海と空と女神




いつもの海も行くメンツが違ければ 、まったく違う風景に見える…。






学校も夏休みに突入し、バイトも休みがとれたので、海に来てみた。


「主!!海です!」

朝からはしゃいでいたニコルは、電車から見えてきた海を見て、さらにテンションを上げた。
僕はそんな彼女を見遣り苦笑しながら、車窓から外を眺めてみた。

…去年までは、男友達数人で来ていた海。今年はみんなバイトやらデートやらで忙しく行けなかった。まあ、僕にとっては好都合だったけど。だいたいニコルを家に置いて、海になんて行けない。それに………

「大きいです!!空と海が繋がって見えますね!!主!!」

ニコルに、僕達が毎年来る海を見せて遣りたかった。




ザザザ・・・ン


「主!!早く早く!」

「分かった分かった。今パラソル開くから…あ、あんまり遠くに行くなよ!!」


ピョンピョン飛び跳ねながら、手招きするニコルを横目にレンタルのパラソルを開き、その下にシートをひく。そして、振り返りニコルを呼ぶ。

「主?どうしましたか?」

「服のまま泳ぐのか?」

「あ…忘れてました」

そう言うなり、脱ぎはじめるニコルに僕は慌てる。

「お、おい!ちょっと待て!」

「?」

「ぼ、僕はあっちで着替えるから、その間に着替えろ。分かったな?」

「はい!主!」

「じゃあ、着替え終わったら声かけろよ」

「承知しました!!」

ニコルの返事を聞き、僕は着替えを持ち、近くの岩影に隠れ、着替え始める。と言っても服を脱ぐだけだが。ニコルにも予め、水着を着ておけと言ってある。そんなに時間は掛からないはずだ。脱いだ服をかかえ、ニコルの合図を待つ。しばらくして、


「主!!着替えました!」


僕を呼ぶニコルの声がした。僕は岩影から這い出し、ニコルを視界に入れた。途端に僕は言葉を失った。

スレンダーな肢体。白い肌にオレンジの水着が映える。眩しい太陽の光を受け、輝く金色の髪。青い空と海に立って手を振っている姿は、まるで海に住む妖精のようだ。
黙り込む僕を見て、不安になったのか、ニコルが近付き顔を覗き込んで来る。突然のふい打ちに、思わずドキリとする。

「いかがしました?主」

「あ、いや、なんでもないよ。さ、入ろう」

「はい!主」


赤くなった顔を隠すようにニコルの手を引き、海へと歩き出した。







「主?」

「……ニコル」

「は、はい」

「水着、似合ってるよ」

「!!ありがとうございます!主!」




END

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