お題《ギムレット》より。黒猫のキリーとマルロニ、アンジェラのサンテロット崩壊後の話。ほのぼの。



―貴女の幸せを願う―







サンテロットが壊滅し、一年が経とうとしていた。長い間、兵器に怯えていた街も平穏を取り戻していた。

「いらっしゃい…あらなんだマルロニじゃない」
「おい、なんだとはなんだ!誰だと思ったんだよ」
「キリー」
「キッパリ言うな……っていねぇの?どこ行った?」

ここはバー『ハーフムーン』。いつものように店に入ってきたマルロニに声をかけたのは、バーテンダーのアンジェラ。マルロニの妻でもある。
待ち人ではなく旦那の登場に、残念そうなアンジェラに不満を言うマルロニだが、ふといつもカウンターに座っている黒猫がいないことに気づいた。

「……レミリアさんの所よ。報告に行くって」
「……そうか。あいつ、変わったよな。最初はただおっかねぇ奴だと思ってたけどよ」
「あら、キリーは怖くないわよ!かわいいじゃない」
「………お前の感覚が理解できない……」
「?……へんなマルロニ」

イマイチ納得しきれていないマルロニに、不思議そうな視線を向け、グラスをカウンターに置く。とその時、


―カラン、カラン―


店の扉が開き、長い黒髪の女性が入ってくる。

「キリー!いらっしゃい!!待ってたわ!さ、座って!」
「……俺ん時とえらい違いだな……」
「………ただいま。なんだいたのマルロニ…」
「……なんだよ!お前まで!」

喚いているマルロニをガン無視し、キリーはカウンターのいつもの椅子に腰掛ける。

「……どうだった?元気だったか?」
「……死んだ人間に元気も何もないでしょう…」
「元気だったみてぇだな!」
「………まあね……」

素っ気ない口調だが、キリーはいつも通りのマルロニの言葉が嬉しかった。

「……私、サリアに会えて良かった。ありがとうマルロニ」
「ははっ……すっげー苦労したけどな。そう言って貰えると調べた甲斐があったな」

少し照れ臭くなったマルロニは、頭を掻きながらグラスを煽る。キリーはそれを横目で見ながら少し笑う。静かな時間が流れていく。暫くしてグラスを空けたマルロニは、んーと伸びをし席を立った。

「さて、俺は仕事に戻るぜ。キリー、またな」
「………ええ、また」

マルロニはキリーの頭をワシワシと撫でると、店を出て行った。少しボサボサになった髪を手櫛で整えていると、アンジェラがトレーにグラスを乗せてやってきた。

「あら?マルロニ帰ったの?」
「……ええ。一杯で帰るなんて以外だったわ」
「ふふ…気を遣ったのよ、きっと」
「??」
「一人で想い更けたいんじゃない?キリー」
「…………ふふ…そう言う気回しはいいのに」
「さて、今日はお客も来なさそうだし、もう店を閉めるわね。キリー、ゆっくりしていって」

アンジェラはそう言うと、グラスをカウンターに置き、看板を下げるために外に出て行った。
アンジェラの後ろ姿を見送ったキリーは、目の前に置かれたグラスを見る。

「……ギムレット……ふふ、ありがとうアンジェラ、マルロニ……」

二人の何気ない優しさを感じ、キリーは微笑みを浮かべ、グラスを傾けた。




もう戻れない
もう取り戻せない
長い別れを嘆くより……



今はただ、
もう手の届かない
遠い彼女の
幸せを願いたいの…




【お題提供】秋桜
《ギムレット》より
カクテル言葉…遠い人を思う、長い間の別れ


今回はSILENT~よりキリー、マルロニ、アンジェラで書いてみました。
ほのぼのを目指したつもりです。
文才ほしいです…;

では、お目汚し失礼しました。
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