同盟にて、緋夜さまに書いていただいた小説です。

緋夜さま宅のアークさんとリアトリスさんと我が家のレスカとマリアのコラボになっています。


CAST…レスカ+マリア+アークさん+リアトリスさん




 ある日の天気は晴天。温かな陽気は自然と眠気を誘う。

「ほわぁ、暇ですねー」

 欠伸をしながら呑気に喋るのは、薄い金髪に黄緑色の瞳を持つ少女――リアトリス。
 退屈そうな表情で面白い事はないか、と周辺を見回しているが別段何も見つからなかった。
 場所は生い茂る森の中。リアトリスの隣で忙しなく動いているのは、深い紫色の髪、それと同様の瞳を持つ青年――アーク・レインドフ。通称始末屋。
 アークの瞳は楽しそうに、そして不気味に輝いている。
 リアトリスが口元に手を当て、欠伸をしている間、リアトリスの横を血しぶきが通り過ぎた。

「主―何か面白いことないですかー?」

 リアトリスが呑気なことしか口にしないが、現在アーク・レインドフは戦闘中だ。
 幾人もの相手が周囲を囲んでいる中、アークは嬉々としている。
 戦闘狂であるアークが活発に動いている以上、敵は敵ではない。
 リアトリスは血しぶき舞う現状で、きょろきょろと周囲を見渡し続ける。

「あ」

 その時、リアトリスは何かを発見する。

「主―新手ですかねぇ? 何か二人きますよー」
「あぁ……なんだろ」

 近づいてくる二つの気配を感じながら、アークは飄々としている。
 その時、木々の間から着地音がする。
 リアトリスが面白そうにその方向をみると、二人の女性が悠然と着地していた。

「ほわー綺麗な人―。あ、ねぇねぇお二人さんはそこの変な人たちの仲間ですかー?」

 手を振りながら、リアトリスは声をかける。

「仲間? 何を馬鹿な事をいっているのだ?」

 金髪碧眼の少女――年の頃合いは十代後半。リアトリスの方が僅かに年上程度だろう。整った顔立ちに、黒いスーツは映えている。凛とした表情で冷静にリアトリスとアークを交互に見る。手には紐状の武器を握っている。敵が何時攻めてきても対応できるように、だ。

「主―仲間ではないみたいですよー。どちら様ですか? 観光?」
「……。私たちは、お前たちが戦っているあれらに用があったのだが、お前たちこそ何故そこにいる?」

 金髪碧眼の少女――レスカは眉を顰める。とある組織の壊滅を依頼され、レスカと、レスカの後ろで優美に微笑む女性――マリアは組織の拠点へ向かった。
 拠点に辿り着いた時、組織の面々と対峙する二人組(戦っているのは一人だが)を発見し、レスカは表情には出さなかったが驚いた。

「えーと、私たちは帰り道だったんですけどー、なんか急に襲われたので、主が元気よく退治しています!」

 退治は元気よくするものなのか? レスカは疑問を覚えつつも質問する時間が無駄だと判断する。
 この少女はどうにも要領を得ないと。

「で、私は暇なんで、地面にらくがきしようかと考えているんですけどもねー」

 緊張感が全くない発言に、レスカの緊張感も消え去る錯覚に陥る。

「お嬢さん面白いわね」

 艶のある綺麗な声でマリアはくすっと笑う。

「ありがとーございます。あぁ、でどうします?」
「何を、かしら?」
「この変な人たちをどうします? って意味ですよー。何かするなら早くしないと主に持っていかれちゃいますよー。仕事帰りのハイテンションで戦闘狂の主は危険ですからー」

 リアトリスはその辺にあった木の棒を拾い、本当に地面に絵を描き始めた。

「……私は私の仕事をするだけだ」
「そうねぇ、仕事だしね」

 レスカとマリアは戦いの渦の中へ飛び込む。

「ほわー、わざわざ戦わなくても、主が全部始末してくれるのに元気なことですねー」

 リアトリスは、いましがた出会った謎の二人組の似顔絵を作成し始めるが、敵に邪魔をされ断念する。

 レスカとマリアはアークの存在を気にせず、受けた依頼を遂行する為に、組織の面々を一人一人確実に片付けていく。
 レスカは紐――ドルチェビータを巧みに操る。
 マリアはナイフを取り出し、ダーツのように敵に投げていく。
 レスカは前衛にたち、マリアはレスカの後方に立つ。其々が得意とするフィールドを瞬く間に作り上げる。
 連携ある動きに敵は翻弄される。

「(彼女ら強いなぁ)」

 アークはその様子を傍目に、手短にあった武器が壊れた為、代用品を探す。

「あぁ、是で言いや」

 丁度いい所に、リアトリスが先刻まで絵を描いていた小枝を発見し、それを手に持つ。
 そして、それで敵に鋭い攻撃をかます。

「……小枝って武器になったのね」

 余裕の表情で、マリアはアークの動作にふむふむと頷く。
 敵が迫ってくるその途端、掌で転がしていたナイフを握り、額に投擲する。一寸たりともずれなかったナイフが額に突き刺さり、血を流して地面に倒れる。

「鮮やかなもので」

 アークが小枝を振り回しながらマリアに声をかける。

「小枝を武器にする方が、個人的には信じられないわ」
「偶々あったから武器にしただけだ、別に小枝が主流武器ではない」
「主流武器だったら、世の中の武器職人が泣くわよ」

 武器を作る必要性がそもそもなくなるのだから。
 軽い会話を交わす二人に対して、レスカは無言で敵を倒していく。
 数が多くとも、高い実力を誇る三人の前では、数は数にならず圧倒的力で敵を捩じ伏せた。
 この場に立っているのは、アーク、リアトリス、レスカにマリアだけだ。

「あら、もう終わったの? 早いわね」

 マリアは優美な動作で髪を靡かせる。

「お二人強いですねーお名前なんていうんですかー? あ、私はリアトリスで、こっちの戦闘狂馬鹿主はアークです」
「おい、何だか余計なものがついているぞ」
「訂正。馬鹿主アークです」
「……。私はレスカだ」
「私はマリアよ、宜しくね」

 レスカはリアトリスとアークのやりとりを無視して、名前を名乗る。それが一番手っ取り早いと判断したからだ、そしてその判断は正しい。

「レスカさんにマリアさんですかー」

 リアトリスはにこにことしている。この場では場違いに思える程に。
 レスカは未だ武器をしまわないで、周辺を警戒している。

「あら? レスカ、まだ敵はいるのかしら?」
「いる」

 淡々とした声でレスカは答える。人の気配を感じる。まだ終わっていない。
 依頼を中途半端な形で遂行するわけにはいかない。

「ほわー、何だか此処の人たちって人数だけは多いんですねー」

 感心しているのか、呆れているのかリアトリスが口を開く。
 それとほぼ同時に無数の人が現れる。先刻より僅かに多い。覆面を被っているため、個々の判別は出来ない。
 彼らが何ものなのか、アークとリアトリスは知らなかったが、興味はなかった。
 敵として向かって来るなら殺すだけだし、向かってこないなら放置するだけの相手。
 アークの手にはいつの間にか小枝以外のものが握られていた。

「あら、それ私のナイフ」
「お借りしまーす」

 マリアが敵に投擲したナイフだった。

「どうぞ、でも返してね?」
「ナイフが無事でしたら」

 アークは敵に向かって駆けだす。マリアみたく投擲することはない、自らの腕で敵を切り裂く。
 レスカの元に敵が近付いてくる。槍を構え、突撃してくる相手を優雅に交わし、背中を蹴りつけ背後に回る。ドルチェビータを用い、相手の首を締めあげる。
 自分に向けて銃の標準が合わせられているのを察知すると、銃弾が発射されると同時に、最小限の動きだけで交わす。相手が何発連射したところで、かすりもしない。実力差が明確に現れていた。

「ほわー何だか面倒ですねぇ」

 リアトリスは戦っているレスカの隣にやってきて声をかける。

「……邪魔だ、戦わないのなら避難していろ」
「そのつもりだったんですけどもねー」

 リアトリスの背後に敵が現れる。斧を振りかざすが、斧はリアトリスに直撃する寸前で砕け散る。

「可愛らしい女性たちが頑張っているのにー頑張らないのは流石に駄目かなって思いましてお手伝いしますよー」

 いつの間にかリアトリスの手には武器が握られている。花弁状に幾重にも連なった刃を携えた、槍だった。
 リアトリスが一振りすると背後にいた敵は一瞬で切り刻まれる。

「……最初から何故、戦わない」
「アークが戦っていたら、別に私まで戦う必要はないからね。無駄な体力を消耗する必要もないでしょう」

 何処となく、リアトリスの雰囲気が変わったのをレスカは肌で感じる。

 数分後、組織は壊滅した。

「リア―トーリス。お前最初から戦えよ」

 途中から参戦したリアトリスに対して、アークは文句を口にする。

「主の為に戦うなんて、そんな無駄な事は一切合財したくありません!」

 腕を腰に当ててリアトリスは答える。
 その様子をマリアはおかしそうに笑う。

「面白いお二人ね」
「どうもですー」
「何時もこんな調子なのかしら?」
「もちろんでーす」

 色っぽい仕草でマリアは腕を組む。

「私たちは此処にもう用がないので失礼する」

 レスカは軽く挨拶をする。そして依頼を達成したレスカとマリアは、アークとリアトリスの素性を詮索することもなく、岐路についた。
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