《僕と見習い女神の十二ヶ月》の番外編です。主人公の過去。雨が嫌いな理由を書いたお話です。 ※暴力的な表現があります。注意してください。
僕には『人を愛する資格』がないのだ…。
人の人生に浮き沈みがあるとしたら、あの頃の僕はどちらなのだろう…。
泣くなんて感情は今の僕にはあってないようなものだ。
事の始まりは、一人の女生徒。
「好きです。付き合ってください」
「……え?僕?」
正直信じられなかった。だって今、目の前にいる彼女は、学園のマドンナと言われている子だ。噂によると彼氏がいるのかいないのか、どちらだったか……。
「そうよ?他に誰がいるのよ?」
少しむくれた顔をして、彼女が問い掛ける。僕はあまりの事態に頭が混乱し、まともに思考が働かなかった。
……だから気づかなかったのだ。僕たちを冷たく見つめる背後の視線や、彼女の本性を…………
結局彼女に押され、僕たちは付き合い始めた。彼女いない歴がそのまま年齢な僕にとって、初めての体験ばかりで。それなりに楽しかった。あの日が来るまでは。
付き合い始めて1週間後、初めてデートをする事になった。あいにくその日は朝から雨が降っていた。
僕はいそいそと支度をし、待ち合わせ場所へと急いだ。
彼女はまだ来ていなかった。
天気も悪いし、『女の支度は時間が掛かる』といつも親父が言っていたし、気長に待つことにした。
…30分………1時間……
2時間たっても来る気配がない。「待ち合わせ場所、間違えたかな」と思い、キョロキョロしていると、背後から声が掛かった。
「よぉ。なあにおめかししてんだ?」
「え?………!!」
な、なんでコイツが!!しかも腕組んでるのって……!!
「誰かとデートでもするのぉ?あはは!!」
紛れもなく僕の待ち人だった。
僕はあまりの事に言葉が出ず、立ち尽くしていた。
そのクラスメートと彼女はほうけている僕を見て、親しげに腕を絡ませながら、心底楽しそうに笑う。
「ばっかなだなお前。コイツに遊ばれてるとも知らないで、ノコノコ来やがって」
「ごめんねぇ。私、この人と付き合っててぇ。あんたが引っ掛かるかどうか、賭けしてたの!ふふふ!」
「え、それじゃあ…」
うろたえる僕に、二人は顔を見合わせクスクス笑い、彼女はさらに残酷な言葉を浴びせた。
「ただの暇つぶしよ。私があんたみたいなダサい奴、好きになるはずないじゃない」
…ああ、騙されたんだ。
確かに、可笑しいとは思っていた。
何故に彼女がアプローチしてきたのか。
彼女といる時に感じた、鋭い視線はクラスメートのものだったのだ。
なんて自分は滑稽だったのだろう。少しでも浮かれていたあの頃が恥ずかしい。
ボンヤリとそんな事を考えていると、クラスメートがニヤニヤ笑いながら、僕の胸倉を掴んだ。
「俺の女に手を出したんだ。それなりの罰は覚悟しろよ?おい!お前ら!ボコボコにしちまえ!!」
途端に、僕は数人の男に囲まれ、散々殴られ蹴られ…
次第に僕の意識は混濁し始め、痛みを感じなくなってきた。
意識を閉じる瞬間に見たのは、その光景をイチャイチャしながら、楽しそうに見ている彼女と彼氏だった。
しばらくして、僕は雨粒が顔を叩く感覚に目を覚ました。どうやらあの二人と男たちは帰ったらしい。僕はぼろ雑巾のようになって、広場の隅に倒れていた。卸したての服は泥まみれの上、所々裂けていて、顔はおそらく腫れている。瞼が重たくて口の中は鉄の味がする。鼻の下に流れているものを拭うと、赤い血が袖に付いた。
この状況で、不思議と落ち着いている自分がいる。
なんだか、醒めたようなそんな感覚。
そして、笑いが込み上げる。泣きたいはずなのに、出てくるのは嗚咽でも涙でもない……自嘲的な笑い。
次第に激しくなる雨。まるで自分の替わりに泣いてるみたいだ。
「ばっかみてぇ………」
何を夢見てたのか…わかっていたことじゃないか。
僕はダメな男。ダサい奴。人を愛して、愛されてはいけない存在。
もう誰も愛さない、愛されない者として………
僕には『人を愛する資格』がないのだ…。
《飲み込んだ涙》
人の人生に浮き沈みがあるとしたら、あの頃の僕はどちらなのだろう…。
泣くなんて感情は今の僕にはあってないようなものだ。
事の始まりは、一人の女生徒。
「好きです。付き合ってください」
「……え?僕?」
正直信じられなかった。だって今、目の前にいる彼女は、学園のマドンナと言われている子だ。噂によると彼氏がいるのかいないのか、どちらだったか……。
「そうよ?他に誰がいるのよ?」
少しむくれた顔をして、彼女が問い掛ける。僕はあまりの事態に頭が混乱し、まともに思考が働かなかった。
……だから気づかなかったのだ。僕たちを冷たく見つめる背後の視線や、彼女の本性を…………
結局彼女に押され、僕たちは付き合い始めた。彼女いない歴がそのまま年齢な僕にとって、初めての体験ばかりで。それなりに楽しかった。あの日が来るまでは。
付き合い始めて1週間後、初めてデートをする事になった。あいにくその日は朝から雨が降っていた。
僕はいそいそと支度をし、待ち合わせ場所へと急いだ。
彼女はまだ来ていなかった。
天気も悪いし、『女の支度は時間が掛かる』といつも親父が言っていたし、気長に待つことにした。
…30分………1時間……
2時間たっても来る気配がない。「待ち合わせ場所、間違えたかな」と思い、キョロキョロしていると、背後から声が掛かった。
「よぉ。なあにおめかししてんだ?」
「え?………!!」
な、なんでコイツが!!しかも腕組んでるのって……!!
「誰かとデートでもするのぉ?あはは!!」
紛れもなく僕の待ち人だった。
僕はあまりの事に言葉が出ず、立ち尽くしていた。
そのクラスメートと彼女はほうけている僕を見て、親しげに腕を絡ませながら、心底楽しそうに笑う。
「ばっかなだなお前。コイツに遊ばれてるとも知らないで、ノコノコ来やがって」
「ごめんねぇ。私、この人と付き合っててぇ。あんたが引っ掛かるかどうか、賭けしてたの!ふふふ!」
「え、それじゃあ…」
うろたえる僕に、二人は顔を見合わせクスクス笑い、彼女はさらに残酷な言葉を浴びせた。
「ただの暇つぶしよ。私があんたみたいなダサい奴、好きになるはずないじゃない」
…ああ、騙されたんだ。
確かに、可笑しいとは思っていた。
何故に彼女がアプローチしてきたのか。
彼女といる時に感じた、鋭い視線はクラスメートのものだったのだ。
なんて自分は滑稽だったのだろう。少しでも浮かれていたあの頃が恥ずかしい。
ボンヤリとそんな事を考えていると、クラスメートがニヤニヤ笑いながら、僕の胸倉を掴んだ。
「俺の女に手を出したんだ。それなりの罰は覚悟しろよ?おい!お前ら!ボコボコにしちまえ!!」
途端に、僕は数人の男に囲まれ、散々殴られ蹴られ…
次第に僕の意識は混濁し始め、痛みを感じなくなってきた。
意識を閉じる瞬間に見たのは、その光景をイチャイチャしながら、楽しそうに見ている彼女と彼氏だった。
しばらくして、僕は雨粒が顔を叩く感覚に目を覚ました。どうやらあの二人と男たちは帰ったらしい。僕はぼろ雑巾のようになって、広場の隅に倒れていた。卸したての服は泥まみれの上、所々裂けていて、顔はおそらく腫れている。瞼が重たくて口の中は鉄の味がする。鼻の下に流れているものを拭うと、赤い血が袖に付いた。
この状況で、不思議と落ち着いている自分がいる。
なんだか、醒めたようなそんな感覚。
そして、笑いが込み上げる。泣きたいはずなのに、出てくるのは嗚咽でも涙でもない……自嘲的な笑い。
次第に激しくなる雨。まるで自分の替わりに泣いてるみたいだ。
「ばっかみてぇ………」
何を夢見てたのか…わかっていたことじゃないか。
僕はダメな男。ダサい奴。人を愛して、愛されてはいけない存在。
《飲み込んだ涙》
もう誰も愛さない、愛されない者として………
END
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