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	<title>完結 - LOOP</title>
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		<title>アトガキ</title>

		<description>アトガキ




つ、ついに完結です！…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ <span style="font-weight:bold;font-size:large;">アトガキ</span>




つ、ついに完結です！！

『Ghost Labyrinth』全13話完結です！←大切な事なので二回言いました。

なんだか…一体どうなるんだろうか…完結するんだろうか……色々不安だらけの連載でしたが、(特に7話あたりから訳が解らないかんじに…)なんとかたどり着きました！！
読んでくださった方々、ありがとうございます！！

それにしても文章力が欲しい……。


さて…この話は私、銀だこの夢がベースに出来たお話です。なので、支離滅裂だったりぶっとんでいる場面が多々あります。
じつはもう少し長くなる予定でしたが、黒幕間宮たんもいなくなったし、楓と和馬もくっついたしいいかなと完結に持って行きました。と、言ったものの私の気力が限界でした。ははは；

迷宮とは…意志を持った、心を写す鏡みたいな物です。自らに写った者達の心底を見、自ら望む結末へと導く者に力を貸す。
今回の場合は、間宮のせいで浮かばれない楓達の亡霊を上げてあげる事が迷宮の目的だったようです。
そのため、間宮をわざと自らの世界に入れ、間宮が楓を引き込もうとしている事も読んでいたため、親友の桜や父親の雅久、想い人の和馬を引き込んだ……といった感じです。解りにくくてすみません……；(私自身もこんがらがってます←オイ)
なるみ達を呼んだのは『迷宮』です。雅久が自分が呼んだと言っていますが、彼の声を借り『迷宮』がなるみ達を呼び、自らの世界に連れてきた…が妥当ですね。結果、すべてが救われ迷宮は役目を終える事が出来た訳です。

さて、気になるなるみと夕なその後ですが……お題か短編でポチポチ書いていこうと思います。


……長々と書いてしまいましたが、ここまで読んで下さってありがとうございました！！

また、次の作品で……


《銀だこ》


2014/6/4 完結
 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2015-06-01T04:24:49+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
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		<title>脱出…そして未来へ</title>

		<description>…………―
………―
…―


｢お、終わった…の？…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ …………―
………―
…―


｢お、終わった…の？｣
｢ああ……たった今な｣
｢……っ、はあ…｣
｢！！なるみ！！｣

今まで張り詰めていた気持ちが解放され、なるみはその場にヘタリこむ。そんななるみを支える夕も、疲れの中に安堵の表情をみせる。

<font color="#00c000">『よく頑張ったね。君達のおかげだ』</font>
<font color="#ffc0ff">『貴方がたのおかげで、私達は再び出会う事が出来ました』</font>
<font color="#00c0ff">『本当に…ありがとう』</font>

三人からの感謝の言葉に、二人はほんのり赤面しつつ、笑みを零す。

…終わったのだ。ようやく。
これで楓たちも、そして自分たちもこの迷宮から脱出できる。

<font color="#00c000">『君達の願い、迷宮は必ず叶えてくれるだろう』</font>

いやはや、若いとはいいものだなと笑う雅久に、楓と和馬も見つめ合い穏やかに微笑む。と、楓が和馬に向き合う。

<font color="#ffc0ff">『か、和馬さん…あの……』</font>
<font color="#00c0ff">『？楓さん…？』</font>

何やら赤くなりモジモジしだした楓を不思議そうに見つめる和馬。

<font color="#00c000">『…さて、後は若い者に任せるとしようか（笑）』</font>
<font color="#00c0ff">『え？』</font>
<font color="#ffc0ff">『お、お父様！！』</font>

二人を見て、何やら感じたのか雅久が部屋を出ていく。和馬はキョトンとし、楓はさらに赤面した。

｢わ、私達も出て行ったほうがいいのかな…？｣
｢いいんじゃね？生まれ変わりの俺達が見届けてやろうぜ？｣
｢う……うん…｣

しかし、やはり堂々と真っ正面というのも気が引け、二人は近くにあったソファの影に隠れた。

<font color="#ffc0ff">『あ、あの……ずっと渡しそびれていたの………これを』</font>

楓が差し出した手には、

<font color="#00c0ff">『これは…懐中時計……これを…俺に？』</font>
<font color="#ffc0ff">『////えぇ』</font>

ますます赤くなり俯く楓に、和馬は懐から何かを取り出し楓に差し出した。

<font color="#00c0ff">『俺もずっと渡しそびれていた。これを…』</font>

それは…桜色の簪。それを見た楓は目を見開き、涙を溢れさせる。

<font color="#ffc0ff">『嬉しい……ありがとう、和馬さん……』</font>
<font color="#00c0ff">『俺の方こそ…ありがとう……愛してる、楓さん』</font>
<font color="#ffc0ff">『！！……わ、私もっ……ずっと……ずっと貴方といたい……愛しています』</font>

優しく抱きしめ合う二人。二人の真心は100年以上たってようやく結ばれたのだった。



―――…
――…

｢良かった……本当に…｣
｢だな｣

もう、二人は決して離れる事はない。幸せそうに抱擁を交わす楓と和馬を見、なるみは心の底から安堵した。

……と、その時、



<font size="3" color="#FF0000">ゴゴゴゴゴ……</font>


凄まじい地響きと揺れに、なるみと夕は立ち上がり身構える。

<font color="#00c000">『…ついに始まったか。早く玄関前に行くのだ！』</font>

いつの間にか戻ってきた雅久に逃げるよう言われ、何が何だか解らない二人。

｢え？何が始まったの？｣
<font color="#00c000">『迷宮は間もなく消滅する。跡形もなくな』</font>
｢な！！なんだと？｣
｢そんな……どうして…｣

突然の非常事態に二人は唖然とする。
消滅……望んでいた事だ。その為にここまで来たのだ。
しかし……ふに落ちない。迷宮は自分達の望みを叶えてくれるはずだ。なのになぜ……

<font color="#00c000">『迷宮は君達を帰すと同時に消え去る。迷宮自身も、君達を確実に帰したいと思っているが……どうやら先程の秀志くんの件で力を使い果たしたようだ』</font>
｢ちっ……間宮の野郎！！最後の最後まで……｣
｢ゆ、夕くん……；でも、玄関前に行っても、出口が…｣
<font color="#00c000">『玄関前に大時計がある。そこが君達の時間への入口だ』</font>
｢……時計……あ！そういえば……｣

この世界に来る前、確かにホテルのロビーに大時計があった。随分と古い物だなと記憶している。受付の人に聞くと、昔と場所が変わっていないとも………そう、あの大時計が唯一昔と変わっていないのだ。
あの時計は当時の惨劇を知る唯一の遺産。あの時計こそが迷宮だったのだ。
一体どうやって間宮が迷宮を乗っ取っていたのかの経緯など疑問は残るが、今はグタグタ考えている時間はなさそうだ。



<font size="3">ゴーン………ゴーン……</font>


時計が……鳴った。
まるでこちらに来いと言っているように……。

<font color="#00c000">『あの鐘が鳴り終われば二度とあちらには戻れん。迷宮と消滅してしまうぞ。急ぐんだ！』</font>
｢は、はい！でも、雅久さん達は……｣

帰る事よりも何よりも気掛かりなのは、雅久たちだ。せっかく解り合え、幸せを手にしたのに……このままでは迷宮と運命をともにしてしまう。そんななるみの心情を察したのか、雅久は優しく微笑む。

<font color="#00c000">『…君は、本当に優しい子だ。大丈夫だよ。私達は……君達が救ってくれたんだ。ちゃんと行くべき所へ行く。心配しなくていい』</font>
｢……良かった。必ず、必ずたどり着いてください｣
｢っ！なるみ、やばいぜ！急ぐぞ！！｣

涙を流して、三人を見つめるなるみの腕を夕が引く。なるみは、はっと我に返り夕の手を掴み、玄関前へ走る。


<font size="3">ゴーン………ゴーン……</font>


なるみ達にはその鐘の音がカウントダウンに聞こえた。


……バタバタバタ……


二人はひたすら走った。
長い長い廊下を後ろを振り向く事なく走った。
あれだけいた残留思念はどこにもいない。恐らく間宮がいなくなり、楓達を救った事で迷宮から解放されたのだろう。

｢はあ……はあ……ここか！｣
｢夕くん！あの時計よ！！｣
玄関前にたどり着いた二人の目の前に、光に包まれ輝く大時計があった。
二人は頷き合い飛び込んだ。



………ゴーン…………



…最後の鐘が鳴った。

と同時に…

世界が音を立てて崩れ去った。





………………―
…………―
……―


…チュン……チュン…


眩しい光に、なるみはうっすらと目を開ける。

｢ん………！ここは…｣

なるみは部屋のベッドにいた。服も制服ではなく、パジャマのままだった。

｢ゆ……夢？｣
｢ん～～、なるみ？早いね｣
｢里穂！？｣

親友の声になるみは、思わず声を上げ振り向く。
一方の里穂はそんななるみに驚いた。

｢な、なに？どした？｣
｢え？……あ、ううん、何でもないよ。おはよう、里穂｣
｢？変ななるみ。おはよう！！｣
｢ふふ……あはははは｣
｢！！な、今度はなに？｣
｢ううん、帰れて良かったなと思って｣
｢？…怖い夢でも見たの？大丈夫？｣
｢うん！大丈夫！！さあ！今日も張り切って行くわよ！｣
｢………テンション高いねぇ……｣

いままでの出来事はすべて夢なのか……。
でも、それならそれでもいい。
自分はここに……自分の時間にいる。

｢あ、……時間といえば…｣

なるみは鞄の中に手を入れる……が、

｢あ…れ？ない………｣

いつも肌身離さず持ち歩いていた懐中時計が姿を消していた。

｢ないって？何が？｣
｢懐中時計｣
｢へ？なるみ、そんなの持ってたっけ？｣
｢え？｣

懐中時計の事は里穂も知っているはず。なにせ、いつも持ち歩いていたから。
なるみは里穂に説明するも、里穂は不思議そうな顔をするだけだった。


なるみは、ふと今まであった事を思い返す。
迷宮に入り込んで、夕に出会い、闘い謎を解き、黒幕と対峙して……そして……、

｢あ！｣

思い出した。
懐中時計楓に渡した事、その懐中時計は楓が和馬に渡した事。そして和馬から楓が貰ったものは………


………カラン………


｢……簪……｣

なるみは床に落ちた簪を拾う。
薄紅色の、桜の花びらをちりばめたような模様の綺麗な簪。
黙って簪を見つめるなるみに、里穂が覗き込む。

｢なるみ、修学旅行にまで簪持って来てんの？よっぽど大事なんだねぇ！｣
｢え、うん｣
｢…大事な人から貰ったの？｣
｢え？……えと…｣

夢ではなかったのだ。これが何よりの証拠だ。
核心をえた里穂の言葉に、しどろもどろになるなるみに、里穂は無くすなよ～と笑いながら部屋を出て行った。
里穂の後ろ姿を見送ったなるみは

｢……うん、大事な物だよ。とっても……｣

と、一人部屋で呟いた。



…………―
……―


｢では、これより自由行動です。集合時間に遅れないように…解散！｣

何事もなく旅行最終日が始まった。
なるみはなんとなく周りを見回してみる。


……いない……


少しガッカリするなるみ。最後に姿だけでも見たかった。ふぅ…とため息をつくと、気を取り直して地図を広げた。


……………―
………―


｢うわあ！満開だ！綺麗だね！｣
｢うん！｣

なるみと里穂は荻月公園に来ていた。
満開の桜にキラキラと輝く川、鴨が楽しそうに泳ぐ池。ほんのりと桜の匂いがし、二人は深呼吸する。

｢ここって昔、お花見会場だったらしいよ。貴族とか金持ちがお花見に来てたんだって｣
｢そうなんだ…詳しいね里穂｣
｢……てパンフレットに書いてあった｣
｢……だろうと思った……｣

そんな会話を繰り広げていると、


………ドンッ………


誰かにぶつかった。

｢ご、ごめんなさい！よそ見してて………！！｣
｢俺の方こそわりぃ……あ……｣

運命とは解らないものである。

｢なるみ……｣
｢夕……くん……｣

なるみがぶつかったのは、共に迷宮をさ迷った、羽山夕だった。

｢夕くんも桜を見に？｣
｢え？あ……うん、まあ…｣
｢私達もなの。ね？里穂……あれ？｣

なるみが里穂に振り向くとそこにはおらず、遥か遠くで手を振っている。

｢先にバスに行ってるから！集合時間遅れないでね（笑）｣
｢ちょ……里穂！？｣
｢ガンバ！なるみ！！｣
｢何を！？？｣

笑顔で去っていく親友を呆然と見送るなるみ。夕は里穂が去った方を眺めていたが、なるみに向き直る。

｢なあ、少し歩こうか…｣
｢え？/////……うん…｣

ほら…と差し出された手。ふと、迷宮での事を思い出し、くすりと笑って手を重ねる。
しばらく、桜並木を歩いて川縁にあるベンチに腰を下ろす。
黙って座る二人。
先に沈黙を破ったのは夕だった。

｢…帰ってこれたんだな。『ここ』に。俺、ベッドで目が覚めてさ。ほっとした反面なんか寂しくなってきたんだ。全部夢だったんだって…｣
｢…………私もよ。帰れて良かったって思った。でも寂しいとも思ってきて……｣
｢……最初はなんでだか解んなかった。でも……解ったんだ。こいつが教えてくれた｣

夕はなるみの前に手を差し出す。そこには……

｢懐中時計……｣

それは確かになるみが今まで持っていた、祖父の形見だった。

｢この懐中時計が俺のモヤモヤの正体を教えてくれたんだ｣

夕はなるみを見つめる。なるみも夕を見つめた。

｢なるみが……隣になるみがいないからなんだって｣
｢ゆ、夕く……｣
｢たった一晩の出来事だったし、おかしいのは分かる。でも、俺は……｣

夕は何かを決意したような顔をした。

｢なるみ……お前が好きだ｣

優しく染み渡っていく言葉。それを聞いたなるみは、目を見開きポロポロと涙を零す。そして、震える唇を動かした。

｢私も………夕くんが好き｣

驚いたような表情を浮かべ、次第に照れ臭そうな笑顔を浮かべる夕に微笑むなるみ。

｢絆って凄いな｣
｢うん、そうだね｣
｢これから何があっても、俺がお前を護るから｣
｢うん…｣
｢ずっと側にいろよ｣
｢うん、……嬉しい。ありがとう、夕くん｣




………そんな自分達を桜の舞い散る中、見守る若い男女がいた事を二人は知らない………



『迷宮』は誰の心にもあり、誰にでも作り出せる。

でも、忘れないで。

『迷宮』は人の心そのものだと…。
『迷宮』は救いを求めていると…。
……そして、絆の力を思い出す場所だということを………




《END》

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		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2015-06-01T04:22:37+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
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		<title>迷宮</title>

		<description>迷宮




………―
……―


『もともと…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ <span style="font-weight:bold;font-size:large;">迷宮</span>




………―
……―


<font color="#00c000">『もともと、この迷宮は秀志くんの意識から生まれた。確かに、彼が作り出したのだ』</font>
｢でも、今は間宮の思い通りにならない…なんでだ？｣
｢楓さん達を解放すればこの迷宮は消えるの？｣

迷宮は一体どういう存在なのか。どうしたら無くなるのか。なるみと夕は雅久に答えを求める。

<font color="#00c000">『この迷宮……いや、この空間は人の想いに反応し、力を強くする。最初は秀志くんの想いしか存在しなかったこの空間に、楓が引き込まれ、それを追うように和馬くん、桜くん……そして香澄や私も引き込まれた。色々な想いが重なり合い絡み合い、この形になった』</font>
｢じゃあ、最初はこんな外見じゃ無かったのか……｣
<font color="#00c000">『初めこそ秀志くんの願いを聴き入れていたが…君達、なるみくんと夕くんが来た事で、迷宮は主を変えた。………君達を選んだのだ』</font>
｢迷宮が…私たちを選んだ……？｣
<font color="#00c000">『うむ。迷宮は想いの強さに順応する。君達はここに来たとき、なんと願った？』</font>

二人は一番最初にこの迷宮に来たときの事を思い出す。

｢なんとしてでも脱出する…｣
｢元の世界に帰りたい…確かにそう考えていたわ｣

二人の答えを聞き、雅久はゆっくりと頷いた。

<font color="#00c000">『その想いは君達の核となるもの…この迷宮をさ迷い、真実を見聞きし何を思った？』</font>

今まで見てきた様々な惨劇。苦しみもがきながらも、互いを想い存在を信じている楓と和馬。
楓を案じながらも和馬への想いを捨てきれず、罪悪感と自己嫌悪で精神を痛め付けていた桜。
実の娘の事を信じられなかった事を悔やみ、さ迷う雅久。

……救いたい。傲慢かもしれないが、きっと私達ならば出来る。そう思いはじめている事に気づいた。

｢救いたい。楓さんも和馬さんも桜さんも。この迷宮に囚われている人達を、解放してあげたい……｣
｢俺一人じゃダメでも、きっと二人なら……なるみと一緒なら出来る。そう思いたい……いや絶対出来るさ｣

雅久は二人の答えに満足したのか微笑む。そして力無く座り込む間宮に目を向ける。

<font color="#00c000">『秀志くん…解るかね。君に足りない物が。何故、迷宮が君を見限ったのか……』</font>
<font color="#8040ff">『…』</font>

何も答えず唇を噛み締める間宮に雅久は静かに言った。

<font color="#00c000">『もし秀志くんが本心から楓を思ってくれているだとしたら、有り難い事だ。しかし、君のそれは愛ではない。独りよがりの想いをぶつけているだけだ。自分の物にしたい…側に置きたい。そのために犠牲になった者に対して何の懺悔もない。………楓は気づいていたよ。君が自分の利の為、自分を利用しようとしている事に…』</font>
<font color="#8040ff">『！！』</font>
｢利用…？｣
｢どういう事なの？｣
<font color="#ffc0ff">『……それは、間宮さんの家の事情を、私が知ってしまったから……』</font>
｢｢！！｣｣

皆が声のした方を振り向くと、和馬に支えられ起き上がった楓がいた。


<font color="#00c0ff">『楓さん、何を知ってしまったんだ？』</font>

神妙な面持ちで、楓に語りかける和馬と一度目を合わせ小さく頷き、再び視線を戻し語りはじめた。

<font color="#ffc0ff">『間宮さんには沢山の借金があったんです。それはもうかなり金額が膨らんでいて…。間宮さんの御祖父様が倒れたのは、恐らく…借金返済の為にご苦労なされたからです』</font>
｢借金？｣
｢でも、それをなぜ楓さんが…｣

疑問を投げかける、なるみと夕を見、楓は目を伏せる。

<font color="#ffc0ff">『高見沢主催の茶会で、初めてお会いした時、地上げ屋の方がいらしていて、呼び止められたんです。最初はお父様のお知り合いかと思っていたのですが、どうやら間宮さんのお知り合いのようだったので、彼の居場所を教えた後、なんとなく後をついていったんです。そしたら…』</font>
｢借金の返済の件だったと｣
｢でも、それと楓さんとなんの関係が？｣

地上げが必要な借金など縁のない二人は、よく解らない。それに、借金返済なら間宮は腐っても金持ちの御曹司なのだ。自分でなんとかなるはずだ。なぜ楓が巻き込まれなければならないのか……。すると楓が着物の裾をキュッと握り、間宮を見た。

<font color="#ffc0ff">『彼はこう言っていました。｢そろそろ大きな土地が手に入る。…高見沢の土地をやる｣と。それを聞いた時、私は彼の思惑に掴まってはならない。高見沢を守らなくてはと思い、婚約をお断りしました。……間宮さんが欲しかったのは、私ではない。高見沢だったんです』</font>

間宮は最初から高見沢を手に入れるつもりで、楓に近付いたのだ。婚約をし、婿入りすれば、高見沢の総てが手に入る。しかし、間宮には誤算があった。

｢確か、お姉さんがいましたよね。次女の楓さんと婚約してもダメなんじゃ…｣
｢おい…まさか。香澄が殺されたのって………｣
<font color="#00c000">『…………香澄が死ねば、財産分与は自分に有利になる。それが狙いだったといったところか…香澄の夫は戦地に行っていたし、帰ってくるかも解らん』</font>
<font color="#00c0ff">『…なんて事を……間宮、貴様……！！』</font>

皆の前で露見した悪意と蛮行。もはや言い逃れは不可能となった。

｢間宮、観念しな｣
｢貴方だけは絶対赦さないわ！｣

詰め寄る二人に、間宮は俯いたまま肩を震わせる。
………が、

<font color="#8040ff">『…ハ、ハハハハハハハハ！！赦さない？観念しろ？…………片腹痛いわ！！』</font>

間宮はそう言うと、天を仰ぎ叫んだ。

<font color="#8040ff">『迷宮よ！私の魂と引き換えにここにいる哀れな者共にに、完全なる無を与えよ！』</font>


<font size="3" color="#FF0000">

ゴゴゴゴ………</font>


突き上げるような地響きと共に、凄まじい気配が近付いて来る。
それは間宮をあっと言う間に飲み込み巨大な黒い固まりとなった。

｢な、何が起きてんだ！？｣
｢解らない……でも｣

……何かが始まる。
二人は身構える。和馬も楓を護るように抱きしめ、間宮を見つめる。

<font color="#8040ff">『ははははは！さあ、迷宮よ。我が願いを叶えよ！』</font>

どす黒い影は次第に間宮に流れ込み、完全に一体化した。

<font color="#8040ff">『ふふふ……ああ、実に気分がいい………さあ、跡形もなく消し去ってやろう』</font>

間宮は不敵に笑い、両手を広げた。

｢やべぇ……なるみ、油断すんなよ｣
｢うん………夕くんも気をつけて｣

二人が武器を構えた瞬間…



<font size="3" color="#FF0000">―ぶしゅぅ……―</font>


何かが勢いよく吹き出る音……と同時に、




<font size="3" color="#8040ff">『ぎゃあああああ！！？』</font>


間宮の悲鳴が聞こえた。



<font color="#00c000">『やはりこうなったか……。一度見限った者に、迷宮は力を貸しはしない。秀志くん、君の願いは却下されたようだ』</font>

大量に出血しながら、苦しみにのたうちまわる間宮を見つめ、雅久は静かに呟いた。

<font color="#8040ff">『な、何故だあ！！契約を交わした私を！何故何故………………<font size="3">何故ぇ！！</font>』</font>

雅久は苦痛に顔を歪め、喚く間宮を見据える。

<font color="#00c000">『言っただろう…。この空間はすでに君の意志から離れている。いくら契約を果たそうとも、選ぶのはあちらだ。それに君は今まで散々楓達を苦しめてきた。もう願いは叶っただろう…？』</font>
<font color="#8040ff">『馬鹿な…馬鹿な馬鹿なあ！！い、嫌だ！消えたくないっ！死にたく……ない！！』</font>
<font color="#00c000">『秀志くんよ。この空間を…迷宮を作り出した時、すでに君はこうなる運命だった。それをこの世界は見越し、新たな救いの意志を呼び込むよう、私や桜くんを引き込んだ。君の罪を知っている私達を、な。そして、救いの意志は、100年以上たったこの時に現れた。｢生まれ変わり｣として』</font>
<font color="#8040ff">『ぐ…ぐぐぐぐ…』</font>
<font color="#00c000">『秀志くん…｢絆｣の力を甘く見過ぎた…君の負けだ。』</font>
<font color="#8040ff">『あ゛……あ゛ぁぁあ゛あ………』</font>

まるで、砂の城が崩れるようにボロボロと形を失い始める間宮。
なるみと夕、楓と和馬はただただその光景を見ているしかなかった。



<font size="3" color="#8040ff">『いやだああああ！！』</font>



一際大きな断末魔を残し、…しばらくすると、間宮の居た場所には何も残ってはいなかった。



<div style="text-align:center" align="center">・
・
・
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メ
イ
キ
ュ
ウ
ハ
、
ツ
ミ
ビ
ト
ニ
ヨ
ウ
シ
ャ
ハ
シ
ナ
イ
・
・
・
・
・
第十二話《完》</div>


 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2015-06-01T04:20:55+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
	<item rdf:about="https://meguru.web.wox.cc/novel14/entry29.html">
		<link>https://meguru.web.wox.cc/novel14/entry29.html</link>
		
				
		<title>導く者</title>

		<description>導く者



『ふふふふふ……ははははは…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ <span style="font-weight:bold;font-size:large;">導く者</span>



<font color="#8040ff">『ふふふふふ……はははははははははははははははは………だからどうしたと言うのだ。お前の戯言に過ぎん』</font>

口を歪ませ嘲笑う間宮。なるみと夕はそれぞれ武器を構える。
間宮はそんな二人を尻目に、倒れている楓に近づき屈み込む。

<font color="#8040ff">『お前は私のモノだ…そうだろう？楓』</font>

愛おしげに楓を見つめ、手を伸ばそうとした間宮だったが………



<div style="text-align:center" align="center"><font size="3" color="#FFFF00">バチッ</font></div>


電気が走ったような音と衝撃に、間宮はビクリと手を引っ込めた。

<font color="#8040ff">『か、楓！？何故…何故だ！！何故私を受け入れない？！』</font>

一人喚く間宮を無視し、声が響く。

<font color="#ffc0ff">『和馬…さん……た…助けて』</font>
<font color="#00c0ff">『楓さん！！………っつ』</font>

楓の声を聞いた和馬は走り寄ろうとするが、二人を取り巻く黒い影に弾かれる。

｢か、和馬！！｣
｢楓さんは間宮を拒絶しているわ。どんな力が働いて………！！もしかして｣
｢？どうした、なるみ｣

なるみは懐中時計を彼女に渡した事を思い出した。

｢……懐中時計。楓さんの和馬さんへの想いが詰まった懐中時計が、楓さんを間宮から護ろうとしているんだわ！｣
｢！！そうか……だったらさっきの現象の説明はつくよな！！｣
｢うん！でも問題は……｣


どうやって間宮から楓を取り戻すか……。

二人の周りには未だに黒い影が荊のように絡みつき、なるみ達の接近を拒んでいる。現に和馬もそれで負傷している。無理矢理近付くのは危険過ぎる。
その時、あの老人の言葉を思い出した。


『この先どんな事があろうと、お互いを信じ助け合うんだよ。君達の絆は、百年以上の時に流されながらもしっかり繋がっている。楓と和馬くんを助けてやってくれ……そしてあの男に思い知らせてやれ、君達の絆の力を』


｢絆の……力……！｣

なるみは夕の手を掴み間宮と楓を取り囲む影に走る。

｢お、おい！なるみ？｣
｢夕くん、私たちの絆の力間宮に見せるのよ！力を貸して！！｣
｢お、おう！｣



二人は大きく振りかぶり……


<div style="text-align:center" align="center"><font size="3" color="#FFFF00">ザシュッ</font></div>


荊の影を切り裂いた。


二人はその隙に、間宮に近付く。

｢間宮、やっと近づけたぜ｣
｢楓さんを返して貰うわ！｣
<font color="#8040ff">『！！』</font>

結界を破られたうえ、武器を突き付けられ、焦りをあらわにする間宮。恐らく彼にとって予想外な展開ばかりなのだろう。
支配したはずの楓に拒絶された事も、なるみ達の強さも………。ヘナヘナとその場に座り込みうなだれる。

<font color="#8040ff">『な、何故だ………何故思い通りにならない。私が……私が造り出した世界のはずなのに……』</font>

迷宮に楓を閉じ込め、苦痛や悲しみの記憶だけを見せ、自分のいいように操作したはずのこの迷宮。しかし、負の記憶のみを残した桜は解放され、楓の元に辿り着けないように惑わしていたはずの和馬はこの部屋へ入ってしまった。そして一番の誤算は………


<font color="#8040ff">『まさか……楓と和馬の生まれ変わりがいるとは……』</font>


誰にも干渉されないはずだった。
誰にも邪魔されず、楓といられる場所にしたはずだった。
誰かが総てを知りなるみ達をこの迷宮に引き寄せた…………それしか考えられない。ならば誰が……？



<font color="#00c000">『私だよ。秀志君』</font>



間宮はビクリと肩を震わせゆっくり振り返る。一方、なるみと夕は顔を見合わせる。

｢この声……｣
｢どこかで聞いたな…｣

二人も声のした方を向き目を見開いた。

｢売店のおじいさん……｣
｢……マジか……｣


そこには、売店でなるみ達に武器をくれたあの老人が立っていた。



<font color="#8040ff">『な、なぜ…貴方が…』</font>

思いがけない人物の突然の出現に、間宮は言葉を失った。

<font color="#00c000">『なぜ…か。結論から言えば楓や和馬くん…そして桜くんと同じ、私も残留思念の一つ。心残りがあったため、この迷宮に誘われた……と言ったところか』</font>

話ながら老人はゆっくりと間宮に歩み寄った。
そして、間宮の前に立つ。

<font color="#00c000">『間宮くん、この迷宮はもはや君の思い通りにはならない。君も薄々感じでいたのだろう？この子達の存在を知った時に…』</font>
<font color="#8040ff">『……』</font>
<font color="#00c000">『君は怖いのだ。総てを……自分が犯した罪を認めるのが。楓を欲するあまり、周りが見えなくなり殺人まで犯した、あの時の自分が怖くて仕方がないのだろう？』</font>
<font color="#8040ff">『……っ』</font>

老人の言葉になるみと夕は首を傾げる。
間宮が怖がっている…自分が犯した罪を……

二人の心情を読んだのか、老人は話し出した。

<font color="#00c000">『彼…秀志くんは私の恩師の孫なのだよ。まだ赤子の頃に流行り病で両親を亡くした為、先生の元に引き取られた。彼には両親に愛された記憶がない。また先生も多忙な方で構う暇もなかったそうだ。彼は「愛」という物を知らずに大人になってしまったのだ』</font>
｢そうだったの…でも、それと罪を認めるのを怖がるのとどういう関係が？｣

老人は間宮を見ると、悲しげに目を伏せた。

<font color="#00c000">『秀志くんは何も知らない。やってはならない事も、言ってはいけない事も。いけない事をしても叱る者もいなかったのだから…そんな人生を当たり前に生きてきたのだ。その陰で先生が苦労していた事も知らずに……先生が病床にふけってからますます酷くなっていった。そんな秀志くんを見て、先生は凄く悩んでいた。事件の数日前、私は先生に呼ばれて「あの子をああしてしまったのは自分だ。もし、あの子が何か話を持ち掛けて来ても断ってくれ……」と。「それでも食い下がるようなら、私の事など気にせず追い出してくれ」と。あの日、私はそのつもりだった。あんなに必死な楓の顔を見て、秀志くんの言葉に疑問を持ちはじめた。もう一度…もう一度秀志くんに聞いてみようと。でも、それは叶わなかった』</font>

なるみと夕は老人を見つめた。黒い茨を切り裂いた事で、楓の側に行くことが出来た和馬も彼女を抱え老人を見つめた。
そんな中、老人は静かに目を閉じた。

<font color="#00c000">『ああ。あの日………』</font>


<font color="#ff0000">※残酷、流血描写あり。苦手な方はご遠慮ください。</font>


……コンコン……

｢どうぞ…｣

楓が家を飛び出した後、一人書斎で考え事をしている雅久の元に来客が来た。

｢お義父さん｣
｢………秀志くんか｣

雅久はゆっくりと椅子から立ち上がり、間宮の前に立つ。
一方の間宮は微かに顔をにやけさせる。

｢どうかしましたか？さっき、楓が家を飛び出していく所が見えたので……｣

心配で……と、さも今来たばかりだといった雰囲気を出し、問い掛ける。雅久はそれには答えず、間宮の顔をじっと見つめた。そんな雅久に疑問を抱きつつ問い掛ける。

｢……いかがいたしました？私の顔に何か？｣

出来るだけ平静を装う間宮に、雅久は静かに切り出す。

｢……秀志くん。楓と和馬くんの関係がいかがわしいのは間違いないのかい？｣
｢何を言うかと思えば。確かに間違いありませんよ？｣

笑みを浮かべ肯定する間宮に、雅久は背を向ける。なんとなく、この時間宮は嫌な予感がした。
……嘘がばれたか。
僅かに歪んだ間宮の顔が見えるはずもなく、雅久は独り言のように話しはじめた。

｢楓は……あの娘は今まで交際などしたことはない。親の私や使用人の男性としか関わろうとしなかった。でも、あの娘は和馬という青年を一途に思っている。父親として、あの娘を信じてやりたい。和馬くんと共にある事で楓が幸せなら……私は……｣

いつも穏やかな楓のあんな必死な姿は初めてだった。雅久は、そこまで自分の娘に思われている和馬という青年に会ってみたい、話をしてみたいと思いはじめていた。そして……不確かな噂ではなく自分の目で彼を見極めたい。それはきっと親である自分の努めだ。

……全く予想外な言葉に、間宮は戸惑うと同時に怒りが沸き上がる。

(何故だ……何故私の言うことを聞かない！？)

目の前にいるこの男は、恩師の孫で家柄もいい自分より、薄汚い出来損ないの軍人の事を信じると言ったのだ。これは……自分に対する侮辱だ。
俯き拳を握りしめる間宮の胸にはどす黒い殺意が渦巻いていた。

思い通りにならないなら…………



<div style="text-align:center" align="center"><font size="3" color="#FF0000">コロシテシマエ</font></div>



間宮がそんな事を考えているなど知るよしもなく、雅久は｢話しは終わりだ｣と間宮の脇を通り過ぎ、部屋を出ようとした。が、


<div style="text-align:center" align="center"><font size="3" color="#FF0000">ザク……</font></div>



僅かな衝撃と焼けるような痛み……刺されたと雅久が気づくのにそう時間は掛からなかった。

｢ひ、秀志くん…何を…｣
｢貴方も祖父と同じ様に私の言いなりになっていれば、まだ生かしておいたものを｣
｢秀志……くん……｣
｢でも、もう貴方も潮時、用済みです。もう少し上手く動いてくれると思っていたのに…残念ですよ｣

初めて知った間宮の本性。いつも自分の前では好青年であった間宮。しかしそれは、自分を油断させる為の芝居だったのだ。自分はなんて間違えを犯してしまったのか……。しかし、それに追い撃ちをかけるように間宮は恐ろしい事を口にした。

｢まあ、貴方一人逝くのは寂しいでしょうから、２階にいた二人は先にあの世に送っておきました。あちらで仲良く三途の川でも渡ってください｣
｢！！……か、香澄達まで……秀志くん！君はなんて事を…｣

そんな雅久を見下ろし、間宮は容赦なく短刀を振り下ろした。


<div style="text-align:center" align="center"><font size="3" color="#FF0000">ザクッ…ザクッ…ザクッ…</font></div>


｢ぐ……あ………か、えで………すまん……｣

動かなくなった雅久を歪んだ笑みを浮かべ見下ろしていると、


<div style="text-align:center" align="center">トタトタ……</div>


何者かがこの部屋に向かっている足音が聞こえた。間宮は雅久に短刀を突き刺したまま、部屋の明かりを消し、窓から逃げ出した。その直後、


<div style="text-align:center" align="center">キィ…</div>


｢真っ暗。何も見えないわ｣

桜がやって来たのだ。
<div style="text-align:center" align="center">
＊
＊
＊
＊</div>


………――
……―
…―

<font color="#00c000">『秀志くん、君は自己中心的な歪んだ愛の為に関係のない者を巻き込み、不幸にしてきた。桜くんや香澄と孫まで…まだ解らないのか？』</font>
<font color="#8040ff">『っ！だ、黙れ！私は…私は楓を愛している！私達が結ばれる為の犠牲なのだ！利用価値がないから消した。ただそれだけだ！！』</font>
<font color="#00c000">『秀志くん…そうか、君は気付いていないのか。何故迷宮にいるのか……』</font>
<font color="#8040ff">『な、何を訳の解らない事を！私が創り出したのだ！当たり前だろう！？』</font>

すっかり冷静さを失い、喚く間宮に老人…雅久はゆっくりと首を振る。

<font color="#00c000">『ここは、君が創り出した世界ではない。君を始め、楓や和馬くんに桜くん、そして私の意識と心が絡み合い出来た世界なのだよ』</font>
｢え……｣
｢て事は……｣
<font color="#00c000">『君は死した皆を自分の駒として迷宮に縛り付けた。罪と絶望だけを背負わせて。総ては自分の為に。自分の手は汚さずにお互いに潰し合わせ、邪魔者を排除したのちに楓を自分の元に縛り付けるつもりだった』</font>


………―
……―


｢……そんな…酷い！｣
｢間宮……てめぇ…｣

全ての元凶はやはり間宮だった。
愛や人を慈しむ心が欠落しているとは言え、はいそうですかと許せるものではない。楓や和馬だけでなく、二人を取り巻く者たちを次々に殺し傷つけた男。
そればかりか、死霊となった楓達に絶望や憎しみを背負わせ、争わせ楽しんでいたのだ。
怒りをあらわにするなるみと夕に雅久は静かに首を振った。

<font color="#00c000">『確かに秀志くんは犯罪を犯した。が、その原因を作ったのは彼を取り巻く環境。私たち大人は彼に教えてやる事が出来なかった。その報いを受けたまで……』</font>
｢で、でもっ！！たとえそうだとしても、楓さんのお姉さん達や桜さんも巻き込んだのよ？｣
｢許される訳ないじゃねぇか！こんな奴！！｣

納得いかない……不満をぶつける二人に雅久は静かに目を閉じる。

<font color="#00c000">『秀志くん。覚えていないのか？君の……最期を』</font>
<font color="#8040ff">『ぐ……！！』</font>
<font color="#00c000">『………覚えているのだな』</font>
<font color="#8040ff">『だ、黙れ…！！』</font>
<font color="#00c000">『まだ逃げるのか…そうやって罪を重ね続けて』</font>
<font color="#8040ff">『や、やめろやめろやめろ…………』</font>

苦しみだした間宮。
一体何が起こっているのか……。なるみと夕、皆が間宮を見つめる。と、次の瞬間、



<div style="text-align:center" align="center"><font size="3" color="#FF0000">ヤメロォォォ</font></div>


……間宮の絶叫が響いた。


……―
…―

高見沢邸の事件からしばらくたったある日…、間宮の元に三人の役人がやって来た。

｢間宮秀志だな｣
｢そうですが……。役人の方がなんの御用ですか？｣
｢お前を殺人の容疑で逮捕する｣
｢なっ！！｣

役人の二人が暴れる間宮を取り押さえた。

｢は、離せ！！俺がやったという証拠があるのか！？｣

喚く間宮に一枚の紙を見せた。それは……

｢逮捕状だ。一緒に来てもらうぞ｣
｢！！！ふ、ふざけるな！！必ず訴えてやるぞ！離せ離せ……………


<div style="text-align:center" align="center"><font size="3" color="#FF0000">離せぇぇ！！</font></div>



………―
……―

<font color="#00c000">『その後、君は拷問死したのだよ。楓と同じように』</font>
<font color="#8040ff">『！！』</font>
｢え？｣
｢な、んだと？｣
<font color="#00c000">『本当なら君の魂はあの世に旅立つはずだった。しかし君は死を受け入れられずに、『契約』をしたのだ……この迷宮と』</font>
｢契……約……｣

契約とは何なのか……。
間宮の歪んだ思いが生み出したものではなかったのか………。
この迷宮は一体なんなのか……。



………本当の真相まで、迷宮の正体まで後少し…………。


 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2015-06-01T04:17:30+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
	<item rdf:about="https://meguru.web.wox.cc/novel14/entry28.html">
		<link>https://meguru.web.wox.cc/novel14/entry28.html</link>
		
				
		<title>間宮秀志</title>

		<description>間宮秀志




『楓さん、やっと逢え…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ <span style="font-weight:bold;font-size:large;">間宮秀志</span>



<font color="#00c0ff">
『楓さん、やっと逢えた…』</font>

和馬はそう言うと楓に歩み寄る。なるみと夕は少し離れ、様子を伺った。



<font color="#ffc0ff">『和馬…さん……私、私…』</font>
<font color="#00c0ff">『何も…言わなくていい。君が一番辛い時に側に行けなくて済まなかった』</font>
<font color="#ffc0ff">『……私、不安だった。貴方にまで見捨てられたのかと……少しでも貴方を疑ってしまったわ…ごめんなさい』</font>

涙を流しながら謝罪する楓を和馬は優しく抱きしめる。百年待ち望んでいた彼の温もりを手繰り寄せるように、楓は和馬の背に手を回す。

｢なんか、いい感じに収まったな｣
｢うん。良かった……｣

なるみと夕は微笑み、顔を見合わせる。これでもう、楓と和馬は迷宮から解放される。しかし次の瞬間、

<font color="#ffc0ff">『あ………あ……頭……頭が！！』</font>


<font size="3" color="#FF0000">いやあああああぁ</font>


楓は突然悲鳴を上げ倒れ込む。和馬は彼女を抱き起こそうとしたが、彼女を取り巻くように黒い霧のようなものが和馬の腕を切り裂く。

<font color="#00c0ff">『く……楓さん！！』</font>
｢和馬さん！！…一体何が……｣
｢待て。この状況……あの時と似てないか？｣
｢……！！桜さんの時？！まさか………間宮…秀志…｣
｢あの野郎……楓と和馬の和解を邪魔する気だ｣
｢そんな……やっと……やっと逢えたのに……！！｣

二人が和馬に駆け寄ると、地の底から響くような声がした。



<font color="#8040ff">『ふふ…馬鹿な奴らだよ。楓はもう私の物なのだ。心も体もすべて……ふははは……はははは！！！』</font>

｢くっ！！間宮だな？てめぇ、舐めた真似しやがって！！姿を現せ！！｣
｢楓さんをどうする気なの！？｣

夕となるみの問いに間宮は嘲笑う。


<font color="#8040ff">『ふん…小賢しいガキが。貴様らのような小物など、残留思念で十分だろう。楓は私と共にこの迷宮で過ごすのだ。やっと手に入れたのだ………手放してなるものか！！』</font>


自分本意で他者を無視し、楓の気持ちすら操る身勝手な間宮に、なるみの怒りはピークに達した。

｢………ふざけないで。楓さんは貴方のもの？そんなの貴方の勝手な言い分じゃない！｣

初めて見る、なるみの怒りに夕は目を見開く。いつも穏やかで優しい雰囲気を醸し出す彼女の意外な顔。

(へぇ……言うじゃんか…)

確かに驚きはしたが、幻滅はしない。寧ろ頼もしく感じた。
それを証拠に、なるみの言葉は間宮の動揺を誘ったようだった。

<font color="#8040ff">『なにを……小娘が！！楓は私の妻になる女だったのだ。楓も本当は、どこの馬の骨かも解らんみすぼらしい軍人より、家柄も教養もある私のほうがいいに決まっているだろう！！』</font>
｢本気でそう思ってる？ならなぜ、結婚を断られたの？和馬さんのせい？違うわ。楓さんは……貴方が大嫌いだからよ！｣
<font color="#8040ff">『な……！！』</font>

痛いところを点かれたのか、間宮は言葉を失う。なるみはそんな間宮に、さらに追い撃ちをかける。

｢貴方、自分が楓さんになにをしたのか覚えてるの？彼女の家族を殺して、和馬さんを戦死させて、桜さんを騙して傷つけて……その上その罪をすべて楓さんになすりつけて………｣
｢なるみ……｣
<font color="#00c0ff">『なるみさん……』</font>

夕と和馬はなんとも言えない顔でなるみを見守る。

｢そんな最低な事をしておいて、一緒に居させようなんてむしが良すぎるわ…………楓さんは投獄されて拷問を受けても、貴方に助けは求めなかったわ。なぜだか分かるでしょう？貴方がいくら小細工を仕掛けても、術にかけて記憶を操作し心を奪おうとしても、その人の本心までは奪えない。楓さんが愛しているのは貴方じゃない。和馬さんただ一人よ！！たとえ生まれ変わっても…………貴方を愛する事は金輪際ないわ！！｣

言いたい事はすべて言った。一瞬満足げな表情を見せた。それを見た夕はニヤリと笑って親指を立てる。と、その時…ふと、気配を感じ、なるみと夕は和馬を庇うように武器を構える。

楓に取り付いていた黒い霧が次第に盛り上がり、人の形を作り出す。そこには………

｢ついに出てきやがった…待ちくたびれたぜ｣
｢間宮…秀志！！｣

薄ら笑いを浮かべた、迷宮を作り出した張本人、


間宮秀志が立っていた。


―――…
――…
―…



楓は河原にいた。目は泣き腫らし、真っ赤になっている。こんな姿を誰にも見られたくなく、橋のたもとまで行き座り込む。

ショックだった…。いつも優しい父が、和馬をあんな風に言うなんて…。

｢会ってはならん｣

その言葉が楓の心の中をえぐり、ぐちゃぐちゃにしていく。

ただ好きなだけなのに…
一緒に居たいだけなのに…
逢瀬をしていると言っても、芝居見物に行ったり買い物に行くくらいで、父に言われるほどやましい事などない。
何がどうなってこんな事になったのか……。今の楓には何も解らなかった。

｢和馬さん……逢いたい｣

勝手に口をついて出てきた彼の名。このまま一人でいたら潰れそうで……と、その時、

｢楓……さん？何してるんだい？こんな所で……｣
｢！！………あ…｣

楓は思わず肩を震わせるが、その声が今一番逢いたかった人の声だと気付き、振り返る。
すると、そこには驚いた顔の和馬が立っていた。

｢家に帰ったんじゃなかったのかい？……！！どうした？！｣

和馬はすぐ楓の異変に気づいた。駆け寄りしゃがみ込み、楓の顔を覗き込む。

｢泣いて……いたのか？｣
｢え！？……あ、これはその……////｣
｢目が真っ赤になってるな……！ちょっと待っててくれ｣

和馬は上着のポケットからハンカチを取り出し、川の袂まで行き、綺麗に透き通った冷たい水にハンカチを浸し絞る。そしてそれを楓に差し出した。

｢少し冷やしたほうがいいよ。そのままで帰ったら君のお父様が心配する｣
｢////あ、ありがとう。和馬さん……｣

楓は頬をほんのり染めながら、ハンカチを受け取り、ほてった目に当てる。

しばらく二人は何も言わず、静かな川の流れを見ていたが、ふと、和馬が話を切り出した。

｢一体どうしたんだい？お父様と喧嘩でもした？｣
｢……私たちの事、許してくれないみたい。もう……逢うなって言われて。私、悲しくて思わず家を飛び出しちゃったの｣
｢そうか…｣
｢私達、何も疚しい事なんてしてない。ただ一緒に居たい。好きなだけなのに………｣
｢…………｣
｢私達、もう終わりなの？｣
｢………楓さん……｣

もう逢えないというのはかなり堪えるが、何よりも和馬を否定された事が悲しくて。｣
楓はまたジワリときて、俯いた。和馬は何も言わず楓に寄り添う。

｢私、そんなの嫌。和馬さんと一緒にいたいの。…………愛しているから｣
｢楓さん………俺も君と同じ気持ちだよ。君の隣に居れないなんて堪えられない。………楓さん、お父様にちゃんと話をしよう｣
｢で、でも……もし和馬さんに何かあったら……私…｣
｢俺なら何を言われても大丈夫だ。必ず疑いを晴らして、交際を許してもらおう｣
｢和馬さん……｣
｢さ、暗くならない内に帰ろう｣
｢……はい｣

和馬が差し出した手を、楓はごく自然に繋ぐ。手から伝わる温もりが、『大丈夫だ』と言ってくれているようで、安心している自分がいる。やはり、自分にとって彼は大切で必要な存在なのだと思い知る。二人は夕暮れ迫る町を手を繋ぎ、楓の屋敷へと歩いた。

…この時の二人は気付いていなかった。想像すらしていない恐ろしく悲しい運命へと足を踏み込んでしまっている事を……。


――――――…
――――…
――…


｢ただいま帰りました。…………お父様？お姉様？｣

すっかり夜の帳が降りた頃、二人は屋敷に辿り着いた。楓が玄関の引き戸を開け、声を掛けるが返事がない。父はまだ怒っているのだろうか。しかし、それにしても静か過ぎた。

｢どうしたのかしら。何か………やけに静かだわ…｣
｢お父様の他には誰かいないのかい？｣
｢姉が……香澄姉様がいらっしゃるはずだけど。もう寝てしまったのかしら｣
｢…………入ってみよう。何か胸騒ぎがする…｣
｢和馬さん？｣

和馬は楓に目配せすると、玄関を上がって行った。それを楓も慌てて追い掛ける。シーンと静まりかえる廊下を二人は歩いていく。月明かりだけが二人を照らし、不気味な雰囲気を醸し出している。居間の前に辿り付くと、扉が少し開いている事に二人は気付いた。

｢開いてる………。でも中は暗いな｣
｢和馬さん……怖いわ…｣
｢大丈夫。俺が先に入る。君は俺の後ろに付いてきてくれ｣
｢ええ……｣

二人は扉を開き、暗闇が広がる室内に入る。楓は和馬の背中に付き上着を握る。しばらく進んだ所で、足元に何かがあることに気付き、ふと和馬が足を止める。屈み込み、手に取ったそれを見た二人は驚愕した。

｢これ……は、私の着物………なんでこんな所に…｣
｢ん？着物に何か付いて…………！これは……血だ｣
｢え！？｣

白地に桜がちりばめられた着物に、べっとりと付いた

<div style="text-align:center" align="center"><font color="#ff0000">赤い紅い血………</font></div>


｢あ………いや………｣
｢落ち着いて！他には何か………ん？誰か倒れているぞ！｣

和馬がその人物に駆け寄ると息を呑んだ。そこに横たわる人物は………

すでに事切れた楓の父の姿だった。


｢お、お父様……？お父様！！お父様！！……あ……あ…あ………<font color="#ff0000">いやあああああ！！</font>｣

楓は真っ青になり叫ぶ。和馬も言葉を失い、ただその亡きがらを見つめる。
と、その時、


―ガラガラ…―

扉を開く音がし、二人は弾かれたように振り返る。

そこには……


｢あーあ、ついにやってしまったか………羽山和馬｣


不気味な薄笑いを浮かべている………


<div style="text-align:center" align="center"><font color="#ff0000">間宮秀志</font></div>だった……


…俺は呪った、無力な自分を………。

君は俺を庇い、すべての罪を自分にかした。

君は言った。


｢和馬さんまで失いたくないから………｣


優しくも悲しそうな顔。
役人に連れて行かれる前日、桜さんも居た。何か言いたげな…なんとも言えない表情で……。そんな彼女に、君は泣きながら微笑み言った………。


｢私……桜の事、怨んでない。……今まで、傷つけてたのね……。ごめんなさい…｣


……彼女は気付いていたんだ。桜さんがした事を。そして、間宮が桜さんを利用していた事も。なぜ、どこで知ったのか……。
俺は聞く事が出来なかった。

なぜなら俺はその直後、徴兵されて見知らぬ土地に飛ばされ、死んだ。
二度とこの町に帰ってくる事はなかった。

………その事は彼女は知らない。だから、おそらく俺が自分を見放してしまったと思い込んでしまったのだろう。


ただただ、好きで一緒に居たくて……それさえも許されないこんな時代。
もっと違う時代に出会っていれば、幸せになれただろうか………。


体を失い、魂だけとなった俺は彼女を探した。共に行くべき場所へ行くために……。
探し続けた結果、最後にたどり着いたのがこの迷宮だった。でも、なぜか確信はあった。
間違いなく、君はここに居る……と。

でも、いくら探せど君は見つからない。まるで何かに隠されているかのように……。いや、君はきっと俺を許していないのだろう。
まだ、誤解は解けていない。
解かなければ……もう時間がない。それに渡したいものもある。


……逢いたい。君の目を見て話をしたい……

そんな時、あの子達が迷宮に迷い込んだ。

君にそっくりな少女と、
俺にそっくりな青年。

この子達なら、君を探し出してくれる………確信があった。

そして………百年の時を越え、やっと再会する事が出来たんだ。

今度こそ君を護る。

たとえ何が邪魔をしても、俺は君を離さない。

だから………

もう一度…………


俺を信じてほしい………



<div style="text-align:center" align="center">＊
＊
＊
＊
フ
タ
リ
ノ
イ
ノ
リ
ガ
ト
ド
ク
カ
ド
ウ
カ
ハ
、
カ
ミ
ノ
ミ
ゾ
シ
ル
・
・
・
・
・
＊
＊
＊

第十話《完》</div>
 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2015-06-01T04:11:05+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
	<item rdf:about="https://meguru.web.wox.cc/novel14/entry27.html">
		<link>https://meguru.web.wox.cc/novel14/entry27.html</link>
		
				
		<title>近付く真実</title>

		<description>近付く真実



桜がいた部屋を出て、…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ <span style="font-weight:bold;font-size:large;">近付く真実</span>



桜がいた部屋を出て、二人は再び迷宮を探索し始めた。桜に貰った鍵を使える扉を探すため、二人は一緒に調べ始めた。別れて探すと、また襲われる危険性があるためだ。かなり骨が折れるが一人ではないという安心感はある。
広いフロアに並ぶ何十とある扉の鍵穴を試したが、どれも違うようで、いい加減二人も疲れてきた。現に先程から残留思念に何度となく襲われ、闘っていた。

｢ね、ねえ夕くん。少し休まない？｣
｢そうだな……はあ、足が棒になるってこういうことなのか……；｣

なるみの提案に頷き、足を摩る夕。とはいえ、ここでは何かと危険過ぎるため、一階のフロアに降りることにした。



下に降り、近くにあったソファに座って一息着く。
相変わらず、霧が立ち込めている。ここはあまり代わり映えはしないようだ。

｢あ、そうだ。売店行ってみようよ。薙刀刃こぼれしちゃって。変わりの物があればいいけど…｣
｢ああ、そうだな。俺の剣もそろそろヤバいし……行くか｣

二人は装備を整えるべく、売店に向かった。



｢あれ？｣
｢ん？｣

中に入った二人は唖然とした。カウンターに一人の老人がいたのだ。確か、最初は誰もいなかった筈……そんな二人の心境を察したのか、老人はにこやかに笑う。

｢おお……よく来た。さっきは少し席を外していてな。さ、こっちにおいで｣

二人は顔を見合わせ、言われた通りカウンターに近づく。

｢あ、えと…すみません。武器を勝手に持ち出してしまって｣

なるみが謝ると、老人は首を振る。

｢なあに。ちゃんと代金置いていってくれただろう？｣
｢で、でも。あれだけじゃ足りなかったんじゃ…｣
｢いいや…金額がどうこうじゃないんだよ…私が嬉しかったのはその気持ちだよ｣

老人は優しく二人に微笑む。

｢君達なら、二人を救い出しあの男を止められるだろう｣

そう言うと、老人は奥の棚に行き、剣と薙刀を持ってカウンターに戻って来た。
｢これは私からの餞別だ。お嬢さんには『弁慶岩落とし』、そこのお兄さんには『村正』をやろう｣
｢え！？でも私たち、あまり持ち合わせは…｣
｢餞別と言っただろう？金はいらんよ。それに二人に持って貰えばこいつらも喜ぶ｣

そういいながら、老人は二人に武器を手渡した。新しい武器はびっくりするくらい手に馴染む。二人が礼を言うと老人は言った。

｢いいか？この先どんな事があろうと、お互いを信じ助け合うんだよ。君達の絆は、百年以上の時に流されながらもしっかり繋がっている。楓と和馬くんを助けてやってくれ……そしてあの男に思い知らせてやれ、君達の絆の力を｣

老人はどこか悲しそうな顔をしていた。そして何よりも……。

｢あの……楓さんと和馬さんの事、ご存知なんですか？｣

なるみが尋ねると、ふと目を閉じる。

｢………ああ、よく知っている……さ、時間がない。行きなさい｣

いろいろ聞きたい事はあったのだが、老人がこれ以上話したがらない事を察した二人は、もう一度頭を下げ売店を後にした。



｢………あの子達がお前達の生まれ変わりなんだな………。あの二人ならきっと……娘を……和馬くんを頼むぞ｣



誰もいなくなった売店に佇む老人が呟いたこの言葉は、二人には聞こえてはいなかった。



―――
――
―


｢せい！｣
｢おらあ！！｣

迫り来る残留思念を蹴散らす二人。先ほど老人から貰った武器は、まるで自らの意思で闘っているように自由自在に動く。おかげで、さっきより疲れはない。

｢ふう……収まったか｣
｢そうね。さぁ、桜さんから貰った鍵を使える所に行こう｣
｢そうだな…間宮って奴に一泡ふかしてやりたいしな………ん？｣

部屋を探そうと廊下を歩いていたとき、夕はふとある部屋の前に誰かが立っているのが見えた。二人は顔を見合わせ近づいてみる。最初は黒い人影だったが、あと2メートルという所で誰かを確認できた。

｢………和馬｣
｢あれが……和馬さん…｣

そう、部屋の前に立ち尽くし扉を見つめている人物は………和馬だった。

<font color="#ff0000">楓さん……ここに居るんだね………</font>

小さな呟き。
二人は聞き逃さなかった。

｢楓さんが居る？この部屋に？｣
｢みたいだな。でもなんで和馬は入らないんだ？｣
｢和馬さんの所にいってみよう！｣

二人は未だに俯き立ち尽くしている和馬に駆け寄った。



｢和馬さん！そこに楓さんがいるんですね？｣
｢和馬！なんでつっ立ってるんだよ！いるんだろ？｣

<font color="#ff0000">…………入れない。なんで……すぐそこに……彼女がいるのに……側に行けない……</font>

｢入れ…ない？なんで？楓さんは和馬さんを……｣
｢…………もしかして、誤解って……この事か？｣
｢この事？｣
｢最初に和馬に会った時、誤解を解けって言われたんだ。きっと、楓は和馬も自分の事を犯人だって思って……｣
｢そんな……和馬さんはずっと楓さんの無実を訴えてたのに……｣
｢だよな。でも本人の意思じゃないとしたら？何者かに偽の記憶を刷り込まれたとしたら……｣
｢！！間宮秀志。彼の仕業なの？…早く、早く楓さんを助けなくちゃ！！｣

彼女の精神は蝕まれ始めているのだ。この世界を創り出した間宮によって。
もはや一刻の猶予もない。二人は和馬を摺り抜け、ドアノブを回す。が、

｢あ、開かない！楓さん！開けて！！このままじゃ……このままじゃ本当に精神崩壊しちゃうわ！｣
｢叩き壊すか………どけ！なるみ！！｣


<font size="3" color="#FF0000">ガッ………ガキンッ</font>

夕の一撃は跳ね返された。まるで結界が張られているかのように扉にはかすり傷すら付いていない。


｢くっ………ダメか…｣
｢大丈夫？夕くん！どうしたらいいの………あ！｣

楓は桜から貰った鍵を思い出した。急いでポケットから取り出し鍵穴に差し込む。


<font size="3" color="#FF0000">……ガチャリ……</font>


鍵が開いた音。楓はドアノブを握りゆっくりと押し開ける。


<font size="3" color="#FF0000">キィ……ギギギ………</font>


｢楓さん！…………！！こ、れは……｣
｢ひでぇ………｣

開いた扉に入った二人が見た物は…………


ズタズタになった室内。飛び散る血飛沫。そしてその部屋の中心で

<font size="1" color="#FF0000">目に光りを失い、体中血に染まり、血の涙を流す</font>



<div style="text-align:center" align="center"><font size="3" color="#FF0000">楓の姿</font></div>


だった。


<font color="#ff0000">※ここから先、暴力残酷描写が出てきます。苦手な方、嫌悪感を持つ方は閲覧をお止めください。</font>




｢楓さん……そんな、もう手遅れなの……？｣

もはや楓は総ての意思を遮断され、人形のように座り込んでいる。絶望に苛まれるなるみだが、夕の喝で我に返る。

｢諦めんな、なるみ！きっと助けられる筈だ！｣
｢夕くん…｣
｢お前が諦めたら、誰が楓を救えるんだよ！
｢そうだけど……でも…｣

楓はすでに精神崩壊している。もう自分の声は届かない。ありもしない罪を被り、親友や恋人を誤解したまま、悪霊としてこの世界に閉じ込められる。もっと早くこの迷宮のカラクリに気付いていれば、楓がこの状態になる前に助けられたかもしれない。

悔しさが喪失感となりなるみを支配する。そんななるみを夕はさらに叱咤する。

｢なんの為にここまで来たんだよ！？楓を助けないと、和馬もここに縛り付けられるんだぞ？間宮を放って置いたら、俺達だって自分達の時間に帰れなくなる。それでもいいのか！？｣
｢………｣
｢俺はお前を見捨てはしない。だから、もしお前が動かないつもりなら……お前を引きずってでも闘う！……桜との約束、果たすんだ！！｣

口調は些か乱暴だが、夕の本心が詰まった言葉。それはなるみの心の絶望を静かに溶かしていった。

｢ゆ、夕くん……ありがとう。そうだよね。私が諦めちゃダメだよね……桜さんと約束したのに。必ず楓さんと和馬さんを助けるって………闘わなきゃだよね｣

なるみは夕に微笑むと、未だに座り込んだままの楓に近づく。
近くまで来てみると、楓が小声で何かを呟いているのが分かった。

<font color="#ff0000">……～ない…</font>
｢ん？｣
<font color="#ff0000">私……やって…………な……い……して………いの？</font>
｢楓、さん？｣



<font size="3" color="#FF0000">私はやってない！！
どうして………
どうして信じてくれないの？！</font>



楓がそう叫んだ瞬間、周りが暗転し、二人は深い闇に飲み込まれた………



――――…
――…
―…


暫くして……二人が目を覚ますと、そこは薄暗い殺風景な部屋だった。大体六畳くらいの広さだろうか。隅には机と椅子、明かりがわりのオイルランプ。うっすらと照らされた室内を見回すと、誰かがいた。いや正確には倒れていた。二人は目を凝らす。

｢あれは…………！！か、楓……さん………｣
｢な、なんで………｣

そこには後ろ手に縛られ、ボロボロになった楓がいた。生地の薄い白い着物は彼女の血で染まり、美しかった顔は無残にも腫れあがり、口からは血糸を垂らしている。まだ生きてはいるようだが、すでに虫の息である事は明確だった。
呆然とするなるみと夕だったが、夕はふと嫌な考えが過ぎった。これを口に出していいものなのか………。迷った末、誰ともなく呟いた。

｢この部屋………拷問部屋だ｣
｢え…………拷問……｣

夕はコクリと頷いたその時、


―バタン―


部屋に数人の軍服を着た男が入ってきた。

<font color="#c0c0ff">｢ふん、まだ生きていたか。しぶとい奴だ｣

｢素直にやったと言えば、即刻死刑にしてやったものを｣

｢間宮様の情報によると、随分と男にだらし無いみたいだな｣

｢しかも、その事を咎めた家族を皆殺しとは…大したタマだな｣</font>

好き放題言っている男達の言葉に、二人は違和感を感じる。
………そう、桜から聞いた話と全く違うのだ。桜は、楓の家族を殺したのは間宮だと言っていた。和馬が楓が愛した初めての人だとも。長年付き合ってきた親友が嘘を言う筈はない。

｢間宮の野郎……でっちあげやがったな……｣
｢……でも、どうして…………間宮は楓さんを…｣
｢大方、振られた腹いせなんだろう？鳴かないなら殺してしまえ………って感じか…あれ、でも待てよ？おかしくないか？｣
｢え？｣
｢だって、桜が言ってただろ？『楓は警察に捕まる前に自殺した』って｣
｢……そういえば……。じゃあ、この状況は？｣

考える内に、ある恐ろしい結論にたどり着く。二人が息を呑んだ時、楓の悲鳴が聞こえた。それを皮切りに暴行の音が響いた。


<font size="3" color="#FF0000">ドカ……バキ……
ボコ………</font>


<font color="#ff0000">い、た……やめ………わた……し……やって……ない…</font>

<font color="#c0c0ff">｢黙れ！ゴミが！お前がやったに決まってるだろう！｣</font>

<font color="#ff0000">ちが……しんじ………て…………か………ずま…さん……………</font>

<font color="#c0c0ff">｢この状況で男を呼ぶか……ならば……｣</font>


男達は一旦暴行を止めると、その中の一人が机に行き、引き出しから何かを取り出した。

｢あ、あれは……拳銃！！｣
｢そんな……楓さん！｣


二人が慌てていると、拳銃を持った男は薄ら笑いを浮かべ楓に近寄る。そして髪を鷲づかみ、持ち上げる。楓の光りを失った目からは涙が溢れていた。その顔を一瞥し鼻で笑うと、彼女の額に銃口を向ける。そして…………


<font size="3" color="#FF0000">バァン……</font>

無慈悲に引き金を引いた。何がおかしいのか高笑いしながら男達が出ていった部屋には、力無く横たわる楓。すでに命の灯は消えていた。夕は怒りに打ち震えて拳を握りしめ、なるみは泣き崩れる。


<font size="3" color="#FF0000">｢いやあああ………楓さん！なんで………なんでぇー｣</font>


そこで周りが再び暗転した。


――――…
――…
―…


二人が再び目を覚ますと、元の部屋に戻っていた。先程のショックで暫く言葉もなく呆然としていたが、次第に込み上げる間宮への憤り。

｢私……間宮秀志を許さない……絶対に…｣
｢奇遇だな………俺も同じだ｣

楓がどれ程無念だったか…悲しかったか…辛かったか……苦しかったか…。それを思い知らせてやる為には、楓と和馬を迷宮から解放し、この迷宮を壊すしかない。
桜の時の状況から、おそらくこの迷宮は間宮の意思で出来ている。桜が悪霊になりかけたのも、和馬が楓に会えないのも、楓がこんな状態になったのも………説明がつく。

｢間宮をシメる前に、楓を助けねぇとな……どうするか……桜と違って話ができる感じじゃねぇし…｣
｢楓さんの……記憶ううん、和馬さんへの想いを思い出す事が出来れば……………あ、そうだわ！！｣

なるみははっと思い出して、懐から懐中時計を取り出した。そう…思い出したのだ、桜の言葉を。


<font color="#ff8080">『それは…楓が和馬さんの誕生日にと用意したもの……』</font>


｢これならもしかしたら……楓さんの心が戻るかもしれない｣
｢駄目もとだ。やってみようぜ！！｣
｢うん！！｣

二人は楓の元に駆け寄る。相変わらず、ぼんやりと虚空を見つめている楓の前に、なるみは懐中時計を差し出す。

｢楓さん、これ覚えてますか？貴女が和馬さんの誕生日に用意した懐中時計です。｣


―ピクリ―

楓の体が揺れた。そして、虚空を見ていた目が懐中時計に向いた。反応を示した楓に、なるみはさらに言葉を繋ぐ。

｢楓さん、思い出して。貴女の…和馬さんへの想いを……｣

次第に楓の目に光りが戻っていく。そして、その目から涙が零れた。それを見たなるみは楓の手をとり、懐中時計を掌に乗せる。楓は、掌に乗った懐中時計をゆっくり握りしめ胸に抱く。

<font color="#ffc0ff">『無くしたと思っていた……ああ…私、私………和馬…さん……』</font>

目を閉じて、はらはらと涙を流しながら微笑み、愛しい彼を呼ぶ楓。そんな彼女をホッとした様子で見つめる二人。楓がどれだけ和馬を愛しているのか……切ないほど分かった。

｢和馬さんは、ずっと楓さんの無実を訴えていたんですよ。自分の立場が悪くなるのを承知で｣
<font color="#ffc0ff">『え…』</font>

驚いたように見上げる楓となるみは初めて視線を合わせる。まるで鏡を見ているような感覚。どうか泣かないで…笑ってほしい……。

｢和馬さんを……信じてあげてください。彼をこの部屋に入れてあげてください｣
<font color="#ffc0ff">『和馬さん……ああ……和馬さん！私……私………ごめんなさい…！！』</font>
｢和馬さんはずっと楓さんを捜しているんですよ。早く彼の元に行ってあげてください｣
<font color="#ffc0ff">『和馬さん……逢いたい……逢いたいの……お願い…一人にしないで………！！』</font>

その時、


―ガチャリ―


なるみと夕は扉に振り向くとそこには…

<font color="#80c0ff">『やっと逢えた…楓さん……』</font>

にこやかな表情を浮かべた和馬が立っていた。




<div style="text-align:center" align="center">・
・
・
・
・
ツ
イ
ニ
サ
イ
カ
イ
シ
タ
フ
タ
リ
ガ
カ
タ
ル
ノ
ハ
・
・
・
<font color="#ff0000">カ
ナ
シ
ク
モ
ザ
ン
コ
ク
ナ</font>
シ
ン
ジ
ツ
・
・
・

第九話《完》</div>
 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2015-06-01T04:08:35+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
	<item rdf:about="https://meguru.web.wox.cc/novel14/entry26.html">
		<link>https://meguru.web.wox.cc/novel14/entry26.html</link>
		
				
		<title>過去</title>

		<description>過去




｢あの日、私はいつものよう…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ <span style="font-weight:bold;font-size:large;">過去</span>




<font color="#ffc000">｢あの日、私はいつものように一人で店番をしていたわ…｣</font>

………―
…――


｢御免ください｣

あるどんよりと曇った昼下がり、桜が店番をしていると、身なりのよい一人の男が訪ねてきた。

｢はい、いらっしゃいませ！｣

仕込みをしていた桜は、慌てて前掛けを外しながら店に出ると、男は被っていた帽子を脱ぎ一礼した。

｢初めまして。私は間宮秀志と言います。楓さんの…婚約者です｣
｢え？婚約者…？｣
｢はい｣
｢(婚約者って初めて聞いたわ。楓、今までそんな事言ってなかったのに…)はあ、そうですか…それで、その婚約者の方がなんのご用でしょうか？｣

貼付けたような笑顔を浮かべる間宮に、若干嫌な感じを覚えた桜は、少しきつい口調で用件を尋ねた。すると間宮はニヤリと笑い、桜の元に近付いてきた。

｢……客にその態度はないだろう？やはり楓の金魚のフンだな｣
｢はあ？！貴方こそ、初対面の女性に対して失礼じゃない？本当に楓の婚約者なの？疑わしいわね！！｣

元来、勝ち気で思った事をずばり言ってしまう性格の桜。間宮のあまりにも不愉快な言動に、声を荒げ抗議する。しかし、間宮やニヤニヤと厭らしい笑顔を浮かべながら、桜を馬鹿にしたように鼻で笑う。

｢はっ！まったく、教養のなっていない小娘だな！楓もなんでこんな小汚い小娘と親友でいるのか……考えた事はあるかい？｣
｢な、なに言って…｣
｢ハッキリ言おうか？お前は楓の引き立て役に過ぎないのだよ｣
｢な！そんな事…！！｣
｢ない、とは言い切れないだろう？元に君は羽山和馬を楓に奪われた。違うか？｣
｢え……？なんで、なんで和馬さんの事……｣

心の奥底で感じていたもの。自分は楓の引き立て役なのでは。だから傍に親友として置いているのではないか。
今までは、あくまでも思い込みだと桜は気にしてはいなかったが、第三者である間宮に言われ心が揺らぐ。もしかして、まさか、でも……桜は心で自問自答を繰り返す。
でも、それよりも……

｢なんで、なんで和馬さんの事を知ってるのよ｣
｢ふん……あの男が楓をたぶらかしたのでね。まったく、身の程を知らない奴だ｣
｢たぶらかしたって……和馬さんはそんな人じゃないわ！か、楓の事を本当に大切に思ってて…｣
｢それがなんだ。君だって私と同じだろう？楓が和馬をたぶらかした…そう思っているはずだ｣
｢ち、違う！勝手な事を言わないでよ！｣

口ではそうは言ってはいたが、桜の心は揺れはじめていた。初めて愛しいと思った人……和馬となんの努力もせず、自然に近づき恋仲になった楓。裏切られた、羨ましい妬ましいと思わないとは言えない。
…もし、彼が私と一緒に居てくれたら……。
そんな考えが顔に出ていたらしい。
間宮は嫌な笑みを浮かべ、カウンターに包みを置く。
｢桜、お前の願いを叶えてやれるかもしれないぞ｣
｢え……？｣
｢たった今、利害が一致したからな。お前は和馬と一緒になりたい。私は楓が欲しい…そうだろ？｣
｢……………｣
｢私と手を組め。なに、難しい事はない。私の言う通りにすればいいだけだ｣

間宮はそう言うと包みを開ける。そこには……白地に薄紅の桜の模様。

｢これ、お花見の時に楓が着てた着物……どうして貴方が？｣
｢失敬したんだ。二日後……実行に移る。お前はこれを着て屋敷まで来るんだ｣
｢でもっ……屋敷には楓やおじ様が｣
｢楓は、私が屋敷から出す。お前は私の言う通りにすればいい｣
｢………何をするつもりなの………｣

桜が恐る恐る聞くと、間宮は口角を吊り上げた。

｢それはその時になってからのお楽しみだ。時間は……そうだな、夕刻にしよう｣
｢………分かったわ……｣

間宮は桜の返事に満足し、店を出ていった。
気がつけばもう、店を閉める時間だった。桜は間宮が置いていった風呂敷を素早く仕舞い、店じまいを始めた。
桜はこの時、軽く考えていた。
自分が楓の影武者になり、ほかの男と逢瀬をして、それを和馬に見せて別れさせる………そんなあらすじを思い描いていた。
しかし、間宮が実行しようとしていた事は、とんでもなく恐ろしい事だったのだ。

あれから二日後の夕刻。桜は楓の屋敷に来ていた。もちろん、間宮が持ってきた楓の着物を着て。
間宮は、まだ来ていないようだった。
ため息を吐いたその時、

｢ありがとう、和馬さん｣

楓の声が聞こえた。桜は思わず側にあった電柱に隠れる。

｢いや、引き止めてしまってすまない。すっかり暗くなってしまったな｣
｢いえ、楽しかったです。また、連れていってください｣
｢喜んで｣

楽しげに笑い合う二人…。そんな二人を見ている桜の顔は、嫉妬に歪んでいた。あの二人は自分の知らない所で、知らない時間を共有している。

……なんで楓ばかり……

昔からそうだった。
楓の周りには沢山の男の子がいて、楓を我が物にしようと躍起になっている光景は日常茶飯事。その度に楓は桜に頼り、追い払ってもらっていた。おかげで桜は男子から疎まれていた。
楓の金魚のふん……引立て役………間宮に言われた事は、当時の桜が言われていた事だった。
だから余計に悔しかった。初対面だった間宮は、自分の何を分かったつもりなのか。まあ彼のこと、楓しか眼中にないのだろうが…。桜は自然と着物を握る。

ふと気がつくと、二人の姿はなかった。桜は屋敷の塀に寄り掛かり、間宮を待った。

数分たった頃、


―ガララ…ピシャン―


勢いよく引き戸が開かれる音がし、誰かが飛び出してきた。桜はまた電柱に隠れ、様子を伺う。

楓だった。離れているため、よくは見えないが、泣いているようだった。何があったのか…。桜が不思議に思っていると、背後からあの男の声がした。

｢ふふ、上手く事が運んだようだ｣

ばっと後ろを振り向くと、厭らしい笑みを浮かべた間宮がいた。桜は何も言わず間宮を睨みつけ、やはりこの男は嫌いだと再確認する。一方の間宮は桜の視線を鼻で笑って受け流し、短刀を桜に渡す。｢？｣と疑問に思っている桜に、間宮は恐ろしい事を言った。

｢これで、屋敷の人間を殺してこい｣
｢………は？何言ってるの？｣

すると間宮は、鬱陶しそうに桜を一瞥し、馬鹿にしたように笑いながら言った。

｢ふん、今更怖じけづくのか？もう賽は投げられたんだ。………和馬がほしくないのか？｣
｢そ、れは。でも、やっぱりこんな事は……｣
｢利害は一致しているはずだ。私は和馬が邪魔。お前は楓が邪魔…だろう？邪魔なものは排除しなければなるまい｣

くつくつと笑う間宮を見ていると気味が悪くなる。この男は楓を…欲しいものを手に入れるためならば殺しも厭わない。
なんて恐ろしい男なのだろう………。
しかし、その恐ろしい男に手を貸そうとしている自分は、もっと恐ろしいのだろう。そして、きっともう後戻りは出来ない状況だ。
桜は短刀を受取り、帯に挟むように隠す。すると、間宮が桜の横をすり抜け、屋敷に入って行った。

｢私は悪くないわ……悪いのは…………貴女よ、楓｣

桜の呟きは、夜空に昇った月しか聞いていなかった。


<font color="#ff0000">※グロ、流血や残酷描写あり。</font>


間宮に、30分後に裏庭から屋敷に入るよう言われた桜は、裏庭の植え込みの中でその時を待っていた。手の震えが全身に回り、桜は手をぎゅっと握った。
自分はついに犯罪者になってしまうのか…なぜ間宮の口車に乗ってしまったのか……しかし、もうすでに不法侵入している時点で今更遅い。それよりも、先程の楓の様子が気になる。父親と喧嘩でもしたのだろうか。
…まあ、どうでもいいかと思っていたその時、


<font size="3" color="#FF0000">｢きゃあああああああ｣</font>

するどい悲鳴が屋敷の２階の辺りから聞こえた。えっ？と屋敷の窓を見上げると、

<font size="3" color="#FF0000">｢おぎゃあああ、おぎゃあああ、おぎゃ………｣</font>

今度は赤子の泣き声。なぜ赤ん坊の泣き声が？桜は疑問に思うと同時に嫌な予感がした。まだ10分も経っていないが、裏の勝手口から屋敷の中に入っていった。
しーんと静まり返った廊下を、２階に向かい走る。
しばらくさ迷っていると、中途半端に開けられた扉が目に入った。一瞬躊躇ったが意を決して中に入った。

｢！！……な、これは。なんで………｣

部屋の中は血まみれ、その血溜まりの中では一人の女性が倒れていた。桜はその女性を知っていた。

｢か、香澄さん……｣

都会に嫁入りしたはずの楓の姉、香澄だった。

横たわる香澄の向こう側には、月明かりに照らされたベビーベッド。桜は香澄を踏まないように気をつけながら近づき、覗き込んだ。

｢！！！……うぅ……｣

見た瞬間、あまりの無残さに吐き気が沸き上がる。
そこには、血だらけで事切れている赤ん坊。その血液は、真っ白であっただろうベッドの布団を真っ赤に染め上げていた。桜が口を押さえ、後ずさりをした途端、足首をガッと掴まれた。びくりとして、足元を見てみると、生気が薄れた恨めしげに見上げる目と目があった。

<font color="#ff0000">｢な………んで……｣</font>

搾り出すような声に、背筋が凍る。そこにいる香澄はもう、以前の面影を残してはいなかった。桜が恐怖で固まっていると、香澄は力を振り絞り着物を掴んできた。白地の着物に赤い血が付いていく。

<font color="#ff0000">｢なんで……あの子まで……赦さ……ない……楓……｣</font>

桜ははっとした。香澄は自分を楓と間違えている。このまま逃げてしまえば………。桜は縋り付いて来る香澄を振りほどき、素早くすり抜け部屋を飛び出した。


必死で走り、物置の中に逃げ込み呼吸を整える。誰があんな事を……などと考えても当てはまる人物は一人しかいない。


<font color="#ff0000">―間宮 秀志―</font>


桜は、先程の光景を思い出し、体を震わせた。あの男は本気で、屋敷の中の人達を皆殺しにする気なのだ。彼がどんな結末を描いているのか……桜には恐ろし過ぎて考えられなかった。それよりも、受け取った短刀をどうすればいいのか…と懐を探る。

｢あ、れ………ない｣

帯に挟めてあったはずの短刀が無くなっていた。

｢………落とした？でも、どこで………は！まさか……｣

思いあたる場所………香澄の部屋しか思いつかない。おそらく、振り切った際に帯から落ちたのだろうか。途中の廊下かと思ったが、板張りの床に短刀のような重みのあるものが落ちれば、大きな音が鳴るだろうし、いくら無我夢中であっても気づくだろう。
まずいとは思ったが、またあの場所には戻りたくなかった。桜は間宮に厭味を言われる事を覚悟し、下の階に降りる事にした。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



桜が一階にたどり着くと、気味が悪いほどの静寂が辺りを包んでいた。なぜか胸騒ぎを感じ、早足で居間に向かう。すると、やはり閉じかけた扉。そっと開けてみた。が、真っ暗で何も見えない。回りを警戒しながら部屋に入ると、ゆっくりと歩く、とその時、


―ガッ……バタッ―


何かに足を引っ掛けてしまい、桜は倒れ込む。

｢イタタ…なに？…………え？｣

痛む足を摩りながら、引っ掛けてしまったものに目をやると、

｢あ、………ああ……お、おじ様………｣

そこには青白い月明かりの中、力無く横たわる楓の父親の姿が。桜は這いずるように近寄り、揺り起こす。
｢おじ様、おじ様！！｣

背中に手を回したとき、何か固い物が手に当たった。不思議に思い、何となく持ち上げた。と同時に、


<font color="#ff0000">―ズルズル…―</font>


と、嫌な感触がしてビチャッと生暖かいものが顔にかかった。それがなんなのか理解した桜は凍りついた。

<font color="#ff0000">血塗られた短刀と自分の手。そして、白い着物に飛び散った赤い赤い斑点…</font>


……もう限界だった。桜は素早く帯を外し、楓の着物を脱ぎ捨てると、下に着ていた自分の着物に帯をかけた。そして、何も声を発せぬまま居間を飛び出し、屋敷を抜け出した。


その直後だった。楓がなぜか和馬と共に帰ってきたのは。




………―
……―

｢…そのあとどうなったんだ？｣
<font color="#ffc000">｢よくは…分からないわ。でも、翌朝の朝刊にあの事件の事が載ってて……楓が容疑者として逮捕状が出たって。その後、二人は別れたって聞いた………｣</font>
｢聞いたって……間宮って男にか？｣

桜はコクリと頷く。二人は思いがけず壮絶な真相に絶句した。
人が三人も死んだこの事件は、先程楓が見つけた記事のものに間違いはないだろう。楓が犯人になってしまったのはきっと、桜が、香澄の部屋に落とした短刀と、父親の部屋にあった血だらけの着物。特に後者は決定的だろう。

｢和馬さんはどうなったの？｣

なるみは俯いている桜に尋ねた。間宮という男が彼をおとしめようとしていたのなら、何かしらあった筈だ。桜は少し顔を上げる。

<font color="#ffc000">｢…和馬さんは……楓と別れた後、徴兵されて……そのまま戦地で亡くなったわ。彼は最後まで楓の無実を訴えていたわ……｣</font>
｢まさか…それが原因か？｣
<font color="#ffc000">｢たぶん…間宮は政財界や警察にも顔が利くから、和馬さんの徴兵を頼むのは簡単なはずよ。邪魔なものは除く………私に言っていた通りに｣</font>

間宮という人物の性格上、桜の言い分はあながち間違ってはいないだろう。ストイックで潔癖、さらに自己中心的…最悪な性質だ。では、楓は…どうなったのか。夕は桜に尋ねた。

｢楓はどうなった？｣

すると、桜は唇を噛み締め俯き呟いた。

<font color="#ffc000">｢自殺…したの。逮捕される直前に。自ら短刀で喉を裂いて……｣</font>
｢え……｣
｢………は？｣

なるみと夕は驚きで言葉を失った。楓は死んだのだ。しかも自殺という方法で。でも、そうなると間宮の企ては失敗ということだ。結局、楓は自分のものになることは無くなったわけなのだから。二人の考えを察したのか桜が口を開く。

<font color="#ffc000">｢間宮は、いつまでたっても自分に靡かない楓にイライラしていた。あの計画も、楓にすべて罪を着せて苦しめてやろうと考えたみたい。そうすれば、権力のある自分に縋ってくるはず………そう思ったのね。馬鹿な人…｣</font>

私も人の事言えないけど…と桜は自嘲気味に笑う。なるみは何も言えなかった。夕も言葉が見つからないらしく、押し黙り拳を握りしめている。しかし、二人の気持ちはただ一つだった。

<font color="#ff0000">―間宮を赦す訳にはいかない―</font>


まだ、間宮がこの世界に関わっている手掛かりはない。しかし、桜が聞いた声や事件の現場を再現した屋敷内。そして、楓の居場所を探し回る和馬。間宮が関与しているならば、現場を再現できる筈だし、桜を唆する事も……和馬を楓の元に行かせないように邪魔する事も出来る。なるみは懐中時計を握りしめる。すると、桜が驚いたような顔を向ける。

<font color="#ffc000">｢それは…｣</font>
｢え？この懐中時計がどうかしたんですか？｣
<font color="#ffc000">｢……それは、楓が和馬さんへの贈り物として用意していた物よ。……結局渡せなかったのね…｣</font>
｢贈り物…｣
<font color="#ffc000">｢事件の少し前に、和馬さんの誕生日にって…でもあんな事になっちゃったから…｣</font>
｢安心して、桜さん｣

なるみは桜を真っ直ぐ見つめる。

｢私が必ず楓さんを助けて、楓さんの手から和馬さんに渡せるようにします。だから、もう自分を責めないでください。楓さんだってきっともう…｣
<font color="#ffc000">｢…っ、ありがとう……｣</font>

静かに涙を流す桜の顔は、穏やかだった。すると、今まで黙って見ていた夕が口を開いた。

｢もう一つ、疑問があるんだけどよ。いいか？｣
<font color="#ffc000">｢？なに？｣</font>
｢霧島里穂…あんたの生まれ変わりだけど、俺達みたいに前世の記憶が無いみたいなんだよ。どうしてかわかるか？｣

夕の言葉に桜はふわりと微笑み、自分の胸に手を当てた。

<font color="#ffc000">｢…また、楓の親友になりたかったの。生まれ変わる事が出来たら、楓の生まれ変わりと出会う事ができたら……今度こそ本当の親友になりたいって。だから、この記憶も罪も私が引き受けたの。里穂にはなんの罪もないのだから、ね｣</font>
｢さ、桜さん…｣

暖かい真っ直ぐな思い。
やはり桜は優し過ぎる。里穂に記憶が蘇り罪が及ばないようにすべてを自分に封じ込めた結果、一部の魂がこの迷宮に囚われたまま、さ迷いながら負の感情を膨らませ続けていたのだ。
すると、次第に桜の体が光りだす。

<font color="#ffc000">｢あ、そろそろ時間みたいね…｣</font>
｢桜さん…｣
<font color="#ffc000">｢お友達、元の時間に還すわね……なるみさん、里穂の事よろしくね………｣</font>
｢桜さん！！｣

すると、まばゆい光りが桜を包み次第に消えていった。そしてそこには一つの古びた鍵があった。

｢鍵……桜さん…｣
｢間宮に通じる何かが見つかるかもな｣
｢……行こう。間宮に会わないと｣
｢ああ！！行こうぜ！！｣

なるみと夕は頷きあい部屋を出た。

二人が出ていった部屋の闇の中に人影が現れる

<font color="#ff0000">『やれやれ…桜の奴、やっぱり役立たずだな……。来るがいい…高見沢なるみ、羽山夕……お前たちの絆、ずたずたに切り裂いてやろう……あの二人のように…な…』</font>

その人影は、不敵に笑い再び闇の中に溶け込むように消えていった。




<div style="text-align:center" align="center">第八話《完》</div>


 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2015-06-01T04:04:56+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
	<item rdf:about="https://meguru.web.wox.cc/novel14/entry25.html">
		<link>https://meguru.web.wox.cc/novel14/entry25.html</link>
		
				
		<title>親友</title>

		<description>親友




なんで……なんで………………楓な…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ <span style="font-weight:bold;font-size:large;">親友</span>




<font color="#ff0000">なんで……なんで………………楓なのぉ？…私、わたしワタシ………</font>


<font size="3" color="#FF0000">い゛やあああああ！！</font>


<font size="4">ゴゴゴゴ………</font>


……空間が歪む。

｢り、里穂！！｣

駆け寄ろうとするなるみを、夕が引き止める。

｢！！夕くん？どうして…｣
｢少し冷静になれ、なるみ。むやみに近付けば、築島里穂がどうなるか……わかるだろう？｣
｢で、でもっこのままじゃ…｣
｢……俺が行く｣
｢え？｣

夕の提案になるみは耳を疑った。

｢……元は、俺が思わせ振りな態度を取ったからだ。…桜さんの心を弄んだんだ…｣
｢だ、だからって、どうして夕くんが…？｣

夕は桜を一瞥し、なるみの顔を見る。

｢生まれ変わり……理由は十分だろう？｣

と言うなり、剣を納め桜の前に踊り出た。

｢桜さん………。君が憎いのは楓さんか？それとも俺か？｣
<font color="#ff0000">｢……｣</font>
｢答えてくれ！！桜さん！｣
<font color="#ff0000">｢……か、和馬さん…｣</font>

次第に空間の歪みが、直り始める。

｢本当は分かってるんだろう？こんな事をしても、この子を苦しめても何もならない事を…｣
<font color="#ff0000">｢わ、ワタシわたしは……｣</font>
｢最初から、君に楓さんを怨む気持ちはない、なるみを責めるのはお門違いだという事を。そして、築島里穂を巻き込むつもりはなかった………君は優し過ぎたんだ……後悔、懺悔や喪失感だけでここに留まっているんだろう？｣
<font color="#ff0000">｢……私は……うぅ…｣</font>
｢……裁かれるべきは俺だ。楓さんやこの子達じゃない｣
<font color="#ff0000">｢………うぅっ…か、和馬さん……楓……｣</font>
｢もう……もうやめるんだ。これ以上、ここに居て苦しむ事はない。ここで罪を重ねれば、二度と上がれなくなる｣
<font color="#ff0000">｢……………｣</font>
｢もし、君がそうなってしまったら………俺は…。きっと楓さんはもっと悲しむよ。｣

桜に対する夕の言葉に、なるみは疑問を覚えた。
自分に復讐しても何もならない…里穂を巻き込むつもりはなかったとは……どういう事なのだろうか。
それに、なぜだか違和感を感じる。

｢桜さん、知っている事をすべて教えてくれ。あの日、一体何があったんだ！？｣
<font color="#ff0000">｢わ、私、私………い、いや……やめてやめて……｣</font>

頭を抱え苦しそうに呻く桜。

<font size="3" color="#FF0000">やめてぇぇ！！</font>


桜を、黒いモヤのようなものが包み込む。
モヤは桜基、里穂の体の中に入っていく。
呆然と見つめるなるみと、黙って見守る夕。
次第にモヤが晴れ、現れた桜は、生前の姿となっており表情は恐ろしく歪んでいた。


<font color="#ff0000">｢うるさいうるさいうるさい！！楓の……高見沢の血など、私が絶やしてやる！！｣</font>


鋭く伸びた爪を振り上げ、なるみに一直線に向かっていく。

｢！！なるみ！！｣
｢…あ………｣

足が竦み、逃げられないなるみ。桜は容赦なく爪を振り下ろした………が、

<font color="#ff0000">｢な、なんで！！邪魔するの？！貴女は私の意識の下にいるのに！！｣</font>

腕は振り下ろされる事はなく、なるみの頭上で止まった。
その隙に、夕はなるみを抱え上げ、距離をとる。
一方の桜は明らかに様子がおかしかった。

(やらせない！！なるみに何するのよ！)
<font color="#ff0000">｢殺してやるのよ！この女のせいでまた私は……｣</font>
(勝手な事言わないで！！なるみは……私のたった一人の親友なの！！あなただって…あなただっていた筈よ！大切な親友が！！)
<font color="#ff0000">｢親……友……｣</font>
(失いたくない……護りたい……そう思ったんじゃないの？)
<font color="#ff0000">｢わ、私………か、楓……あ、あ、あ、｣</font>
(大切なものを失う悲しみは貴女がよく知っている筈よ！！私の気持ち、なるみの気持ち……分かるでしょ？)

―桜、ずっと一緒にいてね！―
―私、桜がいないと駄目なの…―
―……桜…………私…恨んでない……よ…。ごめん……なさい。い、まま…で……傷付けて…ごめ……な…さい…―

<font color="#ff0000">｢楓、楓、ああ……ごめ…ごめんなさい……私は、私は｣</font>

桜の中から聞こえるもう一つの声に、次第に自我を取り戻す桜は、ヘタリとその場に座り込む。


<font size="3" color="#FF0000">ああああああああ！！</font>


桜は頭を振り、叫ぶとバタリと倒れた。


｢ど、どうなったの…？｣
｢いや……俺にもよく…｣

なるみと夕はただ、倒れている桜を見つめていた。
まだ動く気配はない。
なるみは、疑問に思っていた事を夕に尋ねた。

｢夕くん、さっき…｣
｢ん？｣
｢さっき桜さんに言った事、どういう意味なの？｣

夕はキョトンとした表情で、なるみを見つめる。

｢え……俺、何か言った？｣
｢え？｣

…なんと夕は先ほどの言葉を覚えていなかったのだ。そういえば、口調が少し違ったような…そんな感じがした。……もしかして。

｢………和馬さん、かな｣
｢…ん、俺…さ、意識はあったんだけど、言おうとしてる事が言えなくってさ…。………もしかしたら、和馬って人が俺に憑依してたんだろうな……そうしねぇと桜って人に伝わらないって思ったんだ、きっと…｣
｢憑依……そっか。和馬さん、もうこの世の人じゃないんだもんね……｣

……本当は自分の口から言いたかったに違いない。やるせない和馬の思いを知ると、なるみは切なくなる。

｢……でも、さ。和馬が幽霊って事は桜も幽霊じゃね？会話出来ねぇのかな…｣
｢あ、そう言われてみれば…どうしてダメだったんだろう……｣

<font color="#ffc000">｢ん………｣</font>

二人が考え込んでいると、倒れていた桜が意識を取り戻した。

<font color="#ffc000">｢わ、私は……一体…ここは……？｣</font>

起き上がり、キョロキョロと辺りを見回す。
なるみ達はうなづきあい、桜の元に駆け寄る。

｢桜さん、大丈夫ですか？｣
<font color="#ffc000">｢え…？か、楓！！あ、あ……｣</font>
｢あ、落ち着いて！私はなるみです。高見沢なるみと言います。楓さんの……生まれ変わりです｣
<font color="#ffc000">｢な、るみ？…生まれ…変わり…｣</font>

なるみの顔を見て、楓と勘違いし困惑する桜をなんとか宥め、自分達がここにいたる経緯、この世界の事、そして和馬に会った事を話した。桜もようやく落ち着いたのか、二人の支離滅裂な話しを理解しようとしてくれたようだった。


<font color="#ffc000">｢つまり、あなたたちは200年くらい後の楓と和馬さんの生まれ変わりで、この世界は何者かによって作られた世界って事よね……そして、私は貴女たちの大事なお友達を乗っ取って、襲い掛かってしまった……のよね｣</font>

暗く沈んだ表情を浮かべる桜。自分のした事に対して、強く罪を感じている。
そんな桜を見て、なるみは桜の本来の性格を知る。
和馬の言う通り、彼女は優し過ぎる性格で、常に自分を二の次に置く。おそらく恋に関しても、和馬に恋い焦がれていても、やはり一番に考えるのは楓で。彼女を傷つけるくらいなら、自分が我慢すればいい…そう思い続けていたのだろう。彼女を大切に思う反面、コンプレックスもあり、それは和馬との出会いで強くなっていたのだろう。
先程の姿は恐らく、桜が無意識に押さえていた楓への負の感情が蓄積され、爆発したものだったのだ。

<font color="#ffc000">｢私、なんて馬鹿な事を。謝って済むなんて思わないけど………本当にごめんなさい…｣</font>

涙を流し二人に詫びる桜に、なるみは桜を優しく抱く。一瞬ビクリとした桜だが、次第になるみに体を預ける。
なるみはそんな彼女の背中をさすり、あやすように言葉をかける。

｢桜さん……私は平気です。それにきっと和馬さんや楓さんは、あなたを心配しています。特に楓さんはあなたの優しさを誰よりも感じていたんです。絶対あなたを怨んだりなんてしませんよ｣
<font color="#ffc000">｢！！……うぅ……楓、楓……ご、ごめんなさい……。私、ずっと楓が羨ましかった……楓は私にないものを全部持ってて……私には何もない……本当は悔しかったの。一つでもいい、楓に勝ちたかった｣</font>
｢………桜さん…｣
<font color="#ffc000">｢だから、だから……和馬さんの事は負けたくなくて……｣</font>
｢……｣
<font color="#ffc000">｢……あの男の口車に乗せられて……ううん……悪いのは私なの。あの男の誘いに乗らなければあんな事件は起きなかった。私が……弱かったせいだわ…｣</font>
なるみと夕は顔を見合わせてから、桜に聞いた。

｢なあ、あの男って？｣
<font color="#ffc000">｢間宮秀志……楓のお父さんの恩師の孫よ…。あの男は楓にしつこく言い寄ってたみたいなの｣</font>
｢……みたい？｣
<font color="#ffc000">｢…事件の後、楓の屋敷で働いていた人に聞いたの。楓、凄く嫌がってたって……楓、私には何も言ってくれなかったわ…｣</font>
｢………その男が、この世界の黒幕か……？｣
<font color="#ffc000">｢分からないわ。でも、あなたたちに襲い掛かった時に、意識の中にあの男の声が聞こえたわ……何か関係している可能性が高いかもしれない…｣</font>
｢………まさか、楓さんも桜さんみたいになっている可能性があるって事なの？｣
｢……そういう事になるな…｣

もしそうだとしたら、手遅れになる前に楓を探し出さなくてはならない。
夕はふと、和馬に言われた事を思いだし桜に尋ねる。

｢そういえば…和馬が言ってたんだ。誤解を解けってさ。あれってどういう意味なんだ？｣

それを聞くと、桜は悲しそうな辛そうな表情を浮かべる。

<font color="#ffc000">｢それは……全て話すわ………あの日あった事を。事件の真相を……｣</font>



……今、桜によって語られる事件の真相。
それは、二人の想像を絶する衝撃的な真実だった……。



<div style="text-align:center" align="center">
＊
＊
＊
＊
＊
カ
タ
ラ
レ
ル
シ
ン
ソ
ウ
ヲ
、
フ
タ
リ
ハ
ド
ウ
ウ
ケ
ト
メ
ル
ノ
カ
・
・
・
・
・
＊
＊
＊
＊
＊



第七話《完》</div>
 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2015-06-01T04:02:42+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
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	<item rdf:about="https://meguru.web.wox.cc/novel14/entry24.html">
		<link>https://meguru.web.wox.cc/novel14/entry24.html</link>
		
				
		<title>憎悪</title>

		<description>憎悪




……唖然とする二人を見遣り…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ <span style="font-weight:bold;"><span style="font-size:large;">憎悪
</span></span>



……唖然とする二人を見遣り、クスクスと笑う『里穂』基、桜。
その歪んだ笑顔に、なるみは心臓が凍りつくような恐怖を覚えた。

｢り、里穂？どうして…｣
<font color="#ff0000">｢さっきも言ったじゃない…里穂じゃないわ。まあ、この体は里穂のものだけどね…｣</font>
｢え……？｣
<font color="#ff0000">｢彼女から貰ったのよ、この体。彼女の意識は私の中で眠っているわ｣</font>

なるみはそれを聞いて愕然とした。
何も知らない大事な親友を巻き込みたくなかった。だからこそ、今まで黙っていたのだ。なのに………。

｢どうして里穂を！？あの子は関係ないじゃない！！｣

すると、桜はふんと鼻で笑い、口元を歪めた。

<font color="#ff0000">｢どうして…？貴女は気づいているんでしょ？里穂は私の…………｣</font>


<font size="3" color="#FF0000">生まれ変わりだって……</font>


｢｢！！｣｣

一番恐れていた結論。
やはり、築島桜は里穂の前世で、楓の事件になんらかの形で関わっている人物なのだ。
傍で聞いていた夕も、驚きと絶望感で声も出ないようだった。

<font color="#ff0000">｢あははは…なんて顔…。美人も形無しよねぇ。唯一の取り柄なのに…｣</font>
｢………｣
<font color="#ff0000">｢ねぇ…？里穂が本当は、貴女をどう思っていたか…知ってる？｣</font>
｢………え｣
<font color="#ff0000">｢教えてあげるわ……疎ましい、邪魔、非道で猫かぶりの最低女｣</font>
｢！！………り、里穂…｣
<font color="#ff0000">｢ああ、腹立つわ。なに？その被害者面。今まであんたの影で健気に親友になってあげてたのにさあ……それを……いい気になって人を見下して。周りにチヤホヤされて、さぞ気分が良かったでしょうね｣</font>
｢そ、んな…｣

心が痛い……。鋭く尖ったナイフを、胸に突き立てられているかのように痛む。桜の言葉とは言え、外見はたった一人の親友。まるで里穂に言われているかのような錯覚に陥り、なるみは言葉を失う。

<font color="#ff0000">｢あら、違うかしら？……彼だってそう。初恋だった。初めて心から愛した人だったのに……！！あんたが………あんたが奪ったのよ！！彼のすべてを！！｣</font>
｢か……れ……？｣

真っ直ぐに襲い掛かる、桜の激昂に、なるみはようやく掠れた声を出した。

<font color="#ff0000">｢和馬さんよ……彼は私を可愛いと言ってくれた。頑張り屋さんだねって、彼は私を一人の女の子として見てくれた。他の連中みたいに、あんたのオマケじゃなく、築島桜として……！！そんな彼が大好きだった。愛していたわ……それをあんたが、あんたが殺したのよ！あんた一人が死ねばよかったのに！！なんで彼まで………！？赦さない………赦さない……！！｣</font>

空気が重苦しくなっていく。押し寄せる憎しみの感情に耐え切れず、なるみはその場に座り込んだ。傍らにいた夕はなるみに駆け寄り、抱きしめた。それを見た桜の顔が悲しげに歪んだ。

<font color="#ff0000">｢か、和馬さん。どうして……私は、私はずっと貴方だけを……なのに、なのになのになのに………………｣</font>


<font size="3" color="#FF0000"｢なんで、楓なの！？｣></font>


ピシッ………ピシピシピシ……………

何かが裂ける音が響く。なるみと夕はただただ、頭を抱え、うずくまる桜を見つめる。
そして、バッと顔を上げた桜は………


<font size="3" color="#FF0000">あ゛あ゛ああああああああああああ！！</font>


血の涙を流し、泣いていた…………。


―貴女はいつもそうだった。なんの努力もせず、なんの不自由も知らず……。
どんなに努力しようとも、追いつけない私の悔しさ憤りを、貴女はきっと知らない。

だから思い知らせてあげる。生まれ変わりの『貴女』に。
痛め付けて、踏み付けて、嘲笑いながら


<font size="3" color="#FF0000">―総てを奪い取る―</font>


和馬さんだって気付くはず。貴女より私のほうが自分に相応しいってね。


<font size="3" color="#FF0000">―覚悟してね、楓―</font>



――…
―…

冬も深まった２月のある日の事……

｢いらっしゃいませ！……って、和馬さん！｣

両親は出かけ、桜が一人店番をしていると、引き戸を開ける音がした。
いつものように声を掛けると、そこには思いを寄せる彼の姿。

｢やあ、こんにちは。久しぶりだね｣

｢え、うん/////あの、今日は何か？｣

ほんのり熱を持つ頬。しかし、それを悟られるのが恥ずかしくて、用件を聞く。和馬は、柔らかく微笑むと言った。

｢もうすぐ合宿があってね。君に弁当を作ってもらおうと思って。……でも、忙しいか…｣

｢！！そ、そんな事ないです！！私が作ったお弁当で良かったら、是非！｣

｢ありがとう。じゃあ、三日後取りに来るよ｣

｢はい！！｣


またねと手を振りながら、和馬は店を出て行った。
桜はしばらくほうけたように、佇んでいた。
夢のような展開だ。最も、和馬自信は単純に弁当な注文なのだろうが、桜はそうは思えなかった。なぜかというと、


『君に弁当を作って貰おうと思って』


彼は、自分を指名してくれたのだ。楓ではなく自分に。おそらく楓が料理が苦手だと思って頼めなかったのだろう。
初めて楓に勝てた。それも彼女が嬉しい要因の一つだ。
桜は、ハッと我に返ると、鼻歌を歌いながら、紙と筆をとり献立を考え始めた。その様子は恋する乙女そのものだった。

そんな桜だが、初めて逢った時、和馬に特別な感情は抱いていなかった。
それが変わったのは、一ヶ月ほど前、街に出た時だった。


年末年始の買い物客で、ごった返している出店を回りながら、桜はお節料理の買い出しをしていた。
紅白のかまぼこ、伊達巻き、数の子に栗きんとんに使う甘露煮、煮染めに使う昆布…。両手に沢山の荷物を抱え、人込みを掻き分けていると、


ドンっ……バサバサ……


体格のいい中年の男性にぶつかり、買ったものを入れていた風呂敷を落としてしまった。

｢嘘～｣

桜が荷物を拾おうと屈み込もうとしていると、

｢ったく、邪魔だな。モタモタ歩いてるからだろうが！！どけっ！！｣

桜は中年男性に背中を思い切り蹴られ、倒れ込む。周りからはヒソヒソとした話し声やクスクス笑う声が聞こえ、桜は情けないやら悔しいやらで、真っ赤になりながら俯いていた。すると、

｢おい、女の子に対してその言い方はどうなんだ？｣

聞いた事のある声。桜が顔をあげると、

｢あ、貴方は…｣


花見会場で出逢った、羽山和馬だった。


｢あ？なんだお前は。この鈍臭い女の恋人か？はんっお似合いだなあ！！｣

鼻で笑う男性に便乗するかのように周囲も笑う。
和馬は表情変えず、男性を無視し桜に手を差し延べる。

｢大丈夫かい？築島桜さん｣

｢は、はい、すみません｣

それを見ていた中年男性が、あっと声を漏らす。

｢つ、築島？あ、あの皇室御用達の仕出し店の…ま、まずい…行くぞ…｣

それを聞いた男は、隣にいた妻らしき女性の手を引き逃げようとする。しかし、それを和馬が引き止めた。

｢言うだけ言って逃げるのか。どうせ逃げるなら謝ってからにしろ、卑怯者が｣

周りにたむろしていた野次馬は、知らん顔で去っていく。
さっきまで偉そうにしていた男性は、ビクリと肩を揺らし縮こまる。ちらりと桜を見るが、目が合うと妻の手を引きずるように、何も言わず逃げて行った。

｢！おい、待て！！｣
｢か、和馬さん！大丈夫、私は大丈夫だから。もういいです｣
｢でも……｣
｢わ、私もあまり注意していなかったし｣

お母さんかお父さんに着いてきて貰えば良かったですと笑った。和馬はまだ納得していない様子だったが、桜が荷物を拾い始めると、自分もしゃがみ込み拾い始めた。



――――
―――
――


｢ありがとうございました｣
｢いや、怪我はないかい？｣
｢はい！大丈夫です。あ、ウチすぐ側なんです。甘酒でも飲んで行きませんか？｣
｢え？そんなに気を使わなくていいよ。僕が勝手にやった事だし｣
｢いえ！嬉しかったんです。…私、こう言うふうに男の人に庇われたの初めてで……迷惑ですか？｣
｢じゃあ、お言葉に甘えようかな｣
｢！はい！じゃあ行きましょう！｣

荷物を持ち直し、歩きだそうとする桜の手から、和馬がすっと荷物を取る。

｢あ、か、和馬さん｣
｢持つよ｣
｢え？だ、大丈夫ですよ！すぐそこだし｣
｢君は頑張り屋さんだね。でも、こう言う力仕事は男の役目だ｣

和馬は片目をつむり、小さく笑う。その妖艶な表情に、桜は何も言えず赤くなり俯きながら和馬の後ろを歩いていく。


それから二人は甘酒を飲みながら、お互いの趣味や好きな本、好きな食べ物など沢山話をした。

話を聞けば聞くほど、彼に夢中になっていくのがわかって、『これが恋っていうのかな』と思いはじめた。と、同時に思い出す親友の顔。

『楓も和馬さんの事が……でも私だって……負けたくない』


――――……
―――…
―…


桜は献立を考えながら、和馬の笑顔を思い出す。
あれから、あの二人はお付き合いするようになったらしい。(この間、一緒に歩いている所を見た)

あの時、自分に向けられた、あの笑顔は優しさは、今親友に向けられている。
それが悔しくて、とてつもなく嫌だった。
別に楓が嫌いな訳ではない。寧ろ大好きだ。いつも天然で危なっかしいところがあるが、優しくて守って上げたくなる。きっと和馬も同じ気持ちなんだろう。

結局、結論は出ず悶々としつつ三日後を迎えた。



――――…
―――…
――…


三日後、約束通り和馬がやって来た。

｢おはよう｣
｢あ、おはようございます！！まだ少しかかるんで、掛けて待っていてください！｣

和馬に椅子を奨めてから桜は温かいお茶を出し、また台所へ入った。

｢合宿って、随分早いんですね｣
｢ああ、お国のため、だからな｣
｢そうですか。………楓は？｣
｢無理に笑ってたけど、一週間の辛抱だからって言ったら、泣いちゃったよ。別に死にに行く訳じゃないのに…｣

桜は台所からそっと和馬の様子を覗き見る。
優しげな…そしてどこか嬉しそうな顔。

………楓を想っている顔。

見なければ良かった……。桜は目を伏せ再び作業に取り掛かる。

３０分程して弁当が完成した。
豆と昆布の煮物、焼き粕鮭の切り身、青菜お浸しのおかか和え、海老の甘煮等十品にひじきご飯。
地味だが、得意なものばかりだ。蓋を閉め、風呂敷に包み和馬の元へ行く。

｢お待たせ！はい、合宿頑張ってください！｣
｢ありがとう。わあ、随分大きいな｣
｢あれもこれもって考えたら凄く量が多くなっちゃて。多過ぎかな…｣
｢いや、大丈夫。せっかく君が作ってくれたんだ、全部戴くよ。っと、そろそろ行かないとな｣

和馬が壁の時計を見、つぶやく。
もう行ってしまうのか…桜はふと顔を曇らせる。
次はいつ会えるの…そんな思いが渦巻く。

和馬と店の出口まで向かう。外は雪が降っていた。

｢雪か……｣
｢どおりで冷えると思ったら…｣
｢風邪引かないようにね。元気で｣
｢う、うん！！和馬さんも、元気で！！｣

笑顔で送り出したい……私は楓とは違う。彼女みたいに泣いて困らせたりはしない！そんな思いで精一杯、笑いかける。

｢じゃ、行ってくる｣
｢いってらっしゃい！！｣

和馬は数歩進み、立ち止まり振り返る。そして…

｢君は可愛いよ。だから自信持って。じゃあね、ありがとう｣

また前を向き直り、駅舎に向かい歩いていった。
桜は唖然としながら和馬な背中を見送る。

｢あ、え……か、和馬…さん…｣

次第に頬に熱が集まる。ばっと両手で顔を包み、さっきの言葉と和馬の顔を思い出す。

｢キャー！/////｣

一人悲鳴を上げ、店に駆け込む。

幸せな気持ち。好きな人に可愛いと言われるのが、こんなに嬉しいなんて…。
ますます、和馬への想いは強くなる。

｢和馬さん……大好きです…｣

たとえ貴方が楓を選んでも、私は貴方を………。


純な初恋で終わるはずだった。

｢ごめんください。桜さんはいますか｣

<font color="#ff0000">あの男が来るまでは……。</font>


<div style="text-align:center" align="center">第六話《完》</div>
 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2015-05-31T23:36:04+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
	<item rdf:about="https://meguru.web.wox.cc/novel14/entry23.html">
		<link>https://meguru.web.wox.cc/novel14/entry23.html</link>
		
				
		<title>桜</title>

		<description>桜



――…
―…


なるみと夕はもう…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ <span style="font-weight:bold;font-size:large;">桜</span>



――…
―…


なるみと夕はもう一つの封鎖されていた扉の前に立っていた。
先程の親子に襲われた部屋を再び探索してみると、本棚の引き出しに鍵を見つけたのだ。
もしやと思い、立ち入り禁止のテープが貼られていたドアの前に行ってみると、テープは無くなっていた。
｢しっかし、不思議なもんだな｣

夕が腕を組んでドアを眺め呟く。それを聞いたなるみはコクリとうなづいた。

｢うん。なんだか誘導されてるみたいね。最初の部屋も鍵を見つけたらいつの間にか入れるようになっていたし｣
｢…ん。ま、考えたても仕方ないよな。この場所や今の状況なんて説明つかないし。それに俺達が何らかの事に関わっているみたいだしな｣
｢………｣

…そう。それが一番の疑問だ。何故自分達なのか。たとえ生まれ変わりだとしても、何故自分達がこんな事に巻き込まれなければならないのか………。

なるみにそっくりな楓という少女。
そして、夕が言っていた夕にそっくりな青年、和馬と楓との間にあった出来事の真相。
和馬がこの迷宮をさ迷っている訳。
もし、和馬が自分達をこの迷宮に誘ったとしたらば、なんの為か、その真意。
…そして、何故楓が犯罪者と呼ばれているのか。

クリアにしなければならない事柄は山積みだ。
しかし、夕の言う通り自分達が色々考えた所で仕方がないのかもしれない。
…今はとにかく前に進むしかないのだ。

｢じゃ、入るぞ｣
｢…うん。夕くん…｣
｢ん？｣
｢……私、大丈夫だから｣
｢……｣
｢何が見えてしまっても、受け入れてみせる。だから…｣
｢ん…どうした？｣
｢だから……側に…居て、くれる？｣

一言一言、搾り出すように呟くなるみに、夕は軽く目を見開くと、ふっと笑う。そして、俯き赤面している彼女の手をそっと握る。なるみはハッと顔を上げ、夕を見る。

｢当たり前だろ？二人で元の世界に帰るって約束したじゃないか。それに…｣
｢ゆ、夕く…｣
｢君は今度こそ俺が守る……誓うよ｣
｢……っ夕くん……ありがとう…｣

逢って間もない夕に、懐かしい安心感を覚えるなるみ。前世の自分が何をしてしまったのか……不安に押し潰されそうななるみの心は、夕の真っ直ぐな暖かい言葉に優しく包まれる。

…以前にもこんな事を言われた気がする……。

それはきっと、なるみと夕の中に僅かに残った、楓と和馬の暖かな記憶の断片なのだろう。

嬉しさに涙を零すなるみの頬に手を沿え、その涙を拭う夕の手は、言葉同様暖かかった。


――…
―…



<font color="#ffc0ff">―和馬さん……私を愛してる？―</font>

<font color="#80c0ff">―ああ、もちろん―</font>

<font color="#ffc0ff">―どんな時も…私を信じてくれる？―</font>

<font color="#80c0ff">―ああ―</font>

<font color="#ffc0ff">―どんな時も…私を護ってくれる？―</font>

<font color="#80c0ff">―ああ、必ず―</font>

<font color="#ffc0ff">―たとえ遠く離れても、どの世界に生まれ変わっても私を見つけてくれる？―</font>

<font color="#80c0ff">―ああ、必ず見つけるさ―</font>

<font color="#ffc0ff">―…ありがとう……和馬さん。…………愛しています―</font>

<font color="#80c0ff">―俺も……愛してる………楓……―</font>
 



<div style="text-align:center" align="center">フ
タ
リ
ノ
ア
イ
ノ
サ
ダ
メ
ハ

ケ
ッ
シ
テ
ユ
ラ
グ
コ
ト
ハ
ナ
イ
・
・
・


</div>


――…
―…


｢な、なに？ここ｣

自分そっくりの謎の少女に襲われ気を失い、目が覚めると見知らぬ部屋にいることに気がついた里穂は、ただただ呆然としていた。

部屋は荒れ果ており、不気味な静寂に包まれていた。里穂はなんとか体を起こすと、周りを観察する。

｢こ、ここはどこなの…？｣
<font color="#ff0000">｢ふふ……ここはね、私が罪を犯した部屋よ…｣</font>

突如、背後から聞こえた声に背筋が凍りつく。

<font color="#ff0000">｢私が…親友を………『殺した』部屋。クスッ……なかなかいい雰囲気でしょ？｣</font>
｢こ……ろし……た？｣

信じがたい言葉を背後に聞きながら、感じていた疑問を口にした。

｢なんで……なんで私がここにいるの…？…そしてあなたは誰？｣

背後で気配が動いた。

<font color="#ff0000">｢なんで私…？それはねあなたは私だからよ…｣</font>
｢貴女が私…？｣
<font color="#ff0000">｢そう…貴女は私、私は貴女よ｣</font>
｢う、嘘……私は…貴女とは違う…｣
<font color="#ff0000">｢何が違うというの？貴女だって、あの子を疎ましいと思っているでしょう？｣</font>

気配が近付く。里穂は振り向く勇気がなく、ギュッと目をつむり俯く。背後の気配は、そんな彼女のすぐ側まで来た。

<font color="#ff0000">｢あの子がいなければ……あの子は何故あんなにチヤホヤされるの？何故私を自分の側に置いてるの？……疑問に思った事はない？｣</font>
｢……あ、あの子？誰の事？いつも側に……？まさか……なるみ？わ、私そんな風に思ったことないっ！なるみは私のたった一人の親友よ！？疎ましいなんて……｣
<font color="#ff0000">｢嘘ね。貴女はいつも感じていた筈、彼女さえ…彼女さえ居なければって。いつまで偽善者でいるつもり？｣</font>
｢な、何言って…｣
<font color="#ff0000">｢何をしてもどんなに努力しても、私の前にはあの子が居て…親友ヅラして私を置き去りにして自分は幸せになって……赦せない……赦せない……｣</font>

里穂は身の危険を感じた。冷や汗が吹き出、冷水を浴びたように震えが止まらない。

<font color="#ff0000">｢あの子はね……私を引き立て役にしか思っていない。もちろん、貴女の事もね｣</font>
｢そ、そんな…｣
<font color="#ff0000">｢彼は私が初めて好きになった人…彼は私を可愛いと言ってくれたわ。でも、あの子が奪っていった。心も命も……｣</font>
｢(…彼？)話が…見えないわ。それがなるみとなんの関係があるのよ！｣
<font color="#ff0000">｢関係？……ふふふっ。十二分にあるわよ……なぜならなるみは……｣</font>

背後の気配がピタリと里穂の背中にしがみつき、地に這うような恐ろしい声が鼓膜に響いた。




<font size="3" color="#FF0000">あの子、高見沢楓の生まれ変わりだからよ…</font>



里穂は再び意識を手放した。



…がちゃ……


その頃、なるみと夕は例の部屋に入っていた。
人工的な明かりはやはりなく、窓から差し込む月明かりだけが室内を照らしている。リビングだろうか。中はとても広いようだ。

｢ここは…特になにもないみたいだな…｣
｢うん。そうみたいね｣

前回のように襲われる覚悟はしていた二人は、ホッとして肩の力を抜いた。

｢何か手がかりになるものを探そう｣
｢うん。手分けしたほうがよさそうね…私はこっちを探してみる｣
｢ああ、俺はこっち探す。何かあったら知らせてくれよ｣
｢分かったわ｣

そう会話を交わすと、二人はそれぞれ探索を始めた。




｢えっと……これは…違うなあ…………？これは…新聞？｣

本棚を調べていたなるみは、古ぼけた新聞を見つけた。紙が黄ばんで文字も読みにくくなっているが、辛うじて読める文字を読んでみる。

｢……20日夕方、荻月市在住の地主、高見沢雅久(56)、長女香澄(23)、その息子隆(0)が自宅で惨殺された。容疑者として高見沢雅久の次女楓(17)に逮捕状が出た。彼女の友人の築島桜(17)は、｢その日は朝から様子がおかしかった。まさか殺人を犯すなんて｣と驚きをかくせない様子であった………これ、楓さんが犯したっていう事件の記事？それに……築島って、里穂と同じ苗字だわ…どういうことなの…？｣

なるみは妙な胸騒ぎを感じて、その新聞を持ち、夕の元に向かった。





｢…ふーん。なるほどな。前世が起こした事件の記事か｣
｢うん。それに気になる事があるの…ここ。築島って里穂と同じ苗字なのよ。まさか…とは思うけど、胸騒ぎがするの…｣
｢……その築島って子もこの世界にいるかもしれないって事か？｣
｢うん……あくまで仮定なんだけど。この桜って人、里穂の前世……だったりしないかな…｣
｢俺達みたいにか？……だとしたら｣
｢……放っておけないわ。里穂が危ない｣
｢……！！行こう！｣
｢うん！！｣

二人が部屋の扉に向かおうと走り出すと、どこからともなく声が聞こえた。



<font color="#ff0000">｢ああ……嫌だ嫌だ……。いい子ぶっちゃって｣</font>


ビクリと動きを止める二人は周りを見回し、声の主を探す。するとまた聞こえて来た。



<font color="#ff0000">｢貴女は生まれ変わっても変わらないのね…そうやって、私を惨めにしてほくそ笑んで……楽しんでいるのよね｣</font>



…そこでなるみは気づく。

｢り、里穂？｣

毎日聞いている親友の声だ、間違う筈はない。しかし、様子がなんだか変だ。



<font color="#ff0000">｢私は里穂じゃない……桜よ。築島桜……忘れたなんて言わせないわよ…｣</font>


はっきりと感じた背後の気配。二人は勢いよく振り向き、そして…絶句した。

｢そんな……里穂…｣
｢…う、嘘だろ？｣

二人の目の前には、パジャマ姿の『築島 里穂』の姿があった。
その顔は今までの面影はなく、歪んだ笑顔を浮かべていた。





<div style="text-align:center" align="center">第五話《完》</div>

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		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2015-05-31T23:33:58+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
	<item rdf:about="https://meguru.web.wox.cc/novel14/entry22.html">
		<link>https://meguru.web.wox.cc/novel14/entry22.html</link>
		
				
		<title>過去～楓～</title>

		<description>過去～楓～



運命なんて………信じない…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ <span style="font-weight:bold;font-size:large;">過去～楓～</span>



運命なんて………信じない……



荻月市内の一際大きな屋敷の主には一人の愛娘がいた。

｢お父様、今帰りました｣
｢お帰り。楓｣

母親を早くに亡くした我が子に寂しい思いをさせまいと、愛情を惜しみなく注いできた父親。
まだ小さい子供と思っていた娘は年頃になり、美しく成長した。それが嬉しくもあり、もうすぐ親離れの時期かと寂しくもあった。

｢お父様、明日お友達とお花見に行きたいのですが、よろしいでしょうか？｣
｢桜ちゃんとか？｣
｢はい｣
｢気をつけて、楽しんでおいで｣
｢ありがとうございます！お父様！｣

楓には桜という親友がいた。家柄は普通だが幼い頃から一緒で、家族ぐるみの付き合いだった。二人は年に一度、桜の花の咲く季節に、お花見をするのが恒例だった。

｢明日は何を着ていこう｣と楽しそうに自室に行く楓を見送り、父親も書斎に戻って行った。



｢おはよう！！楓。いい天気になって良かったね！｣

次の日、楓と桜はいつもの園庭で落ち合った。

｢ごめんなさい、待たせちゃって…お着付けに時間が掛かっちゃって……｣
｢大丈夫、大丈夫。私も今来たところよ！お弁当作るのに時間かかっちゃって（笑）｣

申し訳なさそうに謝る楓に、桜が風呂敷に包んだ重箱を掲げ軽く笑う。その中にはお手製の料理が一杯詰め込まれているのだろう。楓は嬉しそうに微笑んだ。
毎年作ってきてくれる、桜の特製花見弁当は、凄く美味しいのだ。見た目の美しさもだが、一つ一つの料理が上品で、それでいて懐かしい素朴な味をしている。それもそのはず、桜の家は皇室や貴族ご用達の仕出し店なのだ。

｢今日はお休み？｣
｢んーん。鷹ノ原のお坊ちゃまの遠足のお弁当の注文が入って。朝早くに父さんが打ち合わせに行ったよ｣
｢そうなの。大変ね｣
｢まあね。でも、仕事がないよりマシだって｣

有り難いことですと笑う桜に楓も笑う。

二人はしばらく談笑しながら桜並木を散策したり、出店を覗いたりと楽しく過ごした。
やがてお昼時となり、見事に咲いた桜の根元に茣蓙を敷き腰を下ろすと、桜は重箱を開ける。

｢はい、どうぞ召し上がれ！！｣
｢うわあ！すごい美味しそう！！｣

重箱には煮物を始め、焼き物やでんぶや錦糸卵で綺麗に飾られたちらし寿司が詰められていた。
桜は小皿と箸を楓に渡し、白いハンカチを差し出す。
｢？何？｣
｢折角の綺麗な着物、汚しちゃダメよ。これ膝に敷いて｣
｢！ありがとう！桜｣

桜はいつも楓を気遣う。そのさりげない優しさに何度救われたか…。
楓は貸してくれたハンカチを膝に敷くと、重箱の中のご馳走を味わった。



食事が終わってから、桜を眺めながら色々な話をし、気づけば夕暮れがせまっていた。

｢いけない！もうこんな時間？｣
｢あっという間だったね。そろそろ帰ろっか｣
｢うん……ねぇ桜｣
｢うん？｣
｢あの…来年も一緒にお花見してくれる？｣
｢ははは！当たり前じゃない！もちろん！｣
｢ありがとう………桜…｣
｢毎年同じ事聞くよねぇ、楓（笑）｣
｢う……ごめんなさい…｣
｢別に怒ってる訳じゃないよ。私達親友じゃない｣
｢うん……ありがとう｣
｢……何かあった？｣
｢え？……ううん。何も………｣
｢………そう？ならいいけど…｣

……いつまでこんな風に、二人で楽しい時間が過ごせるか分からない。
実は、桜には言っていないが、楓はもうお見合いの話が出ていた。楓自身、相手方の男性があまり好きではない。何故なら、その男性は一回り以上歳が離れており、しかも何度か楓の家に出入りしては、楓を無理矢理自宅に連れていこうとするのだ。父親も知ってはいるが、学生時代の恩師の孫ということで、無下に断れなかった。
その事を分かっているらしく、最近さらに悪化しており、楓も精神的に限界が近い。かといって桜に余計な心配は掛けさせたくない。
楓はぐっと堪え、帰ろうと桜を促し歩きだした。
とその時、

―ドンッ―

誰かとぶつかった。

｢ご、ごめんなさいっ！前を見てなくて……｣
｢いや、こっちこそ注意してなかった。すまない｣

二人はお互いに慌てて頭を下げた。そして頭をあげる。

｢！！////｣

楓は思わず息をのんだ。
目の前には学ランに身を包んだ美青年が立っていた。スラッと長身で、サラサラの黒髪は短く切り揃えられており、端正な顔立ち…。楓の頬に熱が集まる。

｢……？どうしたの？｣

青年が不思議そうに楓を見る。隣にいる桜に突かれ、ようやく我に返った楓は、恥ずかしそうに俯く。

｢ごめんなさい。ジロジロ見ちゃって……あのお怪我は？｣
｢大丈夫だよ。君こそ大丈夫？｣
｢わ、私は平気です！！｣
｢そうか…良かった｣
｢あ、あの…｣
｢俺は羽山和馬。君、名前は？｣
｢えっ？あ、私は高見沢楓です｣

あわあわと自己紹介する楓を見て、和馬はほほ笑む。
｢楓さんか…素敵な名前だね｣
｢そ、そんな事…/////｣
｢ところで隣のお嬢さん、そんなに睨まないでくれよ（笑）｣
｢べ、別に睨んでないわよ！｣
｢君は？｣
｢………桜、築島桜よ｣
｢桜か…確かに桜が似合うな。可愛い名前だ｣
｢な！！/////｣

和馬の口説き文句(？)に、そういう台詞を言われ慣れていない桜は、真っ赤になる。

そんな桜を見てクスクス笑う楓、一方和馬の方は、かなりの天然キャラなのかキョトンとした表情で、二人の顔を見る。


そのあと薄暗くなるまで、三人でお茶を飲みながらお喋りし、二人は和馬に送られて家路に着いた。


―――
――
―


それから…楓と和馬の逢瀬が始まった。
恋愛など、自分には無関係だと思っていた楓は、初めての感情に戸惑いながらも、和馬の誠実さに惹かれていった。
一方の和馬も、楓の優しさや素直な性格に惹かれていった。
しばらくは、楽しい日々が続いていた。


しかし、それをよく思わない人物がいたのだ。


｢楓…私というものがありながら、あんなどこの馬の骨とも分からない男と……………｣


楓の自称婚約者、間宮志郎だった。


間宮は楓の父の恩師の孫で、資産家のお坊ちゃまだった。我が儘で気位いが高く、自己顕示欲が強いため、楓に苦手意識を持たれているのだが、本人は気にせず楓に強引に婚約を迫っていた。


｢なんとかして、あの二人を引き離す方法がないものだろうか｣



間宮は考えた末、楓の父に二人のいかがわしい関係をでっちあげ、引き離すように諭した。
最初は間宮の言う事が信じられずにいたが、あまりにマメに報告してくるのと、恩師の孫であるという事から、間宮の言う通り楓に和馬との逢瀬をやめさせる事にした。


｢お父様、何でしょうか？｣
父は、楓を自室に呼び出した。心なしか不安そうな楓を見、重く口を開いた。

｢うむ……お前最近、和馬という男と会っているようだな｣

ギクッとした楓。なぜ…なぜ父が知っているのだろうか。まだ紹介もまだしていなかったはずなのに。

｢え……あ、はい。黙っていてすみません。今度、きちんと紹介を…｣

｢その必要はない｣

｢え？｣

楓の言葉を遮り、真っすぐ娘を見つめる父。楓は思わず息を飲んだ。

｢もう、逢ってはいかん｣

｢な、お、父様……？｣

なぜこんな事を言われたのか……自分達は健全なお付き合いをしているつもりだった。いかがわしい事など何もないはずなのに……。
｢なぜですか？なぜ好きになってはいけないの？お父様！｣

｢あの男はお前に相応しくない｣

心臓をえぐられるような痛みと苦しみ。大好きな人をそんな風に言われるのが、悲しくて……、楓は涙をこらえ拳を握りしめる。

｢でもっ、私は………私は彼を愛しています！！身分とかそんなもの関係ないんです！！わかってください！お父様！！｣

必死で訴える楓に父は惑う。このようにムキになった娘を初めて見たからだ。もしかしたら、自分は娘の幸せを壊そうとしているのか……？と思ったが、間宮の言葉が脳裏を掠めた。

｢あの男は楓さんを手に入れるためならなんでもしますよ。例えば……<font color="#FF0000">殺し</font>とか｣


間宮の話が本当なら、そんな男のそばにいたら、娘が危ない。


｢とにかく、もう逢ってはいかん！！分かったな？お前の為なのだ｣

｢そんな…お父様！！｣

｢今日はもう遅い…部屋に戻って休みなさい…｣

｢………｣


しばらく俯き黙りこくる楓。父はそんな楓を横目に机に向かう。


…なぜこんな事を言われなければならないのか。それよりも、いつもの温厚で優しい父の台詞とは思えないほどの彼への冷たい言葉。

｢お父様……酷い……酷い！！｣


―バタン

今の父といる事に耐え切れなくなった楓は、部屋を飛だして行った。



｢………ふふふ。上手く事が運んだな。用意はいいか？｣

｢……本当にやるの？私…やっぱり……｣

｢何を今更。君は和馬が欲しい。私は楓が欲しいのだ。利害は一致しているだろう？｣

｢…………それは…｣

｢お互いの幸せの為だ……｣

なあ

<div style="text-align:center" align="center"><font size="3" color="#FF0000">桜</font></div>

運命は無慈悲で残酷な出来事を運んできた。


―なんで、どうしてこんな事になってしまったのか…―


｢ん…｣

しんと寝静まる部屋。
里穂はふと目を覚ました。

｢あ…れ…？なるみ？｣

周りを見回し、隣に寝ているはずの親友の姿が見えない事に気づく。

｢…どこ行ったんだろ。トイレかな…？｣

心配なのだが、寝起きのボンヤリした頭では何も考える事が出来ず、ふああと一つ欠伸をし、再びベッドに潜り込んだ。

……と、その時


<font color="#ff0000">｢おいで…｣</font>


｢！！｣

今にも消え入りそうな女の子の声。
バッと飛び起きるが、部屋には誰もいない。

｢…だ、誰？なるみ？｣

キョロキョロと辺りを見回して見ても薄暗い部屋があるだけで人影どころか物音すらしない。
里穂は体の奥から震えが沸き上がり、布団をぎゅっと握りしめたまま固まっていた。するとまた…


<font color="#ff0000">｢…こっちに……おいで…｣</font>

｢ひっ…｣

今度は少し声がハッキリしていた。
しゃっくりのような悲鳴を上げ、さらに体を縮める。そしてハッとする。

｢……霧？｣

部屋を覆う白い霧。里穂はその光景をただただ見ているしか出来ない。すると……


<font size="3" color="#FF0000">｢こっちにおいで｣</font>


里穂は恐怖のあまり声さえ出せない。
なぜならその声は…………

｢う、後ろにいる…｣

里穂の背後から聞こえてきたのだ。そして、ハッキリ浮かび上がる人影。

それは和服を着た、自分にそっくりな少女。
驚きと恐怖で声がでない里穂にゆっくりと手を伸ばす。

<font color="#ff0000">｢やっと…やっと見つけたよ…もう一人の『私』…さあ、あなたも罪を背負うのよ……｣</font>

少女は里穂の腕を掴み、引っ張る。里穂は必死に抵抗するものの、少女の力は想像以上に強く、どんどん引きずられていく。
少女は里穂の腕を掴んだまま、霧の中へと進んでいく。

｢ひ……<font size="3" color="#FF0000">い、いやああああ…！！</font>｣

里穂は悲鳴をあげ、意識を手放した。

薄れる意識の中で最後に見たものは、恐ろしく歪んだ少女の笑顔だった。


<div style="text-align:center" align="center">＊
＊
＊
＊
ト
キ
ハ
ム
ジ
ヒ
ニ

<font color="#ff0000">ギ
セ
イ
シ
ャ</font>
ト
イ
ウ
ナ
ノ
<font color="#ff0000">ヤ
ク
シ
ャ</font>
ヲ
イ
ザ
ナ
ウ
・
・
・
・
＊
＊
＊
＊


第四話《完》
</div>

 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2015-05-31T23:31:33+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
	<item rdf:about="https://meguru.web.wox.cc/novel14/entry21.html">
		<link>https://meguru.web.wox.cc/novel14/entry21.html</link>
		
				
		<title>探索</title>

		<description>探索




なるみと夕は、二階に上が…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ <span style="font-weight:bold;font-size:large;">探索</span>




なるみと夕は、二階に上がった。
二階は前よりも霧が濃くなっていた。
まるでこの先には行かせないとでも言っているかのように…。
そこは、なるみの学校の生徒達が宿泊している…はずだった。


｢おい。やけに静かじゃないか？｣

｢うん……寝てるにしても…おかしいよね｣


確かに変なのだ。
霧に包まれているのは相変わらずだが、物音どころか気配すらしない。まるで存在すべてが消えてしまったかのように……。


｢あれ？｣


なるみは何かに気がついた。


｢この階のドア、こんな古い形だったっけ……｣


夕方、ホテルに着いて、部屋に入る時に見た時は小綺麗で、カードキーが付いたドアだったのだ。なのに今は、年季が入った飴色のドアで鍵穴がある。


｢……どうなってるの……｣

なるみが呟くと、しばらく何かを考えていた夕が突然一つのドアに向かって歩きだす。


｢なんだ？この黄色いテープ。『KEEP OUT』？立入禁止って事か？…事件があった場所に貼るやつだよな、これ｣

｢でも、他のドアは貼ってないみたいね。もしかしたら、他にも貼ってある場所があるのかな｣

｢探してみよう｣

｢そうね｣


なるみと夕は探索を開始する。
何故か、このテープが貼ってある場所に、入らなければならない……二人はそんな気がしていた。


小１時間歩き回り、もう一つテープが貼ってあるドアを見つけた。
入ろうにも取っ手にまで、テープがぐるぐると巻かれており、回せない上にご丁寧に鍵までかかっていた。テープは強引に取れるとして、鍵は難しいだろう。
二人は再び階段の前まで戻り、作戦会議を始めた。


｢これじゃ、先に進むのは難しそうだな｣

｢３階って行けないの？｣

｢ん、さっき上ろうとしたんだけど、なかったんだ｣

｢何が？｣

｢階段｣

｢……え？｣


なるみは振り返り、階段の側まで行くと、


｢本当だわ。３階に行く階段がなくなってる……｣


……確かに無かった。普通なら下に向かう階段の横にあるはずなのだが、もともと階段なんて無かったかのように壁になっていた。


｢どうやらこの屋敷は、俺達を外に出したくないみたいだ｣


夕は剣を持つ手に力を入れた。
一方のなるみも、薙刀を両手で握りしめ、霧に覆われたフロアを見つめる。

｢とにかく、調べて見ないと何とも言えないな。鍵が開いてる部屋がないか調べてみようか｣

｢そうね。立ち止まってても仕方ないし。行きましょ｣


二人はお互いに頷き合うと霧の中へ進んで行った。

<div align="center">＊
＊
＊
＊
＊
ア
ル
キ
ダ
シ
タ
フ
タ
リ
ハ
、
コ
ノ
サ
キ
デ
ナ
ニ
ヲ
ミ
ル
ノ
カ
・
・
・
・
・
》</div>


なるみと夕は、二手に別れ、入れるドアを探した。

しかし、鍵がかかっているドアばかりで、いい加減二人とも疲れ始めた時、一つのドアの鍵が開いている事に気づいた。


｢あれ？さっきは開かなかったはず………ま、いいか。夕くんを呼んで来なくちゃ！！｣

……確かにそのドアは先程まで閉まっていた。
その証拠に目印に赤ペンで花のマークが壁に描いてある。
実はさっき、夕が蹴破ろうとしていたのを何とか止めた際に、何となく付けて置いたのだ。
根拠はない。が、確信はある。開いていると言うことは、この空間を作り、自分達を引き込んだ何者かが、『入れ』と言っているのだ。


｢本当にゲームみたいな展開になったわね｣


なるみはそう呟くと夕の元へ急いだ。



*******

｢夕くん！｣

｢…なるみ？どうした？｣


夕は力尽きたのか、階段に座り込んでいた。

｢見つけたの、入れるドア！｣

｢本当か？｣

｢うん、試しに開けてみたら開いたから、間違いないわ｣

｢よし、じゃあ行こう！｣


二人が歩きだそう……としたその時、


<font color="#FF0000" size="3">オギャー……オギャー…</font>


赤ん坊の泣き声が聞こえた。しかもその声はかなりの音量で、ずっと聞いているとおかしくなってしまいそうだ。
二人は思わず、ギクリと足を止める。


｢な……今度はなに？｣

｢どっから聞こえんだ？｣

｢と、とにかく開いてるドアに行きましょう｣

｢ああ……｣


二人は頷きあい、ドアに向かい走り出した。



……その間じゅうずっと赤ん坊の声は鳴り響いていた………。


*******


｢ここよ｣

｢え……ここって、さっき閉まってたろ？｣

｢うん……そうなんだけど、確かに開いてるのよ｣


なるみは、ほら…とドアノブを下げ押す。


キィィー…という音と共に、ドアの隙間からはぼんやり青白い光が漏れている。二人はゴクリと生唾を飲み込み、部屋の中に入った。


｢……カビ臭いな。長い間誰も住んでいないみたいだ……｣

｢何か手がかりになるものは……あら？｣


クルリと辺りを見回すなるみは、ある場所で何かを見つけた。
それは細かい細工が美しいドレッサーだった。その上には、化粧品や香水の瓶と一緒に写真立てが飾ってあった。

なるみは無意識に近寄り、写真立てを見つめる。そして、驚愕に言葉を失う。


(え…………私………？)


そう、写真立てに入っていた白黒の写真の被写体は、なるみだったのだ。着物を着ており髪型も若干違うものの確かになるみだった。なぜ、こんな場所に自分の写真が。それに和服で写真なんて撮った事ないのに。しかもかなり古めかしく、現代のものではないようだった。


(一体……何がどうなっているの……？……また……この感じ……)

｢なるみ？どうしたんだ？｣


呆然と立ち尽くしているなるみを心配したのか、夕が声を掛け、顔を覗き込む……ギョッとした。


……なるみは泣いていた。目からは涙がとめどなく流れ、瞬きすらままならない。さすがにマズイと思った夕は、なるみの背中を摩りながら、ドレッサーから離れた。



*****

しばらくして。落ち着きを取り戻したなるみは、夕にこう切り出した。


｢………写真に、私が写ってたの………いや、私そっくりな人…………どうなってるの……？私、分からないよ……｣

｢本当になるみが写ってたのか？｣

｢うん……。着物着てたけど、私だった…｣

｢そか。でもなんで泣いてたんだ？｣

｢分からないよ……ただ、凄く悲しくて、苦しくて………知らないうちに泣いてたの……。泣き止まなきゃって思っても止まらなくて……｣

｢なるみ、お前はここにいろ。俺が手がかりを探して来る｣

｢え？ダメだよ！そんな……何かあったら……｣

｢大丈夫だ、すぐ戻る。ここでおとなしくしてろよ！｣

｢あ、夕くん………｣


なるみの呼びかけに答えず、夕は再び部屋の中に入って行った。
なんだか、なるみをこの部屋に居させたら危険なような…そんな気がした。


<font color="#FF0000">グロテスクな表現が含まれています。苦手な方はご遠慮ください。</font>


************

夕は再び部屋に入り、戸棚や箪笥など目に付くものは片っ端から調べたが、何も見つからなかった。

｢可笑しいな…開いたってことはキーアイテム的なものがあるはずなんだけど｣


夕はふと、ドレッサーに目を止めた。

大きな鏡がはめ込まれ、椅子を挟んだ左右に引き出しが三段ずつ。そして……例の写真立て。
………ここになにかある気がしてならない。

夕はドレッサーに近付き、上から順に引き出しを開けた。

｢ない………か……ん？｣

何故か無償に写真立てが気になってしょうがない。思わず手が伸びて、写真立てを持ち上げる。



……………カ……ツン……


何かが床に落ちた。


｢なんだ？………鍵？どこの鍵だ？…………分からないな……一旦なるみのとこに戻るかな……｣


期待していた資料の類はなかった。
もっと調べてみたかったが、なるみを長い時間、一人にして置くのは心配だ。
夕は鍵を握りしめ、なるみの元へ急いだ。


一方のなるみは、先程の写真に写っていた女性の事を考えていた。

相変わらず、赤ん坊の泣き声はする。しかも前より酷くなっているような気がする。

…自分にそっくりな人。どこか悲しそうな目。自分に何か訴えかけているような口元……。

｢なんか、単に似てるだけなんて思えないのよね……。なんでなんだろう……｣

膝をかかえ、考え込んでいるなるみの背後で、黒い何かがうごめき、次第に大きくなりはじめた。

その気配になるみが気づき振り向くと同時に、その黒い物体は触手を伸ばした。

｢え………？きゃああああ！！｣

なるみを捕らえた黒い物体は、自らの体内(？)に押し込んだ。そして、壁に染み込むように消えて行った。


************

｢なるみ！！……あれ？どこに行った？｣

少したった後、夕が戻ってきた。が、なるみはそこにいなかった。


｢どこ行ったんだよ本当。…………あれ？｣


夕は床に転がっているものに気がついた。


｢これは………なるみの薙刀！まさか………なるみ！なるみ！！｣


夕はなるみの薙刀をにぎりしめ、走り出した。



****************
************
*******

<font color="#6495ED">『何故ですか！？お父様！』

『お前にあの男は相応しくない』

『で、でも私は・・・・』

『貴女を手に入れるためなら、あの男はどんな事でもするんですよ。例えば・・・・<font color="#FF0000">殺し</font>・・・とかね』

『～さん、どうか僕の事は忘れて・・・・』

『～さん！・・どうして・・・どうしてなの！？お願い、嘘だと言って！！』

『・・・・さようなら ・・愛しています・・・』


『いや！行かないで！！一人にしないで！！<font color="#FF0000" size="3">和馬さん！！</font>』</font>




・・・・・この記憶は？？いろんな人達の声が頭に流れ込んでくる・・・・。
女の人の声は、たぶん写真立ての人かな・・・？でも、


・・・『和馬さん』て誰？


そこで、なるみは目を覚ました。暫く呆然としていたが、さっきの出来事を思いだし、はっと我に帰る。

｢ここは・・・・どこなの？｣


相変わらず赤ん坊の泣き声はすごい。しかもすぐ近くで聞こえる。なるみは周りを見回し、窓際の前にカゴのような物を見つける。どうやら声はそこからするようだ。
なんとか起き上がり、カゴを覗き込んだ・・・が、


『ひ・・・・！！！』


なるみは思わず叫びだしそうになり慌て口を抑える。

・・・・そこには、









グチャグチャになり、血ダルマになった・・・・・
<font color="#FF0000" size="3">赤ん坊だったもの</font>

が横たわっていた。


｢な、なんで・・・誰がこんな・・・』


なるみはズリズリと後ずさる。が、背後の何かにぶつかった。その時、ガシリとしがみつかれる。


<font color="#FF0000">『誰が？・・・・貴女がやったのよ・・・』</font>

｢！！！｣


耳元に囁く、地をはいずるような声。あまりの恐ろしさに固まるなるみ。


<font color="#FF0000">『貴女が・・・私の子をこんなにしたのよ・・・』</font>

｢そ、そんな・・・・私、知らない・・・｣

<font color="#FF0000">『貴女がやったのよ・・・返してよ、返してよ返して返して返して返して返して・・・・・』</font>


なるみの体にきつくきつくしがみつく女性。ついになるみの恐怖が限界に達した。


｢私、私じゃない！私は知らない！は、離して！！離してったら！！｣


がむしゃらに暴れ、なんとか振りほどき、ドアに向かって走り出した。
怖くて振り向けない・・・・。振り向いてしまったら、何かとんでもないものを見てしまう・・なるみはドアノブに手をかけた。

｢あ、開かない・・・｣


なるみがいくら捻っても、ドアはガチャガチャいうだけで開く気配がない。目に涙を浮かべ、必死でドアノブを捻るなるみの背後にあの女性の気配が近付く。

冷たささえ感じさせる気配になるみはビクリと肩を震わせる。するとまた女性の声が聞こえた。


<font color="#FF0000">『見ないフリするの？自分がやったくせに…』</font>

｢ひっ・・・い、いや・・｣

<font color="#FF0000">『また逃げるの？あの時みたいに・・・・・・逃がさないわ・・・』</font>


女性はなるみの肩を指が食い込むほど強く掴み、凄い力で振り向かされる。



<font color="#FF0000" size="3">｢きゃああああああああああ｣</font>


なるみは悲鳴を上げた。そこには・・・・・






<font color="#FF0000">顔が潰れ、服を真っ赤に染め、さっきの赤ん坊を抱いた女性が立っていた・・・。</font>



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「！！なるみ！」

その頃、夕はなるみを探して２階のフロアを走り回っていた。叫び声が聞こえたものの、どこの部屋からなのか検討が付かない。とにかく片っ端から調べるしかない。とは言え、ドアの数が何十とあるフロア、一つずつ調べていたら無駄に時間を食ってしまう…。

「なるみ…どこにいるんだ……？な、なんだ？」

夕は少し前方に白い人影を見つける。思わず立ち止まりその人影を凝視する。するとその人影がゆっくり夕に近づいて来た。どうやら男のようだった。

そしてついに、ごくりと喉を鳴らす夕の目と鼻の先に来た。男の顔をみた瞬間夕は唖然とした。

なぜならその男は夕と瓜二つの顔立ちをしていたのだ。そして服装は軍服のような物を着ていた。

「な……お、俺……？」

夕は、ようやく喉の奥から搾り出すようにそれだけ呟く。すると、夕にそっくりなその青年は悲しそうに夕を見ると、

<font color="#FF0000">「………か、か………さんを……すけ…………」</font>

今にも消え入りそうな声で訴える。

「な、何？」

<font color="#FF0000">「どうか…楓さんを………助けてくれ……」</font>

夕が恐る恐る聞き返すと、青年は今度はハッキリゆっくりと言葉を紡ぐ。

「…か、楓？」

夕がそう聞き返すと、青年は頷きある一つのドアを指差す。

「あ、あそこは、テープが貼ってあったドアじゃ…。もしかして…なるみはここにいるのか？」

青年が示したドアは、確かに先程調べた時には立入禁止のテープが貼ってあったし、鍵も掛かっていた。

<font color="#FF0000">「…早く…………誤解を………手遅れにならないうちに………」</font>

青年はそう言うと、段々と薄くなりやがて闇に溶け込むように消えてしまった。夕は少しの間、呆然とした様子で青年が消えた場所を眺めていた。その時、


<font color="#FF0000" size="3">ゴーン……ゴーン……</font>


と時計の鐘が鳴り響く。夕ははっと我に帰ると、ポケットの中を探る。
先程、ドレッサーがあった部屋で拾った鍵。夕は手に取り、青年が教えてくれたドアの鍵穴に鍵を入れ、回した。



<font color="#FF0000" size="3">………ガチャリ………</font>


思いのほか大きな音がし、ヒンヤリした空気が夕を包む。一瞬ビクリとなるが、なぜかなるみがいると言う確信があった。

「待ってろ、なるみ…今行く」

ギー……と音をたて扉を開けると、夕は暗闇の中に入って行った。


夕が中に入ると、月明かりだけの薄暗い部屋の真ん中になるみが倒れていた。急いで駆け寄り、なるみを抱き抱えると夕はゾッとした。…体が異常に冷たいのだ。顔も紙のように白い。

「まさか…手遅れってこのことかよ…………なるみ！！なるみ！！」

夕はなるみの体を揺さぶる。すると、

「…ん。…………夕……君？」

未だに目は開かないが、唇が僅かに動き、なるみが呟く。それを聞いた夕は、ホッとする。

「なるみ、大丈夫か？何があったんだ？」

なるみは眉間に僅かにシワを寄せ、苦しそうに唸る。
「わ、たし……やって……ない…………の……。ど………して、信じて………くれな……いの？」

悪夢を見ているのか、なるみはただただ、『やってない』や『信じて』を繰り返す。
夕は胸が締め付けられるような感覚を覚え、なるみをきつく抱きしめ、未だにうなされている彼女の耳に囁いた。

「俺は信じてる。なるみ、お前は何も悪くない…。だから……だから目を覚ましてくれ」

夕は自分で自分に驚いた。このホテルで、初めてなるみと会話した時から感じていた愛おしさ。最初は何故か分からなかったが、『やっと逢えた』と胸が高鳴るあの感覚。しかも先程の青年に逢ってからますますその感覚は強くなってきたように感じる。

夕が悶々としていると、なるみがふと目を覚ました。
「…夕君？………来て……くれたの？」

「なるみ！……はあ……良かった………」

「！！ごめんなさい……。心配掛けて………私…」

なるみは、心から安心した夕の顔を見て、すごく心配してくれた事を知り、嬉しさと申し訳なさで思わず涙ぐむ。

「もう大丈夫だ。なるみ、一旦部屋から出よう」

「待って…私、夕君に言わなくちゃいけないことがあるの………」

「…体平気か？無理するな」

「ううん…平気」

なるみは体を起き上がり、向かい合う形で、夕を真っ直ぐ見つめる。

「…前世の私が、ここで事件を起こしたみたいなの……殺人事件を」

なるみは悲しそうな苦しそうな顔で俯く。

「さ……殺人……？」

夕は、驚いて目を見開く。しかし、同時になるみの言い方が気になった。

「なるみ、みたいって？」
「…前世の私、好きな人がいたのよ。名前は和馬さん。でも……父親に猛反対されて無理矢理別れさせられた。それに腹を立てた私が、屋敷の人達を………」

「……なるみ、俺さ……ここに来る途中、男の人に逢ったんだ。多分、なるみの言った和馬って、何となくだけどその人だと思うんだよ。その人がさ俺に言ったんだ。『楓さんを助けてくれ』って…」

「…楓………？」

不思議そうに夕を見つめるなるみに、夕はゆっくり頷く。

「その和馬って人、俺にそっくりなんだ。なるみも、あの部屋で見た写真、自分にそっくりだって言ってたろ？」

「もしかして…楓さんて…………」

「ああ、まだ仮定だけどな…」

「………前世の私が楓さんで、夕君が和馬さんって事よね………/////」

「どうした？」

「あ、////いや……なんか恥ずかしくなって来ちゃって…………。ごめんね、変だね私。気にしないで」

和馬と楓が、今も愛し合っている事を知った途端、なるみは頬に熱が集まり、夕の顔を見れず、真っ赤になって俯く。

夕は、そんななるみを不思議そうに見つめていたが、ふと頬を染め、笑みを零した。





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ゼ
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ボ
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カ
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第三話《完》</div>


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		<dc:date>2015-05-31T23:27:30+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
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		<title>異変</title>

		<description>異変




…寝静まり、静寂に支配され…</description>
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			<![CDATA[ <span style="font-size:large;"><span style="font-weight:bold;">異変
</span></span>



…寝静まり、静寂に支配されたホテル。
月明かりが差し込む窓の近くにある、大きな振り子時計がコチコチと時を刻む。
まるでこれから始まる悪夢に向け、カウントダウンをしているかのように………。



なるみはふと目を覚ました。となりでは里穂が静かに寝息をたてている。


(何だろう……凄く胸騒ぎがする……)


なるみは、里穂を起こさないようにベッドから出て、制服に着替える。何故か行かなければならない気がして………。
部屋のドアに手を掛けた時、｢ん～…｣と里穂の声が聞こえた。ギクリとして、ちらりと里穂を見る。モゾモゾと動いていたが、起きてはいないようで、再び寝息が聞こえた。


｢ゴメンね……里穂。でも私、行かなきゃ｣


なるみはそう呟くと、部屋を出た。
自分でも、何故こんな行動をとるのか解らない。ただ、この街に来て感じた違和感の答えが、このホテルにある気がするのだ。
…自分の事に、里穂を巻き込む訳にはいかない。なるみは、懐中時計を両手で握りしめ、静かに歩きはじめた。




ゴーン…ゴーン………


なるみの足が止まった。
周りを見回す。
どこからともなく時計の鐘の音が聞こえた。その途端、辺りに霧が立ち込め、視界がぼやける。

この異常な状況でも、なるみは冷静だった。


(ああ、始まったんだ……)

理由は分からないが、そう思った。


なるみは、階段に向かい再び歩き始めた。



｢下に降りられるのかな…？｣


なるみは階段の前で立ち止まった。

階段の上の方から気配がする。なるみは息を飲む。自分は丸腰だ。襲われたら間違いなくやられる。
逃げなければと思うものの、足が上手く動かず少し後ずさるのが精一杯だった。

次第に気配が近くなり、足音も聞こえ始める。階段の奥に広がる闇を見つめ、固まるなるみの目に映ったのは、


｢あ、昨日の……｣

｢あ……｣


ロビーで懐中時計を拾ってくれた青年だった。



｢何してんの？こんな時間に｣

｢…ふぅ。あなたこそ。どうしたの？｣


何でもないかのように話し掛けて来る青年に、なるみは少し気が抜けて、安心したように笑う。青年は首を傾げて、｢トイレ｣とだけ言った。


｢三階だったっけ。部屋とか、同じ階になかったの？｣

｢ん。なかった｣


昨日はあったんだけど……と呟き、周りを見渡す。


｢……なんか、霧が出てない？｣

｢うん。三階は出てなかった？｣

｢どうだったかな……。よく見てない｣


眠いのか、それとも性格なのか……マイペースな彼になるみは少し心配になる。彼はなんか危なっかしい。一人にしてしまったら戻れない以前に、もっととんでもない事態を引き起こす可能性もないとも言えないし、一緒に行動した方がいいかもしれない。それに、この異常な空間を調べるには、一人では心許ない。申し訳ないが、手伝ってもらう事にした。


｢ねぇ、私と一緒に行動してくれないかな？｣

｢え？君と？｣

｢うん。なんとなくだけど、一人では行動しない方がいいと思うの｣

｢………｣

｢……トイレ、行きたいんでしょ？一緒に探そう？｣


｢……うん。わかったよ…｣


思いのほか、すんなり了承した彼に、なるみはホッとする。まあ、おそらくあまり深くは考えていないだろうが、パートナーがいるのは心強い。


｢私は高見沢なるみよ。貴方は？｣

｢羽山夕……なるみでいいか？｣ 

｢へ？あ、うん。じゃあ私も夕君て呼ばせて貰ってもいいかな？｣

｢構わないよ｣

｢そう！じゃあ宜しくね、夕君｣

｢ああ、宜しく。なるみ｣


……歯車は動き出した。
彼女達を乗せて…………





二人は、とりあえず一階のロビーに下りることにした。

真っ暗な階段は少しの光も遮られ、その暗闇に当てられ、黙りこくる二人の足音のみが響き渡る。

しばらく降りていると、ようやくロビーにたどり着いた。


｢やっと着いたわ…｣

｢長く感じたな。気のせいか？｣

｢私もそう思った。だってたった一階なのに、５分以上降りてたみたい｣


なるみは懐中時計を見てから、周りを見回した。やはり霧が立ち込めている。心なしか少し寒い。

なるみが周りの様子を伺っていると、夕が突然ツカツカと歩きだした。


｢ちょ、夕君？どこに行くの？｣

｢売店｣

｢売店？なんで？｣

｢何か武器とかアイテムとかないかなって｣

｢……あんまり期待しないほうがいいんじゃない？RPGじゃないんだし…｣


なるみはため息を吐く。彼、夕の考えている事が全く読めない。そして理解できない。(大丈夫なんだろうか)と不安になる彼女を尻目に夕は売店のあった方に入って行った。
……追い掛けるべきだろうか。正直、あまり期待は出来ないし、何があるか分からない。だが、ここで一人ぼっちになるほうが不安だ。なるみは、夕が入っていった方角に向かい歩きだした。




*****


｢夕君？｣ 

｢……｣

｢夕君？どうかしたの？何が見つかった？｣

｢そんな事って……あるのか？｣

｢？？｣


なるみが部屋に入ると、カウンターらしき物の前に佇む夕の姿。とりあえず話し掛けてはみるが反応がなく、ようやく発した言葉も要領を得ない。
このままではラチがあかないと、なるみが夕の側まで行き、彼の視線の先を追う。と、なるみも言葉を失う。
そこには…武器やアイテム(薬？)が整然と並べられており、まるで本当にゲームか何かの中に入ってしまったかと思うほど現実離れした光景が広がっていた。


｢な、何これ？｣

｢す……｣

｢え？｣

｢すげぇ！！本物のRPGみてぇ！！｣

｢！！……えっと、もしもし？夕君？｣

｢これ剣だ。これは薙刀。……ん？この錠剤みたいなのは………体力が回復するやつだ！｣

｢；；；；｣


突然生き生きしだした夕に、驚きを隠せないなるみ。さっきまでの無気力剥き出しな様子はなんだったのか…。
まあ、単純に眠かっただけだろう。ようやく覚醒した夕は、やや……いやかなり興奮気味にカウンターの前を漁る。


｢……あれ？ここは霧が晴れてるのね。……売店ってこんなに殺風景だったかしら。なんか饐えた臭いもするし……｣

｢いいじゃんか。武器もあるしアイテムもあるし。今後はここを拠点にすればいいな｣

｢はあ。そうね（苦笑）｣

｢俺は……剣にするかな。なるみは？｣

｢あ、私？そうね……薙刀にしようかな。……これって持っていっちゃっていいのかな｣

｢ん～…店員らしき奴もいないし、どうするか……｣

｢とりあえず、少しお金置いて行こう？……そうした方がいい気がする｣


なんとなく…だがそうした方がいいと感じたなるみは財布からお金を取り出すと、カウンターに置いた。それを見た夕もズボンのポケットを探り、お金をカウンターに置いた。


｢確かにな……こんな状況でも盗みはダメだよな｣

｢そういう事。……全然足りないかもだけど、払わないよりマシよね｣

｢そだな……｣

｢じゃ、行きましょ！何としてでもここから抜け出さなくちゃ！！｣

｢……その前にさ……｣

｢ん？何？｣

｢トイレ……我慢出来るか微妙なんだよ｣

｢あ！忘れてた！ロビーにあるかな。探してみよう！｣

｢お、おぅ……；｣



…この時の二人の行動が、後に驚愕の事態となる……

****

｢……さて。探索に入るか｣

｢うん。トイレ意外と綺麗だったね｣

｢ああ、普通に水洗だったしな｣


生理現象を解決し、ホッとする二人。
なるみも自分では大丈夫だと思っていたのだか、体は正直なもので、トイレを見つけた途端、駆け込んでしまった。今になって恥ずかしさが込み上げてきて、終始俯き夕の顔が見れない。

トイレは掃除が行き届いており、まるでデパートかホテルのような外観だった。殺風景で、底冷えのする闇に包まれた階段や、霧に覆われた廊下とは違う雰囲気に、二人は少し安心した。

｢まずは二階からにするか。確かなるみの学校の階だったよな｣

｢うん｣

｢行ってみよう｣


夕は、なるみの手を取ると階段に向かう。あまりに自然な行動に、なるみも反応はしなかった。
以前にもこんな風に手を繋ぎ歩いていたような……そんな気がしていた。でも、夕とはこの旅行で初めて出会ったのだ。それ以前は面識はないはず。
それと……この建物に入ってから…いや、この街に来てからなるみは自分の中に何者かが入り込んでいるような感覚があった。


とても悲しく、苦しくて痛くて……泣きたくなるのだ。


(夕君に言ってもどうしようもないよね…迷惑かけたくないし。言わなくていいよね…)


おそらく、まだその『時』ではない。

でも、いつか必ず話さなければならない時がくる。その時まで、自分の胸の中に秘めておく事にした。



『お前にも分かる時が来る。…嫌でもな』


なるみの頭の中に、あの日の祖父の言葉が過ぎった。



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ハ
ジ
マ
ッ
タ
バ
カ
リ
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第二話《完》
</div>






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