新生活と女神




この大学生活、どうなるか…なんて考えるだけ無駄だ。







「主」

ニコルがニコニコしながら大きめな箱を差し出す。

先程、宅急便で届いた荷物だ。

「主!主!お役に立てたでしょうか?」

どうやらご機嫌な理由は、荷物の受け取りを初めて一人でやれたからのようだ。普通の人間からすれば、彼女くらいの年齢ならば、やれて当たり前…なのだろうが。如何せん、人ではない上に世間知らずなため、どんな小さな事でも(郵便受けから封筒を取って来たり、近くの自販機でジュースを買ったりなど)彼女にとってはまったく未知の事なため、凄く達成感を感じるのだろう。

目をキラキラさせて僕を見つめるニコルに、苦笑しながら「偉い、偉い」と頭を撫でてやると、ふにゃりと笑う。まるで手の掛かる妹が出来たみたいだ。

「助かるよ。ありがとな」

その言葉を聞くなり、パアッと花を撒き散らすような表情で、僕にしがみつく。
「うれしいです。主!!」

ニコルを背中に引っ付けたまま、やれやれと届いた箱を見ると、どうやら実家からのようだ。ガムテープを剥がし、箱を開けてみると、中には米や野菜、祖母のお手製のきんぴらごぼうや魚の煮付けなどのおかず。そして、仕送りが入った封筒。ご丁寧に手紙が付いていて、近況報告やたまには帰って来いというような事が書かれていた。

しばらく箱の中のものをあさっていると、背中にへばり付いていたニコルが、箱の中を覗き込む。

「沢山、いろいろな物が入っていて面白いですね。これはなんですか?」

ニコルが紙袋を見つけ、持ち上げる。

「主、見てもいいですか?」

僕が頷いたのを確認して、紙袋を開けたニコルは固まった。少し顔が赤い。

「ニコル?どした?」

「いや、あの……」


歯切れの悪いニコルが覗き込んでいる袋を自分も覗き込む。
中には……男性用の下着(トランクス)が大量に入っていた。
思わず引ったくるように取り、笑ってごまかしてみる。多分今の僕の顔は真っ赤だ。一方のニコルは、僕の行動に驚いたのか、目を真ん丸くしていたが、目が合った途端、オロオロと目に見えてうろたえだした。

「も、申し訳ありません!主!!あ、あの/////」

「い、言うな、何も言うな……///」

「は、はい」


……どうやら女神にも、『下着』は見られると恥ずかしい、という概念はあるらしい。






「あ、主!!」

「ん?な、なに?」

「この下着、イチゴ柄です!!」

「だから、何も言うな!!(母さんめ!よりによってなんでイチゴ柄を!!)」





END

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