もう終わってしまいましたが、書いてみました。我が家の夢魔たちは甘党が多いです(笑)【悪夢へいらっしゃい…】より。


Trick or treat!!



ある穏やかな昼下がり……。

少し大きめなシルクハットのツバを持ち上げ、広場の時計台から町の様子を観察している少年、オクト。
彼はよくこうして、人の世界を観察している。

「今日はやけに賑やかだなあ……。ん?なにあれ」

オクトは時計台からフワリと降り立つ。
普通なら大騒ぎだが、彼は夢魔。現実世界の人には見えない。行き交う人の波をすり抜け、噴水に設置された出店の前に立つ。

「………カボチャ?」

首を傾げるオクトの目の前には、顔をくり抜かれたカボチャが積み重ねられていた。

大小さまざまな大きさ、形をしていてくり抜いてある顔も僅かに違っている…ように見える。

「変なの…」

しゃがみ込み、まじまじと見ていたオクトがぽそりと呟いたとき、

―トントン―

ふいに肩を叩かれた。

「!!」

オクトが慌てて振り向くと、彼の大好きなグリーン。

「オクト!!何してるの?」

「マーチ!!」

グリーンのリボンが付いたシルクハットと、お団子ヘアーが特徴的な少女が、にこやかに笑みを浮かべていた。

「あ、…………う、うん。えと…………か、カボチャ…」

「?カボチャ??」

ようやく『カボチャ』という単語が出てきた。
普段は饒舌なオクトも、やはり思春期の男の子、大好きな女の子を前にすると上手く話せない。
最初は不思議そうな表情をしていたマーチだが、そんな彼の少ない言葉で、すべて理解したのか、マーチは優しく笑い、

「ジャックランタンだよ、そのカボチャ」

と言った。

「ジャック……ランタン?」
今度はオクトが不思議そうな顔をした。マーチは彼の横を通り、積み上げられた顔付きカボチャの一つを抱え、うんと頷く。

「今日は『ハロウィン』ていうお祭りなの!お化けに変身して、『Trick or treat!!』て言いながらお菓子を貰いにいくのよ!!知ってる?」

オクトはフルフルと首を振る。マーチは少し考えた後、とびきりの笑顔で言った。

「私たちも『ハロウィン』やろ!」


――――
―――
――


「マ、マーチ…」

「ん?何?」

「ほ、本当にこんな格好するの?」

「うん!似合ってるよ!格好いい!!」

「!!/////あ、ありがと。マ、マーチも可愛いよ……」

「ふふふ、ありがとう!!」

夢幻界にある夢魔たちの屋敷。その一室に二人はいた。
黒いマントを身につけ、キバをつけた吸血鬼の格好をしたオクト。一方のマーチは黒いワンピースに尖んがり帽子を被った魔女に変身していた。
お互いの身支度が済むと、マーチは円柱型の箱を抱える。

「さ、行きましょ!」

「うん」

「まずは………誰にしようかな…」

「エイプリルは?何か持ってそうな気がする」

「そうね!じゃ、しゅっぱーつ!!」


二人は張り切って部屋を出ていった。



―――――
―――
――


「あ!エイプリル~!!」

「ジューンも一緒みたいだよ!!」

二人が中庭に行くと、エイプリルとジューンがティータイムを楽しんでいた。

「あれ?マーチにオクト。どうしたのその格好(笑)」

「何か用か?」

二人が尋ねると、マーチとオクトは笑い合い、

『Trick or treat!!』

と箱を差し出した。

「??」

「………」

頭に?を浮かべているエイプリルとジューンに、マーチがニコニコしながら言った。

「今日はハロウィンなのよ!お菓子くれないといたずらしちゃうぞ~」

「ハロウィン?お菓子?いたずら?」

「また、お前たちはどこでそんな知識を仕入れてきたんだ(笑)」

「人間界だよ。いいから!早くお菓子頂戴!!」

今だにちんぷんかんぷんなエイプリルと呆れ気味に笑うジューンに、オクトが催促する。

「お菓子かあ…!そうだ。これあげる」

エイプリルはテーブルにあった握りこぶし大のスコーンを二つ、紙ナプキンで包み箱に入れた。

「わあい!!エイプリルありがとう!!」

「どういたしまして!!」

「ジューンは?」

エイプリルからお菓子を手に入れた二人は、ジューンに期待の眼差しを向ける。

「……;分かった分かった。…これでいいか?」

ジューンは自分の前にあった星型のクッキーを5、6枚包み、箱に入れた。


「わあい!ジューンありがとう!」

「マーチ!次行こう!」

「うん!じゃあね!!」

「……ああ行っちゃった」

「全く……嵐みたいな奴らだな(笑)」

困ったように笑いながらも、パタパタと走り去る二人を微笑ましく見つめる二人だった。


――――
―――
――

「次は…と、あれ?」

エイプリル達からお菓子が貰えた二人は、ホクホクしながら屋敷の中を歩き回っていた。
すると、ふと、マーチが前方に知った顔を発見する。
「葉月!長月!」

「あ、マーチ!!」

「おぉ!久しいのぅ!!」

白銀の髪をツインテに結い、丈の短い着物を着た少女、葉月。
そして葉月の隣にいた、巫女の服を模した服に深緑色の長いお下げの少女、長月。
じつはこの二人はマーチと大の仲良しである。普段は霜月の屋敷にいるが、今日はお使いに来ているようだった。

「久しぶり!元気だった?」

「ん!まあね。……ところでなんでそんな格好してんの?」

葉月は大きな猫目をクリクリさせて首を傾げる。マーチはニッコリ笑い、

「うん!今日はハロウィンなのよ!だから仮装してお菓子を貰いに行くの!」

ほらっと手に入れたお菓子を二人に見せて言った。

「ハロウィン?」

「なんなのじゃ?はろいんとは」

興味津々な二人に、マーチはわかりやすく説明した。

「おぉ!面白そうじゃ!!わらわもやりたい!!」

「あたしも~!!」

目を輝かせる二人に、マーチはオクトに振り返る。

「ねぇ、二人も入れてあげてもいいかな?」

上目遣い……オクトに断れるはずかなかった。

「え…?う、うん!もちろんだよ」

「わあい!ありがとうオクト!大好き!!」

「!!……ぼ、僕もマーチの事す、す、す……」

「じゃあ、二人も仮装しようか!!何がいいかなあ」

「何があるの?」

「なんだかワクワクするのぅ!!」

「…………はあ;;」


一世一代の告白を流され、おおいに盛り上がる三人娘にオクトはため息をついた。


――――
―――
――


「なかなかいいじゃない!!どう?」

「可愛い!!似合ってるよ葉月!!……わあ!!長月も可愛いよ!!」

「そ、そうかの?なんだか恥ずかしいのぅ……/////」

キャッキャッとはしゃいでいる三人娘を眺めるオクト。
葉月は赤いワンピースに猫耳にしっぽを付けた猫娘、長月は頭にボルトの飾りを付け、だぼだぼのシャツを着たフランケンシュタイン。なかなか似合っているし、可愛い。

「……!は!僕にはマーチが!!いやでも……ダメダメ!!」

「………オクト?どうしたの?」

「え?!…あ、/////いやなんでもない………;」

「変なオクト(笑)」

「は、ははははは/////」

オクトは笑ってごまかしながら、葉月と長月を見遣ると、

…二人はニヤニヤしていた。

「ありゃあ、お邪魔だったかなあ?」

「すまないのぅ…ふふふ」

「な、なに言ってるんだよ!!ほ、ほら行くぞ!」

オクトは真っ赤になりながら、ずんずん歩いて行った。

「あ、待って!!オクト!!……どうしたのかな?」

首を傾げるマーチに葉月はクスクス笑いながら肩を叩く。

「全く、マーチは小悪魔だよねぇνν」

「必死なオクトが可愛いのぅνν」

「??」

未だに分からないマーチ。二人の言葉の意味がわかるのは、一体いつになる事か。



―――――
―――
――


仮装した四人が屋敷の敷地内を歩き回っていると、ピンク色が目に入った。

「あ!一人発見!メイ~!!」

「え?…あ!マーチにオクト!!…あら?葉月と長月も一緒なのね」

他人に無関心なメイだが、マーチやオクトを始め、小さい子には優しいため、ちびっ子たちの人気者なのだ。

「せーの…『Trick or treat!!』」

「へ?Trick or treat?…ああ、ハロウィンね。道理で可愛い格好してるなあって思った」

メイにはすぐに通じたらしく、ニコニコと四人を見つめる。

「お菓子くれないと、いたずらしちゃうぞ!!メイ!」

「いたずらするのじゃ!」

葉月と長月がメイに箱を差し出す。

「あらら……それは困るわね(笑)……お菓子お菓子………あ、これはどうかしら」

メイは空中を掴む仕種を見せ、四人の前で手を広げる。そこには、沢山の様々な形のチョコレート。メイはそれを箱に入れた。

「わあ!いいの?こんなに!」

「嬉しいのぅ!ありがとうなのじゃ!メイ!!」

「ふふふ…いいのいいの(笑)仲良く食べるのよ。じゃあね!」


メイはヒラヒラ手を振ると、笑って去っていった。

「よおし、他の人の所にも行こう!誰がいるかな?」

「あ、そういえば、如月さまと文月を屋敷の縁側でみたよ!まだいるんじゃないかな」

「行ってみようよ、マーチ」

「うん!オクト。行こう行こう!」


四人は霜月の屋敷に向かった。


―――――
――――
―――


「ふぅ…静かだな」

「そうですね」

夢魔たちの屋敷の別邸、霜月の屋敷の縁側で、二人の女性がお茶を啜っていた。赤茶色の長い髪を緩く縛り、鉢巻きに着物を模した丈の短い服に甲冑…夢魔最強の武人、如月。
対して、碧い髪を左側にお団子にし、緑を基調とした服に同じく甲冑を身につけた女性……如月の直属の部下であり、鍛練仲間の文月。
いつも、武器から手を離さない二人がなぜこんなところでお茶をしているかというと……


「たまにはこうしてのんびりするのもいいものですね。霜月さま」

「最近、鍛練ばかりでしたからね」


恐ろしく長い、鮮やかな金髪に黄色と黒を基調としたワンピースを身につけた凜とした少女……睦月と、白い肌に白銀の髪に白い着物を見に纏ったおしとやかな女性…霜月。


……この二人にお呼ばれしたからだった。


「そういえば…」

ふいに文月が話を切り出した。

「先ほど、エイプリルに会ったとき、『おチビたちが行くかもしれないから、お菓子用意しておいてね』と言われまして」

「…お菓子?」

訝しげな顔をする如月。睦月や霜月も不思議そうな顔をする。

「おチビ……もしや葉月たちか?全く……仕方のない…」

「あらまあ…」

呆れる睦月とやれやれと笑う霜月。葉月の悪戯好きはよく知っている二人だけに、驚きはなく『またか』といった感じなのだろう。

「…で?文月は菓子を用意したのか?」

如月が、持っていた湯呑みを置き腕を組んだ。
文月ははいと返事をすると、手元にある巾着を掲げた。

「急だったので、大したものはなかったのですけど」

「ふーん…」

文月の手元を一瞥した如月が、口元に手を当て考えるようなそぶりをしたその時、


『Trick or treat!!』


件の少女が如月の背後から飛び出した。

「うわっ!!」

如月はぎょっとし、声をあげ振り返る。向かい合っていた文月や側にいた霜月と睦月は、目をまんまるくして傍観している。

「お菓子くれなきゃ悪戯しちゃうよ!!如月!!」

「お前……背後から来るとはいい度胸だな……葉月(怒)それになんだその面妖な格好は…ん?マーチにオクト、長月までいるのか」

「如月さま!お菓子ください!!」

「ください!!」

「くださいなのじゃ!!」

三人に詰め寄られ、たじたじな如月を見て、文月が包みを持ち四人に近寄る。

「皆さん、これ……私たち四人からです。どうぞ」

文月の言葉に、おチビ四人は顔がパアっとなる。

「さすが文月なのじゃ!!」

「わあい!!開けていい?」

文月がコクリと頷くと、葉月は包みを丁寧に解く。

「わあ!お星さまがいっぱい!!」

「綺麗だね!!」

おチビ四人組はキャッキャッとはしゃぐ。その様子を見た如月たちは思わず頬が緩む。

「こんぺいとうですね。砂糖菓子ですよ」

と霜月。

「食べ過ぎてはダメだぞ」

と睦月。その言葉に文月は笑みを浮かべ、睦月を見る。

「なんだか睦月、お母さんみたいですね(笑)」

「な、なにを!!文月、私はべ、べつに…」

「普段のお前からは想像つかんな」

「如月さままで……」

「あら、仲間を思いやるのは決して悪いことではありませんよ(笑)」

「霜月さま!!……/////はあ……」


四人が騒いでいる様を、おチビたちはキョトンと見ていた。


――――――
――――
――

「次は………と、ここかな?お邪魔しま~す!!」

葉月とマーチが襖を開けると、綺麗に結い上げられた艶やかな漆黒の髪に、遊女のような出で立ちをした女性が、キセルをふかしていた。

「あら…可愛らしい格好したお客様ね。何かご用かしら?」

「師走!『Trick or treat!!』なのじゃ!」

「…は?」

不思議そうな視線を投げかける、女性…師走。夢魔の中でもかなりの実力者で、霜月と同等に扱われている人物だ。
おチビ四人組は、そんな師走ににこやかに箱を差し出す。

「お菓子くれないと悪戯しちゃうぞ!!」

「お菓子が欲しいのじゃ!!師走!!」

「お菓子ください!!師走さま!」

「お菓子ちょうだい!!」

四人の迫力に圧倒されたのか、師走が少し引いた。

「………お菓子?」

やっとそれだけ呟くと、葉月がズイッと箱を差し出し、笑顔で頷く。

「うん!!お菓子ちょうだい!」

期待を込めた目で見られてしまうと、さすがの師走も折れるしかない。
やれやれと立ち上がると、漆塗りの小さな箪笥から、何かを取り出し、四人の元に戻ってきた。

「お菓子と言ってもね……これしかないわよ?」

と、差し出されたのは和紙に乗せられた桜餅。

「桜餅だ!!ありがとう師走!!」

「おぉ!わらわの大好物じゃ!!ありがとうなのじゃ!!」

嬉しそうな葉月と長月を見て、マーチとオクトは二人に疑問をぶつける。

「サクラモチって?」

「お菓子?」

そんな二人に、葉月と長月はキラキラした目で言う。

「うん!立派なお菓子だよ!ほんのり桜の香りがして、少ししょっぱくて………あんこが入ってて美味しいの!」

「緑茶や抹茶と食べると絶品じゃ!!」

興奮気味に力説する二人に、サクラモチとはとても美味しいものなのだと理解した二人は、

「ありがとう!師走さま!!」

「ありがとう!!」

とびきりの笑顔でお礼を言った。それを見た師走はクスリと笑う。

「可愛いこと……こんなもので良ければ持って行きなさい」

四人はその後、しばらく師走の部屋でお茶を飲ませて貰い、再び、お菓子を求め出発した。

―――――
―――


「さあて、これで最後よ!!」

「せえの!!『Trick or treat!!』」

別邸から再び屋敷にやってきた四人。最後の人物にお菓子を貰うため、ある一室に掛け声とともに入る。しかし………

「……あれ?いない?」

そこに部屋の主はいなかった。


「どこ行ったんだろ、リープ」

「出かけたのかな」

「ねぇ、これリープからじゃない?」

マーチとオクトがガッカリしていると、葉月がテーブルの上のメモを見つけた。
「なんて書いてあるのじゃ?」

長月が横から覗き込む。葉月は、ん~と唸った後、



「キッチンにおいでって」



――――――――
――――――
――――

四人は言われるがまま、キッチンの前まで来た。

「ここにリープが?」

「なんでキッチンなんだろ?」

マーチとオクトが顔を見合わせていると、フワリと甘い匂いが漂ってきた。

「ん~!いい匂い!!」

「お菓子の匂いなのじゃ!!」

葉月と長月がうっとりしながらクンクンしている姿を見て、マーチはピンと来た。

「入ってみよう!!」

「マーチ?」

「そだね。手紙にもあったし!!」

「入ろう!入ろう!」

「葉月と長月まで……分かったよ。入ってみよう」

四人はキッチンの扉を開けた。


『Trick or treat!!』

「あら、グッドタイミングね。いらっしゃい、おチビちゃんたち」


床まで付くほどの長い紫の髪にパープルを基調とした服、そして色っぽい泣きぼくろ…リープ。マーチ、オクトたちのリーダー又はお母さん的な存在だ。

リープは四人を見ると、優しく微笑み手招きすると、テーブルにつくように促す。

四人がテーブルに着くと、リープはオーブンから何かを取り出して来た。

「Trick or treat!!でしょ?これは私からのお菓子よ」

と差し出されたのは、

お化けカボチャの形をしたパンプキンケーキ。


「わあ………可愛いケーキ!!」

「美味しそう!!」

「リープってスゴイね!!」

「さっきの匂いはこれだったんじゃな!!食べるのが勿体ないくらい可愛いのじゃ!!」

四人の嬉しそうな顔に、リープはホッとしたような顔をし、暖かいココアを出す。


「さあ、どうぞ。沢山召し上がれ」


その日の屋敷は一日中賑やかで、甘い香りが漂っていた。


END
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。

コメントフォーム

以下のフォームからコメントを投稿してください