Without you
「君でなければ…」
「貴方でなくては…」
『この心は満たされない』
ニコルが天に帰ってから、一週間が過ぎようとしていた。
確かにニコルの言う通り、『願い』は叶っていた。
まず、疎遠だった友達から連絡があり、よく遊ぶようになったこと、以前より割の良いバイトが見つかり、環境も申し分ない。僕は、ニコルの事を思い出さないように、仕事に遊びにと毎日を忙しく過ごした。
しかし、一度心に潜んだ想いはなかなか離れてはくれず、人混みを見ると、僕は無意識にニコルを探すようになった。
もう二度と会えないのだ。それは、あの日身に染みて分かった事。でも、万に一の確率を…奇跡を信じたい……。そんな思いで過ごしていた。
そして、いい加減吹っ切れなければと思っていた矢先の出来事。
……奇跡が起きたのだ……
その日、僕はバイトが遅くなり、帰路に着いたのは夜の11時。途中、コンビニで弁当と飲み物、ちょっとお菓子も買い、トボトボと歩いていた。
アパートに着いたとき、何故か違和感を感じ、自分の部屋を見上げる。
……明かりが付いている…
泥棒か?と思い、慌ててドアの前に行き、鍵を開けた。恐る恐る開いて見ると、部屋に誰かがいる気配。思い切って中に入り、部屋を覗いた僕は、言葉を失った。
……目の前には、金色でくせ毛のショートカット。初めて出会った時のように後ろを向いているが、間違いなく彼女。会いたくて会いたくて仕方がなかった、僕の大切な彼女。
「……ニコル……?」
掠れた声で呼び掛けると、目の前の少女はピクリと体を揺らし、ゆっくりと振り返った。
「……主……」
今にも泣きそうな顔で、声が震えている。しばらく見つめ合っていると、ニコルが悲しそうに目を伏せ、
「ごめんなさい」
と呟いた。
何故謝るんだ……と思い、問い掛けようとしたとき、ニコルがガバッと頭を下げた。
「主、私……女神になれませんでした……」
「え?」
「落ちちゃいました。最後の最後で失敗しちゃって……」
意味が分からず、いや、ニコルが女神になれなかったのは分かった。
………僕のせいだろうか……。
僕が黙っていると、ニコルが申し訳なさそうに話し出した。
「最終試験に失敗したんです。最終試験は…主となった者の一番の願いを叶えること。私は一年間、主と過ごしていましたが、主の願いが最後まで分からなかったのです。
…ただ、以前に人間関係で悩んでいると聞いた事を思い出しまして、それを叶えたのです。
ですが結果は失格でした。神は私に言いました。
『あの者が真に望むのは何か…それはお前自信が望んでいる事だ。だが、その願いを叶えると、お前が女神になる事が不可能となる。
…あの者の真の願いを叶えるかは、お前に任せよう…』
…私は悩みました。私が望む事を主も望む……それが真の願い。もし、そうだとしたら…………でも、」
ニコルはそこまで言うと、ほんのりと顔を染め、僕を見つめはにかむように微笑む。
「私の一方的な想いかもしれませんから……」
気にしないでください。と呟くニコルを僕は抱きしめていた。突然の事に固まるニコル。そんな事はお構いなしで僕は想いを彼女に吐き出した。
「一方的って、勝手に決めるなよ!!お前が突然いなくなってから、僕がどんな想いで毎日を過ごしていたのか分かるか?」
「主…」
「いつまでも傍で笑ってくれたら、一緒にいられたらって思ってたのに……」
「っ……主……」
「勝手に自己完結して、さっさと帰って……バカヤロウ!!気付くの遅すぎるんだよ!!」
「主……ご、めんなさい……」
じんわりと広がる気持ちに、思わず涙が滲む。腕の中で嗚咽しているニコルの肩を優しく掴み、少し体を離す。
「ニコル」
「……はい…」
……緊張してきた。こんなに緊張したのなんて、大学の受験以来だ。でも、ここで言わなければ!僕は深く深呼吸をしてから、ニコルの目を真っすぐ見て言った。
「…君が好きだ。ずっと僕の傍にいてくれ……」
ずっと言いたかった、伝えたかった言葉を……。
驚き、目を見開くニコルだったが、見開かれた目から大粒の涙を零す。そして、精一杯の笑顔を僕に向け、
「私、私も主の事が好き………大好きです!!私で宜しければ、お側にいさせてください…」
「ニコル…君じゃなきゃダメだ。君じゃなきゃ嫌だ」
「っ……主っ」
…満たされた気持ちだ。
これからも、ずっと君と僕は………
「僕は」
「私は」
『君(あなた)なしではいられない……』
「君でなければ…」
「貴方でなくては…」
『この心は満たされない』
Without You…
ニコルが天に帰ってから、一週間が過ぎようとしていた。
確かにニコルの言う通り、『願い』は叶っていた。
まず、疎遠だった友達から連絡があり、よく遊ぶようになったこと、以前より割の良いバイトが見つかり、環境も申し分ない。僕は、ニコルの事を思い出さないように、仕事に遊びにと毎日を忙しく過ごした。
しかし、一度心に潜んだ想いはなかなか離れてはくれず、人混みを見ると、僕は無意識にニコルを探すようになった。
もう二度と会えないのだ。それは、あの日身に染みて分かった事。でも、万に一の確率を…奇跡を信じたい……。そんな思いで過ごしていた。
そして、いい加減吹っ切れなければと思っていた矢先の出来事。
……奇跡が起きたのだ……
その日、僕はバイトが遅くなり、帰路に着いたのは夜の11時。途中、コンビニで弁当と飲み物、ちょっとお菓子も買い、トボトボと歩いていた。
アパートに着いたとき、何故か違和感を感じ、自分の部屋を見上げる。
……明かりが付いている…
泥棒か?と思い、慌ててドアの前に行き、鍵を開けた。恐る恐る開いて見ると、部屋に誰かがいる気配。思い切って中に入り、部屋を覗いた僕は、言葉を失った。
……目の前には、金色でくせ毛のショートカット。初めて出会った時のように後ろを向いているが、間違いなく彼女。会いたくて会いたくて仕方がなかった、僕の大切な彼女。
「……ニコル……?」
掠れた声で呼び掛けると、目の前の少女はピクリと体を揺らし、ゆっくりと振り返った。
「……主……」
今にも泣きそうな顔で、声が震えている。しばらく見つめ合っていると、ニコルが悲しそうに目を伏せ、
「ごめんなさい」
と呟いた。
何故謝るんだ……と思い、問い掛けようとしたとき、ニコルがガバッと頭を下げた。
「主、私……女神になれませんでした……」
「え?」
「落ちちゃいました。最後の最後で失敗しちゃって……」
意味が分からず、いや、ニコルが女神になれなかったのは分かった。
………僕のせいだろうか……。
僕が黙っていると、ニコルが申し訳なさそうに話し出した。
「最終試験に失敗したんです。最終試験は…主となった者の一番の願いを叶えること。私は一年間、主と過ごしていましたが、主の願いが最後まで分からなかったのです。
…ただ、以前に人間関係で悩んでいると聞いた事を思い出しまして、それを叶えたのです。
ですが結果は失格でした。神は私に言いました。
『あの者が真に望むのは何か…それはお前自信が望んでいる事だ。だが、その願いを叶えると、お前が女神になる事が不可能となる。
…あの者の真の願いを叶えるかは、お前に任せよう…』
…私は悩みました。私が望む事を主も望む……それが真の願い。もし、そうだとしたら…………でも、」
ニコルはそこまで言うと、ほんのりと顔を染め、僕を見つめはにかむように微笑む。
「私の一方的な想いかもしれませんから……」
気にしないでください。と呟くニコルを僕は抱きしめていた。突然の事に固まるニコル。そんな事はお構いなしで僕は想いを彼女に吐き出した。
「一方的って、勝手に決めるなよ!!お前が突然いなくなってから、僕がどんな想いで毎日を過ごしていたのか分かるか?」
「主…」
「いつまでも傍で笑ってくれたら、一緒にいられたらって思ってたのに……」
「っ……主……」
「勝手に自己完結して、さっさと帰って……バカヤロウ!!気付くの遅すぎるんだよ!!」
「主……ご、めんなさい……」
じんわりと広がる気持ちに、思わず涙が滲む。腕の中で嗚咽しているニコルの肩を優しく掴み、少し体を離す。
「ニコル」
「……はい…」
……緊張してきた。こんなに緊張したのなんて、大学の受験以来だ。でも、ここで言わなければ!僕は深く深呼吸をしてから、ニコルの目を真っすぐ見て言った。
「…君が好きだ。ずっと僕の傍にいてくれ……」
ずっと言いたかった、伝えたかった言葉を……。
驚き、目を見開くニコルだったが、見開かれた目から大粒の涙を零す。そして、精一杯の笑顔を僕に向け、
「私、私も主の事が好き………大好きです!!私で宜しければ、お側にいさせてください…」
「ニコル…君じゃなきゃダメだ。君じゃなきゃ嫌だ」
「っ……主っ」
…満たされた気持ちだ。
これからも、ずっと君と僕は………
Without You…
「僕は」
「私は」
『君(あなた)なしではいられない……』
END
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