梅雨と女神



雨は嫌いだ。嫌な思い出しかないから…。





朝からジトジトしてるなあと思っていたら、案の定降り始めた雨。天気予報士がニコニコしながら、「今日は一日中晴れでしょう!」なんてぬかしていたが、所詮予報だ。当てにはならない。

「主、空が泣いてます」

窓から外を眺めていたニコルが、不意にそんな事を言った。

「……そうか…」

早く止んでほしい。嫌でもあの日の事を思い出すから。僕の様子がいつもと違うと気付いたのか、ニコルが心配そうに近寄ってきた。
「主、いかがしましたか?具合でも悪いですか?」

眉をハの字にして僕を見上げる。……顔に出てたのか…ごまかすようにニコルの頭を撫で、ベッドに腰掛ける。ニコルも自然に僕の横に座った。

「なんでもないよ。ちょった嫌な事を思い出しただけ」

「………」

「本当、大丈夫だから」

「主…」

「ん?」

「主の心も泣いてます。あの空みたいに…」

「……え」

「…主の過去は知りませんし、主が言いたくないとおっしゃるなら、無理には聞きません…。でも、これだけは忘れないでください」

「……」

「私はいつも主の味方であり、傍らにおります。悲しい時は泣くべきです。私は笑ったりしませんから…」

「……っ」

僕は、ずっと自分は孤独だと思って生きてきた。両親にすら言われた事がないその言葉は、もしかしたら一番言ってほしかった言葉だったのかも知れない。
静かに涙を流す僕を、ニコルは優しく抱きしめてくれた。久しく忘れていた暖かさに僕は声を上げて泣いた。





「主?」

「……Zzz」

「ふふっ。お休みなさい、主。いい夢を……」




END






《あとがき》

今回は少しシリアスに。
主人公に一体どんな過去があったのか…。それは番外編で書こうと思います。
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