毛糸さまのサイトが、2000ヒット突破!!ということで、企画に乗っからせていただきました!
今回は、毛糸さま宅のアイディールさんと、我が子ナタリアを指名させていただき、お話を書いていただきました!
毛糸さまがナタリアの髪の色から、満月を想像してくださり、幻想的でロマンチックなコラボストーリーとなっています!
CAST:アイディールさん(毛糸さま宅)・ナタリア
「月を見ていたのよ」
彼女はそう言って笑う。黄金の満月が降らす明かりは、この地表へ届く頃にはすっかり冷え切っていた。
それとも最初から、この光に熱などないのか。
アイディールはライトグレイをしたマントの下で腕を組み、相対した女性、ナタリアを見つめる。
一度は誰もが夢想しただろう、純粋無垢な少女像がそこにあった。それは限りなく現実味を伴った質感であるのに、まったく現実的ではない。空想の中、御伽噺の中で、年もとらず生き続ける、無欠の美しさ。
僅かな光にもしなやかな輝きを秘める、長いブロンドの髪。宝石にも勝る、澄んだ紫の瞳。ありふれた小さな深夜の公園に忽然と現れた幻想は、くすりと笑みを零して再び月を仰ぐ。凍ったように天へ座した望月を。
「ただそれだけ。……それとも、月見をするのはそんなに可笑しい事かしら?」
「貴方の行動の是非を問う立場にはないが……女性の夜道は危険だろうに。さっきもこの近くで一件、飲酒絡みの騒ぎがあったばかりだ」
「あら、それは危ないわ」
細い指を絡ませて口元に当てると、ふんわりと微笑む。――その様子はどう見ても、自らにその“危険”は及ばないと確信しているようにしか思えない。
寧ろ危ないのは、彼女の傍で痴態を晒す向こう見ずさにあるのだと言わんばかりだ。これでは、どちらが被害者になるのかは分かったものではない。そんな底の見えないナタリアの言動に、一層注意を傾けて白い英雄は目を細める。
「此処から家は近いのかい?」
「ふふ。そんな事、どうしてあなたに教えなくちゃいけないの?」
「いや、距離があるのならお送りしようかと……ただのお節介だよ」
「さっき女の夜道は危険って忠告したばかりで、その舌の根が乾かない内に家まで送る、ですって。なんだか矛盾しているわ」
「……それはご尤もだが」
どう用心しても、言葉を重ねる毎に墓穴を掘るようだった。元来、愚直な性質を持つアイディールとしては、相手の上を行く舌鋒を披露するなどという離れ業が出来ようはずもない。指摘自体も悉く正論であるがゆえに、反論も怒りもないのだが、ナタリアのペースにすっかりはまってしまったのは確かだった。
困惑しているらしい相手の様子を見て、彼女はゆっくりと手を後ろに回し、歩み寄ってくる。月影を背にしたナタリアのシルエットを、白い光が縁取っていた。
まったく、一から十まで現実離れしている。
遂に眼前までやって来た至高の人形は、僅かに小首を傾げ、固唾を呑む英雄を見上げた。なんとも、相手の疑心を彼方へ追いやってしまうほど、艶やかに唇がしなる。
「それじゃ、さっそく送って貰おうかしら。……たまには見返りを求めない親切に甘えるのも悪くないしね」
微か、はにかんだように見えたのは光の加減だったのか、はたまたアイディール自身の願望が透けて見えたのか。相手の返答を待たず歩みだしたナタリアは、数歩先に行った所で振り返る。それにようやく我に返ると、急いで隣に並んだ。
金の貴影と、銀の人影が隣り合って夜道を行く。互いの胸中を知るのはただ、無表情の内に黙する月のみである。
『 moon light 』
(まるでそれは、御伽噺の1ページ)
今回は、毛糸さま宅のアイディールさんと、我が子ナタリアを指名させていただき、お話を書いていただきました!
毛糸さまがナタリアの髪の色から、満月を想像してくださり、幻想的でロマンチックなコラボストーリーとなっています!
CAST:アイディールさん(毛糸さま宅)・ナタリア
「月を見ていたのよ」
彼女はそう言って笑う。黄金の満月が降らす明かりは、この地表へ届く頃にはすっかり冷え切っていた。
それとも最初から、この光に熱などないのか。
アイディールはライトグレイをしたマントの下で腕を組み、相対した女性、ナタリアを見つめる。
一度は誰もが夢想しただろう、純粋無垢な少女像がそこにあった。それは限りなく現実味を伴った質感であるのに、まったく現実的ではない。空想の中、御伽噺の中で、年もとらず生き続ける、無欠の美しさ。
僅かな光にもしなやかな輝きを秘める、長いブロンドの髪。宝石にも勝る、澄んだ紫の瞳。ありふれた小さな深夜の公園に忽然と現れた幻想は、くすりと笑みを零して再び月を仰ぐ。凍ったように天へ座した望月を。
「ただそれだけ。……それとも、月見をするのはそんなに可笑しい事かしら?」
「貴方の行動の是非を問う立場にはないが……女性の夜道は危険だろうに。さっきもこの近くで一件、飲酒絡みの騒ぎがあったばかりだ」
「あら、それは危ないわ」
細い指を絡ませて口元に当てると、ふんわりと微笑む。――その様子はどう見ても、自らにその“危険”は及ばないと確信しているようにしか思えない。
寧ろ危ないのは、彼女の傍で痴態を晒す向こう見ずさにあるのだと言わんばかりだ。これでは、どちらが被害者になるのかは分かったものではない。そんな底の見えないナタリアの言動に、一層注意を傾けて白い英雄は目を細める。
「此処から家は近いのかい?」
「ふふ。そんな事、どうしてあなたに教えなくちゃいけないの?」
「いや、距離があるのならお送りしようかと……ただのお節介だよ」
「さっき女の夜道は危険って忠告したばかりで、その舌の根が乾かない内に家まで送る、ですって。なんだか矛盾しているわ」
「……それはご尤もだが」
どう用心しても、言葉を重ねる毎に墓穴を掘るようだった。元来、愚直な性質を持つアイディールとしては、相手の上を行く舌鋒を披露するなどという離れ業が出来ようはずもない。指摘自体も悉く正論であるがゆえに、反論も怒りもないのだが、ナタリアのペースにすっかりはまってしまったのは確かだった。
困惑しているらしい相手の様子を見て、彼女はゆっくりと手を後ろに回し、歩み寄ってくる。月影を背にしたナタリアのシルエットを、白い光が縁取っていた。
まったく、一から十まで現実離れしている。
遂に眼前までやって来た至高の人形は、僅かに小首を傾げ、固唾を呑む英雄を見上げた。なんとも、相手の疑心を彼方へ追いやってしまうほど、艶やかに唇がしなる。
「それじゃ、さっそく送って貰おうかしら。……たまには見返りを求めない親切に甘えるのも悪くないしね」
微か、はにかんだように見えたのは光の加減だったのか、はたまたアイディール自身の願望が透けて見えたのか。相手の返答を待たず歩みだしたナタリアは、数歩先に行った所で振り返る。それにようやく我に返ると、急いで隣に並んだ。
金の貴影と、銀の人影が隣り合って夜道を行く。互いの胸中を知るのはただ、無表情の内に黙する月のみである。
『 moon light 』
(まるでそれは、御伽噺の1ページ)
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