Episode9~追跡~



Episode9[追跡]


キリー、マルロニ、スタンデッドが研究所を出たとき、調度ディプロードの車が発進した。


「くっ…相変わらず逃げ足の早え奴だ」
「走って追いつける状況じゃない…車を調達するか…」
「おい!悠長な事言ってると……「二人とも、あれ」ん?」

二人がキリーの視線の先に目をやると、

「マリーナ!!それに……ジャック!!」

依頼人であるマリーナと、兄ジャックの姿があった。その傍らには、一台の荷台の付いた乗用車。

「キリーさん!!皆さん!!ご無事で何よりです。さ、早くこれでディプロードを!!」
「足止めは僕に任せてください。見失わない内に急いで!!」
「………足止め?」

キリーがふと回りを見渡すと……

「な、なんだあ?」
「兵器?ディプロードめ、姑息な真似を!!」

数百を超える『兵器』がキリー達を取り囲んでいた。
「ジャック!!病み上がりで無茶すんな!!」
「そうだ、マリーナだっているんだ!逃げろ!!」

しかし、ジャックとマリーナは首を縦に振らず、まっすぐ三人を見て言った。

「私は逃げません!もう二度と兄達のような人達を、私たちのような悲しみを生まないためにも、ここで引くわけにはいきません!」

そう言うマリーナの手には、リボルバーが握られていた。

「大丈夫です、僕は兵器。奴らを蹴散らすくらい造作ありません!!それよりディプロードを!!あいつがいる限り、何も終わりません。さあ早く!!」

そう言うなり、ジャックはキリー達に襲い掛かろうとする兵器たちの前に踊り出た。

「……ジャック、マリーナ」
「……分かった。お前たちの分までぶん殴ってくんぜ!!」
「だか、無理はするなよ!危ないと思ったら逃げろ!ディプロードをふん縛ったら加勢するからな!!」
「………急ぎましょう!マルロニ、スタンデッド」


三人は車に乗り込み発進させる。

「どうか、気をつけて……」

マリーナとジャックはり去った車を見送ると、兵器の集団に突っ込んでいった。





「ふん…………もう追って来まい。他愛のない児戯だな」

ディプロードは鼻で笑う。所詮小物、自分の敵ではない。そう言うように。

とその時、


―ドドーン!―


「うお!!なんだ?」
「ディプロード様!追っ手が!」
「何?!」

ディプロードが振り向くと、一台の車が。
そしてそこには…


「ディプロード!!逃がさねぇぞ!観念しろや!」
「今日こそお前を絶つ!!」

拳銃を構えながら運転するマルロニ、マシンガンを構えるスタンデッド。
そして、車の屋根に揺らめく黒い影。バズーカを構え、冷たく見つめるキリーだった。


「ば、馬鹿な………あいつらは始末させたはず………」

ディプロードがつぶやくのとほぼ同時に、


「うわああああああ!!」



運転席の部下が叫ぶ。そのとたん、


―ドゴオオオオン…―



キリーが撃ったバズーカが、タイヤに命中したのだろう。凄い勢いで蛇行し、


―ガシャアアアアアアン―


ディプロードの乗った車が壁に激突した。


―キキッ―


大破し、黒い煙を上げる車体から、ディプロードが這い出してきた。
車から降りたマルロニとスタンデッドは、それぞれ武器を構えディプロードの前に立つ。少し遅れてキリーも近づく。


「ずいぶんといい格好じゃないの」
「もう逃げられないぞ」
「………………」


ディプロードは恨めしげに三人を見遣る。


「く………しぶとい輩だ。大人しく死んでいればいいものを………」
「おあいにくだな。俺は死神に嫌われてんだよ。ま、お前はもうじき迎えが来そうだけどな」
「さあ、ここで死ぬか裁きを受けるか……選ばせてやる」
「…………………」


ディプロードは不敵に笑った。
キリーはその笑みに嫌な予感を覚え、前に一歩足を踏み出す。その瞬間、


―ガチャン…―



ディプロードは懐から拳銃を出し構えた………キリー達ではなく、自らの頭に。

「お前たちに捕まるなど、プライドが赦さん。私を殺したいのだろう?ならば自らの手で死ぬ。私はお前らの手には落ちん。ハハハハハハハハハハ!!」


そう言うなりディプロードは引き金を引いた……………………




―バーン!!―






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