Episode7~救いの手~
視界がはっきりしてくる。キリーを庇うように立ち塞がるマルロニとスタンデッドは、真っ直ぐディプロードを見る。
「女の子一人を大勢で…なんて男の風上にもおけねぇなあ…」
「ディプロード………レイナの仇、今こそ討たせてもらうぜ」
キリーは、二人の雰囲気がいつもと違う事に気付き、二人の背中を見る。
「ふん、類は友を呼ぶか。レイナ?はて、知らんな。小物の名前などいちいち覚えていられんからな」
「!!………貴様あ!!」
鼻で笑うディプロードに、スタンデッドは怒りをあらわにする。マルロニはそんな彼を制す。
「まあ、スタンデッド。相手はボケ始めた老いぼれだ。若者の気持ちなんて分からんさ。なあ爺さん、あんたには家族がいるかい?」
「ふん……そんなもの煩わしいだけだ。必要ない」
「あれぇ?おかしいな。確か孫がいなかったか?ナターシャだっけか。かなりの別嬪さん(笑)」
「!!!な、なぜそのことを!!まさかあの子に何かしたのか!!」
「………だったらどうするよ」
「赦さん!!お前達をこの手で殺してやる!!」
さっきの余裕に満ちた表情とは一変し、焦り動揺するディプロードに、マルロニは静かに言った。
「だったら、スタンデッドやキリーの気持ちも理解してやれんだろ?さっきから俺達を小物小物って、てめぇが一番小物じゃねぇか」
「な、なに…!!」
「いままで散々、人の大切な物を奪って壊しておいて、自分のもんを傷つけんななんて、ムシが良すぎじゃね?」
「く………」
「あんたが孫を愛してるように、こいつらにも愛する家族や恋人がいた。それをまるで遊び飽きた玩具みたいに言うのは人としてどうなんだ?」
いつもの飄々ととした口調だが、静かに含まれる怒気が感じられる。
「黙れ!マフィアあがりの俗物な貴様に私の崇高で偉大な研究を理解できるか!!私の研究はこの国を強固にするためのものなのだ!どこよりも強く大きくするためのな!!」
「そのためなら、何してもいいのかよ!!こいつらだけじゃねぇ……街の奴らがどれだけ犠牲になったか、どんだけの人達が泣いたのか…………分からねぇのか!!?」
「大きな成功のためには小さな犠牲も必要なのだ」
「……………………ああ、分かったよ………。つまり止めるつもりはないんだな?」
「ふん、当たり前だ。私の研究はまだ半ばよ。完璧にするためには、キリー、唯一の完全体である貴様が必要なのだ」
「「!!」」
マルロニとスタンデッドが驚いたようにキリーに振り返る。その視線を受け、キリーは目を伏せ静かに言った。
「……私は、サンテロットの被検体。私は一度死んだ事になってるわ」
「な、なんだと」
「………兵器か?」
兵器…その言葉にキリーの顔が僅かに歪む。きっと二人は自分を非難するだろう。特にスタンデッドは、兵器にレイナを殺されているのだ。同じ兵器の自分を許せないはずだ。
……秘密はいつかバレてしまうもの。覚悟はしていた。
「私が憎い?スタンデッド」
「……な」
「あなたの大切な人を殺した奴らと同じ私を。いくら憎んでくれても構わないわ。赦してとは言わない。でもせめて今は……時間をくれる?………すべて終わらせるわ……私の手で……」
キリーはそう言うと、背負っている剣に手をかける。その瞬間、
バチバチ………!!
黒い閃光がキリーの周りに走り、いままでの彼女とは全く違うオーラを纏う。
「キリー!!待て!やめろ!!」
呆然と彼女を見つめるスタンデッドに対し、マルロニは焦ったような声を出し、キリーを止めようとする。……マルロニは知っているのだ。剣を持ち覚醒したキリーの恐ろしさを…………。なぜなら彼自身、覚醒した彼女に瀕死の重症を負わされた経験があるからだ。
彼女は『終わらせる』と言った。さらに覚醒したと言うことは…間違いなくディプロードを殺す気だ。ただでさえ、サンテロットの支所を潰し、研究員を何人か殺しているキリー。役人を手駒にしたディプロードを殺したりしたら………それこそ処断は免れない。それに……………。
「ふん…キリーよ。お前はどこまでも愚かな奴よ。命の恩人に刃を向けるとは…………私を殺せばお前も終わりだ。たとえこの場を逃げ切ったとしても、法の番人からは逃げられん。民衆の前でギロチンだ」
「……………………遺言はそれだけ?」
「愚かな………貴様の妹も無能な姉に呆れとるだろうなあ………ハハハハハ!!」
その瞬間、ディプロードの視界からキリーが消えた。あまりの早さに、ディプロードはキョロキョロと辺りを見回す。
「くそ………どこに行った!!」
包囲していた連中もキリーの動きに付いていけず、武器を構え見回す。
と、その時
「どこを見ているの?」
ディプロードの背後に、剣を構えた金目のキリーがいた。
「な、なに………まさかここまで…………」
あまりの事に動揺を隠せないディプロードに、射るような視線を向けるキリーは、無言で剣を振り上げたとき、警備隊は一斉にキリーに発砲した。
ダダダダダダダダ…………
「「キリー!!!」」
マルロニとスタンデッドの叫び声が響いた。
キリーは、表情一つ変えず、自分に発砲している警備隊を見据える。その間にも彼女の腕や肩、脚や頬に弾丸が掠め、鮮やかな紅が散る。と、キリーの体が僅かに跳ねる。鮮血を吹き出す胸を押さえ膝を落とすキリーに発砲は止まない。
「やめろおお!!!」
マルロニは力の限り叫ぶと、キリーに向かい疾走する。弾丸をすれすれで避け、キリーを庇うように抱きしめた。そして、懐の拳銃を撃つ。何人かに命中したが、数が多過ぎて、マルロニの肩に弾丸が命中し、血が吹き出した。白いカッターシャツが次第に紅く赤く染まり、大量の出血でマルロニも意識が朦朧としてくる。しかし、腕の中でグッタリと動かないキリーを離そうとはしなかった。
「は……あぁ、キリー……まだくたばんじゃねぇぞ。お前はこんな簡単にやられる奴じゃ……ねぇはずだぜ。………それにな……お前に………会わせたい人がいるんだ…………だから………生きろ!!キリー…」
マルロニの言葉に答えるようにキリーは静かに目薄く開ける。その目には彼女自身、もう枯れてしまったと思っていた熱い雫が流れた。すでにマルロニは殆ど意識がなく、無意識にキリーを抱きしめる。鳴り止まない銃声にマルロニは死を覚悟した。その時だった。
ズダダダダダダ……
マシンガンの音が響き、警備隊が次々倒れていく。
マルロニは後ろに視線をやると、
「スイッチ入んのおせーんだよ………馬鹿スタンデッド…」
「悪い……だがもう迷わん」
そこには、マシンガンを構え、いつものように笑うスタンデッドがいた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
やっとこUp出来ました!かなりグロテスクなシーンテンコ盛りですみませんっ[D:63915]
今回、バトルを入れると予告したにも関わらずこんなグダグダ展開になってしまいました。
ここからは、私の呟きです。
スタンデッドとマルロニは、キリーが兵器であると言うことは今まで知りませんでした。キリーが言わなかったのもありますが。(スタンデッドの過去の事もあるので)
マルロニは多分、サンテロットの事を調べているうちにキリーの事をチラリと聞いたかしたんでしょう。確信はなく、キリーの言葉を聞いて今度こそ驚いた…感じです。
でも、キリーに対しての思いは変わりません。いつまでも彼女はマルロニの妹分なのです。
一方、スタンデッドの心境としては、サンテロットは確かに許せないです。最愛の人を亡くしている訳ですから。だからと言って、キリーが『兵器』と知ったからと言って嫌いになるとか、殺意が沸くとかはないと思います。
彼もまた、キリーを慕う者の一人で、義理堅い性格なので最後までキリーとともに闘う覚悟を決めたのです。
最後の「もう迷わない」と言うのは、キリーとともにサンテロットを討つ事の覚悟をしめしたスタンデッドの言葉です。
さて、グダグダと長くなりましてすみません。
次回はもっと進めたいと思います。
見捨てないで見守っていただけると泣いて喜びます。
では、次回で!!
視界がはっきりしてくる。キリーを庇うように立ち塞がるマルロニとスタンデッドは、真っ直ぐディプロードを見る。
「女の子一人を大勢で…なんて男の風上にもおけねぇなあ…」
「ディプロード………レイナの仇、今こそ討たせてもらうぜ」
キリーは、二人の雰囲気がいつもと違う事に気付き、二人の背中を見る。
「ふん、類は友を呼ぶか。レイナ?はて、知らんな。小物の名前などいちいち覚えていられんからな」
「!!………貴様あ!!」
鼻で笑うディプロードに、スタンデッドは怒りをあらわにする。マルロニはそんな彼を制す。
「まあ、スタンデッド。相手はボケ始めた老いぼれだ。若者の気持ちなんて分からんさ。なあ爺さん、あんたには家族がいるかい?」
「ふん……そんなもの煩わしいだけだ。必要ない」
「あれぇ?おかしいな。確か孫がいなかったか?ナターシャだっけか。かなりの別嬪さん(笑)」
「!!!な、なぜそのことを!!まさかあの子に何かしたのか!!」
「………だったらどうするよ」
「赦さん!!お前達をこの手で殺してやる!!」
さっきの余裕に満ちた表情とは一変し、焦り動揺するディプロードに、マルロニは静かに言った。
「だったら、スタンデッドやキリーの気持ちも理解してやれんだろ?さっきから俺達を小物小物って、てめぇが一番小物じゃねぇか」
「な、なに…!!」
「いままで散々、人の大切な物を奪って壊しておいて、自分のもんを傷つけんななんて、ムシが良すぎじゃね?」
「く………」
「あんたが孫を愛してるように、こいつらにも愛する家族や恋人がいた。それをまるで遊び飽きた玩具みたいに言うのは人としてどうなんだ?」
いつもの飄々ととした口調だが、静かに含まれる怒気が感じられる。
「黙れ!マフィアあがりの俗物な貴様に私の崇高で偉大な研究を理解できるか!!私の研究はこの国を強固にするためのものなのだ!どこよりも強く大きくするためのな!!」
「そのためなら、何してもいいのかよ!!こいつらだけじゃねぇ……街の奴らがどれだけ犠牲になったか、どんだけの人達が泣いたのか…………分からねぇのか!!?」
「大きな成功のためには小さな犠牲も必要なのだ」
「……………………ああ、分かったよ………。つまり止めるつもりはないんだな?」
「ふん、当たり前だ。私の研究はまだ半ばよ。完璧にするためには、キリー、唯一の完全体である貴様が必要なのだ」
「「!!」」
マルロニとスタンデッドが驚いたようにキリーに振り返る。その視線を受け、キリーは目を伏せ静かに言った。
「……私は、サンテロットの被検体。私は一度死んだ事になってるわ」
「な、なんだと」
「………兵器か?」
兵器…その言葉にキリーの顔が僅かに歪む。きっと二人は自分を非難するだろう。特にスタンデッドは、兵器にレイナを殺されているのだ。同じ兵器の自分を許せないはずだ。
……秘密はいつかバレてしまうもの。覚悟はしていた。
「私が憎い?スタンデッド」
「……な」
「あなたの大切な人を殺した奴らと同じ私を。いくら憎んでくれても構わないわ。赦してとは言わない。でもせめて今は……時間をくれる?………すべて終わらせるわ……私の手で……」
キリーはそう言うと、背負っている剣に手をかける。その瞬間、
バチバチ………!!
黒い閃光がキリーの周りに走り、いままでの彼女とは全く違うオーラを纏う。
「キリー!!待て!やめろ!!」
呆然と彼女を見つめるスタンデッドに対し、マルロニは焦ったような声を出し、キリーを止めようとする。……マルロニは知っているのだ。剣を持ち覚醒したキリーの恐ろしさを…………。なぜなら彼自身、覚醒した彼女に瀕死の重症を負わされた経験があるからだ。
彼女は『終わらせる』と言った。さらに覚醒したと言うことは…間違いなくディプロードを殺す気だ。ただでさえ、サンテロットの支所を潰し、研究員を何人か殺しているキリー。役人を手駒にしたディプロードを殺したりしたら………それこそ処断は免れない。それに……………。
「ふん…キリーよ。お前はどこまでも愚かな奴よ。命の恩人に刃を向けるとは…………私を殺せばお前も終わりだ。たとえこの場を逃げ切ったとしても、法の番人からは逃げられん。民衆の前でギロチンだ」
「……………………遺言はそれだけ?」
「愚かな………貴様の妹も無能な姉に呆れとるだろうなあ………ハハハハハ!!」
その瞬間、ディプロードの視界からキリーが消えた。あまりの早さに、ディプロードはキョロキョロと辺りを見回す。
「くそ………どこに行った!!」
包囲していた連中もキリーの動きに付いていけず、武器を構え見回す。
と、その時
「どこを見ているの?」
ディプロードの背後に、剣を構えた金目のキリーがいた。
「な、なに………まさかここまで…………」
あまりの事に動揺を隠せないディプロードに、射るような視線を向けるキリーは、無言で剣を振り上げたとき、警備隊は一斉にキリーに発砲した。
ダダダダダダダダ…………
「「キリー!!!」」
マルロニとスタンデッドの叫び声が響いた。
キリーは、表情一つ変えず、自分に発砲している警備隊を見据える。その間にも彼女の腕や肩、脚や頬に弾丸が掠め、鮮やかな紅が散る。と、キリーの体が僅かに跳ねる。鮮血を吹き出す胸を押さえ膝を落とすキリーに発砲は止まない。
「やめろおお!!!」
マルロニは力の限り叫ぶと、キリーに向かい疾走する。弾丸をすれすれで避け、キリーを庇うように抱きしめた。そして、懐の拳銃を撃つ。何人かに命中したが、数が多過ぎて、マルロニの肩に弾丸が命中し、血が吹き出した。白いカッターシャツが次第に紅く赤く染まり、大量の出血でマルロニも意識が朦朧としてくる。しかし、腕の中でグッタリと動かないキリーを離そうとはしなかった。
「は……あぁ、キリー……まだくたばんじゃねぇぞ。お前はこんな簡単にやられる奴じゃ……ねぇはずだぜ。………それにな……お前に………会わせたい人がいるんだ…………だから………生きろ!!キリー…」
マルロニの言葉に答えるようにキリーは静かに目薄く開ける。その目には彼女自身、もう枯れてしまったと思っていた熱い雫が流れた。すでにマルロニは殆ど意識がなく、無意識にキリーを抱きしめる。鳴り止まない銃声にマルロニは死を覚悟した。その時だった。
ズダダダダダダ……
マシンガンの音が響き、警備隊が次々倒れていく。
マルロニは後ろに視線をやると、
「スイッチ入んのおせーんだよ………馬鹿スタンデッド…」
「悪い……だがもう迷わん」
そこには、マシンガンを構え、いつものように笑うスタンデッドがいた。
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やっとこUp出来ました!かなりグロテスクなシーンテンコ盛りですみませんっ[D:63915]
今回、バトルを入れると予告したにも関わらずこんなグダグダ展開になってしまいました。
ここからは、私の呟きです。
スタンデッドとマルロニは、キリーが兵器であると言うことは今まで知りませんでした。キリーが言わなかったのもありますが。(スタンデッドの過去の事もあるので)
マルロニは多分、サンテロットの事を調べているうちにキリーの事をチラリと聞いたかしたんでしょう。確信はなく、キリーの言葉を聞いて今度こそ驚いた…感じです。
でも、キリーに対しての思いは変わりません。いつまでも彼女はマルロニの妹分なのです。
一方、スタンデッドの心境としては、サンテロットは確かに許せないです。最愛の人を亡くしている訳ですから。だからと言って、キリーが『兵器』と知ったからと言って嫌いになるとか、殺意が沸くとかはないと思います。
彼もまた、キリーを慕う者の一人で、義理堅い性格なので最後までキリーとともに闘う覚悟を決めたのです。
最後の「もう迷わない」と言うのは、キリーとともにサンテロットを討つ事の覚悟をしめしたスタンデッドの言葉です。
さて、グダグダと長くなりましてすみません。
次回はもっと進めたいと思います。
見捨てないで見守っていただけると泣いて喜びます。
では、次回で!!
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