黒呼とユキ、死に携わる二人のお話です。黒呼の視点で書いてみましたが…やっぱりグダグダです;軽い死ネタを含みます。閲覧注意!!※この話は、あくまで銀だこワールドの話です。ご了承ください。
「死神さん、苦しいの?」
小さな少女の言葉に、私は思わず頷いてしまった…
薄暗い空間。
私は、迷い込んだ幼い魂を追って来た。
ふわふわと空間を漂う事をやめ、地に足を付けると、ゴツゴツした石の感触。せせらぎの音が聞こえるあたり、河原のようだ。
「どこに…いるの…?」
私は、薄暗い空間に問い掛ける。
しかし、辺りはシーンと静まりかえり、物音一つしない。
困った……私は、溜め息を吐く。
幼くして病死してしまった魂。入れ物(体)はもうボロボロで、刈らざるを得ず刈った…までは良かった。
体から切り離された魂は、死を受け入れられず、私の手をすり抜け、飛んで行ってしまった。
…いや、受け入れられないと言う訳じゃないかもしれない。気づいていないだけだ。
あの子からすれば、きっと鬼ごっこをしている感覚なのだろう。
「なんとか、見つけないと…」
私は焦っていた。
捕まえられないことではなく、それよりも最悪な自体、同業者に捕われることだ。
本来、死神は生を終えた魂を冥界(死者の世界)に連れていく事が役目だ。
しかし、中には無理矢理死に向かわせ魂を刈る、悪質極まりない連中もいる。
しかも、遊び感覚で刈る死神もおり、捕まえると食べてしまったり、散々もて遊び、消失させてしまう輩もいる。
もし、奴らに捕まってしまったら…そう考えてしまうと、血の気が引いてしまう。
もし、消失させられでもしたら、二度と生まれ変わる事は出来ない。
何度か石に足を取られながら、回りを見回してみる。いつもなら、傍らにいる闇爾も今日に限っていない。
「私って、一人じゃ何も出来ないのね…」
闇爾の存在を痛いほど痛感した、その時、
「なにしてるの?」
背後から声がした。
ばっと振り向くと、一人の少女がいた。
年はだいたい6歳前後、紫がかった黒髪は闇に溶け込む事なく浮かび上がる。眼は鮮やかな赤。
頭には両方のこめかみあたりに紅い結い紐を結び、真っ白な着物に真っ赤な帯を締めている。
ふと、足元をみれば素足に下駄。
心なしか発光しているようにも見える。
今まで、そこにいたのだろうか。まったく気配を感じなかった。
「え、えぇ。捜し物…いや、捜し人かしら。」
多少うろたえたが、それだけ答える。
すると、
「……もしかして、この子?」
少女が手を着物の合わせに持って行き、鎖骨の辺りに指を滑らせる。
「!!」
私は、思わず眼を見開いた。
指を滑らせた部分の、少女の体がパックリ開き、中には無数の魂の光りが動いている。
その中から一つだけ、ふわふわと飛び出し、少女の手の付近を飛び回る。
「さっき、そこで見つけたの。この子を捜してたの?」
私は、驚きながらも魂を観察する。
……確かに、私が追い掛けていた魂だ。
「ええ、そうみたい。私、その子を冥界に連れて行こうとしていたんだけど、逃げられちゃって…」
「あなた、死神さん?」
「一応ね。半人前の落ちこぼれだけど…」
私が自嘲気味に言うと、少女は首を傾げる。
「落ちこぼれ?」
「魂を刈るのが死神の仕事。でも、自分の理想にかこつけて刈らない言い訳をする。
本当は違うの…刈れないの。それを認めるのが嫌で、意地になって…その結果、今回みたいに逃がしちゃって……相棒がいないと何も出来ない…………ホントにどうしようもないの」
自分でも、なんであったばかりの名前も知らない少女にこんな話をしたのか…よく分からなかった。
ただ、この少女に話したら楽になれる……そう感じた。
「…そうかな。わたしはそうは思わないよ」
しばらく無言で話を聞いていた少女が切り出した。
「死神さんは、優し過ぎるんだよ、きっと。
そして、死や生を誰よりも理解してる。
だから、病床についたこの子を、ほかの死神から護ったんだよね?自分の立場がますます悪くなるのを分かってるのに。」
優しい微笑みを浮かべ、少女が言う。
「……!でもっ、でも死なせてしまった!
まだ、小さいのに。これから、楽しい事や幸せな事が沢山あるかもしれないのに!!私は…」
胸が締め付けらるた私は、吐き出すように、叫んだ。
「…それは違うよ。死んでしまったのは、死神さんのせいじゃない。
それに………」
少女は手の回りを飛んでいる魂を見つめ、
「少なくとも、この子はそうは思ってない。
本当は凄く怖かったと思う。でも、いつも側に死神さんがいてくれたから、この子は安心して逝けたんだよ。死神さんが優しい人だって分かったから」
少女はそう言うと、私に微笑みかける。
心の中がふわりと暖かくなるような…日だまりのような笑顔。
「…で、でも、私から逃げていって………」
私がそう言うと、少女はくすくすと笑って、
「最後に遊んで欲しかったんだって。
心配かけてごめんなさいって言ってるよ」
少女はそう言うと、私の方へ手を差し出す。
私も思わず手を差し出すと、小さな魂は私の手の平にちょこんと乗っかる。
それを確認すると、少女は私の顔を見て、
「死神さん、苦しいの?」
と聞かれた。
私は、思わず頷いた。
正直、これ以上魂は刈りたくない。
でも………
「確かに苦しいわ。でも、私は、死神をやめない。私を受け入れてくれる魂があるかぎり、助けたいの…」
私は、目の前の少女を真っすぐ見据え、静かに少女に、そして自分に誓うように言った。
すると、少女は安心したようにふわりと笑うと、
「私は、ユキ。死神さんの名前は?」
「……私は、黒呼。」
私はこの時、まだ知らなかった。
少女…ユキが地蔵菩薩の化身であり、あの河原が賽の河原であるということを知ったのは、再び彼女と再会した時だった。
死神は誓った。
生ある者を見守る事を。
菩薩は願った。
死した者が次の生に希望を持つ事を。
「なんであの時、教えてくれなかったの?」
「うーん。……聞かれなかったから。」
「……あ、そう……」
End…
「死神さん、苦しいの?」
小さな少女の言葉に、私は思わず頷いてしまった…
《死神と菩薩》
薄暗い空間。
私は、迷い込んだ幼い魂を追って来た。
ふわふわと空間を漂う事をやめ、地に足を付けると、ゴツゴツした石の感触。せせらぎの音が聞こえるあたり、河原のようだ。
「どこに…いるの…?」
私は、薄暗い空間に問い掛ける。
しかし、辺りはシーンと静まりかえり、物音一つしない。
困った……私は、溜め息を吐く。
幼くして病死してしまった魂。入れ物(体)はもうボロボロで、刈らざるを得ず刈った…までは良かった。
体から切り離された魂は、死を受け入れられず、私の手をすり抜け、飛んで行ってしまった。
…いや、受け入れられないと言う訳じゃないかもしれない。気づいていないだけだ。
あの子からすれば、きっと鬼ごっこをしている感覚なのだろう。
「なんとか、見つけないと…」
私は焦っていた。
捕まえられないことではなく、それよりも最悪な自体、同業者に捕われることだ。
本来、死神は生を終えた魂を冥界(死者の世界)に連れていく事が役目だ。
しかし、中には無理矢理死に向かわせ魂を刈る、悪質極まりない連中もいる。
しかも、遊び感覚で刈る死神もおり、捕まえると食べてしまったり、散々もて遊び、消失させてしまう輩もいる。
もし、奴らに捕まってしまったら…そう考えてしまうと、血の気が引いてしまう。
もし、消失させられでもしたら、二度と生まれ変わる事は出来ない。
何度か石に足を取られながら、回りを見回してみる。いつもなら、傍らにいる闇爾も今日に限っていない。
「私って、一人じゃ何も出来ないのね…」
闇爾の存在を痛いほど痛感した、その時、
「なにしてるの?」
背後から声がした。
ばっと振り向くと、一人の少女がいた。
年はだいたい6歳前後、紫がかった黒髪は闇に溶け込む事なく浮かび上がる。眼は鮮やかな赤。
頭には両方のこめかみあたりに紅い結い紐を結び、真っ白な着物に真っ赤な帯を締めている。
ふと、足元をみれば素足に下駄。
心なしか発光しているようにも見える。
今まで、そこにいたのだろうか。まったく気配を感じなかった。
「え、えぇ。捜し物…いや、捜し人かしら。」
多少うろたえたが、それだけ答える。
すると、
「……もしかして、この子?」
少女が手を着物の合わせに持って行き、鎖骨の辺りに指を滑らせる。
「!!」
私は、思わず眼を見開いた。
指を滑らせた部分の、少女の体がパックリ開き、中には無数の魂の光りが動いている。
その中から一つだけ、ふわふわと飛び出し、少女の手の付近を飛び回る。
「さっき、そこで見つけたの。この子を捜してたの?」
私は、驚きながらも魂を観察する。
……確かに、私が追い掛けていた魂だ。
「ええ、そうみたい。私、その子を冥界に連れて行こうとしていたんだけど、逃げられちゃって…」
「あなた、死神さん?」
「一応ね。半人前の落ちこぼれだけど…」
私が自嘲気味に言うと、少女は首を傾げる。
「落ちこぼれ?」
「魂を刈るのが死神の仕事。でも、自分の理想にかこつけて刈らない言い訳をする。
本当は違うの…刈れないの。それを認めるのが嫌で、意地になって…その結果、今回みたいに逃がしちゃって……相棒がいないと何も出来ない…………ホントにどうしようもないの」
自分でも、なんであったばかりの名前も知らない少女にこんな話をしたのか…よく分からなかった。
ただ、この少女に話したら楽になれる……そう感じた。
「…そうかな。わたしはそうは思わないよ」
しばらく無言で話を聞いていた少女が切り出した。
「死神さんは、優し過ぎるんだよ、きっと。
そして、死や生を誰よりも理解してる。
だから、病床についたこの子を、ほかの死神から護ったんだよね?自分の立場がますます悪くなるのを分かってるのに。」
優しい微笑みを浮かべ、少女が言う。
「……!でもっ、でも死なせてしまった!
まだ、小さいのに。これから、楽しい事や幸せな事が沢山あるかもしれないのに!!私は…」
胸が締め付けらるた私は、吐き出すように、叫んだ。
「…それは違うよ。死んでしまったのは、死神さんのせいじゃない。
それに………」
少女は手の回りを飛んでいる魂を見つめ、
「少なくとも、この子はそうは思ってない。
本当は凄く怖かったと思う。でも、いつも側に死神さんがいてくれたから、この子は安心して逝けたんだよ。死神さんが優しい人だって分かったから」
少女はそう言うと、私に微笑みかける。
心の中がふわりと暖かくなるような…日だまりのような笑顔。
「…で、でも、私から逃げていって………」
私がそう言うと、少女はくすくすと笑って、
「最後に遊んで欲しかったんだって。
心配かけてごめんなさいって言ってるよ」
少女はそう言うと、私の方へ手を差し出す。
私も思わず手を差し出すと、小さな魂は私の手の平にちょこんと乗っかる。
それを確認すると、少女は私の顔を見て、
「死神さん、苦しいの?」
と聞かれた。
私は、思わず頷いた。
正直、これ以上魂は刈りたくない。
でも………
「確かに苦しいわ。でも、私は、死神をやめない。私を受け入れてくれる魂があるかぎり、助けたいの…」
私は、目の前の少女を真っすぐ見据え、静かに少女に、そして自分に誓うように言った。
すると、少女は安心したようにふわりと笑うと、
「私は、ユキ。死神さんの名前は?」
「……私は、黒呼。」
私はこの時、まだ知らなかった。
少女…ユキが地蔵菩薩の化身であり、あの河原が賽の河原であるということを知ったのは、再び彼女と再会した時だった。
死神は誓った。
生ある者を見守る事を。
菩薩は願った。
死した者が次の生に希望を持つ事を。
《死神と菩薩》
「なんであの時、教えてくれなかったの?」
「うーん。……聞かれなかったから。」
「……あ、そう……」
End…
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