『私に恥をかかせた……赦さない…絶対に!!』
雛が大怪我をし、病院に運ばれてから、美香は警察や教師に色々聞かれたが、目を潤ませ辛さに堪える演技をし、涙ながらに自分が「雛にイジメられていた、だからみんなは私の為にやってしまった」と訴えた。トドのつまり、「自分は手を下していないのだから関係ない」ということである。まるっきり捨駒扱いにも関わらず、クラスメート達は美香を庇い、美香を悲しませた雛を非難した。
誰一人として、美香の態度や言動に疑問を持たなくなっていた。そんなクラスメート達を尻目に、美香は真二の元に向かった。彼に「雛ちゃんから暴力を受けた」と訴えて引き離し、完全に自分のものにするために……。
雛の絶望に満ちた顔と、真二を彼氏に出来るという嬉しさ。美香は勝利を確信していた。
しもべの男子に保健室から包帯を大量に盗ませ、かすり傷一つない腕や脚、片目にも包帯を巻く。この姿を見れば真二もきっと自分を選ぶはず………。
すべて上手くいく……はずだった。
しかし、その自信は粉々に砕かれたのだ。
――‐
真二の家に着いた美香は、母親に自分は真二の彼女だと告げ、家に上がった。にやける顔を抑え、母親と共に部屋に向かう。
「真二、彼女さんが来てくれたわよ」
母親がそう呼びかけ、ドアを開けると、
「…!!!母さん、なんでそいつを部屋に連れて来たんだよ!!」
ベッドに腰掛けた真二が、声を荒げ怒鳴った。怪我もいくらか良くなったようで顔色はいい。
母親は困った顔をして、隣にいる美香に謝る。
「ごめんなさいね。怪我のショックでナーバスになってるみたいで。真二!せっかく来てくれたのにそんな事言っちゃダメよ」
「そいつは彼女なんかじゃない!!顔も見たくないんだ……追い出してくれよ!!」
「真二!」
「おばさん、……いいんです。ごめんね……真二くん………すみません、二人っきりにしてもらえますか?」
美香は目に涙を浮かべ、健気な子を演じる。母親は、申し訳なさそうに美香を見ると、下に降りて行った。すると、美香は部屋に入り、真二の目の前に立つ。
「真二くん……見て、この怪我。全部雛ちゃんにやられたの……。これでもまだ、雛ちゃんの事好きなの?」
「・・・・」
「私、いっぱい我慢した。皆は私を護ろうとしてくれるのに…真二くんは違うの?雛ちゃんはね、皆を、真二くんを裏切ったんだよ?なのに……」
目を伏せ、悲しそうに呟く美香を無言で睨みつけていた真二だったが、何を思ったのか美香の腕を掴み、ベッドに投げる。一瞬、驚いた美香だったが、クスリと笑うとわざと怯えたように真二を見る。
「真二くん……」
「……脱げ」
「え?」
「服、脱げ」
美香は心の中でせせら笑う。ついに…ついに自分のものになる!!美香は怯えた演技をしたまま、制服を一枚一枚脱いでいく。シャツを脱ぎ終わったとき、真二は美香に覆いかぶさった。美香は真二の首に手を……回そうとした、が、その手は真二に掴まれていた。それは包帯が巻かれた腕。美香はハッとし、引っ込めようとするが、真二は離さない。慌てる美香を冷たく見下ろし、言い放った。
「怪我してたんじゃなかったのか?……やっぱりな。随分と気合いが入った演技だな……あいつの時と同じ手だ。クラスの奴らと違って、俺は騙されないぜ、長谷川……」
「!!」
「何期待してたんだ?さっさと服着ろよ。何度も言ってるだろ?俺はお前が大嫌いなんだよ!!」
「な!!」
「はやく出ていけよ。俺の部屋に入っていいのは…茜とあいつだけだ」
真二は唖然としている美香から離れ、迷惑そうに脱いだ服を投げる。美香は、よっぽどショックだったのか、俯き体を震わせ、
「許さない……絶対に後悔させてあげるわ!!ふふ……また襲われないように気をつけてね……」
「またって事は、あいつらはお前の差し金だったんだな。何度も同じ手に引っ掛かるかよ……お前はもう終わりだ。諦めろ……」
「はあ?訳わかんない!!終わり?あんたが終わりなのよ?真二くん!わかってんのかなあ……私のしもべ達がどれだけヤバい奴らなのか(笑)」
「……帰れ…」
「………!!ふ、ふん!そんな意気がっていられるのも今の内よ!泣いて謝ったって許してあげないから!!」
「帰れ!!」
ドン………バタン!!
真二は部屋の外に美香を投げ出し、服を放り荒々しく扉を閉めた。美香は、暫く呆然としていたが、ノロノロと服を着て真二の家を後にした。そして、しもべに電話を掛ける。ワンコールで出てきたしもべに美香は低い暗い声で、
とだけ言った。しもべは驚いたようだったが、美香に嫌われてしまうのは嫌だと一つ返事で了解した。用件だけを伝え電話を切った美香の顔は狂気と怒りに満ちていた。
自分を振った…侮辱した……恥をかかせたあの男を地獄に落としてやる……!!
「ふ、ふふふ……アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
狂ったように笑う美香は、その様子を見ている存在に気づかないまま、自宅に向かい歩いていく。
美香がいなくなった後、二匹の蝶が人の姿に変わる。一人はピンク、もう一人はパープルの髪を持ち、タキシードを模した服を身につけ、シルクハットを被っている。
「あれがエイプリルの獲物ね……。なかなか楽しめそうじゃない」
「メイ……ダメよ。今回は霧島真二を護衛するのが私たちの務め。あの子はエイプリル達に任せるのよ」
「分かってるわよリープ。私もそこまで、でしゃばりじゃありません。!!……来たわね。さて、一仕事始めますか?」
「随分と早い到着ね。最高の悪夢に誘いましょう……」
「………リープ。ヤル気満々ね。人の事言えないじゃない……」
「あら、メイ。あなたはヤル気出ないの?なら私がやらせてもらおうかしら」
「ち、ちょっと!!独り占めはズルイわよ!!」
「ふふ…冗談よ。さあ!行くわよ!!」
「はいはい……オッケー!!」
美香の電話で呼び出されたしもべの男達。どう見てもカタギではない。真二の家には母親もいる。メイとリープは、男達の前に立ち塞がるように踊り出る。
―数分後……男達はすべて永遠に醒めない悪夢へと、旅立っていった。
《崩れる仮面》
雛が大怪我をし、病院に運ばれてから、美香は警察や教師に色々聞かれたが、目を潤ませ辛さに堪える演技をし、涙ながらに自分が「雛にイジメられていた、だからみんなは私の為にやってしまった」と訴えた。トドのつまり、「自分は手を下していないのだから関係ない」ということである。まるっきり捨駒扱いにも関わらず、クラスメート達は美香を庇い、美香を悲しませた雛を非難した。
もう狂っていたのだ…
ナニモカモガ…
ナニモカモガ…
誰一人として、美香の態度や言動に疑問を持たなくなっていた。そんなクラスメート達を尻目に、美香は真二の元に向かった。彼に「雛ちゃんから暴力を受けた」と訴えて引き離し、完全に自分のものにするために……。
雛の絶望に満ちた顔と、真二を彼氏に出来るという嬉しさ。美香は勝利を確信していた。
しもべの男子に保健室から包帯を大量に盗ませ、かすり傷一つない腕や脚、片目にも包帯を巻く。この姿を見れば真二もきっと自分を選ぶはず………。
すべて上手くいく……はずだった。
しかし、その自信は粉々に砕かれたのだ。
――‐
真二の家に着いた美香は、母親に自分は真二の彼女だと告げ、家に上がった。にやける顔を抑え、母親と共に部屋に向かう。
「真二、彼女さんが来てくれたわよ」
母親がそう呼びかけ、ドアを開けると、
「…!!!母さん、なんでそいつを部屋に連れて来たんだよ!!」
ベッドに腰掛けた真二が、声を荒げ怒鳴った。怪我もいくらか良くなったようで顔色はいい。
母親は困った顔をして、隣にいる美香に謝る。
「ごめんなさいね。怪我のショックでナーバスになってるみたいで。真二!せっかく来てくれたのにそんな事言っちゃダメよ」
「そいつは彼女なんかじゃない!!顔も見たくないんだ……追い出してくれよ!!」
「真二!」
「おばさん、……いいんです。ごめんね……真二くん………すみません、二人っきりにしてもらえますか?」
美香は目に涙を浮かべ、健気な子を演じる。母親は、申し訳なさそうに美香を見ると、下に降りて行った。すると、美香は部屋に入り、真二の目の前に立つ。
「真二くん……見て、この怪我。全部雛ちゃんにやられたの……。これでもまだ、雛ちゃんの事好きなの?」
「・・・・」
「私、いっぱい我慢した。皆は私を護ろうとしてくれるのに…真二くんは違うの?雛ちゃんはね、皆を、真二くんを裏切ったんだよ?なのに……」
目を伏せ、悲しそうに呟く美香を無言で睨みつけていた真二だったが、何を思ったのか美香の腕を掴み、ベッドに投げる。一瞬、驚いた美香だったが、クスリと笑うとわざと怯えたように真二を見る。
「真二くん……」
「……脱げ」
「え?」
「服、脱げ」
美香は心の中でせせら笑う。ついに…ついに自分のものになる!!美香は怯えた演技をしたまま、制服を一枚一枚脱いでいく。シャツを脱ぎ終わったとき、真二は美香に覆いかぶさった。美香は真二の首に手を……回そうとした、が、その手は真二に掴まれていた。それは包帯が巻かれた腕。美香はハッとし、引っ込めようとするが、真二は離さない。慌てる美香を冷たく見下ろし、言い放った。
「怪我してたんじゃなかったのか?……やっぱりな。随分と気合いが入った演技だな……あいつの時と同じ手だ。クラスの奴らと違って、俺は騙されないぜ、長谷川……」
「!!」
「何期待してたんだ?さっさと服着ろよ。何度も言ってるだろ?俺はお前が大嫌いなんだよ!!」
「な!!」
「はやく出ていけよ。俺の部屋に入っていいのは…茜とあいつだけだ」
真二は唖然としている美香から離れ、迷惑そうに脱いだ服を投げる。美香は、よっぽどショックだったのか、俯き体を震わせ、
「許さない……絶対に後悔させてあげるわ!!ふふ……また襲われないように気をつけてね……」
「またって事は、あいつらはお前の差し金だったんだな。何度も同じ手に引っ掛かるかよ……お前はもう終わりだ。諦めろ……」
「はあ?訳わかんない!!終わり?あんたが終わりなのよ?真二くん!わかってんのかなあ……私のしもべ達がどれだけヤバい奴らなのか(笑)」
「……帰れ…」
「………!!ふ、ふん!そんな意気がっていられるのも今の内よ!泣いて謝ったって許してあげないから!!」
「帰れ!!」
ドン………バタン!!
真二は部屋の外に美香を投げ出し、服を放り荒々しく扉を閉めた。美香は、暫く呆然としていたが、ノロノロと服を着て真二の家を後にした。そして、しもべに電話を掛ける。ワンコールで出てきたしもべに美香は低い暗い声で、
「霧島真二を殺して……」
とだけ言った。しもべは驚いたようだったが、美香に嫌われてしまうのは嫌だと一つ返事で了解した。用件だけを伝え電話を切った美香の顔は狂気と怒りに満ちていた。
自分を振った…侮辱した……恥をかかせたあの男を地獄に落としてやる……!!
「ふ、ふふふ……アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
狂ったように笑う美香は、その様子を見ている存在に気づかないまま、自宅に向かい歩いていく。
美香がいなくなった後、二匹の蝶が人の姿に変わる。一人はピンク、もう一人はパープルの髪を持ち、タキシードを模した服を身につけ、シルクハットを被っている。
「あれがエイプリルの獲物ね……。なかなか楽しめそうじゃない」
「メイ……ダメよ。今回は霧島真二を護衛するのが私たちの務め。あの子はエイプリル達に任せるのよ」
「分かってるわよリープ。私もそこまで、でしゃばりじゃありません。!!……来たわね。さて、一仕事始めますか?」
「随分と早い到着ね。最高の悪夢に誘いましょう……」
「………リープ。ヤル気満々ね。人の事言えないじゃない……」
「あら、メイ。あなたはヤル気出ないの?なら私がやらせてもらおうかしら」
「ち、ちょっと!!独り占めはズルイわよ!!」
「ふふ…冗談よ。さあ!行くわよ!!」
「はいはい……オッケー!!」
美香の電話で呼び出されたしもべの男達。どう見てもカタギではない。真二の家には母親もいる。メイとリープは、男達の前に立ち塞がるように踊り出る。
―数分後……男達はすべて永遠に醒めない悪夢へと、旅立っていった。
《崩れる仮面》
End
End
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