ナタリアの過去。時代背景がめちゃくちゃかもしれないです;死ネタを含みます。しかも暗いです。そして、例のごとくグダグダです;閲覧注意!!




「お前が、本物の女性だったら良かったのにな…」


あなたは私にそう言った。


《人形の夢》





16世紀後半…私は、生まれた。いえ、作られた。
ある、人形作家によって。
その人形作家は夢見がちで、周囲からかなり浮いた存在だった。

結婚適齢期も過ぎているのに、彼はまだ独身だった。原因は、高すぎる理想。

彼は職業柄、絶対的な美に、完璧な美にこだわり続けた。

女性の美しい部分を、彼の理想をかき集めて作られた等身大の人形…それが私だった。


意識を持ち始めたのは、いつだったか。
あまりハッキリとは覚えていない。

気がつくと、彼の独り言を聞いていた。


私は、自分が人形であることに、メリットもデメリットも感じていなかった。
それは《殺人人形》と呼ばれる今も同じ。

否定したところで、私が人形であるという事実は消えない。



でも、彼のあの言葉だけは未だに私の心を締め付ける。

「お前が本物の女性だったら良かったのにな…」


今の私ではダメなの?
私は、あなたの何?
私が、あなたと同じ人間なら、あなたは満足なの?


結局、そのころの私が問う事はできなかった。

そして……

どんよりとした厚い雲が空を覆い、霧のような小雨がふる肌寒かったあの日……


あの人は死んだ。


元々、心臓に持病を持っており、さらに精神的に追い詰められていたせいもあった。

貧しかったため、医者にもかかれず薬もなく……天命なのだろう。

私はただ、見守ることしか出来なかった。



実際、お金が入るチャンスはあった。

それは、私だった。

「売ってほしい」とさまざまな富豪が、大金を手に声を掛けてきたが、彼はすべて断った。


「彼女は、私の理想の女性そのもの。どんな大金を積まれようと売れません」


そして最後の夜も

「お前が本物の女性なら、良かったのにな…」


いつもの独り言を呟いて………


そのまま逝ってしまった。

なぜ私は、人形なんだろう。
なぜ私は、人間ではないんだろう。


……見ている事しか出来ないなら、こんな自我なんていらない……………

苦しくて悲しくて…何より自分が不甲斐なくて……

気が付くと、私のアメジストの瞳から、流れるはずのない液体が頬をつたった……

……涙。私は、この時初めて泣いた。


今思えば、私はあの人を愛していたのかもしれない。
……いや、きっと今でも。
*
*
*


 あの人が亡くなり、数年後。
私は、ある博物館に寄贈された。

ガラスケースに入れられ、さまざまな人の視線を受けながら、私は願った。

「人間に……人間になりたい……そして年を重ねて、あの人の元へ行くの…」



…私の切なる願いは、最悪な叶い方をしてしまう。




その日は、雷雨だった。そして、偶然にも閉館日で、いつもの賑やかな雰囲気と打って変わって、真っ暗な館内は雨音とゴロゴロという雷鳴しかしない。


私は、ガラスケースのなかにただ立っていた。
そして、昔の思い出に思いを馳せていた、その時。



ゴロゴロ……ガラガラッ

ピシャーン!!!

……………

ドガーン!!!!!

ピシ……カシャーン


耳をつんざくような爆音。
そして、その爆音の衝撃に耐え切れず、ガラスケースが粉々に粉砕した。


私は、何を思ったのか体を動かしてみた。

……動く。


まるで夢のような展開に、私は一瞬喜んだ。

…が、それもつかの間。


「…体は人形のまま……どういうこと?」


…そう。

人間になれた訳ではなかった。

私の体は麻布を重ね蝋で固めて、さらに表面をさらに蝋と石膏でコーティングしたもの。
髪は、上質な絹糸。
瞳はアメジスト。


そう、ただの《動く人形》になっていた。


「これじゃ、ただの化け物だわ…」


途方に暮れた私は、ふらふらと博物館を後にした。


今のように警備が厳しい訳ではない。
脱出するのは簡単だった。

…でも、


……これからどうしよう……

外はいつの間にか、雨が止んでいた。


確かに自由に動けたら…と思った事もあった。

まさか、こんな叶い方をするなんて………


私は、人間になりたかったのに、なぜ…


「…ふ、ふふふふふ。あははははははははは!」


笑いが込み上げてくる。


…もう、どうでもいいや。……もう………


私は、笑いながら暗闇の中に消えていった。


****

******


あれから500年以上たった。

あれから色々あった…。


何度も危険な目にあったが、その度に身を守る術を身につけていった。

そして、いつの間にか私は《殺人人形》と呼ばれるようになっていた。



「おい、貴様。ここで何をしている。返答次第では生かして帰さんぞ!!」

「ふふ…。随分威勢のいいこと。生かして帰さない…ね。笑わしてくれるじゃない?」

「何?そっちがその気なら、手加減はせんぞ!!」

「手加減?する必要はないわよ?……さあ、私を楽しませて……」



今の私を見たら、あの人はどう思うのだろうか。

がっかりする?
恐怖する?

それとも、変わらず私を思い続けてくれるだろうか。

……まあ、もう関係ない。私は、もうあの人のもとには行けないのだから。



私は、この血塗られた道をただ歩いていく。

永遠に続く覚めることのない夢を見ながら……




希望を断ち切られ、愛する人を失った人形は、宛てもなくひたすら歩き続ける。


たとえその夢の果てが、地獄であろうとも……。



《人形の夢》





《END》
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。

コメントフォーム

以下のフォームからコメントを投稿してください