Pure rainより。柚希の過去話。 死亡表現あり。閲覧注意!!





―私は
一人じゃない―



《Memory》



幼い頃、両親は海外を飛び回り、一緒にいられる事は滅多になかった。

その為か、私は母方の祖母の家で祖母に育てられた。
でも、私は両親が大好きだった。

一年に一度、私の誕生日の日に必ず帰って来て、一緒にお祝いしてくれる。
母は毎年、特製ケーキを焼いてくれて、父は私と沢山遊んでくれ、色んな所に連れていってくれた。

…これからもずっと………私はこういう風に一つ一つ歳を重ねるんだなと思っていた。

そう……あの日がくるまでは…………



五歳の誕生日の日、私はなぜか胸騒ぎがした。朝から落ち着かない。

その時、電話が鳴った。

父からだった。

「柚希、HAPPY BIRTHDAY。済まないな。天気が悪くて飛行機が遅れてるんだ。今日中には行けないかもしれない」
「……う、ん……」
「大丈夫、必ず行く。おばあちゃんといい子で待ってるんだよ…」
「うん………待ってる…おとうさん……?お母さんは?」
「お母さんは……疲れて寝ちゃってるんだ。………………柚希………I love you……」

そこで電話が切れた。子供心に不安になり、祖母に伝えようとしたが、畑仕事に出かけていて家には居なかった。私は居間に行き、部屋の隅にうずくまっていた。

……なぜか零れる涙……。

両親はもう、『生きて』ここには来ない事を。逢えない事を予感していたのかもしれない……


…次の日、両親は来なかった。


その二日後だった。祖母から両親の乗った飛行機が墜落し、両親は………死んだ事を知らされたのは。

遺品、遺体すら見つからないまま、葬式をした。私は泣けなかった。

……あまりにも突然で…
……あまりにも悲しすぎて……



それから十年経ち、私は桜花台学園に通うため上京した。祖母を一人にするのは心苦しかったが、住み慣れた地元を離れさせるのは可哀相に思い、私だけ桜花町に来た。
出発の前に、祖母が私に小さな包みを渡した。

「これ、持って行きな」
「何?これ……」
「いいから……。体に気をつけてね」

半ば無理矢理持たされたその包みを、移動中の電車の中で開いてみた。

「あ………」

そこには………
文字盤が割れ、バンドがちぎれ歪んだ、


父が愛用していた
腕時計…………



……私は泣いた。
腕時計を抱きしめて…






…………そして今、

「行ってきます。お父さん、お母さん……」


私は両親の愛情と思い出を心の支えに、沢山の人達に囲まれ生きている。


「もう……泣かないよ。私はもう大丈夫だから………………ありがとう。お父さん、お母さん……」



《Memory》



……だって……
私は一人じゃないから…

皆が支えてくれるから……
これからも
生きて行ける


《END》



Pure rainより、柚希の幼少時代の話を。
なんだかダラダラ纏まらない感じになった。
また書き直すかも………;;
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