某交流所にて、リアの産みの親、子豚さまに書いていただきました。
お言葉に甘え、リクエストさせていただいたキリーとスタンデッドのちょっといい感じなお話。
キリーの絶妙なデレ具合と、スタンデッドの紳士的で少し強引なところが、まさに私の理想通りで。
子豚さま、ありがとうございました。
夜の街の街灯は所々ぼんやりと光っており、多少視覚の助けをしてくれる。
それ以上に、今夜は夜空に満月が輝いており、明るく夜道を照らしてくれていた。
キルエリッヒは人影のない道を一人歩いていた。
しかし、なにやら背後から何かが近づいてくる気配を先ほどから感じ取っていた。
おそらく、何者かが彼女に夜襲をかけようとしている、と思うのが妥当だと思う。
キルエリッヒは気づかれぬようにため息を吐くと、何食わぬ顔で曲がり角の路地へと入り込んだ。
そのまま壁に背をつけ、相手が来るのを待ち構える。
月明かりに照らされた人影がだんだんと近づいてくる。気配を殺し、十分に近づいてくるのを待った。そして、次の瞬間。
「うぉぉ!?」
強烈な足蹴りが繰り出されるのと同時に、間抜けな叫び声が耳に入る。その声の主は、彼女も良く知っている人物のものだった。
「……なにしてるの? スタンデッド」
「なにしてるの、じゃねえよ……。いきなり蹴り入れるなよ、びっくりするじゃねえか!」
「貴方が後ろから付けるのが悪いわ。自業自得よ」
「お前なぁ……」
キルエリッヒは路地裏から出てきて、左胸を抑えて冷や汗を流している男……もとい、スタンデッドにじっとりとした視線を向けた。
危うくキルエリッヒの蹴りを喰らいそうになった彼はというと、落ち着かない心臓を静めるため、何回か深呼吸をした。
「俺は、ただ買い物の帰りにお前が見えたから、声かけようと思って付いていったんだよ。そしたらこんなことになるし……」
「そう。それじゃあね」
「って、ちょっと待てよ、キリー」
スタンデッドは、踵を返してその場を去ろうとするキルエリッヒの腕を掴んだ。当然、彼女は怪訝そうな顔をして彼のほうを向いた。
「何?」
「いや、せっかくだし一緒に行こうかなと」
「……鬱陶しいわ」
「まあまあ、そう言わずに」
「ちょっ……」
キルエリッヒが言うのも聞かず、スタンデッドは無理矢理彼女と手を繋いで歩き出した。
振りほどこうと思えば簡単だが、彼は振りほどいてもまた手を繋ごうとするだろう。
そう悟ったキルエリッヒは、ため息を吐いて大人しくされるがままにしておいた。
二人で誰もいない夜道を歩く。月明かりで伸びた影が二つ、隣り合っていた。
不意にスタンデッドが足を止め、キルエリッヒも立ち止まった。
「何?」
「キリー、ほら。月が綺麗だ」
上を指差し、スタンデッドは笑う。上を見上げれば、煌々とした満月が空に浮かんでいた。
太陽よりも優しい光に、キルエリッヒは思わず目を細めた。
「……そうね」
「お、珍しくキリーが素直だ」
「……蹴り飛ばされたいかしら?」
「それはご勘弁。さ、行こうぜ」
スタンデッドは優しくキルエリッヒの手を引いて歩き出した。それに彼女もゆっくりと付いていく。
途中で分かれるまで、二人は特に会話をするということもなく、静かに寄り添って歩いていた。
口では決して言わないが、たまにはこういうのも悪くはないと、キルエリッヒは密かに胸のうちで思っていた。
そんな二人の姿を見ていたのは、空に浮かぶ満月だけだった。
-fin-
お言葉に甘え、リクエストさせていただいたキリーとスタンデッドのちょっといい感じなお話。
キリーの絶妙なデレ具合と、スタンデッドの紳士的で少し強引なところが、まさに私の理想通りで。
子豚さま、ありがとうございました。
夜の街の街灯は所々ぼんやりと光っており、多少視覚の助けをしてくれる。
それ以上に、今夜は夜空に満月が輝いており、明るく夜道を照らしてくれていた。
キルエリッヒは人影のない道を一人歩いていた。
しかし、なにやら背後から何かが近づいてくる気配を先ほどから感じ取っていた。
おそらく、何者かが彼女に夜襲をかけようとしている、と思うのが妥当だと思う。
キルエリッヒは気づかれぬようにため息を吐くと、何食わぬ顔で曲がり角の路地へと入り込んだ。
そのまま壁に背をつけ、相手が来るのを待ち構える。
月明かりに照らされた人影がだんだんと近づいてくる。気配を殺し、十分に近づいてくるのを待った。そして、次の瞬間。
「うぉぉ!?」
強烈な足蹴りが繰り出されるのと同時に、間抜けな叫び声が耳に入る。その声の主は、彼女も良く知っている人物のものだった。
「……なにしてるの? スタンデッド」
「なにしてるの、じゃねえよ……。いきなり蹴り入れるなよ、びっくりするじゃねえか!」
「貴方が後ろから付けるのが悪いわ。自業自得よ」
「お前なぁ……」
キルエリッヒは路地裏から出てきて、左胸を抑えて冷や汗を流している男……もとい、スタンデッドにじっとりとした視線を向けた。
危うくキルエリッヒの蹴りを喰らいそうになった彼はというと、落ち着かない心臓を静めるため、何回か深呼吸をした。
「俺は、ただ買い物の帰りにお前が見えたから、声かけようと思って付いていったんだよ。そしたらこんなことになるし……」
「そう。それじゃあね」
「って、ちょっと待てよ、キリー」
スタンデッドは、踵を返してその場を去ろうとするキルエリッヒの腕を掴んだ。当然、彼女は怪訝そうな顔をして彼のほうを向いた。
「何?」
「いや、せっかくだし一緒に行こうかなと」
「……鬱陶しいわ」
「まあまあ、そう言わずに」
「ちょっ……」
キルエリッヒが言うのも聞かず、スタンデッドは無理矢理彼女と手を繋いで歩き出した。
振りほどこうと思えば簡単だが、彼は振りほどいてもまた手を繋ごうとするだろう。
そう悟ったキルエリッヒは、ため息を吐いて大人しくされるがままにしておいた。
二人で誰もいない夜道を歩く。月明かりで伸びた影が二つ、隣り合っていた。
不意にスタンデッドが足を止め、キルエリッヒも立ち止まった。
「何?」
「キリー、ほら。月が綺麗だ」
上を指差し、スタンデッドは笑う。上を見上げれば、煌々とした満月が空に浮かんでいた。
太陽よりも優しい光に、キルエリッヒは思わず目を細めた。
「……そうね」
「お、珍しくキリーが素直だ」
「……蹴り飛ばされたいかしら?」
「それはご勘弁。さ、行こうぜ」
スタンデッドは優しくキルエリッヒの手を引いて歩き出した。それに彼女もゆっくりと付いていく。
途中で分かれるまで、二人は特に会話をするということもなく、静かに寄り添って歩いていた。
口では決して言わないが、たまにはこういうのも悪くはないと、キルエリッヒは密かに胸のうちで思っていた。
そんな二人の姿を見ていたのは、空に浮かぶ満月だけだった。
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