14粒目
これはきっと
好機となる。
Pure rain
よろず屋で依頼をした数日後、柚希は生徒会長に呼び止められた。
「君、少しいいか?」
「?はい」
「話がある。よろず屋の二人を連れて、放課後すぐに理事長室まで来てくれ」
「え?理事長?」
「ああ、あの方はお忙しい。時間厳守だ」
では伝えたからなと生徒会長は足早に去って行った。一方、ポツンと取り残された柚希はぼんやりと考えていた。
(理事長が一体、私達に何の用があるんだろう)
思い当たる事が見当たらず、首を傾げると軽くため息を吐いて教室に向かった。
………………―
……………―
…………―
「なんやなんや?ウチ、何もしてへんで?…まだ」
「まだって……何かするつもりだったのか?」
「いや、べつにそないな事ないけど…」
昼休みにレスカとロザリアに声を掛け、三人で理事長室に向かう。
レスカとロザリアの掛け合いを聞きながら、柚希は俯いていた。そんな柚希に気付いたレスカが声を掛けた。
「どうした?」
「え?……うん、なんで呼ばれたのかなって」
「なんも聞いてへんの?」
「うん。なんか忙しいとか言ってたから、聞けなくて…」
柚希がそう言うと、ロザリアが盛大にため息を付いた。
「はあ…将也の奴、せかせかしとるからなあ。ま、行ってみれば分かるやろ!」
「そうだな。理事長か……蕾だな。悪いことはしてないんだ。そんな緊張する事はないさ」
「うん……そうだよね…」
そうこう話している内に、三人は理事長室の前に立った。柚希が扉をノックする。
「あの、2-Aの橘柚希です」
「はい、どうぞ。お入りください」
若い女性の声に少し驚きながら柚希が二人に振り返ると、レスカが頷き入るよう促す。意を決して扉を開くと、正面の大きなデスクに座る和服姿の髪の長い女性が微笑んでいた。その傍らには生徒会長がいる。
「ようこそ、いらっしゃいました。将也、例のものを」
「はい、蕾様」
生徒会長…将也は蕾に軽く一礼し、本棚に向かう。
「御呼び立てして、申し訳ありません。あ、そちらにおかけください」
三人が言われた通り、皮張りのソファーに腰掛けると、将也がファイルを持って戻ってきた。
「あの…話しって…?」
柚希は不安そうに蕾を見る。すると将也が柚希にファイルを差し出した。
「用件はこれなんだ。とりあえずまず中を見てくれ」
「………はい」
ファイルを受け取り開くと、柚希は小さく声を上げた。
「え…?これ…ゆ、雪菜?」
それは雑誌の切り抜きだったが、雪菜とおぼしき女の子と中年男性と腕を組み、ホテル街を歩いている写真だった。呆然と見つめている柚希の脇から、レスカとロザリアも切り抜きを見る。
「うわ!なんやこれ?」
「…随分とよく出来ているな」
「…え?」
柚希は、レスカの言葉に疑問を投げかける。するとレスカは将也を見上げた。
「ほう、さすが元マフィアだな。察しが早い」
「ふ……褒めても何もでないぞ」
二人のやり取りを不思議そうに見つめる柚希に、レスカが言った。
「これは合成写真だ。しかもかなり精巧に作られたな」
「ご…合成……?ということは!」
「君の友人は無関係ということだ」
「!…良かった!!でも、どうしてこれを私達に?」
「それはわたくしからお話いたします」
蕾は、柚希の言葉に答え、三人の向かいのソファーに腰掛けた。
「実は、この方…白川雪菜さんがこの学園に転校してくるのです」
「え?雪菜が?どうして?」
「わたくしもそこまでは解りません。しかし、ある噂が舞い込んできたのです」
「噂?なんやねん?」
「白川雪菜さんが、高嶺財閥の令嬢を虐めていて、退学になった…と」
「!!そ、そんな事!ありえません!!雪菜は凄く優しくて大人しい子なんです!!そんな…虐めなんて!!」
「落ち着け、柚希。蕾たちははなから白川雪菜を疑ってはいない。ただ、真実を知りたいだけなんだ」
雪菜が虐めをしていると聞き、声を荒げて反論する柚希をレスカが諌めると、将也が柚希からファイルを取る。
「この写真を誰がどこでつくったのか。虐めの真相はなんなのか。そして高嶺愛莉の本性はどうなのか」
「私達に調べろと?」
「そうだ。俺も蕾様も忙しい。生徒一人に長時間裂く訳にはいかない。それに、君達のオーナーには了承は得ている」
「ぐっ……もう断れんて事やんな?……まあええか。お前らがバックについとれば動きやすいし」
「高嶺か。あまりいい噂は聞かないな。高嶺に酷い目に合わされた輩は腐るほどいる。高嶺が存在していれば、また大きな事件に発展する事になるしな。……いいだろう。やってやる。ただし、条件があるがな」
レスカはそう言うと、蕾に向き直った。
「白川雪菜の保護は蕾、お前に頼みたい。いくら高嶺でも、お前に手出しは出来んだろう?それに将也もいる。攻守とも強固だ。どうだ蕾、頼めるか?」
蕾は少し考えた後、ゆっくりと頷く。
「解りました。白川さんの守りはお任せください。高嶺財閥を頼みましたよ」
蕾の言葉に満足したレスカは席を立つ。柚希とロザリアもそれに吊られ立ち上がる。
「ああ、任せろ。よろず屋に失敗は許されないからな…行くぞ、二人とも」
「うん」
「はいはい」
レスカに促され、二人は理事長室を後にした。
……その数日後、雪菜は桜花学園に転入した。
それはまた、よろず屋と高嶺財閥の正面対決への幕開けともなる。
END
これはきっと
好機となる。
Pure rain
よろず屋で依頼をした数日後、柚希は生徒会長に呼び止められた。
「君、少しいいか?」
「?はい」
「話がある。よろず屋の二人を連れて、放課後すぐに理事長室まで来てくれ」
「え?理事長?」
「ああ、あの方はお忙しい。時間厳守だ」
では伝えたからなと生徒会長は足早に去って行った。一方、ポツンと取り残された柚希はぼんやりと考えていた。
(理事長が一体、私達に何の用があるんだろう)
思い当たる事が見当たらず、首を傾げると軽くため息を吐いて教室に向かった。
………………―
……………―
…………―
「なんやなんや?ウチ、何もしてへんで?…まだ」
「まだって……何かするつもりだったのか?」
「いや、べつにそないな事ないけど…」
昼休みにレスカとロザリアに声を掛け、三人で理事長室に向かう。
レスカとロザリアの掛け合いを聞きながら、柚希は俯いていた。そんな柚希に気付いたレスカが声を掛けた。
「どうした?」
「え?……うん、なんで呼ばれたのかなって」
「なんも聞いてへんの?」
「うん。なんか忙しいとか言ってたから、聞けなくて…」
柚希がそう言うと、ロザリアが盛大にため息を付いた。
「はあ…将也の奴、せかせかしとるからなあ。ま、行ってみれば分かるやろ!」
「そうだな。理事長か……蕾だな。悪いことはしてないんだ。そんな緊張する事はないさ」
「うん……そうだよね…」
そうこう話している内に、三人は理事長室の前に立った。柚希が扉をノックする。
「あの、2-Aの橘柚希です」
「はい、どうぞ。お入りください」
若い女性の声に少し驚きながら柚希が二人に振り返ると、レスカが頷き入るよう促す。意を決して扉を開くと、正面の大きなデスクに座る和服姿の髪の長い女性が微笑んでいた。その傍らには生徒会長がいる。
「ようこそ、いらっしゃいました。将也、例のものを」
「はい、蕾様」
生徒会長…将也は蕾に軽く一礼し、本棚に向かう。
「御呼び立てして、申し訳ありません。あ、そちらにおかけください」
三人が言われた通り、皮張りのソファーに腰掛けると、将也がファイルを持って戻ってきた。
「あの…話しって…?」
柚希は不安そうに蕾を見る。すると将也が柚希にファイルを差し出した。
「用件はこれなんだ。とりあえずまず中を見てくれ」
「………はい」
ファイルを受け取り開くと、柚希は小さく声を上げた。
「え…?これ…ゆ、雪菜?」
それは雑誌の切り抜きだったが、雪菜とおぼしき女の子と中年男性と腕を組み、ホテル街を歩いている写真だった。呆然と見つめている柚希の脇から、レスカとロザリアも切り抜きを見る。
「うわ!なんやこれ?」
「…随分とよく出来ているな」
「…え?」
柚希は、レスカの言葉に疑問を投げかける。するとレスカは将也を見上げた。
「ほう、さすが元マフィアだな。察しが早い」
「ふ……褒めても何もでないぞ」
二人のやり取りを不思議そうに見つめる柚希に、レスカが言った。
「これは合成写真だ。しかもかなり精巧に作られたな」
「ご…合成……?ということは!」
「君の友人は無関係ということだ」
「!…良かった!!でも、どうしてこれを私達に?」
「それはわたくしからお話いたします」
蕾は、柚希の言葉に答え、三人の向かいのソファーに腰掛けた。
「実は、この方…白川雪菜さんがこの学園に転校してくるのです」
「え?雪菜が?どうして?」
「わたくしもそこまでは解りません。しかし、ある噂が舞い込んできたのです」
「噂?なんやねん?」
「白川雪菜さんが、高嶺財閥の令嬢を虐めていて、退学になった…と」
「!!そ、そんな事!ありえません!!雪菜は凄く優しくて大人しい子なんです!!そんな…虐めなんて!!」
「落ち着け、柚希。蕾たちははなから白川雪菜を疑ってはいない。ただ、真実を知りたいだけなんだ」
雪菜が虐めをしていると聞き、声を荒げて反論する柚希をレスカが諌めると、将也が柚希からファイルを取る。
「この写真を誰がどこでつくったのか。虐めの真相はなんなのか。そして高嶺愛莉の本性はどうなのか」
「私達に調べろと?」
「そうだ。俺も蕾様も忙しい。生徒一人に長時間裂く訳にはいかない。それに、君達のオーナーには了承は得ている」
「ぐっ……もう断れんて事やんな?……まあええか。お前らがバックについとれば動きやすいし」
「高嶺か。あまりいい噂は聞かないな。高嶺に酷い目に合わされた輩は腐るほどいる。高嶺が存在していれば、また大きな事件に発展する事になるしな。……いいだろう。やってやる。ただし、条件があるがな」
レスカはそう言うと、蕾に向き直った。
「白川雪菜の保護は蕾、お前に頼みたい。いくら高嶺でも、お前に手出しは出来んだろう?それに将也もいる。攻守とも強固だ。どうだ蕾、頼めるか?」
蕾は少し考えた後、ゆっくりと頷く。
「解りました。白川さんの守りはお任せください。高嶺財閥を頼みましたよ」
蕾の言葉に満足したレスカは席を立つ。柚希とロザリアもそれに吊られ立ち上がる。
「ああ、任せろ。よろず屋に失敗は許されないからな…行くぞ、二人とも」
「うん」
「はいはい」
レスカに促され、二人は理事長室を後にした。
……その数日後、雪菜は桜花学園に転入した。
それはまた、よろず屋と高嶺財閥の正面対決への幕開けともなる。
Pure rain
真実を
悪の根絶を
実現するために
この状況を舞台を
利用する
我等が
―理事長と生徒会長―
真実を
悪の根絶を
実現するために
この状況を舞台を
利用する
我等が
―理事長と生徒会長―
END
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