お題《クロッカス》より。悪夢のエイプリルとジューンの話。甘ほのぼの。



―不安、淋しい…そんな時……―










今宵は満月。普段より少し明るい夜空の下で、オレンジがヒラヒラと舞った。
シルクハットを被り、タキシードを模した服に見を包んだ、明るいオレンジ色の髪にオレンジと金のオッドアイを持つ少女、エイプリルは一人屋根の上でぼんやり座っていた。

「はあ……ジューン大丈夫かなあ…」

エイプリルと同じ夢魔で、最愛の恋人でもあるジューン。いつも一緒に行動する二人が、今日は違っていた。




遡ること、数時間前……


「ジューン、今回は貴方にお願いしたいのです。」

夢魔の頭領である霜月の直々のご指名。最初は眉間にシワを寄せ断っていたジューンだが、傍で聞いていたリープに諭され渋々了承したのだ。……その理由は

「この女性の悪夢を創りだし、誘い出してほしいのです」
「何故俺が?他の者にも出来るでしょう?」
「……駄目でしょうか」
「……正直、やりたくないです」
「………ジューン、やりなさい。貴方にしか出来ないのよ。だから霜月様が来たんじゃない。ね?」
「リープ……でも……エイプリルが…」
「エイプリルには私から話して置くわ。行ってきなさい」
「…………分かった。心してお受けします」
「ありがとうございます。では良い知らせを心待ちにしております」



…というやり取りがあり、ジューンが単独でターゲットと接触し、誘い出す……ファーストコンタクトという大役を担う事になったのだ。

「私も行きたかったなあ…………でも、失敗しちゃったらジューンが怒られちゃうし」

エイプリルは天性のおっちょこちょいのため、霜月やリープからファーストコンタクトをすることを止められている。失敗してしまうとすべてが台なし。それくらい重大な仕事なのだ。
でも、エイプリルが心配しているのは、仕事だけではなかった。

「ジューン……浮気しないよね……ジューンがいなくなったら私………いやだよ」

ジューンはかなりのイケメン。大抵の女性は一目惚れしてしまう。いつも、愛してると言ってくれる彼。でも世の中には自分より綺麗で可愛い女性は沢山いる。いつ振られてしまうか…。不安で仕方ないのだ。

「……ジューン…………早く帰って来て……」

心細い声で呟いたその瞬間。

―ふわり―

エイプリルの体が暖かいものに包まれた。一瞬驚くが、夜風に乗って大好きな人の香りを感じ頬を染め振り返る。

「ジューン!!」
「ただいま、エイプリル」

優しく強く抱きしめ合い、エイプリルはうっとりと目を閉じ、彼の香りを胸一杯にかぐ。ジューンもエイプリルの髪に顔を埋める。

「ありがとう、帰ってきてくれて…」
「ふふ……俺が帰る場所はエイプリルだけだからな…だから、不安にならなくていい」
「っ、うん!!大好き!ジューン!!」
「俺も、愛してる」



俺には君しかいないから


俺を信じて
待っていてくれる君は、
まるで春を待ちつづける
俺だけの健気な

クロッカス




もし離れてしまっても
貴方が安心して帰ってこれる
場所になって
待ってるから……

だって…
このぬくもりも…
この愛しさも…
この幸せも…
全部貴方のものだから




【お題提供】秋桜
《クロッカス》より
花言葉…あなたを待っています。


今回は悪夢へ~よりエイプリルとジューンの話しを!ラブラブを目指したつもりがなんだか微妙な感じに。ではお目汚し失礼しました。
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