2粒目


その出会いは偶然か、
それとも……


Pure rain



暫く歩いていると、何やら話し声が聞こえてきた。
よくよく聞いてみると、どうやら言い争っている…と言うよりは、罵倒していると言ったほうが正しいかもしれない。複数人の声が雨音に紛れて聞こえる。

(け、喧嘩……?)

まずいところに来てしまったか…寄り道せずに家路に着いていればよかったと後悔し始めたとき、

―バシン―

雨の中、渇いた音が響き、
―バタバタバタ―

数人の女子(制服が違かかったので、多分他校生)が草陰から出てきて、柚希に気づかないまま早足で立ち去っていった。

「………行っちゃった…喧嘩……してたのかな…………ん?」

気付かれたら色々と面倒は必須。少しほっとした柚希は草陰にもう一人居ることに気づいた。
全身ずぶ濡れで俯き座り込む女の子。彼女の周りには鞄の中に入っていたであろうものが散乱していた。
…柚希はすべてを察した。あれは喧嘩は喧嘩でも、友達同士の揉め事ではなく、一方的で理不尽なもの…………。

柚希は自然に草陰に足を踏み入れ少女の前に行き、散乱した鞄や筆記用具などを拾う。柚希の気配に気づいたのか、少女が僅かに顔を上げた。

「…あ、ごめんね。余計な事だった…かな…」
「………………」

少女は無言で首を振り、自分も拾い始める。
柚希は拾った物を手渡し、改めて少女の顔を見た。赤く腫れた頬。やはり先程の音は彼女が叩かれた音だったのだ。恐らく、あの数人の女子の中の一人に…。
荷物を鞄に詰め込み、小さく頭を下げ、逃げるように立ち去ろうとする少女を柚希は引き止めた。

「あ、待って!!」
「!え……」
「あ、…え…と」

少女は怯えたような視線を柚希に向ける。柚希自信も何故引き止めたのか解らず言葉に詰まる。そして…

「私の家、すぐ近くなの。寄っていって!!」
「え………でも…」

少しの沈黙の後、柚希は意を決して少女に提案するが、警戒しているのか顔は強張ったまま。…余程酷い事をされてきたのだろう。無理もないかと思い、柚希は優しく微笑み少女の手をとると、びくりと体を震わせるが振り払う気はないと分かった。

「そんなびしょ濡れのままじゃ、風邪引いちゃうよ?ウチで暖まって行って、ね?」
「………いいの?」
「うん!!」
「……あ、りがとう……」

柚希の言葉に警戒を解いたのか少し微笑む少女。そして柚希は、彼女を傘の中に招き入れ家路についた。



Pure rain



―その出会いは
きっと必然…

貴女はどう思う?―


~偶然か、必然か…~

つづく…


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