聖域に暮らす、シェリルとリアにエイナのお話です。時間が掛かった割には安定のグダクダ感です。※流血表現あり。閲覧注意!自己責任でどうぞ。
「堅いなあ~。ゆる~くいこうよ。ね?」
目の前のお気楽な少女に、思わずため息が洩れた…
聖域の中央。
ナテの丘に鎮座する『時の塔』の近くにある、小さな家。塔の管理を任されている賢者、レジーナの家に一人の女性が訪ねていた。
「あら、シェリル団長じゃありませんか。どうしました?あなたが私の元を訪ねてくるなんて、珍しいですね。」
にこやかに微笑みながら、武装した女性…シェリルを出迎える。
「いえ…少し聞きたい事があって。少し、時間いいかしら?」
堅い表情を崩すことなく、レジーナに伺いをたてるシェリル。
「構いませんよ。丁度、見回りも済んだところですし。立ち話もなんですから、お上がりください」
レジーナは扉を大きく開け、シェリルを中に招いた。
「実は最近、盗賊が暴れてるって報告があったのよ…」
シェリルは、レジーナに薦められたハーブティーに口を付け、ふぅと息を吐いた。
「まあ、盗賊ですか…」
レジーナは少し考えるような仕草をし、シェリルに問いかけた。
「どちらの…ですか?」
そう聞いたのは、理由があった。聖域には盗賊が二種類ある。一つが己の欲を満たすために、主に弱者の物を盗み、危害を加えるもの。もう一つが、良からぬ方法で財産を手にしているものから盗みだし、貧しい者に分け与える…義賊と呼ばれるもの。
その問いに、シェリルは肩を竦め首を振る。
「それがね…盗賊が暴れてるっていう情報しかなくてね。こちらもお手上げ状態よ。…あ、そうだ。確か…」
シェリルは、部下であるリアの話を思い出し、話しはじめた。
「リアが、女の子だったって言ってたわ。まだ十代半ばくらいの。なんでも、凄く身軽で頭がキレる子だったらしいわ。詳しい容姿までは分からないけどね」
そこまで話すと、シェリルは静かにカップを置く。
一方のレジーナは、カップの中を見つめたまま黙っている。そして、
「もしかしたら私、その盗賊の女の子知っているかもしれません」
と呟いた。
――‐
「団長、本気でやり合うつもりですか?」
愛用の武器オーディーンを携え、目撃情報の多い小さな村に向かい黙々と歩くシェリルの背中に、黒髪の青年リアは事もなげに言葉をかける。
「当たり前よ。もし、民に害を及ぼす存在なら、ね」
振り返る事もなく、リアに返すシェリル。一方のリアは金と紅のオッドアイを細め、ヤレヤレと首を振る。
リアは丁度ひと月前、シェリル率いる騎士団に入団した。入ってすぐ頭角を表したリアの実力を見初め、今まで特別な部下は持たなかったシェリルが、初めて自分から申し出て傍らに置いた。以来、彼はシェリルの背中を護り戦っている。
まだ、部下になって日は浅いが、実直なシェリルの性格をリアは殆ど把握していた。
(何を言っても無駄かな…)
そう判断したリアは黙ってシェリルを追った。
―――‐
――‐
―‐
一方、シェリル達が目指している村では、盗賊たちが好き放題暴れていた。
村人から金品や食料奪い、はては女子供に暴力を振るい、逆らう者は容赦なく殺していた。
「も、もう勘弁してください。この村にはもう何もありません。だから…」
村長らしき老人が、必死に訴える。しかし、
「だからなんだ。俺達は満足してねぇよ。…おいそこの女!こっちにこい」
盗賊の頭であろう男は、老人を蹴り飛ばし、村で一番美しい娘に手招きした。
「え…あ、あ…」
言う通りに男のところに行ってしまったら…どうなってしまうかは明確だった。
いつまでたっても来ない娘に苛立った男は、従えていた部下に合図した。すると部下の男は、
「おいアマ!頭をお待たせするんじゃねぇよ」
ツカツカと歩み寄り、娘の腕を…掴もうとした。と、その直後、
「ぎゃああああ」
部下の男は凄まじい悲鳴をあげ、腕を押さえうずくまあった。
男の腕からは夥しい量の血が吹出し、肘から下がなかった。そしてその部位は本人の足元に無造作に転がっていた。
のたうちまわる男の前に、娘を庇うように立ち塞がり、ダガーを構える一人の少女。赤みを帯びたピンクの髪、パッチリとした瞳は光りの加減で色が変わる。さらに目を引くのは抜群のプロポーションに胸元から腹部にかけて大胆にカットされた服。確かに少女なのだが、不敵に微笑むその表情は、成熟した女性の色香を漂わせる。
突然の事にあたりが騒然となる。
「ちょっとおじさん方。おいたが過ぎるんじゃない?」
少女は目の前の男達を見据え、凛とした通る声で窘めるように言い放つ。
「て、てめぇ…何もんだ!!俺達の邪魔しようってのか?」
頭の男が立ち上がり、怒鳴る。一方、少女の方は臆する事なく鼻で笑い、
「アタシ?アタシはエイナ。盗賊は盗賊だけど義賊ってとこかしらね」
「エイナ?義賊?…ま、まさか……あの盗賊狩りの……」
エイナという名前を聞いた途端、頭の男は青ざめる。そう、少女…エイナは盗賊でありながら盗賊を狩り、村人など弱い者から取り上げた金品、食料などを取り戻したり、違法に荒稼ぎしている輩から盗み出し、貧しい者たちに分け与える…義賊だったのだ。
うろたえる男達をキッと睨み、エイナは不機嫌そうに口を尖らせる。
「あんた達みたいのがいるから、私の立場が悪くなるんじゃない!!おかげさまで、騎士団に賞金賭けられちゃったわよ!どーしてくれんのよ!!」
「んなこと知るか!おい、お前ら!やっちまえ!!」
頭の男は部下達に怒鳴る。
対してエイナは、飄々としている。
「はあぁ…。あんたらっていつも同じ事しか言わないんだから。いいわ!!まとめてかかってくれば?相手してあげる!!…とその前に」
後ろを振り返り、娘を見る。目線を合わせしゃがみ込み、優しく言った。
「さ、危ないから一旦村を出て。巻き添え食っちゃうといけないからね」
娘は最初は不安そうだったが、エイナの笑顔を見てホッとしたような表情を浮かべ、ニコリと笑い頭を下げると、村長たちの方に駆けて行った。
村人たちが、全員村から避難した事を確認すると、エイナがダガーを構え男達に向き直り、
「さ、始めよっか!!」
と満面の笑みを浮かべた。
数時間後、村に到着したシェリルとリアは唖然とした。
辺りには無残に叩きのめされた男達が、縄で縛られ芋虫のように転がされている。その風貌から、おそらく『暴れている盗賊』というのが彼らなのだろう。でもそれでは、リアの情報と食い違う。疑問を抱え、シェリルとリアは周りを警戒しつつゆっくり歩き出す。
「一体誰がやったんでしょうね、団長」
転がっている男達をひっくり返しながらリアがシェリルに声を掛ける。
「ねぇ、リア。あなたが持ってきた情報では、『女の子』だったわよね…」
「えぇ、確かそうですよ。でもこれ、どう見ても男ですよね」
「一体どういうこと……!!」
ふと背後に気配を感じたシェリルは、バッと振り返る。視線の先には大きな木がある。先ほどの気配はどうやらそこからだった。誰かいる…そう直感したシェリルは、その木に近づく。
「そこに居るのは分かってるのよ。出てきなさい!!」
「団長?」
木の上に向かい、怒鳴るシェリルに、リアが近づいたその時、
「ありゃ、バレちゃった?」
明るい少女の声がし、大きく張り出した枝に、一人の少女が現れる。
「誰かと思えば、騎士団の方々。遅いですよ!もう片付いちゃったし」
といたずらっぽく笑う。シェリルの横にいたリアが、あっと声を上げる。
「君は確か賞金首の……エイナ!だったっけ…。てか俺達の前に姿見せて良かったわけ?捕まえちまうぞ」
「もう!せっかく悪党を成敗してあげたのにさ!酷くない?大体あたしは、賞金かけられる様なことしてないし!失礼しちゃう(怒)」
リアの賞金首発言にご立腹のエイナは、ぷぅと頬を膨らませ自分の潔白を主張する。そのやり取りを黙って見ていたシェリルは眉間にシワを寄せ、
「賞金?かけられてるの?私、初耳なんだけど…」
と、ボソリと呟いた。それを聞いたリアとエイナは、え?とお互いを見つめる。するとシェリルは、
「あなた、義賊なんでしょ?ただの盗賊ならばかけられても当然だけど、義賊がかけられるのは異例だわ。間違いなくこちらの手違いの可能性が高い。今のところ、民からのあなたについての悪い噂は聞かないし……騎士団の団長として謝罪するわ。ごめんなさい」
と、頭を下げる。一方のエイナは、こんなあっさり信じて貰えるとは思っていなかったのか、目を丸くし口をパクパクさせる。リアは不思議そうにシェリルを眺め問う。
「どういうことです?」
「…彼女はね、元々レジーナの所で保護されていたのよ。出世は殆ど謎。時の塔の前で倒れていたって…。しばらく一緒に暮らしてたらしいけど、レジーナに何も告げずに姿を消した……。そうよね、エイナ」
そこまで言うと、シェリルは彼女に視線を合わせる。エイナは決まり悪そうな顔をすると、はあ…とため息を吐いた。
「レジーナから聞いたの?てか、どこまで知ってるの?団長さん…」
「そこまでよ。それ以上は知らないわ。それとレジーナから伝言よ。『自分の信じる道を真っ直ぐ歩いて生きなさい』…一度くらい顔を見せろとも言ってたわね」
「…分かったわよ。気が向いたらね」
「気が向いたらって……行かないって言っているのと同じじゃない。行きなさい、必ず」
「だから、行かないなんて言ってないってば!!気が向いたら行くわよ!!」
「それじゃ駄目よ。行きなさい!」
「だから行かないなんて言ってないってば!!」
と、こんなやり取りを続ける二人。そんな光景を呆れた顔で眺めるリア。暫くして折れたのはエイナだった。
「もう、分かった分かった。なるべく早く顔だすから。これでいいでしょ?」
「最初から素直に聞きなさい、全く」
「……団長、オカンみたいですよ…いだっ」
「リア?何か言ったかしら…?」
「いや、あの……なんでもないです、はい」
「まったく、今時の若者は!」
シェリルは首を横に振りながら、呆れたように零す。その光景を見ていたエイナは、ふふっと笑って木から飛び降り、シェリル達の前まで行く。そして、ニッコリ笑い、
「堅いなあ~、もっとゆる~くいこうよ、ね?」
とシェリルの顔を覗き込む。目の前のお気楽な少女に、シェリルは思わずため息を付いた。
盗賊少女は自由を愛し、女騎士は平和を愛す。互いに価値観や大切なものは違くとも、『護りたい』という気持ちはきっと同じ…
「ちょ、ちょっと。どこまで付いて来る気?」
「あなたが本当にレジーナの所に行くまで」
「はあ?だから、行くって言ってるじゃない!!ちょっと!部下さん!なんとかしてよ!」
「え~…無理!」
「だぁ~!!なーにが無理!!よ!!役立たず!!」
「へん!役立たずで結構だよ!!もう俺し~らない!」
「は、薄情者がぁ!!(泣)」
「……ほら、漫才はいいから早く行きなさい」
「「漫才じゃないから!!」」
なんだかんだ今日も平和です。
《END》
「堅いなあ~。ゆる~くいこうよ。ね?」
目の前のお気楽な少女に、思わずため息が洩れた…
《女騎士と盗賊少女》
聖域の中央。
ナテの丘に鎮座する『時の塔』の近くにある、小さな家。塔の管理を任されている賢者、レジーナの家に一人の女性が訪ねていた。
「あら、シェリル団長じゃありませんか。どうしました?あなたが私の元を訪ねてくるなんて、珍しいですね。」
にこやかに微笑みながら、武装した女性…シェリルを出迎える。
「いえ…少し聞きたい事があって。少し、時間いいかしら?」
堅い表情を崩すことなく、レジーナに伺いをたてるシェリル。
「構いませんよ。丁度、見回りも済んだところですし。立ち話もなんですから、お上がりください」
レジーナは扉を大きく開け、シェリルを中に招いた。
◆
「実は最近、盗賊が暴れてるって報告があったのよ…」
シェリルは、レジーナに薦められたハーブティーに口を付け、ふぅと息を吐いた。
「まあ、盗賊ですか…」
レジーナは少し考えるような仕草をし、シェリルに問いかけた。
「どちらの…ですか?」
そう聞いたのは、理由があった。聖域には盗賊が二種類ある。一つが己の欲を満たすために、主に弱者の物を盗み、危害を加えるもの。もう一つが、良からぬ方法で財産を手にしているものから盗みだし、貧しい者に分け与える…義賊と呼ばれるもの。
その問いに、シェリルは肩を竦め首を振る。
「それがね…盗賊が暴れてるっていう情報しかなくてね。こちらもお手上げ状態よ。…あ、そうだ。確か…」
シェリルは、部下であるリアの話を思い出し、話しはじめた。
「リアが、女の子だったって言ってたわ。まだ十代半ばくらいの。なんでも、凄く身軽で頭がキレる子だったらしいわ。詳しい容姿までは分からないけどね」
そこまで話すと、シェリルは静かにカップを置く。
一方のレジーナは、カップの中を見つめたまま黙っている。そして、
「もしかしたら私、その盗賊の女の子知っているかもしれません」
と呟いた。
――‐
「団長、本気でやり合うつもりですか?」
愛用の武器オーディーンを携え、目撃情報の多い小さな村に向かい黙々と歩くシェリルの背中に、黒髪の青年リアは事もなげに言葉をかける。
「当たり前よ。もし、民に害を及ぼす存在なら、ね」
振り返る事もなく、リアに返すシェリル。一方のリアは金と紅のオッドアイを細め、ヤレヤレと首を振る。
リアは丁度ひと月前、シェリル率いる騎士団に入団した。入ってすぐ頭角を表したリアの実力を見初め、今まで特別な部下は持たなかったシェリルが、初めて自分から申し出て傍らに置いた。以来、彼はシェリルの背中を護り戦っている。
まだ、部下になって日は浅いが、実直なシェリルの性格をリアは殆ど把握していた。
(何を言っても無駄かな…)
そう判断したリアは黙ってシェリルを追った。
―――‐
――‐
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一方、シェリル達が目指している村では、盗賊たちが好き放題暴れていた。
村人から金品や食料奪い、はては女子供に暴力を振るい、逆らう者は容赦なく殺していた。
「も、もう勘弁してください。この村にはもう何もありません。だから…」
村長らしき老人が、必死に訴える。しかし、
「だからなんだ。俺達は満足してねぇよ。…おいそこの女!こっちにこい」
盗賊の頭であろう男は、老人を蹴り飛ばし、村で一番美しい娘に手招きした。
「え…あ、あ…」
言う通りに男のところに行ってしまったら…どうなってしまうかは明確だった。
いつまでたっても来ない娘に苛立った男は、従えていた部下に合図した。すると部下の男は、
「おいアマ!頭をお待たせするんじゃねぇよ」
ツカツカと歩み寄り、娘の腕を…掴もうとした。と、その直後、
「ぎゃああああ」
部下の男は凄まじい悲鳴をあげ、腕を押さえうずくまあった。
男の腕からは夥しい量の血が吹出し、肘から下がなかった。そしてその部位は本人の足元に無造作に転がっていた。
のたうちまわる男の前に、娘を庇うように立ち塞がり、ダガーを構える一人の少女。赤みを帯びたピンクの髪、パッチリとした瞳は光りの加減で色が変わる。さらに目を引くのは抜群のプロポーションに胸元から腹部にかけて大胆にカットされた服。確かに少女なのだが、不敵に微笑むその表情は、成熟した女性の色香を漂わせる。
突然の事にあたりが騒然となる。
「ちょっとおじさん方。おいたが過ぎるんじゃない?」
少女は目の前の男達を見据え、凛とした通る声で窘めるように言い放つ。
「て、てめぇ…何もんだ!!俺達の邪魔しようってのか?」
頭の男が立ち上がり、怒鳴る。一方、少女の方は臆する事なく鼻で笑い、
「アタシ?アタシはエイナ。盗賊は盗賊だけど義賊ってとこかしらね」
「エイナ?義賊?…ま、まさか……あの盗賊狩りの……」
エイナという名前を聞いた途端、頭の男は青ざめる。そう、少女…エイナは盗賊でありながら盗賊を狩り、村人など弱い者から取り上げた金品、食料などを取り戻したり、違法に荒稼ぎしている輩から盗み出し、貧しい者たちに分け与える…義賊だったのだ。
うろたえる男達をキッと睨み、エイナは不機嫌そうに口を尖らせる。
「あんた達みたいのがいるから、私の立場が悪くなるんじゃない!!おかげさまで、騎士団に賞金賭けられちゃったわよ!どーしてくれんのよ!!」
「んなこと知るか!おい、お前ら!やっちまえ!!」
頭の男は部下達に怒鳴る。
対してエイナは、飄々としている。
「はあぁ…。あんたらっていつも同じ事しか言わないんだから。いいわ!!まとめてかかってくれば?相手してあげる!!…とその前に」
後ろを振り返り、娘を見る。目線を合わせしゃがみ込み、優しく言った。
「さ、危ないから一旦村を出て。巻き添え食っちゃうといけないからね」
娘は最初は不安そうだったが、エイナの笑顔を見てホッとしたような表情を浮かべ、ニコリと笑い頭を下げると、村長たちの方に駆けて行った。
村人たちが、全員村から避難した事を確認すると、エイナがダガーを構え男達に向き直り、
「さ、始めよっか!!」
と満面の笑みを浮かべた。
数時間後、村に到着したシェリルとリアは唖然とした。
辺りには無残に叩きのめされた男達が、縄で縛られ芋虫のように転がされている。その風貌から、おそらく『暴れている盗賊』というのが彼らなのだろう。でもそれでは、リアの情報と食い違う。疑問を抱え、シェリルとリアは周りを警戒しつつゆっくり歩き出す。
「一体誰がやったんでしょうね、団長」
転がっている男達をひっくり返しながらリアがシェリルに声を掛ける。
「ねぇ、リア。あなたが持ってきた情報では、『女の子』だったわよね…」
「えぇ、確かそうですよ。でもこれ、どう見ても男ですよね」
「一体どういうこと……!!」
ふと背後に気配を感じたシェリルは、バッと振り返る。視線の先には大きな木がある。先ほどの気配はどうやらそこからだった。誰かいる…そう直感したシェリルは、その木に近づく。
「そこに居るのは分かってるのよ。出てきなさい!!」
「団長?」
木の上に向かい、怒鳴るシェリルに、リアが近づいたその時、
「ありゃ、バレちゃった?」
明るい少女の声がし、大きく張り出した枝に、一人の少女が現れる。
「誰かと思えば、騎士団の方々。遅いですよ!もう片付いちゃったし」
といたずらっぽく笑う。シェリルの横にいたリアが、あっと声を上げる。
「君は確か賞金首の……エイナ!だったっけ…。てか俺達の前に姿見せて良かったわけ?捕まえちまうぞ」
「もう!せっかく悪党を成敗してあげたのにさ!酷くない?大体あたしは、賞金かけられる様なことしてないし!失礼しちゃう(怒)」
リアの賞金首発言にご立腹のエイナは、ぷぅと頬を膨らませ自分の潔白を主張する。そのやり取りを黙って見ていたシェリルは眉間にシワを寄せ、
「賞金?かけられてるの?私、初耳なんだけど…」
と、ボソリと呟いた。それを聞いたリアとエイナは、え?とお互いを見つめる。するとシェリルは、
「あなた、義賊なんでしょ?ただの盗賊ならばかけられても当然だけど、義賊がかけられるのは異例だわ。間違いなくこちらの手違いの可能性が高い。今のところ、民からのあなたについての悪い噂は聞かないし……騎士団の団長として謝罪するわ。ごめんなさい」
と、頭を下げる。一方のエイナは、こんなあっさり信じて貰えるとは思っていなかったのか、目を丸くし口をパクパクさせる。リアは不思議そうにシェリルを眺め問う。
「どういうことです?」
「…彼女はね、元々レジーナの所で保護されていたのよ。出世は殆ど謎。時の塔の前で倒れていたって…。しばらく一緒に暮らしてたらしいけど、レジーナに何も告げずに姿を消した……。そうよね、エイナ」
そこまで言うと、シェリルは彼女に視線を合わせる。エイナは決まり悪そうな顔をすると、はあ…とため息を吐いた。
「レジーナから聞いたの?てか、どこまで知ってるの?団長さん…」
「そこまでよ。それ以上は知らないわ。それとレジーナから伝言よ。『自分の信じる道を真っ直ぐ歩いて生きなさい』…一度くらい顔を見せろとも言ってたわね」
「…分かったわよ。気が向いたらね」
「気が向いたらって……行かないって言っているのと同じじゃない。行きなさい、必ず」
「だから、行かないなんて言ってないってば!!気が向いたら行くわよ!!」
「それじゃ駄目よ。行きなさい!」
「だから行かないなんて言ってないってば!!」
と、こんなやり取りを続ける二人。そんな光景を呆れた顔で眺めるリア。暫くして折れたのはエイナだった。
「もう、分かった分かった。なるべく早く顔だすから。これでいいでしょ?」
「最初から素直に聞きなさい、全く」
「……団長、オカンみたいですよ…いだっ」
「リア?何か言ったかしら…?」
「いや、あの……なんでもないです、はい」
「まったく、今時の若者は!」
シェリルは首を横に振りながら、呆れたように零す。その光景を見ていたエイナは、ふふっと笑って木から飛び降り、シェリル達の前まで行く。そして、ニッコリ笑い、
「堅いなあ~、もっとゆる~くいこうよ、ね?」
とシェリルの顔を覗き込む。目の前のお気楽な少女に、シェリルは思わずため息を付いた。
盗賊少女は自由を愛し、女騎士は平和を愛す。互いに価値観や大切なものは違くとも、『護りたい』という気持ちはきっと同じ…
《女騎士と盗賊少女》
「ちょ、ちょっと。どこまで付いて来る気?」
「あなたが本当にレジーナの所に行くまで」
「はあ?だから、行くって言ってるじゃない!!ちょっと!部下さん!なんとかしてよ!」
「え~…無理!」
「だぁ~!!なーにが無理!!よ!!役立たず!!」
「へん!役立たずで結構だよ!!もう俺し~らない!」
「は、薄情者がぁ!!(泣)」
「……ほら、漫才はいいから早く行きなさい」
「「漫才じゃないから!!」」
なんだかんだ今日も平和です。
《END》
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