Episode5~闇医者~
Episode5[闇医者]
「お、キリーじゃないか。久しいな」
「・・・・・・・この人をお願い・・・・・」
「って、おいおい・・・・相変わらず冷たいなぁ・・・・・ん?こいつは・・・」
・・・・・・ここは、裏路地にある古びた廃ビル。そこに密かに看板を下げてる一室にキリーはいた。
相変わらずのキリーの様子に、向かい合う金髪オールバックの青年・・・スタンデッドは、困ったように肩を竦めると彼女が背負っている、男に気がつき眉を顰める。キリーはふと目を伏せると、
「・・・・・・・・病人」
というなり、傍にあったベッドに背負っていた彼をドサりと下ろす。するとスタンデッドが慌てたようにベッドに近寄る。
「おいおい・・・・随分手荒いな」
「早く診て」
「分かった分かった、そう睨むな」
キリーの睨みに苦笑いしながら、ベッドにぐったりと横たわるジャックの顔を覗き込む。その途端、スタンデッドの表情が険しくなる。
「キリー・・・・・・・こいつは・・・・・・」
「・・・・・・サンテロット・・・」
「!!!!・・・・・・・そうか。あの野郎どもまだこんなことを・・・・」
先ほどの飄々とした顔とは打って変わり、怒りに満ちた・・・しかし悲しみも滲ませる表情を浮かべ、吐き捨てるようにつぶやいた。そんな彼を横目で見るキリーの顔は、いつもの無表情とは違い僅かに悲壮感を漂わせていた。
「・・・・意識の混濁具合、筋肉の痙攣の度合い・・・・・・・まだ間に合うな。キリー、こいつは俺に任せてくれ・・・・・・・・・必ず助けてやる」
「・・・・・いくら?」
「金はいらねえ・・・・」
キリーに背を向けたまま言うスタンデッドに、キリーは軽く目を見開く。なぜなら、闇医師のせいかスタンデッドは金にうるさく、法外な金額を提示することが多いのだ。その彼が無料で治療するなんて、天地がひっくり返るほど異例なことだ。
「・・・・珍しいわね。明日は吹雪ね」
「・・・・・・・・・・これ以上、あいつらの思い通りにさせてたまるか。あいつだってきっと・・・・・・・」
「!!!・・・・・ごめんなさい」
「いいさ、もう・・・・過去の話だ」
「・・・・・・・でも忘れる事なんてできないんでしょう?」
「・・・・・・・・・キリー・・・・」
「・・・無理に過去にしなくてもいいじゃない・・・・・忘れる必要もない」
「・・・・・・・・・っ・・・・・・」
「・・・・・・彼女との思い出・・・・思い出す事をやめてしまったら、彼女が悲しむわ、きっと」
「・・・・・・そう、だな。何焦ってんだろうな俺は・・・・」
自嘲気味に笑うスタンデッドは、未だキリーに背を向けたまま静かに息を吐く。僅かに肩がふるえているのを知りながらも、キリーは見ないふりをして話を切り出した。
「・・・・・・私、乗り込むわ」
「な!!一人でか?」
スタンデッドは驚いて振り返りキリーを見る。キリーは表情を崩さず浅く頷く。
「もちろんよ」
「そりゃあ無謀ってもんだぜ。あそこがどんなに危険なのか知らないわけじゃないだろう?」
スタンデッドが心配する気持ちもわかる。技術に優れた集団のいるアジトだ、確かに何が待ち受けているのか分からない。しかもキリーはかつての脱走者であり、研究員を殲滅したお尋ね者。万が一、また捕まってしまったら・・・・・・・・・。
・・・・・しかし・・・・・・・
「・・・・・・かと言って、役人は役にたたないわ・・・・」
「た、確かにそうだが・・・・・・だからって一人じゃ・・・・」
「大丈夫よ、私なら・・・・・・・。簡単にやられたりしないわ」
「しかしな・・・・・・・」
「・・・・・・・・・スタンデッド、もし私が行かなくても誰かが行かなければいけないわ。・・・・・その日はいつくるのかしら・・・・?」
「キリー・・・・・・」
「私はね、早く奴らをどうにかしたい・・・・・。ここで動かなければ、また罪のない人たちが犠牲になって、誰かが泣くことになる・・・・・・」
キリーの脳裏に、兄を思い泣いていたマリーナの顔がよぎる。そして・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・レミリアの仇討ちも・・・・か?」
「・・・・・・・・・どうかしらね・・・・・・。もう過去のことよ・・・・・何とも思ってないわ」
目を伏せ呟くキリーに、スタンデッドは目を細め歩み寄る。近寄ってくる彼の足音にキリーはふと顔をあげる。
「嘘だな・・・・・・忘れられないのはお前も一緒だろう?・・・・・強がるな」
「・・・・・・・・・・・・強がってなんか・・・・・ない」
「お前、ついさっき俺に言ってくれたじゃねえか。『無理に過去にするな、忘れる必要もない』ってさ」
「スタンデッド・・・・・・」
「仇討ちだろうがなんだろうが昔のよしみだ・・・・・・・最後まで付き合ってやるよ」
「・・・・・・感謝するわ」
「ははっ、相変わらず可愛げねえなあ。『ありがと、チュvvv』ぐらいしてくれてもいいじゃんか」
ヘラリと笑い、キリーの頭をグリグリ撫でると、キリーがスタンデッドを見つめる。紅い双眸に思わずドキリとするスタンデッドだが、次の瞬間・・・・・・・
ドカッ!!!
キリーの裁きの足蹴りがスタンデッドの股間にダイレクトヒットした・・・・・・・・。
*****************
・・・・・・・キリーはスタンデッドの診療所を出て、夕闇迫る街を歩く。
先ほどの騒ぎが嘘のように、夕飯の買い出しの人たちで賑わう人々を避けるように、路地に入る。
キリーはふとコートのポケットに手を入れ、カードキーを取り出す。
薄い鋼板に不規則に穴の空いたカード。この時代としてはかなりの技術を要していることがわかる。
「・・・・・・・・・・一体何に使うのかしら・・・・・まあいいわ。行ってみればわかるもの・・・・・」
支所を潰しても、また新しい場所に魔の手を伸ばし、『実験体狩り』が行われる。
「・・・・・・やるなら元を絶たないとね。まずは本部の場所ね・・・・・・・仕方ないわ。バーに行ってみよう」
場所を割り出すのはキリーには無理だ。ましてや自分が聞き込みが下手なのは先ほど判明した。となれば、情報収集が得意な彼の協力が必要だ。しかし、ガセネタばかりと言ってしまった後でさすがのキリーも気後れする。
「・・・・・・・・なんか頼みづらいのよね・・・・・」
キリーはふうとため息を吐くと、マルロニがいるであろう『ハーフムーン』に向かい歩き出した。
**************
ふう・・・・;;;やっとここまできた~!!!
ほんと亀展開ですみませんっっ!!!!
スタンデッドには当たりが若干ソフトなキリー。(股間に蹴りを入れてましたが・・・・;;;)
小話で二人の出会いや、スタンデッドの過去を書こうと思います。
次回はいよいよサンテロットに乗り込みます!!
またまた亀展開になるかもですがよろしくお願いします!!
では、またノシ
Episode5[闇医者]
「お、キリーじゃないか。久しいな」
「・・・・・・・この人をお願い・・・・・」
「って、おいおい・・・・相変わらず冷たいなぁ・・・・・ん?こいつは・・・」
・・・・・・ここは、裏路地にある古びた廃ビル。そこに密かに看板を下げてる一室にキリーはいた。
相変わらずのキリーの様子に、向かい合う金髪オールバックの青年・・・スタンデッドは、困ったように肩を竦めると彼女が背負っている、男に気がつき眉を顰める。キリーはふと目を伏せると、
「・・・・・・・・病人」
というなり、傍にあったベッドに背負っていた彼をドサりと下ろす。するとスタンデッドが慌てたようにベッドに近寄る。
「おいおい・・・・随分手荒いな」
「早く診て」
「分かった分かった、そう睨むな」
キリーの睨みに苦笑いしながら、ベッドにぐったりと横たわるジャックの顔を覗き込む。その途端、スタンデッドの表情が険しくなる。
「キリー・・・・・・・こいつは・・・・・・」
「・・・・・・サンテロット・・・」
「!!!!・・・・・・・そうか。あの野郎どもまだこんなことを・・・・」
先ほどの飄々とした顔とは打って変わり、怒りに満ちた・・・しかし悲しみも滲ませる表情を浮かべ、吐き捨てるようにつぶやいた。そんな彼を横目で見るキリーの顔は、いつもの無表情とは違い僅かに悲壮感を漂わせていた。
「・・・・意識の混濁具合、筋肉の痙攣の度合い・・・・・・・まだ間に合うな。キリー、こいつは俺に任せてくれ・・・・・・・・・必ず助けてやる」
「・・・・・いくら?」
「金はいらねえ・・・・」
キリーに背を向けたまま言うスタンデッドに、キリーは軽く目を見開く。なぜなら、闇医師のせいかスタンデッドは金にうるさく、法外な金額を提示することが多いのだ。その彼が無料で治療するなんて、天地がひっくり返るほど異例なことだ。
「・・・・珍しいわね。明日は吹雪ね」
「・・・・・・・・・・これ以上、あいつらの思い通りにさせてたまるか。あいつだってきっと・・・・・・・」
「!!!・・・・・ごめんなさい」
「いいさ、もう・・・・過去の話だ」
「・・・・・・・でも忘れる事なんてできないんでしょう?」
「・・・・・・・・・キリー・・・・」
「・・・無理に過去にしなくてもいいじゃない・・・・・忘れる必要もない」
「・・・・・・・・・っ・・・・・・」
「・・・・・・彼女との思い出・・・・思い出す事をやめてしまったら、彼女が悲しむわ、きっと」
「・・・・・・そう、だな。何焦ってんだろうな俺は・・・・」
自嘲気味に笑うスタンデッドは、未だキリーに背を向けたまま静かに息を吐く。僅かに肩がふるえているのを知りながらも、キリーは見ないふりをして話を切り出した。
「・・・・・・私、乗り込むわ」
「な!!一人でか?」
スタンデッドは驚いて振り返りキリーを見る。キリーは表情を崩さず浅く頷く。
「もちろんよ」
「そりゃあ無謀ってもんだぜ。あそこがどんなに危険なのか知らないわけじゃないだろう?」
スタンデッドが心配する気持ちもわかる。技術に優れた集団のいるアジトだ、確かに何が待ち受けているのか分からない。しかもキリーはかつての脱走者であり、研究員を殲滅したお尋ね者。万が一、また捕まってしまったら・・・・・・・・・。
・・・・・しかし・・・・・・・
「・・・・・・かと言って、役人は役にたたないわ・・・・」
「た、確かにそうだが・・・・・・だからって一人じゃ・・・・」
「大丈夫よ、私なら・・・・・・・。簡単にやられたりしないわ」
「しかしな・・・・・・・」
「・・・・・・・・・スタンデッド、もし私が行かなくても誰かが行かなければいけないわ。・・・・・その日はいつくるのかしら・・・・?」
「キリー・・・・・・」
「私はね、早く奴らをどうにかしたい・・・・・。ここで動かなければ、また罪のない人たちが犠牲になって、誰かが泣くことになる・・・・・・」
キリーの脳裏に、兄を思い泣いていたマリーナの顔がよぎる。そして・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・レミリアの仇討ちも・・・・か?」
「・・・・・・・・・どうかしらね・・・・・・。もう過去のことよ・・・・・何とも思ってないわ」
目を伏せ呟くキリーに、スタンデッドは目を細め歩み寄る。近寄ってくる彼の足音にキリーはふと顔をあげる。
「嘘だな・・・・・・忘れられないのはお前も一緒だろう?・・・・・強がるな」
「・・・・・・・・・・・・強がってなんか・・・・・ない」
「お前、ついさっき俺に言ってくれたじゃねえか。『無理に過去にするな、忘れる必要もない』ってさ」
「スタンデッド・・・・・・」
「仇討ちだろうがなんだろうが昔のよしみだ・・・・・・・最後まで付き合ってやるよ」
「・・・・・・感謝するわ」
「ははっ、相変わらず可愛げねえなあ。『ありがと、チュvvv』ぐらいしてくれてもいいじゃんか」
ヘラリと笑い、キリーの頭をグリグリ撫でると、キリーがスタンデッドを見つめる。紅い双眸に思わずドキリとするスタンデッドだが、次の瞬間・・・・・・・
ドカッ!!!
キリーの裁きの足蹴りがスタンデッドの股間にダイレクトヒットした・・・・・・・・。
*****************
・・・・・・・キリーはスタンデッドの診療所を出て、夕闇迫る街を歩く。
先ほどの騒ぎが嘘のように、夕飯の買い出しの人たちで賑わう人々を避けるように、路地に入る。
キリーはふとコートのポケットに手を入れ、カードキーを取り出す。
薄い鋼板に不規則に穴の空いたカード。この時代としてはかなりの技術を要していることがわかる。
「・・・・・・・・・・一体何に使うのかしら・・・・・まあいいわ。行ってみればわかるもの・・・・・」
支所を潰しても、また新しい場所に魔の手を伸ばし、『実験体狩り』が行われる。
「・・・・・・やるなら元を絶たないとね。まずは本部の場所ね・・・・・・・仕方ないわ。バーに行ってみよう」
場所を割り出すのはキリーには無理だ。ましてや自分が聞き込みが下手なのは先ほど判明した。となれば、情報収集が得意な彼の協力が必要だ。しかし、ガセネタばかりと言ってしまった後でさすがのキリーも気後れする。
「・・・・・・・・なんか頼みづらいのよね・・・・・」
キリーはふうとため息を吐くと、マルロニがいるであろう『ハーフムーン』に向かい歩き出した。
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ふう・・・・;;;やっとここまできた~!!!
ほんと亀展開ですみませんっっ!!!!
スタンデッドには当たりが若干ソフトなキリー。(股間に蹴りを入れてましたが・・・・;;;)
小話で二人の出会いや、スタンデッドの過去を書こうと思います。
次回はいよいよサンテロットに乗り込みます!!
またまた亀展開になるかもですがよろしくお願いします!!
では、またノシ
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