9粒目



いつか、いつか……
またみんなと
笑い合いたい…

Pure rain



放課後の学校。
雪菜は蓮汰を探し歩いた。凜に言われ気づいたのだ。

結局、自分は誰も信じていなかった。ずっと側にいてくれた蓮汰さえも。でも彼はそんな自分を心配し、気に掛けていてくれた。

お礼を言いたい。そして謝りたい。蓮汰を探す雪菜の頭の中はその事で一杯だった。

「蓮ちゃん……帰っちゃった…?」

部活をやっていたであろうグラウンドには誰もおらず、雪菜は脱力した。と同時に溢れてくる涙。イジメを受けてから涙腺がかなり緩くなっているようだった。

「蓮ちゃん、蓮ちゃん……一人にしないで……一人ぼっちは…いや……」

流れる涙を拭く事も人目を気にする余裕もなく、ただ蓮汰を呼ぶ。すると……

「雪菜……?」

聞き慣れた、一番聞きたかった声。雪菜が振り向くとサッカーのユニホームを着た蓮汰が、驚いた顔で見ていた。

「れ、蓮ちゃ……」
「!!雪菜、どうした?何かされたのか?」

鬼気迫る勢いで走り寄り、雪菜の顔を覗き込む。
いつも通りの蓮汰に雪菜は張り詰めた糸がぷつんと切れた。

「うわああああ…!!」
「ゆ、雪菜」
「ごめんなさい、蓮ちゃん……ごめんなさい」
「雪菜……」
「わたしっ、蓮ちゃんが居てくれないとダメなの。いなく…ならないで…」
「雪菜、俺はいつも雪菜と一緒にいるよ。だから…心配するな…」
「っ……うわああん!!」

大好きな蓮汰の言葉に安心した雪菜は、彼にしがみつき泣いた。そして、蓮汰にすべて話した。自分は愛莉をイジメていない事、愛莉に嵌められた事、取り巻きたちの事。それを聞いた蓮汰の顔が次第に暗くなる。そして、あの雨の日に出会った柚希の事を話す。

「柚希?」
「うん。愛莉ちゃんの取り巻きの人達にイジメられたとき、私を匿ってくれて………私の事、心配してくれたの……」
「ふーん、そっか。良かったな!」
「うん!……また、会えるといいな。そしたら蓮ちゃんにも紹介するね。すっごく可愛くて優しいの、柚希って」

嬉しそうに柚希の話しをする雪菜を見て、蓮汰は柚希という少女に興味が沸きはじめた。それは蓮汰にとって雪菜以外に感じた初めての感情だった。

「雪菜が認めた奴なら、俺も認めるぜ。楽しみだな」
「ふふ……いつかまた、皆と笑いあえる日がくるかな…」
「雪菜……」

夕闇が迫る空を見上げ、寂しげに呟く雪菜に、蓮汰は再び決心する。もう、絶対に雪菜を傷付けさせない。そして必ず雪菜の無実を晴らし、また笑顔を見たい。

「私、皆の事、嫌いになんてなれないよ。だって、皆友達だもん。愛莉ちゃんだって、やり方を間違えちゃっただけで、ただ蓮ちゃんに一途なだけ。誰も悪者にしたくないの…」
「雪菜………そうだな…。また楽しく過ごせるように一緒に頑張ろう。俺もいるし、雪菜を信じてくれる奴はきっといるさ。……柚希みたいにな…」

力強い蓮汰の言葉に、雪菜は精一杯の笑顔を向ける。

「うん!!頑張る。蓮ちゃん……」
「ん?」
「ありがとう………」

夕焼けに染まった雪菜の笑顔。ほんのり赤いのは夕焼けのせいなのか。
希望が繋がった瞬間だった。




Pure rain



―周りを見たら
自分は決して
一人じゃないと分かったの
だから
信じたい、大切にしたい
この絆を…
きっと、今の私に必要なのは―

~信じる気持ち~




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