5粒目






……昔夢の中で出会った少女……
また会えたね……


Pure rain



柚希は草原にポツンと立っていた。
空は抜けるように青く澄んでいて雲一つなく、草原は青々と茂り周りには建物らしきものは見当たらない。
実は、この光景は覚えがあった。昔、柚希が両親を亡くした時によく見ていた夢だった。毎回、原っぱにぽつんと立っていて、そこに自分にそっくりな少女が、声を掛けてくるのだ。名前は……

「柚希!また会えたね!」

はっと振り向くと、自分と同じ髪色に同じ顔の少女がいた。その姿を見た事で、幼い頃の出会いを思い出した。

「エイナ…?」
「覚えててくれたんだあ!嬉しい!!」
「ふにゃっ!!」

柚希が少女の名前を呼ぶと、ぱあっと嬉しそうに笑い、抱き着いてきた。しばらく久しぶりの再会を噛み締めた後、二人は木陰に座りお互いの近況報告をした。

「エイナはどう?……えと、盗賊業?は」
「業?ん~まあまあかな。別に儲かるためにやってるわけじゃないし」
「え?じゃあ、なんのために?」
「ん~………スリル?」
「スリル…;」
「柚希はどうなの?学校、楽しい?」

学校……そういえば、雪菜は大丈夫なんだろうか…。俯き黙り込む柚希を、エイナは不思議そうに見つめる。

「どうしたの?悩み事?」
「……へ?あ、ううん!楽しいよ!」
「………柚希、相変わらず嘘つくのが下手だよね。顔に書いてあるよ。悩んでますって」
「ふえっ?」

エイナに言われ、顔をペタペタ触る。そんなに顔にだしていたなんて。柚希が再び俯くと、エイナは微笑みながら言った。

「悩み事あるなら言ってみてよ。私は柚希の一部なんだよ?柚希の悩みは私の悩みなんだから」
「……エイナ…」

柚希はエイナの言葉にジワリとくる。そしてかなり自分は悩んでいたのだと気づいた。エイナに話せばこのもどかしさが取れるかもしれない……そう考えた柚希は思い切って雪菜の事を言ってみた。




「ふーん、イジメねぇ」
「うん、色々聞いてみたいけど、無理矢理は可哀相だし…」
「………で、柚希はどうしたいの?」
「え…」
「柚希は雪菜って子をどうしたいの?」

真っ直ぐ見つめてくるエイナの視線。それを正面から受け止め、柚希は口を開いた。

「助けてあげたい。居場所を取り戻してあげたい。……だって、友達だから……」
「そっか……」
「うん」

本心からの言葉。自分の力だけでは及ばない事かも知れないが、雪菜を救いたいのだ。
自らを柚希の一部というエイナはその答えがわかっていたが、柚希の言葉で聞きたかったのだ。

「その覚悟があれば大丈夫よ!きっと」
「そうかな………でも私一人じゃ…」
「もう!周りを見てごらんよ!きっと助けてくれる人達がいるはずだよ!私だっているし。柚希は一人じゃないよ」
「うん。ありがとう、エイナ。私頑張ってみるよ」
「うん!」

希望を見出だした柚希の表情に、エイナは力強く頷いた。


―――――…
――…

ピピピピ………

「ん…夢?」

柚希は寝ぼけ眼でアラームを止める。そして、エイナとの話を思い出す。

(そうだよね。手を拱いているだけじゃ何も変わらない。自分で動かなきゃ!)

柚希は決意を胸に、学校に行く準備を始めた。





Pure rain



必ず
道を開いてあげるから…
だからどうか
希望を捨てないでと
願う…

私が強くなれるのは
いつも側で見守ってくれる貴女との

~夢の中での再会~



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