Episode1~黒猫~




「ぐあっ!!」

「ぎゃあああ!!」

「あ、あいつがきた!!逃げろ!!」


数人の男の声が、人気のない路地裏に響く。


「あらあら・・・・、口程にもない子達ね。そうね・・・・・・焦らすのも飽きたし・・・・そろそろ終わらせてあげるわ



ぎゃあああああああ


・・・・・・・・・・・・深い深い暗闇に男達の悲鳴が響き渡った。


********************



「やれやれね。大して情報も持ってないみたいだし・・・・無駄足だったわね」

黒髪を靡かせ、深紅の切れ長の瞳を細め、ピクリとも動かない男達の屍を見やる。
闇に溶け込むような漆黒に鎖をあしらったコートにブーツ。
中でも目を引くのは身の丈程ある剣。

彼女の名はキルエリッヒ。通称キリー。

闇世界を暗躍する、掃除屋である。猫のような身のこなしと血を好むことから[Bloody cat]という通り名を持っている。

今夜は有力情報を持つ人物をマークしていたのだが、どうやらシロだったようだ。


「最近、マルロニの情報はガセが多いわね。情報料返してもらおうかしら」


マルロニ・・・・・キリーに情報を流す、唯一の存在。キリーとは長い付き合いで阿吽の仲だ。
・・・・・・・とはいえ、情報提供の代金はきっちり前払いのため、払い損になることが多い。正に今がそうだ。


「ふう・・・ここで愚痴っても仕方ないわね。マルロニはあとでシメるとして・・・・・・・ん?」


キリーはふと、屍の傍に寄り足でひっくり返す。
男のシャツの胸ポケットに何か入っている・・・・。屈み込みすっと抜き取ってみる。

どうやらカードキーのようだ。

「あら、いいもの持ってるじゃない。でもこんなチンピラが、ねえ・・・・。まあいいわ、戴いていくわね」


キリーはカードキーにキスを落とすと、コートのポケットにしまい闇に溶け込むように去った。


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