バレンタインと女神



今回はニコル視点です。


胡蝶蘭の花言葉、間違っていたらすみません;


あなたと共にある事…あなたを愛すると言うことが私のすべてなのです。







その日、主はいつも通りお仕事に出掛け、私は部屋に一人。
思いおこしてみれば、色々な事がありました。その度に主は私にたくさんの事を教えて下さり、見守って下さいました。
聞けば世間は『バレンタイン』というお祭り。
なので、今までのお礼と私の気持ちを込め、贈り物をしたい。とはいえ、働いていないので、買うという事は不可能。かといって完全な女神の力はまだ使えない。

………どうしたら………


悩んだ私は、とりあえず外に出ることに。主がよく連れていってくれた公園へ行ってみました。周りを見回すと、真冬だというのに花をたくさん乗せたトラックが止まっていました。
私は吸い寄せされるように近づき、バケツの中で咲き綻ぶ花を見つめていました。いい香りが鼻腔を擽り、柔らかな色合いの花たちが、ときおり吹く風にゆれ、まるでおしゃべりをしているようで。知らないうちに顔が綻んでいました。しばらく眺めていると、背後から声が掛かりました。


「おや、かわいいお嬢さん。花が好きなの?」


はっとして振り向くと、エプロンを付けた、優しげに微笑む老婦人が、私を見つめていました。


「す、すみません!!あまりに綺麗だったので、つい……」

「ふふ…いいのよ。綺麗って言ってくれてありがとう。その子たちはね、私が育てた花なのよ。月に二回、こうして広場や公園で売っているの」

「そうなのですか。素敵ですね!!」

「ありがとう。ところで、どんなお花をお探しかしら?」

「え、えっと……。大切な人に贈り物をしたいのですが、お金がなくて……。どうしようかと……」

「あら、そうなの。その大切な人は男性かしら」

「は、はい。とても優しい方で物知りで……傍にいると幸せになれるんです」

「まあ、素敵な人なのね。……じゃあ、この花はいかがかしら」


婦人が差し出したのは、小さな可愛らしい花が沢山集まった花。


「『胡蝶蘭』ていうのよ。可愛いでしょう?」

「コチョウラン…可愛いです!!」


私の言葉に婦人は微笑むと、後ろを向いてゴソゴソとしていましたが、少しして振り返ると、彼女の手には小さなブーケ。それを私に差し出しました。


「はい、お嬢さん」

「え!?で、でも私、お金持ってないので……」

「ふふ、いいのよ。貴女の事を応援してあげたいの。迷惑でなければ受け取って」

「め、迷惑なんて!!……本当にいいのですか?」

「ええ」

「!!あ、ありがとうございます!!」


私は戴いたブーケを胸の前に持ち、婦人に心から感謝しました。婦人はにこやかに笑っていて……。


その後、やはりただで戴く訳にはと、暫くお店のお手伝いをさせて戴き、沢山おしゃべりをして帰路に着きました。

人間の世界とは、やはり暖かく心癒される世界です。…もし、赦されるのであれば、この世界でずっと主と暮らしたい………そう思った私は愚かでしょうか。








「今日は本当にありがとうございました!!」

「私も助かったわ。ありがとね」

「じゃあ、私はこれで…」

「待って、お嬢さん。『胡蝶蘭』の花言葉、教えてあげるわ」

「『花言葉』?」



《胡蝶蘭》

花言葉は
『あなたを愛します』




END

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