春の訪れと女神



これから僕はどうなるのだろうか…;






ひょんな事から、見習い女神ニコルとの共同生活が始まって、一月経とうとしていた。
どうやら彼女は、人間を主とし願いを叶えることで、一人前になれるようだ。(と、ニコルがそう言っていた)
まあ、願いを叶えてくれると言ってもあまりピンと来ないのが本音だ。
理由は、ニコルがあまりにも無知だということだ。
まず、ここ(下界)で見るもの聞くもの触るもの、すべてが初体験。(風呂とトイレの使い方を知らないというのが一番驚いた)
外に出る度に大騒ぎし、ふらっとどこかに行ってしまい、勝手に迷子になる始末。しかし、悪気なくやっているのが始末に悪い。



***************

「主、あれはなんですか?」

ニコルが興味を示したのは……


「ああ、桜だよ」


つぼみが膨らみ、ボチボチ咲き始めた桜。


「桜?」

「そう、桜。春になると咲く、薄いピンク色の小さい花」

僕がそう説明すると、ニコルはフムフム…と相槌をうちながら、桜の木を見上げる。

「さぞ美しい花なのでしょうね。桜というのは」

「ああ、満開になると迫力あるからな」

「成る程。力強い花なのですね!」

「…そうかねぇ……どちらかといえば、はかない……と思うけどな」

「何故です?」

「桜はな短い間しか咲けないんだ。すぐに散っちゃうんだよ」

「……」

「でもだからこそ、美しくありたいと頑張るんだ。ほんの短い間でも、な」

「……主は、桜は好きですか?」

「ん~。割と好きかな?」

「そうですか…。なら私も好きです」

「へ?なんで?」

「私にとって主がすべてです。主が好きなものは私も好きになります」

「ふーん…そろそろ帰るか、ニコル」

「はい!今日の晩餐は何にいたしますか?」

「カレーにでもするかな」

「はい!」

カレーは大量に作って、冷凍すれば保存も利くし、応用も利きやすい。変わり種でも入れてみるかな…なんて思いつつ、ニコニコしているニコルの手を引きスーパーへ向かって歩きだした。





「……ニコル」

「なんですか?主」

「…満開になったらお花見行こうか…」

「!……承知しました、主!!」




END

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