同盟にて、灯里さまに書いていただきました!!

シリアスなバトル小説でございます。
 
すごくかっこいいお話になってます!!

CAST:琥珀、美夕、夕梨、ナタリア、蕾





 祈るように手を組んでいるのは、見る者に儚い印象を抱かせる一人の女性。艶やかな髪は青み掛かった黒で、瞳は柔らかいブラウン。
 薄紫の振袖に花が描かれた赤い帯といい、まるで遊女のようだ。
 彼女の名は蕾。葵と桜、レスカが通う《桜花台学園》の理事長を務めていると言うのだ。

 蕾の話によると、彼女の両親は先代理事長――つまり、祖父の後継者であったらしい。
 しかし、彼らは交通事故に見せかけて、叔父夫婦に殺害されたと言うのである。
 蕾も犯人が叔父夫婦だと分かっていたが、決定的な証拠がなかった。いくら彼らが犯人だと分かっていても、どうしようもなかったのだ。

「……お話は分かりました。私たち、よろず屋が責任をもって証拠を探し出します」

 琥珀がそう約束した直後だった。蕾が何者かに攫われたのだ。このタイミングならば、犯人は叔父夫婦に違いない。
 よろず屋に依頼したことに気づき、危機感を覚えたのだろう。証拠を見つけられてはたまったものではないということか。


琥珀やレスカたちは、一番危険度が高い蕾の叔父の元へと向かった。
 蕾の救出を任されたのは三人。

「お姉ちゃん、本当にここを通るのかな?」

 不安そうに隣の女性を見上げるのは美しい少女だ。両肩近くで二つに結んだ髪は鮮やかな紅で、長いまつ毛の下から覗く瞳も髪と同じ色をしている。
 少女は可憐な制服姿だったが、携えた双錐だけが酷く不似合いだった。

「間違いない。聞こえる」

 目を閉じ、耳を澄ませているのは少女――美夕の隣にいた女性。纏う雰囲気は全く違うものの、容貌といい、髪や瞳といい、驚くほど美夕に酷似している。
 ただ彼女の髪は少女と違い、短く切りそろえられているが。まるで抜身の刃を思わせる彼女は鞭を手にしていた。

 事実、彼女は美夕の姉であり、似ているのは当たり前だ。そしてその夕梨も美夕もただの人間ではない。人と天狐のハーフなのである。
 天狐とは神獣であり、狐が千年生きると天狐となるらしい。千里の先を見通すとされる天狐の血を引く彼女たちは耳が非常に良い。鼻もだ。
 その力をもってすれば蕾の行方を掴むことはそう難しいことではなかった。

「……来るわよ」

 そんな姉妹を見て注意を促したのは人形のように愛らしい女性。実際、彼女は人間ではなく、人形なのだが。
 足元近くまで届く髪は金糸を紡いだようで、アーモンド型の瞳は煌めく紫水晶。
 赤いリボンで髪を飾り、レースで縁どられた同色のワンピースを身に付けている。
 ただ、彼女、ナタリアの白い指には細い糸のようなものが巻きついていた。

 ナタリアの声を聞くまでもなく、美夕と夕梨は気づいている。車のエンジン音に。
 やがて現れたのはニ台の黒塗りの車だった。スモークフィルムが貼られているため、中までは見えない。しかも全ての窓にフィルムが張られている、所謂フルスモーク、違法改造である。

「美夕、ナタリア」

「うん、お姉ちゃん!」

「ええ」

 夕梨の言葉に頷き、美夕とナタリアは彼女と共に車の行く手に立ちふさがった。突然現れた少女たちに、けたたましいブレーキ音を響かせて停止する。
 運転席と助手席から出てきた男が怒りを露にした。

「てめら、何してやがる!」

「さあ、何かしら? この程度なら、私一人で十分だったようね」

 二人の男を見て、くすくすと笑うナタリア。確かに彼らは多少、手馴れているのだろう。
 しかし殺人人形と恐れられるナタリアの敵ではない。実際、美夕、夕梨のどちらか一人がいれば事足りただろう。彼らも所詮、凡人という枠組みだ。

「何だこのアマ? 何言ってやがる?」

「頑張って、二人とも」

 訝しげにこちらを見る男たちだが、ナタリアは興味が失せたとでも言う風に一歩後に下がった。
 ナタリアの意図を察したらしい夕梨が前に出る。

「美夕」

「任せて!」

 姉妹が頷きあった直後、二人は同時に地面を蹴った。何が起こっているのか未だ理解出来ずにいる男たちに肉薄する。
 夕梨が振るった鞭が唸りを上げて男に迫り、一瞬のことで避けることもままならなかった男を直撃した。容赦無く振り下ろされた鞭は、男を激しく地面に叩きつける。

 もう一人の男は仲間が昏倒させられたのを見て、懐から銃を取り出そうとする。
 だがそんな時間を与えるほど、美夕は馬鹿ではない。舞うような動きで、双錐――睡蓮を操って銃を弾き飛ばし、首筋に手刀を叩き込んだ。男はたまらず崩れ落ちる。

「おい、どうした!?」

 異変に気づいたのだろう。もう一台の車からも男たちが姿を現した。皆、銃や刃物を手にしている。
 既に美夕たちの目的に気づいたのだろう。女三人と侮っているようだが、美夕は警戒したまま、男たちを見つめた。

「さらった人を返して下さい。今すぐに!」

「なら、こいつがどうなってもいいのか!?」

 ドアが開く音がしたかと思うと、二人の男に連れられ、青み掛かった黒髪の女性が姿を現した。二人に挟まれているため、身動きができないのだろう。
 依頼人の蕾であり、彼らは彼女を叔父の元に連れてくるよう、命令されているのだろう。

「その人を連れて来い、そう命令されてるなら、お前たちは彼女を傷つけられない」

「ふん、話さえ出来ればいいと命令を受けている。腕や足の一本、折れても問題はない」

 夕梨が静かな声で言うと、男は蕾の腕をねじり上げた。声さえ出さないものの、蕾の表情が苦悶に変わる。脅しではない。本気だ。
 実力的には大したことのない連中でも、人質を取られれば別だ。美夕はおろおろと姉を見つめ、夕梨は舌打ちをして鞭を握り締めている。

「じゃあ、私も遠慮はしないわよ」

 くすり、とそれまで微動だにしなかった人形が笑った。指揮でもするように虚空に指を這わせる。
 瞬間、男たちが短い悲鳴を上げてその場に蹲った。光を浴びてうっすらと輝くのは細い糸。ナタリアの武器である鋼の糸だ。
 美夕と夕梨はその隙に男たちを気絶させ、蕾の元へ駆け寄った。

「お怪我はありませんか?」

「はい、大丈夫です。助けて頂いて本当にありがとうございました」

「話は後。今は琥珀達に合流するわよ。遂に相手方が墓穴を掘ったんだから」

 心配そうに蕾を気遣う美夕に、安心したように微笑む蕾。夕梨も言葉には出さないが、安堵していることだろう。
 妖しく笑うナタリアは言った。話は後だと。
 ナタリアの言葉に二人は緊張感を取り戻す。まだ終わった訳ではない。美夕と夕梨は顔を見合わせると蕾を連れ、琥珀達の元へ向かった。





End


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