X'masと女神
たまにはこんな静かな聖夜もいいな…
季節は冬に突入し、気温がぐっと下がり、朝起きるのが億劫なこの時期。
試験もレポートも無事に終わり、学校は冬休みに入った。起きぬけの顔でコーヒーを飲みながら、ボンヤリとテレビのニュースを見ていると、いつものお天気お姉さんが、
「今日は夕方から雪が降るでしょう。ホワイトクリスマスになりますね!!」
などと嬉しそうに言っていた。そうか…クリスマスなんだと、ふと、窓の外を見ると少しは曇っているものの、とてもじゃないが降りそうにない。(また外れるな…)と思いながら、そろそろ活動を始めようとベッドから離れると、先に起きていたニコルが、新聞を持って部屋に入ってきた。
「あ、主!おはようございます!!」
「おはよう…」
元気に挨拶をし、新聞を差し出すニコルに欠伸混じりに返事をし、新聞を受け取る。取り立てて大きな事件もニュースもない。芸能人の誰々が熱愛だの不倫だのの見出しが目立つ。何か面白い記事はないかと流し読んでいると、一面丸々使われている記事を見つけた。
「ツリーのイルミネーション、今夜点灯式……」
隣町にある大きな広場に、これまた巨大なもみの木があるのだが、どうやらそれがクリスマス仕様に飾り付けられており、今日ライトアップされるらしい。記事を眺めたまま、考え込んでいる僕を不思議に思ったのか、ニコルが顔を覗かせてきた。
「主、何か気になる事が書いてありましたか?…?イルミネーション?クリスマス?」
「なんだ、ニコル。クリスマス知らないのか。知ってると思ってたよ」
「は、はい///お恥ずかしい事に勉強不足でして……。主、クリスマスとはなんですか?」
ニコルが知らないとは、意外だった。まあ、元々人が勝手に始めた俗世の祭だ。女神のニコルが知らないのも頷けるし、教える者もいなかったのだろう。
僕はクリスマスとは、イエスキリストの誕生のお祭りだと教え、パーティーを開いたり、国によっては教会で祈りを捧げたりするんだと説明した。
ニコルはフムフムと頷き、僕の顔を見上げニコリと笑う。
「じゃあ『キリスト』という方の誕生日でおめでたい日なんですね!」
「そうだな。ニコル、クリスマスツリーのイルミネーション見たい?」
「はい!是非!」
「じゃ、行こうか。夕方頃に出て行けば、点灯式間に合うかな」
「わあい!楽しみです!!」
はしゃぐニコルの頭を撫で、朝食の準備の為、台所に向かう。
(どうせなら、ホワイトクリスマスにならないかな…)なんてロマンチックな事を考えていたのは内緒。
***************
日が落ちて、辺りは薄暗くなりはじめた。それとともに寒さも増してきたため、僕とニコルはマフラーとコートに手袋、帽子まで被り完全防備で目的地である、広場に向かった。
駅に着き、改札から出ると、イルミネーション目当てであろう人達で溢れかえっていた。僕とニコルは手を繋ぎ、人の間を縫うようにすり抜け、広場まで急いだ。
「主、すごい人ですね」
「ああ。…やっぱりカップルが多いな」
予想はしていたが、やはりアベックが多い。
僕達は人目を避けるように空いていたベンチに腰掛けた。
…沈黙が流れる。僕は何を話していいのか分からず、視線を下げる。やけに照れ臭い……ニコルも同じなのか、俯いている。
時折吹いてくる北風に、身震いし、
「ニコル、寒くないか?」
と言うのが精一杯だった。
「はい、私は平気です。主こそ、大丈夫ですか?」
「ん、僕は大丈夫……くしゅっ」
「主!無理はいけません!………くしゅっ」
「………」
「………」
お互い顔を見合わせ、暫し固まる。と、そのうち
「ぷ………」
「ふふっ…」
笑いが込み上げてきた。同時に緊張も解けていく。僕は、『ちょっと待ってて』と言い、近くにあった自販機で、ホットココアとコーヒーを買い、ニコルの元に戻る。
「ほら、ニコルはココア。ココア好きだろ?」
「はい!ありがとうございます。主!!…すごく暖かいです」
頬に缶を当て、ふわりと微笑むニコルに、ドキドキしながらしかし悟られないように、缶コーヒーを飲みながら腕時計を見る。
…後、5分。周りに人が集まり始める。と、そのとき、何か冷たい物が頬に落ちてきた。
「……雪だ」
真っ白な粉雪が、パラパラと舞い降りてきた。
「綺麗ですね……」
ニコルがウットリとつぶやく。(天気予報当たったな。それにしても凄いタイミングだ)と思い、二人でしばらく雪に見とれていると、
…リンゴーン………
鐘の音が響き渡り、同時にツリーに電飾の花が咲きはじめた。ワアア……と歓声が上がる。
僕達は、ツリーがよく見える所に移動すると、ニコルが感嘆のため息をついた。
「素敵……素敵ですね、主。こんな美しい光景、初めて見ました…」
そう言うと、真っ直ぐ僕の方に向き直る。そして、満面の笑みを浮かべて、
「この光景を主と見れて、嬉しいです!!ありがとうございます!」
降りしきる雪の中、イルミネーションに照らされたニコルは、あまりにもはかなくて、幻想的で……。このまま消えてしまうんじゃないかと思ってしまうほど綺麗だった。
……どうか、いなくならないで。ずっと傍にいて笑っていてほしい………。
そう願わずにはいられなかった。
「ニコル」
「はい、主」
「帰りに駅前のケーキ屋に寄ろう」
「?」
「クリスマスケーキ、一緒に食べよう」
「!!はい!主///」
たまにはこんな静かな聖夜もいいな…
X'masと女神
季節は冬に突入し、気温がぐっと下がり、朝起きるのが億劫なこの時期。
試験もレポートも無事に終わり、学校は冬休みに入った。起きぬけの顔でコーヒーを飲みながら、ボンヤリとテレビのニュースを見ていると、いつものお天気お姉さんが、
「今日は夕方から雪が降るでしょう。ホワイトクリスマスになりますね!!」
などと嬉しそうに言っていた。そうか…クリスマスなんだと、ふと、窓の外を見ると少しは曇っているものの、とてもじゃないが降りそうにない。(また外れるな…)と思いながら、そろそろ活動を始めようとベッドから離れると、先に起きていたニコルが、新聞を持って部屋に入ってきた。
「あ、主!おはようございます!!」
「おはよう…」
元気に挨拶をし、新聞を差し出すニコルに欠伸混じりに返事をし、新聞を受け取る。取り立てて大きな事件もニュースもない。芸能人の誰々が熱愛だの不倫だのの見出しが目立つ。何か面白い記事はないかと流し読んでいると、一面丸々使われている記事を見つけた。
「ツリーのイルミネーション、今夜点灯式……」
隣町にある大きな広場に、これまた巨大なもみの木があるのだが、どうやらそれがクリスマス仕様に飾り付けられており、今日ライトアップされるらしい。記事を眺めたまま、考え込んでいる僕を不思議に思ったのか、ニコルが顔を覗かせてきた。
「主、何か気になる事が書いてありましたか?…?イルミネーション?クリスマス?」
「なんだ、ニコル。クリスマス知らないのか。知ってると思ってたよ」
「は、はい///お恥ずかしい事に勉強不足でして……。主、クリスマスとはなんですか?」
ニコルが知らないとは、意外だった。まあ、元々人が勝手に始めた俗世の祭だ。女神のニコルが知らないのも頷けるし、教える者もいなかったのだろう。
僕はクリスマスとは、イエスキリストの誕生のお祭りだと教え、パーティーを開いたり、国によっては教会で祈りを捧げたりするんだと説明した。
ニコルはフムフムと頷き、僕の顔を見上げニコリと笑う。
「じゃあ『キリスト』という方の誕生日でおめでたい日なんですね!」
「そうだな。ニコル、クリスマスツリーのイルミネーション見たい?」
「はい!是非!」
「じゃ、行こうか。夕方頃に出て行けば、点灯式間に合うかな」
「わあい!楽しみです!!」
はしゃぐニコルの頭を撫で、朝食の準備の為、台所に向かう。
(どうせなら、ホワイトクリスマスにならないかな…)なんてロマンチックな事を考えていたのは内緒。
***************
日が落ちて、辺りは薄暗くなりはじめた。それとともに寒さも増してきたため、僕とニコルはマフラーとコートに手袋、帽子まで被り完全防備で目的地である、広場に向かった。
駅に着き、改札から出ると、イルミネーション目当てであろう人達で溢れかえっていた。僕とニコルは手を繋ぎ、人の間を縫うようにすり抜け、広場まで急いだ。
「主、すごい人ですね」
「ああ。…やっぱりカップルが多いな」
予想はしていたが、やはりアベックが多い。
僕達は人目を避けるように空いていたベンチに腰掛けた。
…沈黙が流れる。僕は何を話していいのか分からず、視線を下げる。やけに照れ臭い……ニコルも同じなのか、俯いている。
時折吹いてくる北風に、身震いし、
「ニコル、寒くないか?」
と言うのが精一杯だった。
「はい、私は平気です。主こそ、大丈夫ですか?」
「ん、僕は大丈夫……くしゅっ」
「主!無理はいけません!………くしゅっ」
「………」
「………」
お互い顔を見合わせ、暫し固まる。と、そのうち
「ぷ………」
「ふふっ…」
笑いが込み上げてきた。同時に緊張も解けていく。僕は、『ちょっと待ってて』と言い、近くにあった自販機で、ホットココアとコーヒーを買い、ニコルの元に戻る。
「ほら、ニコルはココア。ココア好きだろ?」
「はい!ありがとうございます。主!!…すごく暖かいです」
頬に缶を当て、ふわりと微笑むニコルに、ドキドキしながらしかし悟られないように、缶コーヒーを飲みながら腕時計を見る。
…後、5分。周りに人が集まり始める。と、そのとき、何か冷たい物が頬に落ちてきた。
「……雪だ」
真っ白な粉雪が、パラパラと舞い降りてきた。
「綺麗ですね……」
ニコルがウットリとつぶやく。(天気予報当たったな。それにしても凄いタイミングだ)と思い、二人でしばらく雪に見とれていると、
…リンゴーン………
鐘の音が響き渡り、同時にツリーに電飾の花が咲きはじめた。ワアア……と歓声が上がる。
僕達は、ツリーがよく見える所に移動すると、ニコルが感嘆のため息をついた。
「素敵……素敵ですね、主。こんな美しい光景、初めて見ました…」
そう言うと、真っ直ぐ僕の方に向き直る。そして、満面の笑みを浮かべて、
「この光景を主と見れて、嬉しいです!!ありがとうございます!」
降りしきる雪の中、イルミネーションに照らされたニコルは、あまりにもはかなくて、幻想的で……。このまま消えてしまうんじゃないかと思ってしまうほど綺麗だった。
……どうか、いなくならないで。ずっと傍にいて笑っていてほしい………。
そう願わずにはいられなかった。
X'masと女神
「ニコル」
「はい、主」
「帰りに駅前のケーキ屋に寄ろう」
「?」
「クリスマスケーキ、一緒に食べよう」
「!!はい!主///」
END
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