某交流サイトにて、イラストを描かせていただいた、灯‐touさまからお礼にと戴きました。
新キャラの黒呼と闇爾のおはなしです。
闇爾視点になっております。
灯‐tou-さま、有難うございました。
CAST:黒呼・闇爾
「亡くしてしまうのになぜ人は生まれるのか知ってる?」
冥界の暗い空の下、お気に入りの一本の木の枝に腰かけて、私を相棒と呼ぶ彼女は問いかけた。
彼女は黒呼と言った。
死神であった身だが死神でない、人を助ける元死神。
この冥界唯一の存在であり、孤独な存在だ。
落ちこぼれと蔑まれ、無益な小競り合いに引きずり出され、眠る隙すら簡単には見せられない。
なんとも、少女には耐えがたい事態だ。
だが、彼女はそれにめげているわけではない。
今でも彼女は自分の理想の追い続けて、笑って、生きている。
死神が持つべきではない、この冥界とは真逆の理想を。
「ねぇ、闇爾」
おっと、つい自分の頭の中に夢中になってしまった。
わからない、と仕草で答えると、彼女は嬉しそうにまた話し出した。
「それはきっと、限りある生の中で生きるからこそ、人は美しいからよ」
彼女の赤い目がまたどこかに見える理想を幻想に見てキラキラと光る。
私のガラス玉のような眼はその光を反射して光った。
この眼は彼女にはどう見えているのだろう、それを問う口を私は持たない。
「時間という概念があるから、それが限りあるものとわかっているから、人は仕事に精を出し、娯楽に浸り、愛を育み、安息を得られるの。すべての根本は有限なる時にあるのよ」
枝に足をかけ、彼女はゆっくりと立ち上がった。
それに伴い私の視線も高くなり、そして気づく。
下らない争いが、また近くまで来てしまっているのだと。
「永遠ほど退屈で無価値なものはないわ」
それは永遠を生きる彼女ならではの言葉だろう。
変化のない世界でぐるぐるとルーティンワークを連ねていくだけの世界など、ただ退屈で、発見もない無価値なものだと。
「さて」
彼女は周りに広がる冥界の闇の中を見た。
すべてを黒に溶かし込み、限りなく広がり続けるここは、まさに永遠の場所と呼んでいい。
「だからこそ、人はその限りある生を全うしなければならないの」
そして彼女は木の上から飛び降りた。
真っ黒の大地、その上で、紫の布地が花を咲かせた。
「行きましょう。人の意志は汲み取られなければならないわ」
歩き出す彼女の後ろから、私は羽をはばたかせて続く。
彼女の右手はくるくるとまるで遊具で遊ぶかのように鎌を玩び、銀の刃が時折光る。
刈り取るためのものだった鎌が、彼女にかかれば守るための鎌に代わってしまう。
どんな存在も、彼女にかかれば簡単に変わってしまうのではないか。
そう錯覚してしまうのだ。
「不毛の大地に花が咲く」
END
新キャラの黒呼と闇爾のおはなしです。
闇爾視点になっております。
灯‐tou-さま、有難うございました。
CAST:黒呼・闇爾
「亡くしてしまうのになぜ人は生まれるのか知ってる?」
冥界の暗い空の下、お気に入りの一本の木の枝に腰かけて、私を相棒と呼ぶ彼女は問いかけた。
彼女は黒呼と言った。
死神であった身だが死神でない、人を助ける元死神。
この冥界唯一の存在であり、孤独な存在だ。
落ちこぼれと蔑まれ、無益な小競り合いに引きずり出され、眠る隙すら簡単には見せられない。
なんとも、少女には耐えがたい事態だ。
だが、彼女はそれにめげているわけではない。
今でも彼女は自分の理想の追い続けて、笑って、生きている。
死神が持つべきではない、この冥界とは真逆の理想を。
「ねぇ、闇爾」
おっと、つい自分の頭の中に夢中になってしまった。
わからない、と仕草で答えると、彼女は嬉しそうにまた話し出した。
「それはきっと、限りある生の中で生きるからこそ、人は美しいからよ」
彼女の赤い目がまたどこかに見える理想を幻想に見てキラキラと光る。
私のガラス玉のような眼はその光を反射して光った。
この眼は彼女にはどう見えているのだろう、それを問う口を私は持たない。
「時間という概念があるから、それが限りあるものとわかっているから、人は仕事に精を出し、娯楽に浸り、愛を育み、安息を得られるの。すべての根本は有限なる時にあるのよ」
枝に足をかけ、彼女はゆっくりと立ち上がった。
それに伴い私の視線も高くなり、そして気づく。
下らない争いが、また近くまで来てしまっているのだと。
「永遠ほど退屈で無価値なものはないわ」
それは永遠を生きる彼女ならではの言葉だろう。
変化のない世界でぐるぐるとルーティンワークを連ねていくだけの世界など、ただ退屈で、発見もない無価値なものだと。
「さて」
彼女は周りに広がる冥界の闇の中を見た。
すべてを黒に溶かし込み、限りなく広がり続けるここは、まさに永遠の場所と呼んでいい。
「だからこそ、人はその限りある生を全うしなければならないの」
そして彼女は木の上から飛び降りた。
真っ黒の大地、その上で、紫の布地が花を咲かせた。
「行きましょう。人の意志は汲み取られなければならないわ」
歩き出す彼女の後ろから、私は羽をはばたかせて続く。
彼女の右手はくるくるとまるで遊具で遊ぶかのように鎌を玩び、銀の刃が時折光る。
刈り取るためのものだった鎌が、彼女にかかれば守るための鎌に代わってしまう。
どんな存在も、彼女にかかれば簡単に変わってしまうのではないか。
そう錯覚してしまうのだ。
「不毛の大地に花が咲く」
END
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