焼き芋と女神




秋の風物詩といったら…………これかな……?







青々していた草木も、次第に色付き始めて……。

「主!あれは何ですか?」

ニコルが指差す方を見てみると、今時あまり見かけない光景が目に入った。

「あれは焚火だよ」

「焚火?」

「うん。落ち葉を集めて燃やすんだよ」

「主はやった事あります?」

「ん。小さい頃におじいちゃんの家でね。焚火の中に栗とかサツマイモとか入れて。美味しかったなあ」

「ふふ……主、幸せそう」

「え?そう?」

「はい!」

「…そっか。ちょっと行ってみようか」

「はい!主!」


僕がニコルの手をとり、焚火をしている人たちに近づく。どうやら近くに住んでいる人達のようだ。


「こんにちは」

「こんにちは!!」

「お?こんにちは。当たってくかい?」

「あ、はい」

「ありがとうございます!!」


僕らの周りには近所に住む子供たちでワイワイと賑わっていた。ニコルも楽しいのかニコニコと子供達が騒いでいるのを眺めている。
しばらく当たっていると、ふと甘くて香ばしい匂いが漂ってきた。

「…そろそろかな?よっ……と」

おじさんが鉄のトングで焚火の中を漁ると、アルミホイルに包まれたものを掴みだした。

「おじさん!それなんですか?」

ニコルが不思議そうに尋ねると、おじさんはニコッと微笑み、アルミホイルを破いていく。その中に入っていたのは……

「サツマイモ?」

「ああ。美味いぞ!!食ってみな」

「いいんですか?」

「ああ、構わんよ。沢山あるからな。ほら、そこの綺麗なお姉ちゃんも!!」

「え?あ、ありがとう!おじさん!!」

僕とニコルは新聞紙に包まれた芋を渡される。
久しぶりの香りに懐かしさを感じながら、パクリと頬張る。口に入れた瞬間、確かに熱いのだが、ホクホクとした食感と甘さ。自然と顔が綻ぶ。そんな僕の顔を微笑みなが見つめていたニコルも、真似をしてパクリと一口。よほど熱かったのかハフハフしていたが、次第に満面の笑みを浮かべた。

「美味しい!!こんなの初めてです!!」

「そりゃあよかった。うちの畑で採れた芋なんだよ。毎年、この時期にこうして子供たちに振る舞ってるんだよ」

「本当に美味いです。甘くて」

「良かったら少し持ってくかい?」

「え?でも……」

「いいって、いいって。そこの可愛い彼女と一緒に食べな」

「う、え?は、はい…///」

「ありがとうございます!おじさん!!」


僕達はそのあと、芋の他に焼栗もご馳走になり、おじさんとおしゃべりした後、子供たちと日が沈むまで遊んだ。






「主、楽しかったですね!」

「そうだな……たまにはいいな。こういうのも」

「…私たち、おじさんにどう見られてたんでしょうか…」

「///!!……さあな。さて、戴いた芋と栗でおこわでも作るかな」

「わあい!!楽しみです!!」




END

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