15粒目




私は逃げ出した。
現実から、そして…
大切な人から……


Pure rain




教室でのあの一件から数日たった。
雪菜は学校に行けず、部屋に引きこもっていた。また罵声を浴びせられ、非難の視線を浴びる……そして風の噂だが、蓮汰は愛莉と付き合い始めたらしい。(いつも一緒にいる所を目撃されているから)無理に学校に行こうとはしてみた事もあったが、以前とは違い、今は蓮汰もクラスメート達の仲間に入っているだろう。それになにより、蓮汰と愛莉が一緒に楽しそうにしている所を見なくてはならないなんて


……堪えられなかった。


そんな中、家族の中で唯一事情を知る、兄である悠希は両親総てを話して説得し、自分が借りているマンションがある、桜花台に雪菜を連れてきたのだ。両親は最近、雪菜の様子がおかしいのを気にかけていたようで、総てを知り驚きと怒り、そして、気付いてやれなかった悲しみを感じていた。しかし、相手は財閥の令嬢。訴えてみた所で、結末は見えていた。

なんとかして高嶺をがたつかせたい…。

そこで悠希は、よろず屋に高嶺財閥の詳細の調査を依頼したのだ。悪名名高い高嶺の確実な、決定的な証拠を掴めば、捜査礼状や逮捕状も出して貰える。しかし、流石のよろず屋もすぐに…とはいかない。調査には時間が掛かるのだ。
かと言って、証拠を掴むその時まで雪菜を高嶺の令嬢の側に置いておくのは色々な意味で危険。
そこで悠希が、琥珀の口添えで、桜花台学園の理事長である蕾に直談判し、雪菜の編入を許可して貰った。
最初は雪菜も戸惑っていたが、現状に疲れきっていたせいもあり、転校を承諾した。



そして………


「ここが……桜花台学園…」

雪菜は桜花台学園にいた。

ここから新しい生活が始まる。この転校がどんな風に実を結ぶのか…。

「……もうこれ以上、悪い事なんて起きない。大丈夫だよね…きっと…」

ふと思い出す、辛かった日々。
それを払拭するように首を振り、雪菜は兄に言われたように、理事長室へと向かった。



Pure rain


逃げる物語か
挑む物語か

あとは
幕が上がるのを
待つだけ…



―新しい生活―


END
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