11粒目




私は…
こんなに沢山の人達に
護られている……

Pure rain




蓮汰に送られ、家に着いた雪菜を待っていたのは……

「ゆっきなあ~~」
「きゃ……お、お兄ちゃん?!」

入るなり勢いよく抱き着いてきたのは、警察機構に勤務しており、最近はずっと家を開けがちだった兄、悠希だった。

「会いたかったよ~雪菜~!元気だったか?病気とかしてないか?」
「う、うん。大丈夫…く、苦しいよ…お兄ちゃん」
「あ、わりぃ;」
「ふふ、全く。相変わらずね悠希」

苦笑いしながら、少し遅れて母が来た。おそらくいつまでたっても入ってこない二人の様子を見に来たのだろう。

「おかえり、雪菜」
「ただいま。お母さん」
「今日はお父さんも早く帰ってくるみたいよ。さっき電話あったから」
「そうなんだ」
「親父かあ…久しぶりだな…」
「悠希、お父さん、あんたの事すごく心配してたのよ?」
「へぇ……親父がねぇ…」
「危なっかしい事ばかりしてないかとか、回りに迷惑かけてないかとか」
「そ、そっち!?」

母と兄のやり取りを見ながら、雪菜は柚希の事を考えた。彼女の両親はすでに他界している。兄弟がいるとは聞いていないし、祖母がいるが今は一人暮らし。帰っても、誰も迎えてはくれない。自分は……

優しい両親、過保護だけど頼りがいのある兄、そして、大好きな幼なじみ………雪菜は改めて気づく。
自分はとても恵まれているのだという事に。なのに、一部のクラスメートに嫌がらせをされているからと、誰も信じられなくなり蓮汰さえ遠ざけた。殻に閉じこもりすべてを拒絶している自分に臆する事なく、手を差し延べてくれた柚希の優しささえも、どこか疑っていた自分に救いなどあるはずもない。自分で殻を破らなければ………誰が手を差し延べてくれても何も変わらない。

「雪菜?どうした?」
「え……あ、ううん…何でもな…………あの…お兄ちゃん」

ぼんやりとしている雪菜を心配した悠希が顔を覗き込んでくる。雪菜は咄嗟に何でもないと言いそうになったが、決心したように兄を真っ直ぐ見つめる。

「ん?」
「夕ご飯の後、その……話があるの…いいかな?」

思いがけない申し入れに、悠希は一瞬驚く。実の兄の自分にいつもどこかよそよそしく、遠慮ばかりしている妹が、自分を必要としてくれる日がくるなんて…。もちろん返事は決まっていた。

「!!おう!可愛い妹の誘いに乗らねぇはずないだろ?」
「ありがとう。お兄ちゃん」

ほんのりと頬を赤らめ微笑む雪菜の頭を優しく撫で笑う。ただ、嬉しかった。必要としてくれる事に。

「二人とも!早く来なさい。ご飯冷めちゃうわよ!」
「あ、いけね!はあい!!行こう、雪菜」
「うん!お兄ちゃん」

差し出された手を、雪菜はごく自然に握る。小さい頃はいつも離れず、兄はどこに行くときも手を繋いでくれた。その時よりずっと大きな大人になった兄の手を繋ぎながら、昔と変わりなく自分を思っていてくれる事に、少しくすぐったいような嬉しいような……安心するような、そんな感覚を覚える。


まずは私が変わらなくちゃ…


また皆と笑い合えるそんな日が来ることを、ただ夢見るだけではなく、現実のものとするために……




Pure rain




自分で動き出す……
もう二度と
大切な人達を傷つけない為
信じてくれる人達の絆を無くさないため…

そして、もう一度
自分の居場所を
取り戻すため……

~自分で変えるため動き出す~






なかなか進みません……;;困った;;;
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