某交流所にて、灯里さまのトピックを発見!!

宝石言葉でということで、「カーネリアン」を選ばせていただき、黒呼と闇爾のお話を書いていただきました。

黒呼の強い揺るぎない意思と孤独感。闇爾との絶対的な信頼関係を忠実に再現していただきました!

灯里さま、素敵な小説をありがとうございました!!




一般的に死神とは歓迎されるものではないのだろう。実際、死神は死の使い。人を死に導く存在なのだから。その死神の中でも自分は落ちこぼれで、死神らしくはないのだろう。何たって人を死に導くどころか、彼らの生きる意思を尊重して死を回避させるのだから。
 樹の枝に乗り、幹に手をついて街を眺めているのは一人の少女だった。姿は少女だというのに、その成熟した雰囲気が年齢を曖昧にしている。ただ、彼女はただの人間ではないのだろう。その髪と瞳の色で分かる。

 首の後ろ辺りで纏めた長い髪は青み掛かった艶やかな黒で、遠くを見つめる瞳はカーネリアンより鮮やかで深い赤色をしていた。その服装も普通とは言いがたい。
 両肩は剥き出して抜けるように白い肌が見えているし、長い紫色の袖は着物のよう。腰にも同色の布を巻いており、何と身の丈ほどの大鎌を携えていた。
 空には煌々と輝く金の月。深みのある夜空には銀の星も瞬いている。

「ねえ、闇爾。私は死神として失格……かな」

 彼女――黒呼は肩に乗った鳥に話しかける。闇爾という名の取りはこの世の鳥ではない。冥界鳥だ。黒呼にとって相棒とも言える大事な存在。
 死神は人を死に導く存在でそれは絶対の理だ。天地がひっくり返ってもあり得ない……はずだった。けれど、黒呼は違う。落ちこぼれだっていい、魂を狩るのは凄く悲しいのだ。彼らの悲しみや痛み、苦しみが流れ込んでくるから。
 だから、どうかと願う。生きる意思を取り戻して生きて欲しい。例えそれが死神として許されないことでも。後悔したことはないが、時々思う。死神として失格である自分ついて。

闇爾は黒呼を安心させるように目を細め、顔を彼女の首に擦り付ける。死神として落ちこぼれであっても黒呼は黒呼だと言ってくれているような気がして胸があたたかくなった。

「……ありがとう。お陰で元気が出たわ。闇爾は優しいわね。私は魂を狩りたくなんてないのよ。私たちには永劫を生きる。いいえ、生きる、とは少し違うかもしれないわ。自分の役目に疑問を持つこともなく、ただ命じられたことをするのなら」

 死神は永劫の時を生きる。しかし、その生は人とは少し違う。生きている、と胸を張っては言えないだろう。『死神』として命じられたことを何の疑問もなくこなすのなら。それは生きているとは言えないのだろう。相棒の頭を撫で、黒呼は言葉を続ける。

「だから私は、私の意思で選んだの。人が限りある時間を全う出来る……生まれて、生きてよかったと思うことが出来る世の中にしたい」

 黒呼は誰かに命じられた訳ではなく、自らの意思でこの道を選んだ。人が限りある時間を全う出来るように。傲慢かもしれないが、生まれて、生きて良かったと思える世の中にしたいと思う。
 同胞と袂を分つことになっとしても、これだけは譲れない。闇爾は同意するように一声鳴いた。
 黒呼は鎌を振るい続ける。魂を刈り取るためではなく、人が希望に満ちた生を歩めるように。




End
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