某交流所にて、毛糸さまのトピックを発見し、先着3名ということで、思わず飛びつきました!デートコラボ!!
今回は、毛糸さま宅のバロンさんと我が子ロザリアとの擬似デートです!!
毛糸さま、ありがとうございました!!
CAST:バロンさん(毛糸さま宅)・ロザリア
弾むようなステップに合わせ、赤いスカートの裾が、艶やかな金のツインテールが揺れる。滲む喜色を隠そうともせず、ロザリアは指定された遊園地へと急いでいた。
「んー、こんな風に外で一日遊ぶのとか、考えてみると久しぶりやんな! めっちゃ良い天気やし」
透けるような白磁の肌、掌で太陽を透かしてみれば眩しげに目を細める。強い日差しが齎す息苦しさも、今はほんの少し愛しかった。事前に渡されていた遊園地の入場チケットを確かめると、上機嫌に印字された文字を親指の腹でなぞる。
「しかも、今日一緒に出かけるっちゅうのも同じ吸血鬼とか。どんな感じなんか楽し……ん?」
そういえば――少女はスキップをしかけていた踵をふと宥め、一転して慎重な足取りで歩み始めた。そういえば、何か聞き逃し難い情報も無かっただろうか。
そう確か、今日一緒に出かける吸血鬼の青年とやらは――。
「……ああッ、せや! なんか最後の方でボソッと言われとったやん……!」
まるで水を掛けられた子猫にも似て、一瞬で縮み上がると慌てて自身の手荷物を確認する。とはいえ、完全に娯楽目的で出かけている訳なのだから、期待した重火器の持ち合わせはなく、彼女がマーべラスと呼んで愛用している二丁拳銃のみ。その“軽装”に僅か青ざめるものの、それも一瞬のこと。ぐっと握り拳を握ると、決心を固めた様子でエメラルドグリーンの双眸は、前方に見え始めている遊園地のランドマークを睨んだ。
「こうなったら……素手でいくしかあらへんな。今回の作戦テーマは……先手必勝・奇襲作戦って所やろ!」
そうと決めたら、最早迷う事はない。先ほどまでの浮かれ気分とはまた違う、決意を秘めた高揚をもってして駆け出す。
人込みを掻き分けていくと、間も無く一人の青年を見つける事ができた。癖のある銀色の髪、赤い瞳、白いベスト。間違いない。加速さす勢いはそのまま、軽く噛み締めた奥歯から、溜め込んだ力を全て脚に集中する。
宛ら、弾丸にも似た突然と驚きを伴って、唖然とする吸血鬼の眼前に躍り出た。
「覚悟しいやっ、吸血鬼狩り男~! ……って、あら……?」
勇ましく回し蹴りを繰り出そうと、したまでは良かったのだが。その“吸血鬼狩り男”の反応はあまりに鈍い。彼女自身が想像していたよりもずっと覇気のないその空気に、自らの早とちりを悟りかける。しかし、時既に遅く――引き絞られた弓から放たれた矢の如く、張り詰めたしなやかな筋肉から繰り出された蹴りは、目の前にいる彼の二の腕へと、鈍い音と共に沈んだのだった。
◇
「ああー、ほんま堪忍してな……! ヴァンパイヤハンターなんて聞いとったさかい、てっきり遊園地の話は餌なんかな~とか考えてしもててん……!」
「いや、こっちも事前の説明が足らなかったと思ってるから……気にしないでくれよ。吸血鬼を狩るのを仕事にしてる、なんて聞けば警戒は当然だろ。
寧ろ蹴り一つで済んだなら御の字だ。加減もちゃんとしてくれてたみだいだし」
「やー……あ、あはは……」
今となっては、“あまりに呆けた姿に、思わず蹴りを放つ体から力が抜けた”とは言えまい。頭の後ろで腕を組みつつ、笑って誤魔化しながら入場した園内を歩む。
バロンと名乗った男は、一撃を受け止めた左の二の腕を幾度か擦った後、気を取り直すようにパンフレットを広げた。その横で、申し訳無さそうに小さくなっている彼女に気付くと、軽く手を振ってみせる。
「ロザリア、だったよな。……俺は今までこういう娯楽施設には、とんと縁が無かったんだ。なんで、何が面白いのかサッパリ分からない。
良ければ、何処か楽しそうな所を教えてくれよ。ほら」
「え、あ……そ、そういう事なら任しときや! そやな、ウチとしてはジェットコースターとか好きやってんけど……っと、こっから近くに射的場もあるやん!
こういうの得意なんやで~、勝負しても絶対負けへん――って、で、でも片手痛いと不利、やんな……?」
ひょっこりと覗き込んだパンフレットを、気付けばはしゃぎながらあれこれ指差していたものの、ふと思い返せば遠慮がちにバロンを見やる。意気消沈しかけた少女へ返事を返す前に、緩んだ指の隙間からパンフレットを奪うと、彼は数歩先を先導してから不敵な寄越した。
「あんたも吸血鬼なら分かるだろ、俺達の体はデタラメだ。骨が折れようが、何だろうが、大概は五分もしないで治る」
「ええ、流石にそこまで早くは治らへんやろ……って、骨折れとったん!?」
「まさか、物の例えだって。毎日欠かさずカルシウム摂取してる俺の骨を甘く見るなよ?」
「きゅ、吸血鬼がカルシウム摂取て……牛乳でも飲んどるんかいな……」
「ついでに、チーズやヨーグルトも好きだぜ」
怠惰な横顔の青年が、気だるそうにチーズを齧る様を想像すると、思わず笑いがこみ上げる。小さく肩を揺らしていたのが、やがてお腹を抱える朗笑になった後、スッキリとした顔でロザリアはバロンの隣に並んだ。
「ほんなら、手加減はなしやで。後で、ハンデつけたって~て言うても知らんからな!」
「望む所だ。その自信、何処から来るものやら見極めさせて貰うぞ」
気付けば彼を追い越し、早く早くと無邪気に手招く。燦々と照る太陽の下で、少女は踊るように目的地を目指すのだった。
『 吸血鬼による吸血鬼との遭遇 』
(よっしゃ、準備万端! それじゃ、百発百中で行くで~!)
(って、おい。ロザリア、それ……実弾入りの銃じゃないのか)
(え、せやけど? 使い慣れたのやないと調子出んさかい)
(あんた……――天然、か)
(何や、人をトキみたいに言うて)
(それは天然記念物だろ)
今回は、毛糸さま宅のバロンさんと我が子ロザリアとの擬似デートです!!
毛糸さま、ありがとうございました!!
CAST:バロンさん(毛糸さま宅)・ロザリア
弾むようなステップに合わせ、赤いスカートの裾が、艶やかな金のツインテールが揺れる。滲む喜色を隠そうともせず、ロザリアは指定された遊園地へと急いでいた。
「んー、こんな風に外で一日遊ぶのとか、考えてみると久しぶりやんな! めっちゃ良い天気やし」
透けるような白磁の肌、掌で太陽を透かしてみれば眩しげに目を細める。強い日差しが齎す息苦しさも、今はほんの少し愛しかった。事前に渡されていた遊園地の入場チケットを確かめると、上機嫌に印字された文字を親指の腹でなぞる。
「しかも、今日一緒に出かけるっちゅうのも同じ吸血鬼とか。どんな感じなんか楽し……ん?」
そういえば――少女はスキップをしかけていた踵をふと宥め、一転して慎重な足取りで歩み始めた。そういえば、何か聞き逃し難い情報も無かっただろうか。
そう確か、今日一緒に出かける吸血鬼の青年とやらは――。
「……ああッ、せや! なんか最後の方でボソッと言われとったやん……!」
まるで水を掛けられた子猫にも似て、一瞬で縮み上がると慌てて自身の手荷物を確認する。とはいえ、完全に娯楽目的で出かけている訳なのだから、期待した重火器の持ち合わせはなく、彼女がマーべラスと呼んで愛用している二丁拳銃のみ。その“軽装”に僅か青ざめるものの、それも一瞬のこと。ぐっと握り拳を握ると、決心を固めた様子でエメラルドグリーンの双眸は、前方に見え始めている遊園地のランドマークを睨んだ。
「こうなったら……素手でいくしかあらへんな。今回の作戦テーマは……先手必勝・奇襲作戦って所やろ!」
そうと決めたら、最早迷う事はない。先ほどまでの浮かれ気分とはまた違う、決意を秘めた高揚をもってして駆け出す。
人込みを掻き分けていくと、間も無く一人の青年を見つける事ができた。癖のある銀色の髪、赤い瞳、白いベスト。間違いない。加速さす勢いはそのまま、軽く噛み締めた奥歯から、溜め込んだ力を全て脚に集中する。
宛ら、弾丸にも似た突然と驚きを伴って、唖然とする吸血鬼の眼前に躍り出た。
「覚悟しいやっ、吸血鬼狩り男~! ……って、あら……?」
勇ましく回し蹴りを繰り出そうと、したまでは良かったのだが。その“吸血鬼狩り男”の反応はあまりに鈍い。彼女自身が想像していたよりもずっと覇気のないその空気に、自らの早とちりを悟りかける。しかし、時既に遅く――引き絞られた弓から放たれた矢の如く、張り詰めたしなやかな筋肉から繰り出された蹴りは、目の前にいる彼の二の腕へと、鈍い音と共に沈んだのだった。
◇
「ああー、ほんま堪忍してな……! ヴァンパイヤハンターなんて聞いとったさかい、てっきり遊園地の話は餌なんかな~とか考えてしもててん……!」
「いや、こっちも事前の説明が足らなかったと思ってるから……気にしないでくれよ。吸血鬼を狩るのを仕事にしてる、なんて聞けば警戒は当然だろ。
寧ろ蹴り一つで済んだなら御の字だ。加減もちゃんとしてくれてたみだいだし」
「やー……あ、あはは……」
今となっては、“あまりに呆けた姿に、思わず蹴りを放つ体から力が抜けた”とは言えまい。頭の後ろで腕を組みつつ、笑って誤魔化しながら入場した園内を歩む。
バロンと名乗った男は、一撃を受け止めた左の二の腕を幾度か擦った後、気を取り直すようにパンフレットを広げた。その横で、申し訳無さそうに小さくなっている彼女に気付くと、軽く手を振ってみせる。
「ロザリア、だったよな。……俺は今までこういう娯楽施設には、とんと縁が無かったんだ。なんで、何が面白いのかサッパリ分からない。
良ければ、何処か楽しそうな所を教えてくれよ。ほら」
「え、あ……そ、そういう事なら任しときや! そやな、ウチとしてはジェットコースターとか好きやってんけど……っと、こっから近くに射的場もあるやん!
こういうの得意なんやで~、勝負しても絶対負けへん――って、で、でも片手痛いと不利、やんな……?」
ひょっこりと覗き込んだパンフレットを、気付けばはしゃぎながらあれこれ指差していたものの、ふと思い返せば遠慮がちにバロンを見やる。意気消沈しかけた少女へ返事を返す前に、緩んだ指の隙間からパンフレットを奪うと、彼は数歩先を先導してから不敵な寄越した。
「あんたも吸血鬼なら分かるだろ、俺達の体はデタラメだ。骨が折れようが、何だろうが、大概は五分もしないで治る」
「ええ、流石にそこまで早くは治らへんやろ……って、骨折れとったん!?」
「まさか、物の例えだって。毎日欠かさずカルシウム摂取してる俺の骨を甘く見るなよ?」
「きゅ、吸血鬼がカルシウム摂取て……牛乳でも飲んどるんかいな……」
「ついでに、チーズやヨーグルトも好きだぜ」
怠惰な横顔の青年が、気だるそうにチーズを齧る様を想像すると、思わず笑いがこみ上げる。小さく肩を揺らしていたのが、やがてお腹を抱える朗笑になった後、スッキリとした顔でロザリアはバロンの隣に並んだ。
「ほんなら、手加減はなしやで。後で、ハンデつけたって~て言うても知らんからな!」
「望む所だ。その自信、何処から来るものやら見極めさせて貰うぞ」
気付けば彼を追い越し、早く早くと無邪気に手招く。燦々と照る太陽の下で、少女は踊るように目的地を目指すのだった。
『 吸血鬼による吸血鬼との遭遇 』
(よっしゃ、準備万端! それじゃ、百発百中で行くで~!)
(って、おい。ロザリア、それ……実弾入りの銃じゃないのか)
(え、せやけど? 使い慣れたのやないと調子出んさかい)
(あんた……――天然、か)
(何や、人をトキみたいに言うて)
(それは天然記念物だろ)
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