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――…
―…


旧家は庭の最奥にありました。長い間手入れをされていない回りの雑草は伸び放題。建物にもビッシリと蔦がはっていました。

「ここが……」
「さ、鍵を開けたよ。行きましょう」
「は、はい!」

私は祖母と一緒に旧家に入りました。
と、その時、

「??」

何かの気配がしたのです。(もしかして、基くん?)と思ったのですが、次の瞬間ぞわぞわっと寒気が走ったんです。なぜなら……

(一人じゃない……!?)

他にも気配がしたんです。しかも、一つや二つじゃない………無数の気配が。

「……暁子ちゃんも感じるのかい」
「え?」
「この家にはなにかがいるんだよ……」
「でも、おばあちゃんは何も見なかったし、いないって……」
「……あれは松子さんを刺激しないようにそう言ったんだよ。この家は松子さんにとって良くないモノが沢山住み着いているからね…」

叔母と一体なんの関係があるのか………。
聞こうか迷いましたが、結局聞けませんでした。
それに、聞いたところで祖母は言わないだろうと……そんな気がして。

私達は、二階建ての旧家の一階を用心しながら廻りました。

居間、台所、和室……などを見てみましたが、基くんはおろか、不審者もいませんでした。
祖母と私はホッと息を付くと、二階に上がるため、階段の前に行きました。すると祖母は黙り込み、暗闇に包まれた階段を凝視していました。
いつまで経っても動かない祖母に、不思議に思って声をかけました。

「おばあちゃん、どうしたの?」
「……っ!!あ、なんでもないよ。さあ、行こうかね。足元、気をつけて」
「………?うん」

ギシギシとなる階段を上っていくと…

「ここは……?」
「ここは客間なのよ。お客様が来たときにお泊りになる部屋なの」
「そうなんだ……っ!?」

部屋を覗き込むと同時に、また寒気が走りました。

(見られてる……!?後ろから?)

慌てて振り返ると、そこには誰もいない。思わず隣にいた祖母を見ると………


祖母は私を……正確には私の背後を凝視していたんです。


「……おばあちゃん?」
「……………」
「おばあちゃん!!」
「!!暁子ちゃん!出ましょう!」
「え?基くんは?」
「いいから、早く!!」

祖母は、老人とは思えないほどの力で、私を引きずるように引っ張り旧家を出ました。


………結局、基くんはどこにもいませんでした。
幸弘伯父さん達や警察も家の周辺を捜索しましたが、見つからず………。


一年経った今も、基くんは行方不明のままなんです。


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