ツキノセカイからミィとブライアスの話。甘甘(?)を目指しましたが撃沈しました。



「ブライアス…私の事どう思ってる?」




答えはもう出てる。
あとは俺の勇気とあいつの気持ち。



《君の笑顔の為に出来る事》




生きとし生けるものすべてが寝静まる深夜。
軽い足取りで屋根から屋根へ飛び移る影。


陶器のように白い肌に深い赤紫の瞳。短く切り揃えられた金髪は星の僅かな光でキラキラ光っている。
細身で長身な体には白いシャツに赤いズボン。手には茶色の紙袋を大切そうに抱えている。


「今夜は新月か…静かだなあ」

青年…ブライアスは雲一つない空を仰ぎ呟く。

別に月が出ていようといまいと、夢魔であるブライアスにとって夜は活動時間だ。そして、それは彼にとって特別な時間でもある。


「ミィ、元気にしてるかな」

ブライアスは愛おしむような顔で笑う。


ミィは、夢の世界『夢幻界』に住む少女である。
彼女は大きな役目を担い、日々を過ごしている。

ブライアスはミィに特別な感情を抱いており、彼女の頼みや仕事の手伝いなど、ひたすら尽くしている。
そんなブライアスをミィは心から信頼し、好意を寄せている。

つまり、両思いなのだ。


ただ、夢幻界の門番であるミィはその世界を離れる事は難しい。
そこで、ブライアスがミィの元へ通うようになったのだ。


鼻歌混じりに歩きながら、手に抱えていた袋を掲げ笑う。


「今行くから。待っててよ!」


そう言うと、ブライアスは闇の中に溶けるように消えていった。


――
―――

《夢幻界入口》


普段は暗闇に包まれ、音一つしない世界。
しかし、人が眠り始めるとその世界は様々に変化し、『夢』を見る者を受け入れる。



夢幻界の門の傍らに、二人の人影。

一人は少女、一人は成熟した女性。
少女はミィ。そう、ブライアスの想い人である。
ツギハギだらけの体にタンクトップ、ショートパンツとロングブーツ。
特に目を引くのはオレンジの髪色と深い藍色の目、頭に刺さった大きなボルト。
ぱっと見、フランケンである。

もう一人は漆黒のトレンチコートに首から鎖を下げ、豊満な肉体を惜しまずさらけ出すような大胆な服装。煌めくブロンドは上の方に纏め上ている。
紫の目は猫のように光り、肌は、透けるように白い。名前はティナ。

二人は夢幻界の住人であり、門番である。
違法を取り締まり、人が心地よい夢を見られるように監視する。



さて、話を戻そう。


「ミィ、なくなっちゃった物は、仕方がないでしょ?いつまでもゴネないの」


「だって~………~あ~~ダメだ!!やる気出ない!モチベーションがどん底!口が淋しい……」

「はぁ…年がら年中舐めてればなくなるのも早いわよ……この際だから、控えたら?飴」


そう、ミィは飴が大好物で日がな毎日口に入れている。
昨日の時点で、すでにラスト一本になってしまい、それもついさっき食べてしまった。
ただ、飴ならどれでもいいと言うわけではなく、必ず『棒付きキャンディ』でなければダメなのだ。
理由は………不明。


「い~や~だ~!!私からキャンディ取ったら、ただのフランケンだよ?あいつにも嫌われ……いやいや、なにニヤニヤしてんの?ティナ!」

「ふーん。なるほどね。あのやんちゃ坊主なら心配いらないんじゃない?」

「はあ?なななな、何言ってんの?ブライアスは関係な……」

「私はブライアスなんて言ってないけど?(笑)」


「~~~~~////(怒)」

「ふふ。!……さて、そろそろ見回りに行ってくるわ」


ムキになって言い返すミィを軽くあしらい、前髪をかきあげながら、ミィの横を通り過ぎながら、

「頑張って(微笑)」

と言いながら肩を叩き、去っていった。


「な、なんなのよ……」


訳がわからないミィは、引き止めることも忘れ、ティナの後ろ姿を見送った。



「ミィ!!」

小さくなるティナの背中を見つめていると、背後から声が掛かる。

……そう、愛しい彼の声。

「ブライアス!?どどどどうしたの?」


ミィは、激しく動揺しながら目の前に笑顔で立っている青年に駆け寄る。


「ははっ。どもりすぎ。………逢いたかった」


ブライアスは小柄なミィの体をいたわるように抱きしめる。
突然の事に顔を真っ赤にして固まるミィ。


「ミィは俺に逢いたくなかった?」


ブライアスは少し体を離し、ミィの顔を覗き込む。至近距離で目が合い、ミィは思わず目を逸らす。


「逢いたくない訳ない…/////~~もう!何言わせるのよ!!」


悪態を付きながらも、恥ずかしさで目を潤ませながら、ブライアスにしがみつく。

「そっか。すっげー嬉しい!!」

ブライアスはミィのオレンジ色の髪を撫でる。
そしてふと思い出し、腕に抱えていた紙袋をミィに差し出す。


「プレゼント!」


ミィは不思議そうに紙袋を受け取り、

「何?ん?なんか細かいものが……見てみてもい?」


小首を傾げ、ブライアスを見上げ尋ねる。
ブライアスは、その仕草にきゅんとしながら頷く。


ミィは、紙袋の口を広げ、中を見る。その途端、


「わあああ!!」


ミィは目をキラキラさせて、袋の中身を一つつまみ出す。

それは、


「棒付きキャンディ!!しかもこんなに一杯!」


そう、ブライアスがミィに渡したのは、様々な味の色とりどりの『棒付きキャンディ』。


「ほ、ホントに貰っちゃっていいの?」


それはもう、心底嬉しそうなミィにブライアスは、


「うん。ミィのために持ってきたんだから」

と優しく微笑みながら言う。それを聞いたミィは、顔をほんのり染めながら、


「ありがと…ブライアス。大好き……」

と呟いた。そして、


「あ、のさ。ブライアス……私の事どう思ってる?」


遠慮がちに紡がれた言葉にブライアスは、


「俺も君が……ミィが大好きだ」


と思いを伝える。
それを聞いたミィは、茹でダコのように顔をさらに真っ赤にし俯く。


そんな彼女をみて、ますます愛しさが募り、額にキスをしてまた、抱きしめた。




姿かたちなんて関係ない。俺が大好きな女の子は君一人。君の笑顔の為なら俺は何だってするよ。
だから俺はいつも考えてる


《君の笑顔の為に出来る事》





「ミィ、口開けて!!」


「えっ?////いいよ!自分で……あっ!!」


「はい!あ~んννν」


「ちょ////う゛~……」


「食べたくない?イチゴ味だよ?」


「い、イチゴ!!……あ、あ~ん……//」


「かわいνν」


「////~もうっ!!……バカ」


バカップル誕生(笑)




END
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