同盟にて、稀憐さまに書いていただきました!

お任せでお願いしたところ、琥珀と湊の出会いの場面を書いていただきました。
湊の淋しさや、琥珀の意外な推しの強さが表現された素敵な小説です!


CAST…琥珀、湊




出会い





(もう雪の季節、ですか)


窓から見える、綿のような白。
身を切るような寒さを想像して、湊は小さく身を震わせた。

そう、あくまで想像しか出来ない。

湊は18年もの間屋敷から出た事がないからだ。「人柱とならなければならない」しきたりを背負わされ、彼女は日々を生きている。
幼い頃は外は憧れの世界であり、出たくてどうしようもなくて、仕方なかった。でも今は―


(…子供達はさぞかし喜ぶ事でしょうね)


想像はしても、出る事にはもう諦めの色があった。
時間とは恐ろしいものだ、と彼女は思う。どんなに理不尽な運命でも、長い時が過ぎればそれを受け入れてしまう。
時間というよりも、そこには慣れも含まれるのかもしれないが。

変わらない日常を送る、ただそれに慣れてしまった。
そんなところだろうか。



しかし、今日ばかりは違った。




(……?)


がたん、という音と共に窓の向こうに気配を感じたのだ。
誰かいる―そう感じた湊はすっと立ち上がり、さっきまでぼんやりと眺めていた窓の向こうを注視した。

すると、だ。


「…あ、こんな所にいたんですね」


突然窓の下から髪の長い女性が現れた。
一瞬身構えはしたが、相手に明らかな敵意がない事はすぐに感じ取れた為、とりあえずあちらの名を聞いてみる。


「…。どちら様、ですか?」


「あぁ、私は琥珀と呼んで下さい。此処に閉じ込められてる人がいるって聞いたんで来たんですけど、嘘じゃなかったみたいですね」


琥珀というらしいその女性はにこやかに笑うと、今度は突然手を差し伸べてきた。


「それで湊さん、ですよね?外に出てみませんか?こんな所にずっと居たら、なんだか勿体ないですよ」


まるで夢物語みたいな話だ、と湊は思った。
突然現れた人が自分の名前と事情を知っていて、外に出ようと手を差し伸べてくる。正直その手を握って出たいとは思ったが、こちらの責任というものもある。
今居なくなってしまえばそれこそ、屋敷の人達は血眼になって自分を探すだろう。それを想像して、つい躊躇ってしまう。

けれどそれを察したのか、琥珀は優しげに微笑んだ。


「大丈夫ですよ、下手に見つからない自信はありますから。今出なかったらいつ出るんです?自分を諦めちゃいけませんよ」


彼女には不思議な勢いがあった。
この人にならついて行っても良いかな、と感じた。


だからこそ。



「じゃあ―連れて行って下さい。私を、外に」



私は、琥珀の手を握ったのだ。




END
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。

コメントフォーム

以下のフォームからコメントを投稿してください