連中の行動パターンやテリトリーなど全て知っているのだ。よっぽどの事がない限り、捕まる事はないだろう。後は、機を見て自分が離反し、クロ達と合流すればいい。


｢クロ……必ず彼女達を守るんだ。俺も近い内にそっちに加勢する。待っててくれよ…｣


スズは素早く、クロにメールを打つと《サーチ》と呼ばれるレーダーを腕に括り付け、舞台となる街に向かう。機械いじりが趣味のスズは、《サーチ》と呼ばれる機械を扱うため『技巧師』と呼ばれている。追跡側は毎年、『策士』のクロと『技巧師』のスズのおかげで勝つことが出来た。しかし、今年はクロは外れ、スズも離反を計画している。クロとスズが追跡側を外れれば、違う結果をもたらすことになるだろう。それくらい、二人の実力は高いのだ。


｢これ以上、連中の好き勝手を許すわけにはいかないからな。変えてみせるさ………な、クロ……｣


スズは眼鏡をクイッと持ち上げると、友に呼びかける。その声が早朝の少し涼しい風に乗り、今は遠い友に届く事を願って………。


「はあ…はあ…」


キノは走っていた。理由は言わずもがな、追われているからだ。
運動神経はいいほうだが、日頃授業も体育祭もサボっていたキノ。しかも部活は帰宅部で、運動とまったく縁のない生活を送っていただけに、まさか今になって全力疾走するハメになるとは思わなかった。


「しくじった…」


最初は傍にいたモモ達も、散り散りになってしまい、現在キノは孤立状態。背後からは数人の若い男女が迫っており、進行方向に追跡者がいないのが、せめてもの救いだった。撒こうにも一本道で、ただただ前に走り続けるしかない。
しばらく走り続けたその時、前方に曲がり角を発見し、勢いよく飛び込むようにまがる。だが、


「……………！！」


キノは愕然とした。前には小綺麗なアパートが両側に隣接しており、その先は…………


「い、行き止まり…」


走る事を忘れ、立ち尽くすキノ。背後からバタバタと足音がする。
絶体絶命……。キノは植え込みに力無く座り込む。
と、その時、


グイ！

「！！」


何者かに腕を捕まれ、植え込みの中へ引っ張り込まれる。逃れようともがいていると、背後にいる者に抱きしめられる。


「静かに…。見つかるよ」

キノの耳元で囁く声が。心地好い低いテノール。キノは何故か、その声に従いもがくのをやめる。
しばらくすると数人の足音が、キノが隠れている植え込みのすぐ前を走り抜けていった。


しかし、通り過ぎてもがっちりとホールドされたまま離してくれない。不思議に思い、少し首を回し背後の人物を見る。


若い青年と目があった。少し日に焼けた肌と、赤いメッシュが所々入った、黒い短髪。ひどく整った顔がキノの顔を見つめている。しかもどアップで。その瞬間キノは今の自分の状況を理解し、ふたたびもがきだす。しかし、がっしりした腕は、緩む事無くキノを抱きしめたまま。痺れを切らしたキノは、後ろの青年を見て呟く。


「ちょ…離して…」


しかし返ってきた答えは、


「やだ」


それを聞いたキノは、腕を振りほどこうとするものの、逆にさらにギュッと抱き着かれる。そして、さらに密着した青年は再びキノの耳元で囁く。


「まだダメだよ。忘れたのか？この先は行き止まりだ。じきにあいつらが戻って来る。今出ていったら確実に捕まるぜ。だからもう少し我慢…な？」

「っ………分かった…」


青年の言う通り、今出ていけば捕まる事は確実。キノは再び大人しくなった。すると少ししてから、またバタバタと足音が通り過ぎた。…大通りのほうに向かったようだ。逃げ切れた…とキノは詰めていた息を吐いた。同時に腕の力も緩まると、キノは思い出したように青年の手から逃れる。そして植え込みから這い出ると、自分を見つめている青年を一瞥して一言、


「…ありがと…」


と言い目を反らす。先ほどの状況を思い出し落ち着かない。異性に抱きしめられるなんて経験のないキノ。どういう顔をして、彼を見たらいいのか分からない。顔に熱が集まり、相手を直視出来ない。
すると、青年はキノを見つめたままフッと笑うと、


「あんたかキノか。確か逃走側の大将だったよな。俺はクロ。中立って立場だ」

よろしくと出された手を、キノは遠慮がちに握る。自分でもビックリだ。初対面の、しかも男に握手を求められ、嫌悪感を感じない自分。もしかしたら、彼…クロの飾り気のない、優しい雰囲気がそうさせるのかもしれなかった。握手を交わし、少しキノが落ち着いたところで、クロは話を切り出した。


「キノは『祭』は初めてなんだろ？色々決まり事とかあるけど、知ってるか？」

「あ、うん。大体はユカに聞いたから」


「ユカ？」


「私の……親友……？」


「な、なんで疑問形？もしかして、同じ逃走側なのか？」


「うん…」


「ふーん…」


クロは視線を落とし、何か考えるそぶりをした後、またキノを見た。


「なあ、あんたの仲間にしてくれないか？」


「は？な、なんで？」


「あんた素人なんだろ？俺は何度も参加してるし、色々知ってる奴が傍にいたほうが何かと便利だろ？だから……それに俺、あんたを支えたいんだ。迷惑か？」



キノは呆気にとられた表情でクロを見る。聞き方によれば口説き文句にも聞こえなくもない台詞を受け、キノは考える。
確かに、クロの言い分は最もだ。自分は今年初めて参加したズブの素人。いくらユカが詳しいとしても、彼女だって参加は初めてだ。それにユカの情報が、すべてとは限らない。マニュアル通りには行かない、そんなゲームなのだ、これは。ここはクロを仲間に迎えたほうがいいかもしれない。

「…分かった」


キノがコクリと頷くと、クロは太陽のような眩しい笑顔を見せた。


「よし！これからよろしくな！大将！」


「……大将は止めて…」


彼―クロとの出会いが、キノに大きな影響を与える事になるのは、まだまだ先の話。


――‐

夕方になり、キノとクロは人の波がいくらか治まった商店街を抜け、路地裏に身を隠していた。

とりあえず10時を回れば、追跡側は追い掛けては来ない。それまでは出来るだけ人目を避けて、下手に動かないほうがいい。キノはクロがコンビニで買ってきた、カレーパンと缶コーヒーをご馳走になりながら、クロから色々と『鬼ごっこ』について聞いていた。やはり、ミカの情報と被る部分も多々あるが、知らなかった事も多い。


｢…協力者？｣


｢ああ。今年から中立者や一般の人達を協力者として仲間に出来るんだよ｣


｢でも、一般の人達を巻き込んじゃダメって…｣


｢一般や中立の連中は、追うとか追われるとかは決まってないけど、自由に祭に参加出来るし、役割があるんだ。例えば……『監査』や『技工士』、あと『策士』他にも色々いるみたいだけど、俺が把握してんのはこれくらいだ｣


クロはそこまで言うと、残っていた缶コーヒーを飲み干し、キノに笑いかける。キノはその顔を見て、思わず目を逸らし、所在なさげに視線を泳がせながら俯く。
……先程から、なぜか落ち着かないのだ。ここに来る際にも、手をしっかり繋がれたり、抱きしめられたり。異性に免疫のないキノには些か刺激が強い。しかも、当の本人は当たり前のように平然としているため、嬉しいというか恥ずかしいというか、なんというか………複雑な思いが渦巻く。

(慣れてるみたいだし、別にこの人にとっては、特別なことじゃないんだ…)


キノは少し落ち込んでいる自分に驚いた。いつもなら無関心を貫き、別になんとも思わないのに、クロに優しくされたり、名前を呼ばれるだけで、こんなにも胸が締め付けられる。だが、経験のないキノはこのもどかしい気持ちがなんであるか、皆目検討がつかなかった。


｢キノ？疲れたのか？大丈夫？｣


｢あ、え？う、ん……少しだけ…｣


｢今は…9時か。もう少し休むか？｣


｢ううん。もう大丈夫｣


｢そうか…じゃあ、そろそろキノの仲間たちと落ち会うか｣


クロはそう言うとキノに手を差し出す。キノが戸惑っていると、クロはキノの手を掴み立たせる。勢いあまったキノは、クロの胸に飛び込むようなかたちになってしまい、キノは恥ずかしさにワタワタと真っ赤になりながら、クロの腕の中から離れる。そして、


｢は、早く行こう…｣


とだけ言うと、すたすたと早歩きで歩き出す。そんな彼女は愛おしむように見つめているクロの視線にキノは気付くはずもなかった。


ここは、街の中にあるホテル。

夜10時を回り、辺りはほとんど人気がなくなっている。クロとキノは時間が来るのを待ち、ホテルに向かった。

実は、クロはキノを探す前に、ある人物にハナとモモ、そしてユカをこのホテルに誘導するように頼んでおいたのだ。いつもなら観光客が多く宿泊するのだろうが、祭の間はホテルなどの施設は、すべて主催者が貸し切るため無人となる。従業員も最小限しかいない。このホテルも例外ではなく、無人でしーんと静まりかえっていた。

｢本当に静かだな…。確か2015号室だって言ってたな｣
そう言うと、クロはキノの手をひき、エレベーターへ向かう。手をひかれながら、高級感溢れるロビーにくぎ付けになるキノ。きっとこんな高そうなホテルに泊まる事は、二度とないかもしれない。キョロキョロと周りを見回していると、クロが笑いながら尋ねる。

｢そんなに珍しいか？ちなみに施設内の設備はすべて使い放題だからな。主催者が大金出して貸し切ってんだよ｣
｢そ、そうなの？……金額が想像出来ないんだけど…｣
｢うん、俺も！｣
｢……ぷ、ふふふ｣
｢……やっと笑った。笑うと可愛いぜ？｣
｢////！！……もう、止めてってば！｣
｢照れてる顔も可愛い｣
｢///////し、知らない！｣
｢ははは、ゴメンゴメン！｣
最初、確かにクロは祭に参加するため、キノに近づいた。この切羽詰まる状況の中、どうすれば信頼関係を築けるのか…それはキノの警戒心を解くことだった。初めて言葉を交わしたとき、かなり人間不振で不器用な子だ…と感じた。人との関わりを嫌がると言うわけではなく、怖がっているように見えた。クロはそんなキノに、まず自分がどういう人間なのかを分かってもらうため素で接し、反応を見て警戒されるか受け入れて貰えるか見極めようと思ったのだ。結果、すべて杞憂に終わり、キノはクロを信頼して滅多に見せなかった笑顔まで見せた。そんな彼女と接している内にクロ自信にも変化が起きはじめた。今まで、異性に興味を持たず、祭一筋だったクロ。いままで、異性に言い寄られた事は多々あったが、どんな美人もクロを本気に出来なかった。ましてやクロ自信、自分からアピールをしたこともない。不思議な感覚が胸の中にジワジワと広がりつつある。

(キノをもっと知りたい………)

出会って、たった数時間の女性、しかも年下の子にいつの間にかこんな感情を抱いた自分に驚く。

クロは自分の手の中にある、キノの細く小さな手を優しく握る。キノは、少し驚いたようにクロを見たあと、頬をほんのり染めて握り返す。


この祭が無事に終わったら、すべて分かるだろうか。その時、自分達はどういう関係になっているだろう……。それを知るためには……………この戦いに勝つしかない。


必ずキノたちを勝利に導くため、総てを捧げる決意を固めるのだった。



｢キノ～！！……って、ええぇ？？｣

部屋に着いたキノ達を迎えたのは、ハナの絶叫だった。

｢うるさい………｣
｢おいおい…驚きすぎだろう？｣

キノはいつも通りの反応を返し、クロは苦笑いしながら頭を掻く。
ハナの絶叫を聞き、ドアのところに駆け付けるモモとユカは声は出さないものの驚きの表情を浮かべる。
あの他人に無関心なキノが、ましてや異性にとことん冷たいキノが……全く面識のない他人を、しかも異性を近くに置いている。

｢……だれ？その人…｣

ユカがいつもより低い声でキノに尋ねる。その声聞き、ビクッとするハナとモモ。キノは平然とした顔で、黙ってユカを見つめる。

ユカは怒っていた……。ハナとモモはハラハラしながらキノの返事を待つ。

｢協力者｣

キノはそれだけ言うと、クロを振り返る。クロは三人を見るとニコリと笑い、

｢俺はクロ。よろしくな｣

と自己紹介した。ハナとモモは顔を見合わせ、ユカの方を見る。

｢協力者？そんな話、聞いてないわ！！あなた……追跡側のスパイなんでしょ？キノ！あなたも無責任に連れて来ないで！｣ 

ユカは目を吊り上げ怒鳴る。クロはやれやれ…と困ったように笑っていたが、ふと真顔になるとユカに言った。

｢ユカ…だっけ？キノを大将にしたのはあんたなんだろ？祭の事、色々調べたあんたなら、大将の決定に従わなくてはならないってルール知らない訳ないよな。……何を焦ってんだ……？｣

ユカはカァっと赤くし、クロの前に立って、二人のやり取りを傍観しているキノの腕を掴み、引き寄せる。
｢たしかにそうよ。私がキノをリーダーにしたわ。ルールも知ってるわ。でも、仲間になるのなら、メンバーに確認してからにすべきよ！大体、あなたみたいな人、信用出来ないのよ。どうせ、油断させて…｢やめて……｣…キ、キノ？｣

クロに攻撃するユカの言葉を、キノは静かに怒気を含ませて遮る。

｢クロはそんな汚い事をする人じゃない……現に私は無事にここまで来れたし、ユカ達だって逃げ延びられたでしょ…？もし、嵌めるつもりなら、このホテルの場所を追跡側にリークしてるはず。……ユカ、お願い。クロを仲間にして……｣

キノはそう言うとユカに頭を下げる。ハナとモモはまた驚く。たとえ誰であろうとも、頭を下げることなんてしないキノが、ユカに下げている。しかも、クロのために………。クロも驚きの表情を浮かべると、ふとユカの顔を伺う。ユカは面食らったような表情をしていたが、クロの視線を感じたのか睨みつける。

(随分、嫌われてるな俺…初対面なのに)

それに単に、警戒されているだけではない。ユカの自分をみる目は、明らかに自分に対する嫉妬。自分より初対面の出会って間もない男を信用するなんて…といったユカの心の声が聞こえて来るようだ。しかし、クロは飄々とその視線を受け流す。

｢とにかく、これから世話になるぜ。よろしくな｣

ユカはそれに答えず、バタバタ足音をさせながら、部屋に入りすごい勢いで扉を閉めた。そんなユカを見つめ、キノはふぅと息を着く。ハナとモモは、何を言ったらいいか分からず黙っていたが、ハナがふと思い出したようにクロに話しかける。

｢そういえば……タケって子はあなたの知り合い？｣
｢ん？ああ。タケは俺ん家の近所に住んでる奴でな。あんたたちと同じ、祭初心者だ｣
｢ふーん。そうなんだ。まあ、さ、キノが決めたんならね。ユカの事は私たちに任せて、改めてよろしく！！クロさん｣
｢よろしく…お願いします…｣

二人はクロに頭を下げた。クロは二人の頭を撫でながら微笑む。その光景を見てキノが悶々としていると、知らない内に顔に出ていたのだろう。クロは今度はキノの頭をぐりぐり撫で回す。

｢拗ねるなよ、キノ｣
｢す、拗ねてない！！何言ってるの！！｣

そんな二人をハナとモモは笑って見ていた。



一方、ユカは………

｢なんで、なんで彼が……なんで『策士』が。キノ……どうして……｣


ベッドに俯せになり、枕に顔を押し付け呟く。

ユカは彼を…クロが何者なのか知っていた。彼は、去年まで追跡側に付き、逃走側を追い詰め捕まえる、『策士』と呼ばれる人物なのだ。今回、仲間になる事を申し出たらしいが、簡単には信用できない。それに……何よりも、キノが自分を差し置き、クロを信頼し側にいる事が一番気に入らなかった。

｢クロ……絶対に邪魔はさせないから…………｣

ユカは静かに呟くと起き上がり、窓から外を眺める。
その表情は、厳しく何かを決心した顔だった……。



<div align="center">《一日目：開幕》
END</div>
 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2015-05-31T22:54:49+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
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		<link>https://meguru.web.wox.cc/novel13/entry96.html</link>
		
				
		<title>始まりの時</title>

		<description>それは徐々に確実に近づいている……


…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ それは徐々に確実に近づいている……



<div align="center"><font color="#2222FF">逃</font><font color="#116FFF">走</font><font color="#00BBFF">ゲ</font><font color="#116FFF">ー</font><font color="#2222FF">ム</font>
《始まりの時》</div>



蝉がうるさいほど鳴いている。
茹だる程の暑さに、キノはベッドの上でゴロンと寝返りをうった。

7/30…夏休みが始まったばかりのこの頃、町ではある祭の準備が密かに行われていた。


<div align="center">―――鬼ごっこ―――</div>


毎年、逃走側と追跡側に分かれた町人が、追いかけっこをする。「鬼ごっこなんて…」と思われるかもしれないが、ただの鬼ごっこではない。勝敗いかんでその人の一年の待遇が大きく違ってくる【景品】をかけ、まさに真剣勝負が繰り広げられる。

その景品とは、
・一年間、すべての公共施設が無料で使えるパスを貰える。
・一年間、すべての事において優遇される。

この一時の愉悦を手に入れるため、騙しや裏切りも辞さない、卑劣なゲームが間もなくはじまる。




「キノ～！！もうお昼よ！いつまで寝てるの？いい加減起きなさい！」


キッチンから母の呼び声が聞こえるが、キノはけだるげに目を細め自室のドアを一瞥した後、再び寝返りをうち寝息をたてはじめる。いつまで経っても、降りてこないキノに母は、新聞を畳みながらやれやれ…とため息を吐く。と、新聞の間に白い封筒らしきものが見えた。

「…あら？手紙？」



―――


キノがようやくリビングに顔を出したのは、それから１時間たった後だった。
肩までの黒髪を緩く縛り、シンプルな黒い部屋着を着た、寝ぼけ眼の少女キノ。

「お腹すいた…」

それだけ言うと、ソファに腰掛け欠伸をする。その様子を飽きれ顔で見る母。


「もう！あれだけ呼んだのに、あんた来ないから。パンと昨日の残りで済ませてね」

そう言うと、母は慌ただしく自室へ引っ込んだ。


キノは眠そうに母の後ろ姿を見届けると、ノソノソと動き始める。
キノは普段殆ど寝ている。授業中はもちろん、昼休みやホームルーム中も寝る。ひたすら寝る。そのまま永眠するつもりじゃなかろうか、と思うほど寝る。
しかし、不思議な事に成績は優秀で常に学年トップなのだ。まあ本人はその事に関してはなんとも思っていないらしい。

と、話を戻す。


昨日のシチューとパンで、空腹を満たすと、キノは再びソファに寝転がる。

パタパタとスリッパを鳴らしながら、母がリビングに入ってきたが、また寝に入ろうとしているキノにため息をはく。

「また寝る気？ほら、あんたも準備して！明日からおばあちゃんとこに行くって言ったでしょ？あ…そういえば」

母は思い出したように言うと、リビングのカウンターの上から、一通の白い封筒をキノに差し出す。

「新聞に紛れて入ってたのよ。あんた宛よ」


キノはけだる気に起き上がると、母から封筒を受け取る。封を開けてみると、真っ赤なカードと、キャッシュカードくらいの大きさのプラスチック製のカードが一枚…。真っ赤なカードを見てみる。そこには



<div align="center"><font color="#FF0000" size="3">逃走側に任ず。
なお、辞退は認めない。</font></div>


とだけ書いてあった。



はじまる。町をあげた鬼ごっこがはじまる。


祭が……はじまる。



―――…

母親は、その紙を見ると「今年はあんたは無理ね…」と残念そうに言った。
その後、キノは自室に戻り、のベッドに寝そべりながら、先ほどの赤いカードを眺めていた。

以前、聞いた事がある。もし、すっぽかしたり無断で代理を立てた場合、町にいられなくなるんだと。それを聞いてしまえば、どんな無精者でも従わざるをえない。居場所をなくすというのは精神的にかなり堪えるからだ。
キノはため息をつき、カードを傍らに置き、目を閉じた。…とその時、

♪～～♪～

携帯が鳴った。しばらく放置していたが、あまりにしつこい。根負けしたキノは携帯を手に取り、着信名を見た。とたんに深くなる眉間のシワ。

<div align="center">《ハナ》</div>


「勘弁してよ…」

キノはそうつぶやくと携帯を開き、耳に当てず外側に向け、通話ボタンを押した。とその直後、


「やっと出た！キノ！キノってば！
<font  size="3">キノ～！！</font>」


大音量で携帯から流れる、キンキン声。キノは顔をしかめゆっくりと耳に当てる。そして、


「うるさい（怒）」

と一言。


電話の主は幼なじみのハナだった。モモという双子の妹がいる。とにかく毎日お祭り騒ぎな少女で、よく言えばムードメーカー。悪く言えば歩くスピーカー。マイペースなキノは昔から、ハナのハイテンションがとにかく苦手で、最近はあまり構わない。特に脳天に突き刺さるような甲高い声は、キノにとって騒音以外の何物でもない。毎度キノはうっとおしがって突き放すのだが、堪えていないのか、はたまたポジティブなのか、まったく動じることなく纏わり付く。対して妹のモモは大人しく、人見知りが激しい。まともに話が出来るのは、姉とキノだけだ。

「なに…」

キノが不機嫌丸出しで、吐き捨てるように言うが、そんなのお構いなしで、ハナはマシンガンのように話しはじめる。

「んもぅ！キノノリ悪い！もしかして寝起き？そうなの？もうお昼過ぎだよ！起きて起きて！！」

「……用があるなら手短かにして」

言葉を交わすのも億劫になり、冷たく言い放つキノ。また、しょうもない事なんだろうと判断し、早々と切り上げようと、もう切ると言おうとしたキノは、この後のハナの言葉に口をつぐんだ。


「キノにも赤いカード届いた？」


…これはどう解釈すればいいのか。以前ユカが言っていたことを思い出す。(といっても、殆ど右の耳から左の耳に流れていたが)


「逃走側ってね、毎年くじ引きで決まるらしいの。でもごく稀に自薦他薦もあるみたい」


……ただの偶然か。はたまた誰かに仕組まれたことなのか。しかし、仕組まれたとなれば誰なのか。こう言っては何だが、キノはあまり他人と関わりを持とうとはしないタイプだ。周りもあまりキノには近づかない。近寄り難い雰囲気を纏わせているせいなのだろう。今のところ、キノとまともに会話が出来るのは、双子の姉妹とユカのみだ。ただ、キノが嫉みや羨望の対象である事は確かだ。寝ているくせに成績が良かったり、学校のアイドル的存在のユカと、親しかったりなど挙げたらキリがない。(ただし本人は気にしてない上に興味もない)となれば、キノ達に恨みを持つ者という線が濃い。

(まあ、私を恨んでる連中なんて掃いて捨てるほどいるけどさ…)

キノがボンヤリ考えていると、焦れたハナが先程の大音量で呼ぶ。


<font size="5">「キノ～～！！キノ～～！！
返事して～～～～！！</font>また寝てるの？キノ～応答せよ～～！！」


耳にダイレクトに飛び込んできた奇声(？)に、キノはのそりと起き上がり、怒気を含んだ声で一言。


「………切る(kill)よ……（怒）」


「はあ！良かった！寝てなくて！それより質問の答え！」


「……届いた。今朝に」


「そうなんだ！！モモにも届いたんだよ。しかも、ユカにも！！すごい確率だよね～！！それでね、明日…」

モモとユカも……？疑惑がさらに深まる。きっとこれは単なる偶然ではない。だが、仕組んだ人物や意図は何一つ分からない。

(気味が悪いな……)

なにやら受話器の向こうであーだこーだ言っている、ハナの声はもう耳に入らなかった。適当に相槌を打ち電話を切った。しばらく携帯を見つめ、ふとベッドの傍らに置きっぱなしのカードに目を留める。色々と解せないが、選ばれてしまったからには、やらなければならない。キノは、面倒だと大きなため息を一つはくと、ふたたびベッドに寝転がる。そして静かに目を閉じる。祭が始まってしまえば、こうして寝る事も出来ないであろう。キノは考えるのをやめ、眠りに落ちていった。




…次の日。


キノの部屋にはなぜか、ハナとモモ、そしてユカがいた。
実はユカの提案で、情報交換という名目で集まろうという事になったのだ。しかし、なぜにキノの部屋なのかというと、ユカが

｢キノの事だから、また寝こけてすっぽかすから｣

と言ったから…らしい。またと言うことは、おそらく何回もあったのだろう。

それで、三人でキノの部屋に押しかけた……と言うわけなのだ。


一方、キノの方は安眠を妨害された上に、部屋に上がり込まれご機嫌ななめ。いつも以上に不機嫌な顔で、ワイワイと楽しげな三人を睨みつける。


｢ご機嫌ななめね、キノ｣


ユカは、持参したお菓子と飲み物を、テーブルに並べながら苦笑いする。


｢提案したのはあんたでしょ？ユカ…｣


キノはベッドに寝転がり、ユカを目の端に映しながら、不機嫌丸出しで言う。
もともと、団体行動が苦手なキノ。今まで、集まって何かをする…という事を極力避けていた。なので、今回も乗り気にはなれず、早くも夢の世界に旅立とうとしていた。すると、


｢キノ！！寝ちゃダメだったら！！｣


ハナがキノの枕を奪い取る。キノはハナをジト目で見ながら、むくりと起き上がり、ベッドに腰掛ける。キノは安眠を妨害されると、終始機嫌が悪くなる。(とは言え、いつも不機嫌そうだが…)それを知ってか知らずか、毎回ハナはキノを起こす。一方、ユカやモモは、報復が怖いのか大抵放置。…なので、二人にとってハナは魔王キノに立ち向かう勇者である。


｢さて、明日から始まる『祭』のルールを確認しましょうか｣


ユカは、紙とペンを鞄から取り出しながら話を切り出す。


********
<div align="center">《祭のルール》</div>


・参加者は街から出てはならない。
・交通機関、公共施設を使用する際は必ず、個人ナンバーを提示する。
・参加者以外の者に危害を加えてはならない。
・離反は自由とする。
・逃走メンバーすべてが捕まった場合、その時点で終了となる。
・逃走メンバーは、拠点の移動は可能だが、追跡側は不可。
・捕縛時の恐喝、暴力などは禁止。
・『祭』は開始時間、終了時間を守る。時間外の捕縛は無効とする。
(朝6:00～夜9:00)



*******

｢うわ…結構多いね｣


ハナはウンザリした顔をしながらぼやく。


｢覚えられるかな…｣


｢でも昔に比べたら、逃走側にかなり緩くなってるのよ。去年までは離反はタブーだったし。時間も関係なかったのよ｣


｢マジでか！！｣


三人が話している間、キノは別の事を考えていた。


…そう、選抜方法だ。

キノはどうしても、偶然だと思えずにいた。それに、キノだけなら怨恨の可能性が高いが、ハナやモモ、さらにユカまでも選ばれるとは……キノはふとユカを見た。
そういえば、夏休み前から彼女の様子が少しおかしかった感じがする。
しきりに祭の話をしてきたし、自薦他薦の話もユカから聞いたのだ。
まさか……キノはある事を仮定する。自分達を選抜したのは、ユカではないのか……しかし、それではなぜ彼女は自分まで選抜したのかが不明だ。


(考え過ぎか……)


キノは緩く頭を振り、考える事を止める。きっと、祭が始まればわかるだろう。なら、わざわざ今、ごちゃごちゃ考える必要はない。キノはコップに入ったコーラを一口飲み、ふぅと息を吐いた。





その時、冷たい瞳で自分を見つめるユカを、キノは知らなかった………。





<div align="center">《始まりの時》END</div>
 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2015-05-31T22:53:02+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
	<item rdf:about="https://meguru.web.wox.cc/novel13/entry95.html">
		<link>https://meguru.web.wox.cc/novel13/entry95.html</link>
		
				
		<title>プロローグ</title>

		<description>《序章》


ここは都心のある街。

…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 《序章》


ここは都心のある街。

この街では、毎年夏になるとある【祭】がもようされる。

それは…

―鬼ごっこ―

有数の資産を持つ資産家の暇つぶしとして、100年も前から続く祭。


逃げる側はたったの4人。しかもランダムに選ばれる上、辞退は不可能。

残りの街の人間は追う側。


…なんとも理不尽な祭だが、参加特典が魅力的なため、毎年参加者が後を絶たない。

特典とは、

・参加した者は、一年間すべての施設が無料で使えるパスが貰える。

・さらに勝利側は願いを一つ叶える事ができる。


この特典を狙い、本性を剥き出しにした裏切りや陥れが平然と繰り広げられる。


あなたは、これより逃走ゲームの参加者。

逃走期間は一ヶ月。

最後まで、
逃げて、逃げて……

<font size="3">逃げまくれ！！
</font>

※流血表現や残酷描写はありませんが、<font color="#FF0000">裏切りや陥れなどマイナス要素</font>が含まれます。苦手な方はご遠慮ください。
 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2015-05-31T22:52:27+09:00</dc:date>
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		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
	<item rdf:about="https://meguru.web.wox.cc/novel13/entry94.html">
		<link>https://meguru.web.wox.cc/novel13/entry94.html</link>
		
				
		<title>③</title>

		<description>月の力…
今こそ、解放す………！



ツ…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 月の力…
今こそ、解放す………！



<div style="text-align:center" align="center"><font color="#00ffff">ツ</font><font color="#00ead4">キ</font><font color="#00d5a9">ノ</font><font color="#00c07e">セ</font><font color="#00ab53">カ</font><font color="#008000">イ</font></div>



翌朝…二人と一羽は老婆の家を後にし、怪物を倒すため港に向かった。

｢………｣
｢………｣

無言で海を見つめる二人。月夢鏡の為とはいえ、かなり無謀な事を引き受けてしまったとかぐやは後悔していた。戦う術を持たない自分、戦闘は確実に黒呼が引き受ける事になる。

(どうしよう……黒呼、怒ってるかな…。やっぱり月夢鏡のカケラに釣られなければ良かった……ごめんね黒呼…)

申し訳なくて黒呼の顔を直視出来ず俯く。
暫く歩いていると、水平線が見渡せる港に着いた。そこで二人は驚きの光景を目の当たりにした。

｢夜……？｣
｢そ、そんな…あんなに明るかったのに……｣

いつの間にか日が沈み、辺りは暗闇と静寂が支配していた。二人は状況が飲み込めず、辺りを見回していると、



……ゴボ…ゴボゴボゴボ……


水面が揺らいだ。黒呼がかぐやを庇うように前に立ち塞がり、愛用の鎌を構え、闇爾も翼を広げ、臨戦体制に入った。


ゴボゴボゴボ…………


<font size="3" color="#FF0000">ザバアァ！！</font>


無数の頭に、金色に輝る目。鋭い牙を持った巨大な怪物がかぐや達の前に姿を見せた。
暗闇に溶け込んでいた体の輪郭は、目が慣れてくると次第に浮かび上がってくる。まるで巨大な大蛇のようにとぐろを巻き、鎌首を擡げかぐや達を見下ろしている。

｢ひっ……｣
｢かぐや、下がって……｣
｢え？黒呼？｣
｢かぐやは私が護る。こいつは私が仕留めるから…｣
｢あ、ま、まって！！｣

黒呼はそう言うと、闇爾に合図を送り、鎌を構え飛び上がった。
置き去りになったかぐやは呆然と黒呼達を見つめる。怪物は飛び掛かってきた黒呼に向かいしっぽのようなモノを振り上げ叩き落とそうとするが、間一髪で黒呼が避け鎌を一降り。切り付けられた場所からは、どす黒く赤い血が吹き出す。暫くそんな攻防を繰り返していたが、


<font size="3" color="#FF0000">………ガッ………</font>


｢くっ！！｣
｢！！く、黒呼！！｣

脇を擦り抜けようとした黒呼に、怪物のしっぽが直撃し、黒呼は沖の方に吹き飛ばされた。闇爾は急いで黒呼を助けに向かうが、怪物に阻まれ擦り抜けられない。一方の黒呼は海に落ち、浮き上がる気配はない。

絶対絶命………怪物は無数の目をかぐやに向けた。冷や汗が背中を伝い、震える足で後ずさる。黒呼と闇爾がいない今、どうしたらいいのか………怪物は無数の触手をかぐや目掛け伸ばしてきた。

…もうダメだ……後少しでかぐやに届くその時、

…パアアァァ……

怪物の動きが止まった。いつまで経ってもやって来ない衝撃に、不思議に思ったかぐやが目を開けると……
｢！？｣

月夢鏡が光り輝いていた。
｢え？なんで？まだカケラをはめ込んで無いのに……！！｣

月夢鏡の光りは、一筋の光りの柱となり、一直線に真上に伸びた。釣られるようにかぐやも空を見上げる。

｢………満月…！？そうか……そう言う事なんだね………これで私も戦える！！｣

何かを悟ったかぐやは、真っ直ぐに怪物を見る。すると怪物は怯んだように身を竦める様を見て、かぐやは確信する。
月夢鏡はカケラの有無ではなく、月の満ち欠けで力を使えるのだ。カケラはかぐやの魂の化身。それを手に入れるための力………それが、月の力を受けた『月夢鏡』なのだ。
かぐやは静かに目を閉じ、月夢鏡に両手を翳す。手の平に感じる温かな光り。それは『かぐや姫』が残した『絶望』を払う『希望』の力。
すると、かぐやの脳裏に言葉が浮かんだ。まるで導かれるように呟く。

｢我の前に立ち塞がりし、悪しき者よ……月の御名の元……闇にお帰りなさい！！｣


………カッ！！…………


かぐやが叫ぶのと同時に、月と月夢鏡がまばゆく光り輝き、光りの雨となり怪物に降り注いだ。


<font size="3" color="#FF0000">ギャアアアアア！！</font>


苦しそうにもがき苦しんでいたが、凄まじい音を立て倒れた。と、同時に砂の城のようにサラサラと風化し、やがて消え去っていった。

………そしてまた、静かな海に戻っていった……。




…………………―
……………―
………―


怪物を倒し、再び老婆の元に戻ると、驚き喜びながら迎えてくれた。
そして、約束だからね…とカケラをかぐやに手渡した。二人は老婆にお礼を言い、街を後にした。

黒呼はずっと俯き、押し黙っていた。護れなかった。約束を果たせなかった。悔しくて仕方がなかったのだ。そんな黒呼にかぐやは笑顔を向ける。

｢ありがとう黒呼｣
｢え！？……でも私…｣

ううんと首を振り、黒呼の手を優しく握る。驚いたように目を見開いた黒呼だったが、ふと表情を和らげ、握り返す。

｢私、自分が戦えない癖に、引き受けちゃって……黒呼の負担になっちゃったでしょ？申し訳なくて…｣
｢そんな事ない…戦いは慣れてるし…護るって決めたの｣
｢ありがとう。でもそれじゃ、多分意味は無いよ。黒呼に頼りっぱなしじゃ、私も何かしないと。だから、戦う方法を見つけた時、すごく嬉しかった。黒呼を護れるって｣
｢！？かぐや……｣

これから先、もっと辛く厳しい出来事に遭遇するだろう。自分一人では絶対無理だ。でも、

｢ねぇ、黒呼｣
｢ん？｣
｢これからも、二人で力を合わせて頑張ろうね！｣
｢！うんっ！！頑張ろう、かぐや｣
｢カアアアア！！｣
｢ふふ…闇爾もよろしくね｣
｢カア！｣
｢ふふっ……｣
｢あはははっ！｣

今は自分の身を案じてくれる優しく頼もしい仲間がいる。

(私は負けない…。必ず元の世界に帰ってみせる。付いてきてくれる黒呼や闇爾のためにも……)

かぐやは改めて決意を固め、カケラが一つはまった月夢鏡をにぎりしめた。



<div style="text-align:center" align="center"><font color="#00ffff">水</font><font color="#00aaff">の</font><font color="#0000FF">街</font>
《後編》


<font color="#80c0ff">一人じゃない……
それが
今の私の力の源……</font></div>
 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2015-05-31T22:49:07+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
	<item rdf:about="https://meguru.web.wox.cc/novel13/entry93.html">
		<link>https://meguru.web.wox.cc/novel13/entry93.html</link>
		
				
		<title>②</title>

		<description>この船はどこに向かっているのだろう…

…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ この船はどこに向かっているのだろう…



<div style="text-align:center" align="center"><font color="#00ffff">ツ</font><font color="#00ead4">キ</font><font color="#00d5a9">ノ</font><font color="#00c07e">セ</font><font color="#00ab53">カ</font><font color="#008000">イ</font></div>



　乗り込んでからしばらくして、船は出港した。

｢ねえ、黒呼。鏡のカケラってどうやって探せばいいの？｣
｢うん。鏡のカケラって、夢の住人が持ってる事が多い。だから、その人を探して譲って貰わないといけない｣
｢…………｣
｢…かぐや、私がついてる。闇爾だって｣
｢カアアアアア！！｣
｢ｸｽ……ありがとう。二人とも、私頑張るから…｣

　黒呼は安心したようにほほ笑む。一方のかぐやは黒呼にああは言ったものの、不安で一杯だった。
　と、その時だった。


<font size="3">ドゴーン！！</font>


　突然大きく揺れた。かぐやは黒呼に支えられ何とか持ち直した。おそらく何か大きな物とぶつかったのだろう。二人と一羽は甲板に出てみる事にした。


…………―
………―
……―


｢あ、れは何？｣

　甲板に出た途端、目に飛び込んできた光景に、かぐやは呆然と呟いた。
　真っ暗闇の空と海。しかし、爛々と光る無数の目が、こちらを見ている。かぐやは思わず後ずさり、黒呼は鎌を構えかぐやの前に出る。
　途端にうねる海、波は高くなり、船を飲み込まん勢いで荒れ狂う。かぐやは何とか踏ん張り、黒呼にしがみつく。すると、

<font size="3">｢カアアアアア！！｣</font>


　闇爾が一鳴きし、黒呼は意味が分かったのか、かぐやの手を引き、闇爾の側に寄る。すると、闇爾の体がみるみる大きくなり、やがて小型飛行機ほどの大きさになった。

｢さ、かぐや｣
｢あ、うん｣

　かぐやは黒呼に手を引かれ、闇爾の背に乗った。と同時に、


バキバキバキ……

<font size="3">バシャアアン！</font>



　船は真っ二つになり、跡形もなく消え去った。もし、まだ甲板にいたら…船内にいたら、自分達はあの船と運命を共にしていたのだ。震えが…止まらない。
いくら自分の夢から生まれた世界とはいえ、この世界に絶対安全なんて言葉は存在しない。この世界はかぐやがしようとしている事を知っていて、全力でかぐやを殺そうとしている。それを身に染みて痛感した。


　しばらく闇爾は停空していたが、船の進行方向へ向かい羽ばたきだした。あの化け物はもういなかった。しかし安心は出来ない。
また、どんな状況で出現し、かぐやを襲おうとするか分からない。
　かぐやはここに来る前、ティナに言われた事を思い出した。


｢あ、そうだ。カケラを手に入れたら、夢幻獣に奪われる前に月夢鏡にはめるのよ。カケラは貴女の魂と同じ。揃わなければ貴女はツキノセカイから永久に出られないから｣


　おそらく、先ほどのあれが夢幻獣なのだろう。これから先、あんな恐ろしいものと対峙しなくてはならないのか…。

(黒呼に頼りっぱなしじゃダメよね。自分で戦う手段を見つけないと。何か方法があるはずだわ……)

　かぐやは胸に下がった月夢鏡をぎゅっと握りしめた。

…………―
………―
……―

　しばらく飛んでいると、水平線からポツポツと光りが見えだした。一際明るく光る高い光りに、二人は表情が明るくなる。

｢…港だわ……！｣
｢良かった。行ってみよう｣
｢うん！｣
｢闇爾、お願い｣
｢カアアアアア！！｣

　黒呼の言葉に闇爾が一鳴きすると、次第に高度を低くする。
そして……
二人と一匹は港に降り立った。



　かぐや達が港に降り立ち街へと足を向けると、

｢あ…れ？明かり付いてない｣
｢どうなってるの？さっき海から見たときは見えたのに…｣

　街と思しき場所は、人が暮らしている気配を感じられず、シーンと静まり返っていた。黒呼は立ち尽くすかぐやに振り向き、

｢少し待ってて｣

と言うと、近くの家の扉を叩いた。

コンコン……コンコン…

｢すみません。誰かいますか？｣

　黒呼は次々家の扉を叩く。すると、

…キー…

　ゆっくり開いていく扉から、老婆が顔を覗かせた。落ち窪んだ目で、黒呼の顔を舐めるように見る。

｢あ、あの｣
｢……なんだい。随分妙ちきりんな格好だね…｣
｢はあ……あの、宿を探してるんです。この近くにありませんか？｣
｢宿？フン……ないよそんなもん。もう旅人も来ないこんな漁村に誰も来ない。宿なんて必要ないだろ｣

　どうやら昔は、かなり賑やかな宿場村だったようだ。もしかして、この街に住んでいた人達は、廃れたこの村を見限り、どこかへ行ってしまったのだろうか。

｢あの、他の村人が見当たらないんですけど…｣
｢……喰われたよ｣
｢え…？｣
｢喰われたって言ってるんだ！！海から来た化け物に！！一人残らず！｣
｢！！それってもしかして、無数に頭がある…｣
｢！！あんたら……会ったのかい……｣
｢ええ……。乗っていた船が襲われて……。でもなんとか逃げてきたんです｣

　黒呼がそういうと、老婆は俯き何かを考えた後、

｢…入んな。そこのお嬢ちゃんと鳥も｣
｢あ、ありがとうございます！｣

　かぐや！と黒呼に呼ばれ、かぐやと闇爾は黒呼の元に駆け寄った。


…………―
……―
…―


｢これしかないんだ。済まないね｣
｢いいえ。泊めてもらうだけでもありがたいのに、食事までいただいて…｣
｢……あんた達、よく無事だったね。あいつに出会ったら人生を諦めろとよく言われたもんだったのに｣
｢え……？はい。この子のおかげです｣
｢そうかい……｣

　あの後、老婆の家に泊まらせてもらう事になり、二人と一匹は食事をご馳走になっていた。固いパンに具のないスープ。しかし、老婆の精一杯のもてなしに、かぐや達は味わって戴いた。
　老婆の話を要約すると、ある日あの化け物が村を襲い、村人をすべて喰ってしまったらしい。その時、ちょうど老婆は隣村に行商に行っており、自分だけ生き残ってしまったという事だった。

｢喰われた村人の中には、私の娘夫婦と孫がいた。こんな老いぼれが一人生き残るなんて…申し訳なくてね……でも、いつまでたっても私は死なない……｣

　老婆はカップを持って俯く。二人は何も言えず顔を見合わせる。

｢あの化け物さえいなければ……娘夫婦も孫も……｣

　声を押し殺し泣く老婆を見たかぐやは、思いがけない事を口走った。

｢あの怪物を……倒せばいいのね……｣
｢！！かぐや？｣
｢倒してくれるのかい？なら、｣

　そう言うと、老婆は食器棚の中から、何かを持って来た。

｢これね、昨日散歩してた時に拾ったんだ。キラキラして綺麗だったから持って帰ったんだけど…｣
｢！！それは、月夢鏡のカケラ…｣

　老婆の手にあるのは、探していた月夢鏡のカケラ………かぐやの魂のカケラだった。

｢もし、怪物を倒してくれたら……これをあげるよ。私に鏡なんて必要ないしね｣
｢かぐや、やろう！！怪物倒そう！｣
｢うん！お婆さん、必ず娘さんたちの仇はとります｣
｢ありがとう……さ、今日はもう遅い、２階に支度をしてあるからおやすみ｣
｢はい。何から何までありがとうございます｣
｢おやすみなさい｣

　二人は２階に上がって行った。二人の背中を見送り、棚に飾ってある写真を手にとる。

｢何も知らない子達を巻き込んでしまった。お前もあの子達を見守ってやっておくれ……｣

　祈るようにつぶやく老婆の声は、わずかに震えていた。



<div style="text-align:center" align="center"><font color="#00ffff">水</font><font color="#00d5aa">の</font><font color="#008000">街</font>
[中編]




<font color="#80c0ff">望むのは…
生きる希望を
持ち続けてほしい…
それだけ……
</font></div>



→つづく
 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2015-05-31T22:48:01+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
	<item rdf:about="https://meguru.web.wox.cc/novel13/entry92.html">
		<link>https://meguru.web.wox.cc/novel13/entry92.html</link>
		
				
		<title>水の街①</title>

		<description>夢とは支離滅裂………
その言葉を今更ながら…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 夢とは支離滅裂………
その言葉を今更ながらに実感した。



<div style="text-align:center" align="center"><font color="#00ffff">ツ</font><font color="#00ead4">キ</font><font color="#00d5a9">ノ</font><font color="#00c07e">セ</font><font color="#00ab53">カ</font><font color="#008000">イ</font></div>



　黒呼と闇爾との再会に驚きながらも、かぐやはとても心に余裕が出来た。今はこの世界を消し、自分の時間に戻らなければならない。そのためには、月夢鏡のカケラ即ち魂のカケラを手に入れ無ければならない。

(私の時間に戻らなければ……死ぬなんて絶対いや)


黒呼に手を引かれながら、かぐやは決意を固めた。



………―
……―
…―


　目の前一面に広がる青い海。青い空。そして………

｢凄い装飾の船……｣

　眩しいくらいの照明を散りばめた客船。その船はゆっくりとこちらに向かい近づいていく。
　かぐや達は港にいた。道なりに歩いていたらたどり着いたのだ。空はいつの間にか夜になっていて、星が煌めいていた。
　ついに船は港に停泊した。入口が開き、跳ね板が渡された。かぐやと黒呼はしばらく黙って船を見つめていた。この船に入ったら何が待っているのか。正直怖い。だけど…。
　かぐやの様子を伺っていた黒呼がふいに口を開いた。

｢あれに乗ればいいの？｣
｢え…？うん。多分｣
｢カアアアア！！｣
｢｢！？｣｣
｢カア？｣
｢ぷ………｣
｢ふふ｣
｢行こう？｣
｢うん｣

元気よく鳴いた闇爾に後押しされるように、かぐや達は船に乗り込んだ。

この先、何が待ち受けているのか…。
今のかぐやには想像すら出来なかった。



<div style="text-align:center" align="center"><font color="#00ffff">水</font><font color="#00d5aa">の</font><font color="#008000">街</font>
[前編]



<font color="#80c0ff">夢とは
その人の心の鏡……</font></div>



→つづく

 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2015-05-31T22:46:24+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
	<item rdf:about="https://meguru.web.wox.cc/novel13/entry91.html">
		<link>https://meguru.web.wox.cc/novel13/entry91.html</link>
		
				
		<title>死神と烏</title>

		<description>懐かしい人達との再会



ツキノセカ…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 懐かしい人達との再会



<div style="text-align:center" align="center"><font color="#00ffff">ツ</font><font color="#00ead4">キ</font><font color="#00d5a9">ノ</font><font color="#00c07e">セ</font><font color="#00ab53">カ</font><font color="#008000">イ</font></div>



　何もない空間。しかし、かぐやが足を踏み出すと、周りが色付き形を成す。なんだか懐かしい景色に、かぐやはキョロキョロと辺りを見回す。

｢ここ…覚えてる。私が小さい頃、見た所だわ……｣

　両親を亡くしたあの頃…家族で行った海での思い出を夢見た事を思い出した。朝からはしゃぐ自分達を連れて、いつもは車だがこの時は珍しく電車だった。それがまた楽しくて嬉しかった。
　古びた駅舎があり、無人改札の向こうは真っ暗でなにも見えない。が、

｢え？奥の方で何か動いた気が…｣

　黒いペンキで塗り潰したような暗闇にヒラヒラと何かが動いている。しかも、

｢こっちに…来る｣


　その気配はかぐやに向かって来るようなのだ。思わず強張る体をなんとか動かし後ずさる。

すると、気配は次第に形となり、闇の中から現れた。

｢かぐや…｣
｢カアアア！｣

　その姿を見るなり、かぐやは驚きの声を上げた。

｢黒呼……闇爾……｣

　紫をベースにした、和洋合わさったような服を身に纏い、深い藍色の髪に鮮やかな紅い瞳をした女性、黒呼。黒呼の肩に乗り、高らかに鳴く大きな漆黒の烏、闇爾。#名前#はふと、この世界に行く前にミィに言われた事を思い出した。

『一人では心細いでしょ？中に一人と一匹待機させてるから。大丈夫、頼りになる子達だから』

　まさか、彼女の事だったとは。確かに久しぶりの再会はうれしい。しかしその半面、なぜ死神である黒呼が自分の命の為に付き添うのだろうか。彼女を疑いたくはない。でも……と、悶々としているかぐやに、黒呼は苦笑しながら近づく。

｢かぐや、会いたかった。私、貴女に謝りたかったの｣
｢え？｣

　かぐやが黒呼の顔を見上げると、黒呼は悲しそうに目を伏せた。

｢私、貴女を守れなかった。だから今、こんな事になったの｣
｢……｣
｢赦してなんて言わない。でも、今度こそ護りたいの。だから……｣
｢黒呼……｣
｢私も、私たちも連れていって｣


<div style="text-align:center" align="center"><font color="#00ffff">死</font><font color="#00dfbf">神</font><font color="#00bf7f">と</font><font color="#008000">烏</font>


<font color="#80c0ff">それは迷いの無い、
真っ直ぐな気持ち</font></div>


続く……

 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2015-05-31T22:41:46+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
	<item rdf:about="https://meguru.web.wox.cc/novel13/entry90.html">
		<link>https://meguru.web.wox.cc/novel13/entry90.html</link>
		
				
		<title>ツキノセカイとかぐや姫</title>

		<description>私にはどんな力が
隠されているのか……
…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 私にはどんな力が
隠されているのか……


<div style="text-align:center" align="center"><font color="#00ffff">ツ</font><font color="#00ead4">キ</font><font color="#00d5a9">ノ</font><font color="#00c07e">セ</font><font color="#00ab53">カ</font><font color="#008000">イ</font></div>


｢さて、単刀直入に言うわね。貴女に『ツキノセカイ』を消して欲しいの｣
｢……え？消す……？｣

　夢幻界の番人から聞いた言葉に、かぐやは唖然とした。消すと言っても、どうすればいいかなんて解らないし、第一、『ツキノセカイ』なんて見たことも聞いたこともない。そんな状態の自分に彼女は一体何を言い出すのか…。不安と意味不明な恐怖を感じる。
　そんなかぐやの心境を察したのは、ティナだった。

｢…まだ貴女は完全には力に目覚めてはいないわ。きっと、無意識の内に創られたからでしょう。いいわ、私が説明してあげる｣

　ティナはそう言うと、目を閉じた。

｢事の始まり…つまり、『ツキノセカイ』が生み出されたのは1000年以上前、ある老夫婦の元に一人の女性が現れたの｣


　その女性は産まれて間もない赤ん坊を抱いていて…。女性は老夫婦に言ったの。『この子が大人になるまで育てていただけませんか？』と。子供がおらず、寂しい生活をしていた二人は、女性に深くは聞かず赤ん坊を受けとった。…可愛らしい女の子だったそうよ。　二人は神様が授けてくれたと喜び、女の子を大切に育てたわ。
　女の子はスクスクと成長し、やがて年頃になる頃には美しい女性になっていた。
　美しい女性…かぐや姫の噂は瞬く間に世に知れ渡った。様々な男達が彼女を娶ろうと躍起になった。
　でも、かぐや姫はその男達とは結ばれなかった。いえ、意図して結婚を退けたの。何故か……？


　かぐやはティナの話を聞きながら疑問を感じた。かぐや姫は『竹取物語』に登場するお姫様だ。竹から産まれ月に帰る…そんな話だったはず。でも、ティナが話したものは、違う点が多々ある。そう、赤ん坊のかぐや姫を連れてきた女性の存在だ。

｢竹から産まれたんじゃないの？｣

　思った疑問が自然と口に出た。すると、ティナは首を振った。

｢貴女が知っている『竹取物語』は真実ではないわ。それは長い月日の内に脚色され、子供たちに語り聞かせるために創られた話。本来の『竹取物語』はかなり内容が生々しいの。…いえ、もう『竹取物語』とは呼べないかもしれないわ｣

　ティナがそこまで言うと、隣にいたミィが口を開いた。

｢かぐや姫が人の世に現れた理由はただ一つ。人を試す事｣
｢た、試す？｣

　ミィはうなづき、何かをかぐやの前に差し出した。

｢これは月夢鏡。本来は月の民が代々受け継ぎ、力を保持するためのものよ。満月の夜にだけ、装備した者の願いを聴き入れ、叶える力を持つの｣
｢満月の夜、貴女は二度、鏡に救われている。一度目は四歳の時、そして二度目は…｣

　ミィとティナの話を聞き、ほうけたように固まっているかぐやを見て、ティナはあまりにも残酷な事実を明かす。

｢事故に遭い、瀕死の重傷を負った貴女｣

…その瞬間、#名前#の頭の中にまるで早送りのビデオを見ているように、映像が流れる。




『……ぶないな。……運転か？』
『…！！危……い！！』



<font size="3" color="#FF0000">ガシャアアアアン！！</font>



｢…っ！！｣
｢思い出した？貴女は今、生と死の間に漂っている。本来ならそのまま死んでしまってもおかしくなかった。でも……｣

　ミィはそこまで言うと、かぐやの近くに歩み寄り、ペンダントを握らせた。

｢月夢鏡が貴女を死なせる事を拒んだ。それは何故だと思う？｣

　解らないと首を振る#名前#。ミィは月夢鏡ごとかぐやの手を優しく包み、言った。

｢ツキノセカイは貴女が人の世から逃げる為に創った世界。辛い、苦しい、悲しい…そんな気持ちがツキノセカイを創った。ツキノセカイは受け入れ、願えば自分の思い通りになるけど、否定すれば貴女に牙を剥く。今が正にその状態なの｣
｢大人になればなるほど現実が全てになるわ。夢や空想など下らない、有り得ないと思ってしまうのは、貴女が大人なりつつある証拠。決して悪い事ではないわ。でも、ツキノセカイはそれを許さない。このまま貴女に否定され続けるくらいなら、貴女と共に消えてしまおうとするでしょう｣
｢………｣
｢月夢鏡はかぐや姫の残した希望。そして、ツキノセカイは人を試す為の絶望。月夢鏡は、我が身を犠牲にして貴女の命を夢幻界につなぎ止めた。砕け散った鏡の破片は、ツキノセカイに散らばったわ。貴女がすべき事……それはツキノセカイに散らばった月夢鏡のカケラを集めること……｣

　かぐやが手の中の月夢鏡を見ると、確かに鏡があったであろう場所に丸いはめ込みがあるだけだった。どれだけのカケラになり、散らばったのかは見当もつかない。しかし、カケラを集めない限り生きる事も死ぬ事も出来ない。

　…やるしかない。

　かぐやが月夢鏡を抱きしめるのを見て、ティナとミィはほっとした表情を見せた。

｢さて、ツキノセカイへの入り口を開くわよ。一度入ったら、カケラを全て集めない限り出られないわ。それと、一人では心細いでしょ？中に一人と一匹待機させてるから｣
｢一人と一匹って…｣
｢会ってみれば分かるわ。行くって聞かないんだもの。大丈夫、頼りになる子だから｣
｢？？？｣

　ミィとそんなやり取りをしていると、ティナが思い出したように付け加えた。

｢あ、そうだ。カケラを手に入れたら、夢幻獣に奪われる前に月夢鏡にはめるのよ。カケラは貴女の魂と同じ。揃わなければ貴女はツキノセカイから永久に出られないから｣
｢は、はい。色々ありがとうございました｣

　助言をくれたミィとティナに深々頭を下げるかぐやを見て、ミィは慌てて声を掛ける。

｢そんないいってば。なんか照れちゃう｣
｢ははは！じゃあ、気をつけてね。かぐやちゃん｣
｢クスクス…さあ、いってらっしゃい｣
｢はい！行ってきます｣

　ミィが扉を開けると、フワリと懐かしい薫りを感じ、かぐやは誘われるようにツキノセカイに足を踏み入れた。

　かぐやの後ろ姿を見送り、扉を閉めたミィは目を閉じ、ある少女の事を思い出す。

｢これでいいのよね｣
｢運命…そんな言葉では片付かないかもね。断ち切るにはあの子に托すしかないわ……｣

……そうでしょ？ユキ……

　かぐやとツキノセカイの闘いは始まったばかり…。


<div style="text-align:center" align="center"><font color="#00ffff">ツ</font><font color="#00f3e8">キ</font><font color="#00e7d1">ノ</font><font color="#00dbba">セ</font><font color="#00cfa3">カ</font><font color="#00c38c">イ</font><font color="#00b775">と</font><font color="#00ab5e">か</font><font color="#009f47">ぐ</font><font color="#009330">や</font><font color="#008000">姫</font>



<font color="#80c0ff">この先に
何が待ち構えていても
私は負けない……</font></div>


つづく……

 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2015-05-31T22:36:46+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
	<item rdf:about="https://meguru.web.wox.cc/novel13/entry89.html">
		<link>https://meguru.web.wox.cc/novel13/entry89.html</link>
		
				
		<title>迷いと覚悟</title>

		<description>きっと、逃れる事は出来ない…


ツキノ…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ きっと、逃れる事は出来ない…


<div style="text-align:center" align="center"><font color="#00ffff">ツ</font><font color="#00ead4">キ</font><font color="#00d5a9">ノ</font><font color="#00c07e">セ</font><font color="#00ab53">カ</font><font color="#008000">イ</font></div>

　#名前#と青年が後ろを振り向くと、二人の女性が佇んでいた。一人は黒いロングコートを羽織り、奇抜な衣装を着た、金髪碧眼の美しい女性、片方は歳の頃はかぐやと同じくらいだろうか、オレンジ色の髪に青い眼、タンクトップに短パンを履いた少女。何よりも目を引くのは頭に刺さった(？)ボルトにツギハギだらけの体。しかし、あどけなさの残る、可愛らしい顔立ちをしていた。

｢ミィ！！……とティナ……｣

　最初は嬉しそうな笑顔を浮かべた青年……ブライアスだったが、次第に勢いが無くなり小さくなる。
そんな彼の様子を見て、
金髪の女性がクスリと笑う。

｢あら、私はお邪魔かしら？ブライアス｣
｢へ？い、いやあの。そういう訳じゃ…｣

　ごにょごにょとしどろもどろになるブライアスを、不思議そうに見つめるオレンジ髪の少女、その光景を唖然と見つめるかぐや。ふと、金髪の女性がかぐやに視線を向ける。

｢貴女がかぐやね。私はティナ。そこで青くなったり赤くなったりしてる子はブライアス、そして、私の隣にいるボルトの刺さった子はミィよ｣

　金髪の女性…ティナが、簡単に紹介をすると、隣にいたオレンジ髪の少女…ミィがぷぅと頬を膨らます。

｢ちょっとティナ！！私のコレは刺さってるんじゃなくて飾りなの！！変な言い方しないでよ！｣
｢あらごめんなさい。悪気は無かったのよ（笑）｣
｢…もう。まあ、一通り紹介は終わったから……さて、本題に入りましょうか｣

　そういうと、ミィはかぐやの前まで歩み寄る。思わず後ずさるかぐやに、傍らにいたブライアスが『大丈夫だよ』と肩を叩き笑いかける。一方のミィは困ったように眉尻を下げ笑う。

｢そんなに怯えないでよ。なんか私が悪役みたいじゃない｣
｢え、あ、ごめんなさい｣
｢別に気にしてないわ。それより、私が貴女をここに呼んだ理由を話さないとね。聞いて貰える？｣

　確かに、なぜ自分がこんな所にいるのか、ここは一体どこなのか…。知りたい事はたくさんある。でも、なぜか聞く事に躊躇している自分がいるのも確かで。

でも……



｢わかりました。お願いします｣


　意を決したかぐやは真っ直ぐにミィを見つめる。この状況を把握しない限り、解決策はない…そう思った。



<div style="text-align:center" align="center"><font color="#00ffff">迷</font><font color="#00e6cc">い</font><font color="#00cd99">と</font><font color="#00b466">覚</font><font color="#008000">悟</font>



<font color="#80c0ff">真相を知る迷いに
立ち向かう覚悟を持って…</font></div>



つづく………
</font>

 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2015-05-31T22:34:02+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
	<item rdf:about="https://meguru.web.wox.cc/novel13/entry88.html">
		<link>https://meguru.web.wox.cc/novel13/entry88.html</link>
		
				
		<title>夢の番人と案内人</title>

		<description>夢幻界(ここ)には、『私』の知らない『私…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 夢幻界(ここ)には、『私』の知らない『私』を知っている人達がいる……。

<div style="text-align:center" align="center"><font color="#00ffff">ツ</font><font color="#00ead4">キ</font><font color="#00d5a9">ノ</font><font color="#00c07e">セ</font><font color="#00ab53">カ</font><font color="#008000">イ</font></div>

青年に抱えられ、真っ暗な世界を進んでいくと、次第に回りが色付いてきた。
白く淡い色合いのそれは、段々と形になっていき、やがて大きな扉となった。

｢さ、着いたよ。夢の入口だよ｣
｢え……ここ？ここから入るの？｣

青年はゆっくりとかぐやを降ろし、キョロキョロと周りを見回す。

｢あれ？ミィ？………おいおい、持ち場離れて大丈夫なのか？｣
｢？ミィ？｣

独り言のように呟いた青年の言葉に、名前と思わしき単語を聞き取ったかぐやが、不思議そうに聞く。
すると青年は、頭を掻き苦笑しながら#名前#に向き直る。

｢ああ、夢の扉を守る番人なんだ。君を連れて来るように言われたんだけど……どこ行っちゃったのかな｣
｢番人………｣
｢あ、そんな警戒しなくても大丈夫！！怖い人じゃないよ｣

不安が顔に出ていたのだろう。青年が慌てたようにかぐやに向き直り笑う。

｢だからそんな泣きそうな顔しないで？｣
｢え？あ、ごめんなさい…｣

そんな顔をしていたのかと、恥ずかしさにかぐやは顔を赤らめ青年に謝ると、『気にしなくていいよ』と頭を撫でてくれた。その心地よさに少しずつ緊張が緩んでいき、落ち着きを取り戻した。

ここの事も自分の置かれている状況も、その門番に会えば分かる。

かぐやがそう結論づけた時、

｢ブライアス！！｣
｢あら、早かったのね｣

…かぐやの運命の歯車がゆっくりと回り始めた……


<div style="text-align:center" align="center"><font color="#00ffff">夢</font><font color="#00efdf">の</font><font color="#00dfbf">門</font><font color="#00cf9f">番</font><font color="#00bf7f">と</font><font color="#00af5f">案</font><font color="#009f3f">内</font><font color="#008000">人</font>


<font color="#80c0ff">この出会いに
一縷の希望を託して………</font></div>


つづく……
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		<dc:date>2015-05-31T22:31:31+09:00</dc:date>
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