『断罪を……報復を……………』
限りなく広がる暗闇。美香はボロボロになり、横たわっていた。先程から、何度もあのリンチにあっているのだ。怪我はしばらくすれば治るが、そのあとまた気を失うまで、殴られたり蹴られる。もう美香の目からは光が消えていた。逃げ場もなく助けてくれる者もいない……ただただ言われもない言い掛かりのもとで、リンチを受ける。これ程の恐怖はない。
怪我が治り始め、痛みと恐怖の宴が始まる。
美香は演じる事も悲鳴を上げる事もなく、断罪を受ける………永遠に……。
その光景を見ている人影が二つ。
「……エイプリル、大丈夫か?」
「うん………平気だよ…」
「嘘だな。………俺の前では強がらなくていい」
「………っジューン!!」
エイプリルはジューンの胸に飛び込み、静かに涙を流した。人は弱い。人は愚かだ。でも、間違いに気づき罪を受け入れられる強さもある。エイプリルはそれを信じたかった。だからこそ、美香に姿を見せたのだ。
自分の罪に気づいたら……受け入れて懺悔するのなら、助けてあげたい…………。しかしそんなエイプリルの密かな願いは美香には届かなかった。それが悔しくて悲しくて………。
ジューンはエイプリルの背中を、優しくあやすように摩る。
「君は頑張った。……もう泣かないでエイプリル。君が泣くと俺も悲しい……」
「ゴメン、ゴメンねジューン…。弱い私で……ゴメンね……分かってるの、こんな事じゃダメだって……でも、でも辛いの……悲しいの」
「エイプリル……我慢しなくていい……」
「う………うわあぁぁん!!」
ジューンは黙ってエイプリルを抱きしめる。彼女の涙が渇き、また笑ってくれるまで。
その光景を見ている、三つの影。
「エイプリル……辛い思いを強いてしまいましたね」
霜月は心を痛めていた。今回の人選を誤ってしまった事を。エイプリルは人に酷い仕打ちをされたにも関わらず、人の気持ちを慈しむ気持ちが大きい。それ故に感情的になりやすく、落ち込みもすごい。
「霜月さま…優し過ぎるのです。彼女は…」
「ま、それがエイプリルの長所でもあり、短所でもあるんだけど」
恐ろしく長い金髪に金色の瞳を持つ少女、睦月。
そして、睦月の隣でにこやかに明るい笑顔を浮かべている、銀髪のツインテールに銀と金色のオッドアイの少女、葉月。
二人は霜月を守護する側近で、懐刀である。
服装がドレッシーな睦月に対し、葉月は和服モダンである。
「ありがとう…二人とも………わたくしがこんな事ではいけませんね…」
済まなそうに呟く霜月に、睦月と葉月は首を振る。
「いえ…、勿体なきお言葉」
「気にしないで!霜月さま!」
霜月は二人に微笑む。
すると、睦月が話を切り出した。
「霜月さま、疑問に思っていたことがあるのですが」
「何ですか、睦月」
「こたびの儀式、霧島真二もしたはず。なぜ、記憶を残したのですか?」
「霧島真二と西尾雛…願いは同じでした。本来ならば二人とも記憶や負の思いを消すのが得策でしょう……しかし、やらなかった、いえ、出来ませんでした」
「何故ですか?」
「霧島真二の悲しみや長谷川美香への憎しみは根強く、魂の奥深くにまで根を張っていたのです。それ故、引き離す事が出来なかった」
「茜って子の事?」
「えぇ。魂に根付いた記憶はなかなか引き離す事が出来ません。きっと彼は輪廻を巡って、再び人として生まれ変わったとしても、その記憶に捕われ続けるでしょう……」
「うわ……めんどくさい…」
「呪いは業。業は消えることはない………という事ですか」
「西尾雛は怨みより悲しみのほうが強かった。なので、記憶を負の魂を抜き取る事は簡単でした。……これが吉と出るか凶と出るかは、彼女次第でしょう」
霜月は二人に微笑み、闇に溶けるように消える。それを追うかのように睦月と葉月も闇に消えた。
……ナイトメアの役目に終わりはない。人がこの世に存在する限り……。
《断罪》
限りなく広がる暗闇。美香はボロボロになり、横たわっていた。先程から、何度もあのリンチにあっているのだ。怪我はしばらくすれば治るが、そのあとまた気を失うまで、殴られたり蹴られる。もう美香の目からは光が消えていた。逃げ場もなく助けてくれる者もいない……ただただ言われもない言い掛かりのもとで、リンチを受ける。これ程の恐怖はない。
怪我が治り始め、痛みと恐怖の宴が始まる。
美香は演じる事も悲鳴を上げる事もなく、断罪を受ける………永遠に……。
その光景を見ている人影が二つ。
「……エイプリル、大丈夫か?」
「うん………平気だよ…」
「嘘だな。………俺の前では強がらなくていい」
「………っジューン!!」
エイプリルはジューンの胸に飛び込み、静かに涙を流した。人は弱い。人は愚かだ。でも、間違いに気づき罪を受け入れられる強さもある。エイプリルはそれを信じたかった。だからこそ、美香に姿を見せたのだ。
自分の罪に気づいたら……受け入れて懺悔するのなら、助けてあげたい…………。しかしそんなエイプリルの密かな願いは美香には届かなかった。それが悔しくて悲しくて………。
ジューンはエイプリルの背中を、優しくあやすように摩る。
「君は頑張った。……もう泣かないでエイプリル。君が泣くと俺も悲しい……」
「ゴメン、ゴメンねジューン…。弱い私で……ゴメンね……分かってるの、こんな事じゃダメだって……でも、でも辛いの……悲しいの」
「エイプリル……我慢しなくていい……」
「う………うわあぁぁん!!」
ジューンは黙ってエイプリルを抱きしめる。彼女の涙が渇き、また笑ってくれるまで。
その光景を見ている、三つの影。
「エイプリル……辛い思いを強いてしまいましたね」
霜月は心を痛めていた。今回の人選を誤ってしまった事を。エイプリルは人に酷い仕打ちをされたにも関わらず、人の気持ちを慈しむ気持ちが大きい。それ故に感情的になりやすく、落ち込みもすごい。
「霜月さま…優し過ぎるのです。彼女は…」
「ま、それがエイプリルの長所でもあり、短所でもあるんだけど」
恐ろしく長い金髪に金色の瞳を持つ少女、睦月。
そして、睦月の隣でにこやかに明るい笑顔を浮かべている、銀髪のツインテールに銀と金色のオッドアイの少女、葉月。
二人は霜月を守護する側近で、懐刀である。
服装がドレッシーな睦月に対し、葉月は和服モダンである。
「ありがとう…二人とも………わたくしがこんな事ではいけませんね…」
済まなそうに呟く霜月に、睦月と葉月は首を振る。
「いえ…、勿体なきお言葉」
「気にしないで!霜月さま!」
霜月は二人に微笑む。
すると、睦月が話を切り出した。
「霜月さま、疑問に思っていたことがあるのですが」
「何ですか、睦月」
「こたびの儀式、霧島真二もしたはず。なぜ、記憶を残したのですか?」
「霧島真二と西尾雛…願いは同じでした。本来ならば二人とも記憶や負の思いを消すのが得策でしょう……しかし、やらなかった、いえ、出来ませんでした」
「何故ですか?」
「霧島真二の悲しみや長谷川美香への憎しみは根強く、魂の奥深くにまで根を張っていたのです。それ故、引き離す事が出来なかった」
「茜って子の事?」
「えぇ。魂に根付いた記憶はなかなか引き離す事が出来ません。きっと彼は輪廻を巡って、再び人として生まれ変わったとしても、その記憶に捕われ続けるでしょう……」
「うわ……めんどくさい…」
「呪いは業。業は消えることはない………という事ですか」
「西尾雛は怨みより悲しみのほうが強かった。なので、記憶を負の魂を抜き取る事は簡単でした。……これが吉と出るか凶と出るかは、彼女次第でしょう」
霜月は二人に微笑み、闇に溶けるように消える。それを追うかのように睦月と葉月も闇に消えた。
……ナイトメアの役目に終わりはない。人がこの世に存在する限り……。
《断罪》
END
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